この都市がおかしいのはどう考えても転生者が悪い! 作:あまねぎ
今回は一万文字とちょっと長いです。
一回戦が終わり、その後も打球や選手が分身したり、テニスなのに何故か空中戦を繰り広げたり、番長がマーラ様を出したり、変態仮面が大暴れしたりと大惨事が起きたりしましたが、なんとか大会は進んで行きました。
私も某邪王真眼の中二病との激戦を繰り広げたり(右目からビーム――もとい衝剄を連発した結果、失明したためドクターストップを食らい勝利)、天衣無縫の極みに達した某梨妖精のナマモノに梨汁を顔面にぶっかけられたり(師匠直伝のスターライトブレイカーで焼き梨に変えました)しながらも、二回戦、準決勝を勝ち、新人武芸者対抗テニヌ大会決勝戦。
その相手は……。
「沈没する恐怖に震えながら航海するがいい」
白いジャージを着込み、金色の長髪に貫録のある無精髭。聖人のような雰囲気でありながら、同時に獣の王者のような佇まいを持つ男。
テニス界の覇王、平等院鳳凰。
…………………………………………………………………………。
「……新人?」
「俺はまだ15だ」
「原作よりも若い!?」
今一度平等院さんを見る。
……うん。一言でいえば、白髪から金髪に変えた某不治の病に侵された「命は投げ捨てるもの」でお馴染みの北斗4兄弟の次男。
どう若く見ても30代にしか見えません。
というか、15でその髭ってどんだけ老け顔なんですか。
「ザ・ベストオブ1セットマッチ・平等院鳳凰、トゥ・サーブ!」
審判が宣言し、平等院さんがボールを宙に飛ばす。
「見せてやる。世界の広さを……技を!
外力系衝系の変化
トゥギュウという異音を鳴らしながらボールが飛ぶ。
その名の通り、スペインの闘牛を思わせる打球。速度、回転からプラシドさんを始めとした、今まで戦って来た人たちが放ったサーブとはレベルが違うと分かる。……ですが。
「打ち返せないというわけではありません……!」
覇王断空拳で強烈なストロークで打ち返す。
……ッ! 予想以上に重い打球のせいか右腕がわずかに痺れる。
「散れ……!
外力系衝剄の化練変化
平等院が放ったスマッシュがボールが地面に叩き付けられ、バウンドしたボールが剄によって6つに分身して増えた。
ブーメランだと分かってますが、あんたらいい加減普通にテニスしましょうよっ!
と心で叫びながら、ボールの縫い目まで剄で作り上げている剄球のため、どれが本物かわからない。努力の方向性を540度間違ってる技ですね。
剄球とボールの見分けが付かないため、同時に放たれた球を超速度で一球、一球、腕、脚の四肢を使って打ち返す。
右手で一球目を、打ち返した勢いを利用して回し蹴りで二球目、片足でなのは師匠直伝、御神流 奥義之歩法 神速で迫りくるボールの数倍の速さ一歩分後ろに下がり、両手で三球目、四球目を平等院さん目掛けて殴り返す。
そして五球目を……というところで、ゾクリ、とまるで背後から剣が突き刺さるような冷たい殺気を感じた。
「………ッ!」
前転しながら正面から来る
後ろを振り向く。
「……………………………………………」
そこには海賊帽子をかぶり、手にはカトラスと呼ばれる舶刀を持つ骸骨の船長が佇んでいた。
「15-0!」
「今、ボール関係なく攻撃してきましたよこの人!」
骸骨船長を指さしながら審判の声を遮るように大声で叫ぶ。
この骸骨船長は一回戦で戦ったプラシドさんみたいに剄糸で動かす錬金鋼で出来た人形。
そして、剄糸の先は平等院さんのテニスラケットに繋がっていた。
ボール越しじゃない直接攻撃。どう考えても反則です。
「アインハルトちゃん、それに関してですが問題ありませんよ」
実況席にいるニャル子さんが言う。
いや、どう考えても反則ですよね?
