あの会話から数分後、レース場の第四コーナーから少し遠目の位置でさっき俺に啖呵を切ったタマモクロスの走りを眺める。このレースは第11レースということもありオグリキャップやトウカイテイオー、ナリタブライアンと言った期待の逸材と呼ばれるウマ娘が出走しているが、当のタマモクロスはゴール手前でオグリキャップとナリタブライアンに差されて3着に終わった。だが、確かにただのビックマウスではなかったようだ。実際、注目株のトウカイテイオーよりは先着している。ちなみに1着と2着でゴールした二人は自分のチームにスカウトしようと他のトレーナーにもまれていた。トウカイテイオーの方は列をなしていた。オグリキャップは戸惑っており、ナリタブライアンの方は今はまだチームに所属する気は無いと断っていた。そしてレースを終えたタマモクロスが俺の元に歩いてきた。
「どや、ウチの走りは?あんたの腐った性根は少しは治ったやろ!」
「タマモクロス、その、なんだ、俺のチームに入ってくれないか?」
「ええで!やけど一つ約束や!ウチと話す時は関西弁や!」
「……まあ、ええわ。タマモクロス、これからよろしく頼むわ」
「新城、いやトレーナーやな、よろしゅう頼むで。さてとまずは、オグリを助けなあかんな」
オグリキャップは未だにスカウトしようとするトレーナーの波にもまれていた。ちなみにナリタブライアンの方は本人の意向もあって誰もスカウトするのを諦めたようだ。トウカイテイオーの方は相変わらず列が出来ている。
「そやトレーナー、まだチームメンバーウチだけやろ?オグリもスカウトすればええやないか!」
「え、あの人混みの中からオグリキャップをスカウトすんのか?」
「せや、チーム結成には最低でも何人かいるやろ?だったらウチとトレーナーも面識のあるオグリはうってつけやで」
「まあ、それもそうやな。よっしゃ、タマモクロス……言いにくいからタマでええな!行くで!」
「トレーナーまでタマ言うなー!」
オグリキャップをスカウトしようとするトレーナーの人混みに突撃し道を切り拓いて何とかオグリキャップの元に到着した。
「あ、あの時の……えっと……」
「新城颯大だ、まだ名乗って無かったな。オグリ、俺のチームに入らないか?」
「……いいのか?タマじゃなくて?」
「タマは俺のチームに入ってくれたから大丈夫だ」
「そうか、なら私は新城のチームに入るよ」
すると既にオファーをしていたトレーナー達が文句を言い出す。
「ちょっと、既に私たちのチームにスカウトしていたのよ!」
「そうだ!割り込みはずるいぞ!」
「横取りする気だろ!」
だが人混みから遅れて追いついたタマが大きな声を上げる。
「アホか、あんたら?トレーナーならウマ娘の意思を尊重せんでどないすねん!」
「「「………………」」」
沈黙した彼らはとぼとぼと敗北感を露わにしてその場を去っていた。
「これでオグリとタマが入ってくれたけどせめてあと一人ぐらいいてくれると助かるんやけどな……」
「ウチの知り合いやとクリークかあのエセ江戸っ子かそれぐらいやけど、二人とももうトレーナーついたって聞いたし」
「じゃあその二人はあかんな」
「まあ、ウマ娘はかなりおるし、あんたの性格やったら探せば見つかるやろ」
「せやな、じゃあどっかに飯食いに行こうや!」
「ほんとか……」
「……後悔しても知らんで」
「?どういうことだ?」
「知らんねやったらええわ……」
この日、俺の財布から紙幣が消えた。
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