其の壹
001
普通に元気で、普通に友達がいて、普通の生活を送っていた。
ただ、ここでいう
むしろ、良い人間である。素晴らしい人格の持ち主と言い切ってしまっていい。
成績もよく、運動神経もよく、真面目でクラスの人気者、その上見た目も可愛らしい、といった感じの同級生だった。一年のころ、俺は彼女と同じクラスだったが、どうしたらこんないい人間ができるのだろうと疑問に思っていたほどだ。
何より笑顔が取り柄の女子だった。心から笑う人というのは彼女の笑顔を見れば納得するだろう。少なくとも、一年前までは。
一年前といえば、俺には思い出ともいえない、かといって忘れることは決してできない嘘のような現実を思い出し、多少の親しみを感じるといえば感じるのだが。
親しみなんて。好意なんて、会った後に抱いたものだ――それも、俺の偏見で。この悪い癖は一向に改善される気配がない。全く、浅ましいにもほどがある。ちょっと似通ったところがあるというだけで、好意を抱いてしまう。俺の小ささ、さもしさといったらないだろう。
まあ、彼女に対して間違った感情を抱いていた当時の俺は、彼女にはそこまで興味は無かったし、関わろうと思ってもいなかった。
いや、むしろ関わってきたのは彼女の方からなのだから。
今年になって、つまりは冬休み明け、学校が始まってから、彼女は大きく変わっていた。一言で言えば、厚かましくなった。
面張牛皮。
何にでも首を突っ込みたがり、自分からトラブルに巻き込まれる。
ほんの三日前、こんなことがあった。
青柳のクラスメイトが飼っていたカナリアが死んだ。勿論、飼い主はそれを埋葬しようとしたのだが、青柳がそれを引き取りたいと言って聞かなかった。ついには口論になり、今回は渋々青柳が折れる形となった。
そう、彼女は一度首を突っ込めば、最後まで突っ込んでしまう。そうしてしまいには自滅するか、また新しいことに突っ込むかだ。
彼女が関わりたがるのは、誰かの死に関することだ。この間も、誰かのペットが死んだ時無理矢理引き取ったとか、事故で死んだ野良猫をどこかに持っていくのを見たというような、気味の悪い噂がある。去年同じクラスだった時は決してそんな奴じゃなかったのに。
クラスが変わって、全く見かけることもなくなった青柳だけれど――噂からすると、今の彼女はもう以前俺が知っている彼女ではない、豹変してしまっているのだと思う。
人が変わるのは、当たり前のことだ。
それでも。
これはあまりにも唐突過ぎないか。
それに、冗談にならない。
ただのイメチェンとは違う。
ベクトルが違いすぎるのだ。
普通、何もなしに突然こうも人は変わるものなのだろうか。
否。
少なくとも彼女には、理由があった。
簡単な。至極、簡単な。
青柳が変わってしまったのは、正確には去年の一月。
彼女の兄が死んだ月だ。