「確かに『ボール越しじゃない直接攻撃は禁止』と言いましたがこうも言いました。『原作『テニスの王子様』でやっていたルール違反、技の再現は全て使用オッケー』と」
『
「いやいやいや、あれあくまでイメージでしたよね」
「それも含めての原作再現なのでルール的に問題ありませんよ。納得しました?」
「問題ありまくりですし、全然納得いきませんよ!」
と叫んだものの結局このまま試合続行。私は平等院さんと平等院さんのスタンドを同時に相手しなければならなくなりました。
本当にこの
私は正面から来る
ベルカ古流武術覇王流 破城槌
粉塵が舞いながらボールを相手コートに散弾のように飛び散る。
平等院さんが構え、腕が揺らめく。
「
外力系衝剄の変化
全てのボールが打ち返され、ボールが6球から7球に増える。
「…………ッあああああああ!!」
再び繰り出される
「……あー、私、実況ですが……粉塵でコートが見えないのに加え、レベルが違い過ぎて何が起こってるのか全然わかりません。ルリさんは何が起こっているのかわかりますか?」
『身体能力が一般人の念威操者にわかるとでも』
「ですよねー」
『まぁ、肉眼では無理ですが、念威映像のデータ越しでなら、粉塵を無くし、動きは脳が高速で処理しますのでわかりますが』
「あ、わかるんですか。流石天剣クラスぱねぇ。で、どういう状況ですか? 解説のルリさん」
『今は互いに9球「10球を抱いて眠れ!」……10球のボールで打ちあっていますね。技量では平等院さんが上、剄量ではアインハルトさんが上で二人の総合能力に差はそれほどございませんが、武芸ではなくテニヌという、相手の土俵で戦っていることから平等院さんが勝っていますね』
「確かに3-1で平等院選手がリードしてますね。しかし、アインハルト選手がこのまま終わるとは思いません」
『そうですね。そろそろ試合が大きく動き始めるころでしょう』
ルリさんがそう言った直後、正面から10球に増えたボール、背後から
「…………フッ!!」
背後から来る突きを私は脇腹に挟み込んでカトラスをへし折る。
同時に裏拳で骸骨の眼球部分に指を入れて掴み上げ、そのまま10球のボールを力のまま剄を
結果、全力で剄を込めたのに加え、10球のボールの剄球に耐え切れず、
「ゲームアインハルト。ゲームカウント3-2」
ゲームカウントを一つ取り返し、実況席からうおおおおおおおお!と歓声が沸いた。
「
『外力衝剄の変化 蝕壊でカトラスのみを破壊して、すぐさま錬金鋼で出来た
「形勢逆転してアインハルトが一気に有利になりました! 平等院選手はこのピンチに、どうするのでしょうか!?」
『いえ、逆ですよ』
「……え?」
平等院さんの剄が天衣無縫の極みのように強く輝き出す。そこには自身の
「ふん。……大海原を小舟で漕ぎ出すかよ」
平等院さんがボールを持ち、構える
ルリさんが呟く。
『アインハルトさんは……平等院鳳凰の本当の海賊を目覚めさせてしまいました』
彼の左手が光輝く。そしてその光がボールに注がれ、サーブが放たれた。
「滅びよ……」
外力系衝剄の変化
平等院さんが放った球に触れた瞬間、背後の壁は壊れ、私は観客席まで吹っ飛んだ。
「15-0!」
「あーっとアインハルトくんふっとばされたー! ってアインハルト選手吹っ飛びましたけど大丈夫なんですか?」
『問題ないようですよ。ほら、観客席まで飛びましたが綺麗に着地したようですし』
念威端子で指さされる。
「………………」
私は観客席にまで吹っ飛び、
先ほどの一撃を正面から受け止める、受け流すことはできるでしょうが打ち返すのは難しいですね。何よりあの
無論
折れたことに関しては大した問題はない。それこそ金剛剄で腕を固めて動かせばいいのだから。問題は内部ダメージ――軽く剄路が麻痺して右手首から上の感覚が軽くなくなっていることです。一時間もすれば回復する程度のダメージですがこの試合で完全に封じられました。元々両利きだとしても、片手を封じられたのは痛い。
それに加えて
どうしようかと思い、嘆息していると高校生くらいの丸メガネを着けた銀髪の少年に心配そうに声を掛けられた。
「君、大丈夫かい?」
言われて考える。元々この試合乗り気じゃありませんでしたし、右腕も折れていますからこのまま棄権してもいいんじゃないかと――
『――なのはさんからの伝言です「負けたら72時間都市外組手ね♪」と』
……いえ、やっぱり死にたくないので最後まであきらめずに頑張りましょう!
「問題ありません」
隣の席にいる少年に言い、軽くお辞儀してコートまで飛び降り、試合続行の意志を見せる
試合続行とわかり観客から声が沸き上がり、騒ぐ解説席の二人。
「アインハルト選手が戻ってきました!
『いえ、そうではありません。平等院選手は先ほどまで世界の技と骸骨船長の操作の二つを同時に行っていました。そのため、全力の世界の技を打ち出せていませんでした。しかし、アインハルト選手によって
「なるほど、平等院選手の
二人の会話を耳に流しながら頭の中で作戦を立てる。どうやって勝つか。試合続行不可レベルの攻撃でOKを狙い? いえ、直接殴るのならまだしも衝剄で平等院さんを倒すのは難しい。
自分自身の持てる技とこのテニヌのルール内で出来ることは……。
大会が開始される前にニャル子さんが言っていたルールを思い出す。基本はテニスのルール。剄を使ったものでボールを打ち返すのはいい。原作『テニスの王子様』の再現技ならルール違反でも使用可。
「あっ」
一つ思いつきました。
ですが、私にできるでしょうか……いえ、できなければ待つのは修行という名の死のみ。やるしかありません!
「レストレーション02」
自身の錬金鋼の手甲をエレミアの鉄腕と呼ばれる獣爪型に形態変化させる。
右手が動かないので左手を前に構えて平等院さんを見つめる。
「ほう……立ち上がるか。それにいい気迫だ」
平等院さんが感心したかのように呟く。
「まだ死にたくありませんので」
「だが一切負ける気がしねぇ!」
平等院さんが叫び、再び光の球が放たれた。
迫りくる徹し剄の剄球を自身の剄で包み、旋衝破で投げ返そうとするが受け止めきれず、弾かれる。
「ゲーム平等院鳳凰 5-2」
「アインハルト選手、世界の技に圧倒され続け、ついに追い込まれました! やはりはテニプリ最強キャラの一人、平等院選手強い!」
『このままいけば、平等院選手の優勝は確実でしょうね』
これまでの疲れと焦りで流れる嫌な汗をぬぐう。
私がまだ諦めていないのをわかってか、平等院さんの打球に一切の緩みはない。むしろさらに球のキレが増している。
今までの感覚を思い出すかのように左手首をクイッ、クイッ曲げる。
……ですが、何度も徹し剄に触れて大分感覚がわかってきました。ここでやるしかありません!
このゲームは私からのサーブ。左手でボールを宙に浮かせ、獣爪で切り裂くように左腕を振り下ろす。武芸者でなければ肉眼で視認することすら困難な打球。
しかし平等院さんは即座に反応し、ラケットで打ち返す。
「
迫りくる魔球。最初に放った
ボールが当たる直前を狙って左腕を振り上げる。
エレミアのガイスト・クヴァールのように鋭く、覇王流の旋衝破のようにすべての剄を包み込むように!
空間を削り取り、現れる漆黒の剄の壁。
漆黒の剄がボールに纏う剄を侵食し、打球の威力を吸収するかのようにパリパリと雷を散らしながらボールの勢いが弱まる。
そして迫りくる、全てを蹴散らした猛牛は止まった。
すかさず、ボールを旋風脚で飛ばす。
「0-15」
平等院さんは驚愕して動きが泊まり、そのままボールがコートに入って審判が宣言。
会場全体がシン……と沈まりかえる。
ポツリ……と解説席の二人が呟く。
『今のは………………』
「まさかッ………!?」
そう。
「ブラックホール」
外力系衝剄の化練変化 ブラックホール
その言葉を口に出した直後、会場全体がいままで以上の歓声の音が鳴り響いた。
『アインハルト選手の剄技にブラックホールを存在しません。つまり……』
「この土壇場でブラックホールを習得するとは……やはり天才か……!」
実況・解説席の二人がネタに走ってるのを無視して平等院さんを見つめる。
平等院さんが口を開く。
「この試合中にブラックホールを習得したというのは驚愕に値するだろう。だが、貴様のブラックホールはただの模倣。本物のブラックホールのように全ての球を防げるわけじゃない」
そう。平等院さんが言った通り、私が使ったブラックホールは原作の「徳川カズヤ」が使用した空間を削り取って全ての球を止める技「ブラックホール」を剄を使ってそれっぽく作った模倣。本物のブラックホールというわけではありません(というか実際に空間削ってもボール止まりませんし)。
では何の意味があるのかと言えば意味はある。
このテニヌ大会ルールで剄と錬金鋼がラケット変わりとして使用されている。そのため、衝剄を放ってボールの勢いを弱めた後、錬金鋼で打ち返すというのはテニスで言う二度打ちのため禁止。
ですが、ニャル子さんの言った『原作『テニスの王子様』でやっていたルール違反、技の再現は全て使用オッケー』言葉。つまりブラックホールでボールを止めて打ち返すとう二度打ち行為は原作再現のため問題ないというわけだ。
要は言ったもの勝ちと言うわけです。
「…………とはいえ、あの威力の球を触れず、衝剄のみで完全に防ぎきる技を作るはかなり大変でしたが」
ボソッと誰にも聞かれないくらいの小さな声呟く。
特に色とかも再現しないといけないため化練剄使って無理やり黒色にしましたし。
とはいえ、これで平等院さんの技を防げるようになりました。ここからが本番です。
「はぁ!」
手甲に剄を注ぎ、ボールに振り下ろす。
「羅針盤の位置元に戻っただけだ。まだ海嵐の航海は終わっちゃいねぇ!
外力系衝剄の変化
ピィィィーーーヒョロロロロロ!
ロブで打ち上げられた打球は高く宙を舞い、自身燃やしながら突撃する不死鳥の如く降り落ちる。
……どうやってあの擬音出しているんでしょうか?
と思いながらも真上にブラックホールを展開して止める。
そのまま左腕で放ったスマッシュが平等院さんのコートに落ちる。
「0-30」
このまま、勢いに乗って私は1ゲーム、2ゲームとゲームを制し、追い込んだ。
逆転して、ついに、マッチポイント。だというのに平等院さんの顔に焦りが一切浮かんでこない。……それはおそらくあの技を残しているためでしょうか。
ブラックホールでボールを防ぎ、拳でボールを殴る。
平等院さんのラケットに濃縮な剄が注がれる。
「なるほど。名前だけの技じゃなさそうだな。アインハルト。俺は貴様のブラックホールを超え、俺は本物を超え、異次元の強さを手に入れる!
外力系衝剄の変化
『平等院鳳凰』の必殺技と呼べる
しかもその全てが徹し剄とそこら辺の武芸者が食らったら死、生き残ったとしてもと徹し剄によって剄脈を破壊しつくされて植物人間としての未来が待っているだろう。数分前の私だとしても防ぎきれず、数か月の入院を余儀なくされたでしょう。……ですが。
「今の私には効きません」
外力系衝剄の化錬変化 ブラックホール
漆黒の剄を私の周りに展開させ、全ての球を受け止める。
相手の必殺技を破り、勝利を確信して剄の砲撃でボールを飛ばす。
外力系衝剄の変化 ディバインバスター
雄性体すらたやすく粉砕するであろう一撃。それを目の前にしても平等院さんの目は揺らいでいなかった。己の必殺技を防がれたというのに、剄の淀みは一切なくラケットにはむしろ先程よりも剄の密度が上がっていた。
まさか、まだ切り札があるというのですか!?
「俺は原作を! 『平等院鳳凰』を超える!
外力系衝剄の変化
ディバインバスターが返され、放たれたのは巨大なボール。比喩などではなく、全長4メルトルは超すであろう規格外の衝剄。
大声で叫ぶ実況・解説席。
「平等院選手原作にはない世界の技を繰り出したー!」
『あれこそ、平等院さんが本物を超えるために生み出したこの世界の技であり最終奥義
この衝剄を肌で感じた瞬間理解した。これはただのブラックホールじゃ防げないと。……ならば!
左腕を振り上げてブラックホールを作り出し、振り上げた腕の力を利用して体をバック転して、振り上げた脚甲でブラックホールを作り出す。腕、脚を振り回してさらにブラックホールを三重、四重と作り上げる。
「ブラックホールの多重展開!?」
『アインハルト選手は避けず、迎撃するようですね。おそらく、この攻防で決着はつくでしょう』
そして
「………………ッッ!」
体重の軽い私が風で飛ばないように足で地面を突いて固定する。
ブラックホールが一枚、二枚と
……止めきれませんか!?
武芸者としての経験が多重展開したブラックホールでは防ぎきれないと感覚として理解した。
ブラックホールが盾となっている今なら後ろに下がって避けれる。 ですが、もしここで避けきれなかったら右腕の怪我も考えて試合続行は難しい。
勝つためには迎撃しか方法はない。
最後のブラックホールが壊れた直後に一撃を入れる!
左腕を後ろに回して構える。
ブラックホールが全て破壊されるタイミングを見計らう。
………三枚、四枚。
最後のブラックホールに罅が入る。
…………ッ今!
狙うは衝剄の中央、そこにあるボールの一点のみ。
ブラックホールが壊れると同時に左腕を前に突き出す。
ベルカ古式武術覇王流 覇王断空拳
自身が持つ一番信頼している剄技の衝剄が
打ち勝つ必要はない。ボールだけを貫き相手コートに入れればいい。
「うあああああああああああああああああああああぁぁぁっ!」
喉が潰れる程の咆哮を上げ、覇王断空拳に注ぎ込む剄量を上げる。
会場全体が轟音と共に閃光に包まれた――――。
「互いの奥義のぶつかり合い、勝ったのはどっちだ!? 」
「――はっ!?」
一瞬、意識が飛びましたが、ニャル子さんの叫びで目を覚ます。
衝剄のぶつかり合いで発生した大量の煙で何も見えない。煙の中からボール飛んできても反応できるよう耳を澄ませる。
身体は血だらけで服もボロボロで手甲も限界以上に注ぎ込んだため軽く融解していますが、まだ脚甲は残っていて戦えないわけじゃない。
ゆっくりと煙が晴れる。
視界が晴れて写ったのは私の立っている所を除いた自身のコート全体に大穴が空いて消滅したコート。
そして、ボールが直撃し、仰向けの倒れた平等院さん。
「ゲームセット ウォンバイアインハルト6-7」
「テニス界の覇王 平等院選手を下したのはアインハルト選手だーーーー!!」
最後まで冷静にカウントしていた審判が宣言し、同時に歓声が沸く。
わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
その叫びにより勝ったのだと理解し、私は歓声の中、左腕を上げる。それによりさらに歓声が沸く。
今ハルにゃんの脇見えたぜ! 胸もちょっと見えたぜ! バカな、十歳にしてすでに見える程の大きさだと!? しかも汗だくだ! 脳内に百回保存したわ。ばっか、俺なんてすでに念威端子使って最高画質で保存して焼き増ししているぜ! 売ってくれ!十万までなら出す! ハルにゃんの脇の汗prprしたい。
…………………………………………………………………。
その後、胸を隠し、無茶苦茶涙目になりながら観客に襲い掛かかりました。
もうやだこの都市!
没ネタ
『アインハルトさんは……平等院鳳凰の本当の海賊を目覚めさせてしまいました』
彼の左手が光輝く。そしてその光がボールに注がれ、サーブが放たれた。
「滅びよ……」
外力系衝剄の変化 光る球(デストラクション)
試合を見ていた観客――学園都市ツェルニに向かうため再誕都市コルベニクに逗留していた――カリアン・ロス(15歳・学生)は後に語る。
「ボールがカメラのフラッシュのように強く光ったんだ。そしたら、次の瞬間には強い衝撃音が鳴り響き、会場全体が土埃に包まれて私含めて観客は騒然だったよ。
土埃が晴れた時、私はさらに驚愕したよ。アインハルト選手の後ろの壁がまるで大砲を撃ったかのように大きな穴が空いていたんだから。
私はコルベニクに来る前、グレンダンに三週間ほど逗留して多くの武芸大会を見てきたが、あれだけ威力のある剄技はグレンダンでもなかなか見れたものじゃなかった。
空いた大穴に唖然としてしまったが、すぐさまこう思った。アインハルト選手は どこにいるんだろうか? と。あれだけの破壊力だ。例え武芸者であっても重症、最悪死んでいるかもしれない。
幸いなのかどうかわからないが彼女はすぐに見つかった。驚くことに私の隣の席に立っていたんだ。
どうやら観客席まで吹っ飛んだみたいで、彼女の全身の至る所が傷だらけで右腕は血まみれで折れ木のように曲がっていてどう考えても骨折していた。
どう考えても重症で試合続行不可能だと思い、彼女に声を掛けたが、彼女は「問題ありません」と言い、彼女は折れた右腕を元の位置に戻し、裾を破き、破いた裾で簡単に腕を巻くとそのままコートに戻っていったんだ。
無表情で淡々と応急措置をしている様子に私は十歳の少女に恐怖を覚えたものだよ。同時にこうも思った。彼女はグレンダンで見たあの少年にも匹敵する強さを持っているのだと……」