蛇に転生した男 〜All For You〜 作:ヘビくんちゃん
ピロンッ!
”作者は特殊タグを覚えた”
第三席を殺した後、僕は東仙さんと出会った。それと同時にこの世界の、尸魂界が罪の上に出来た世界だという事を知った。
東仙さんは、僕が出会うよりも前から藍染副隊長の部下として動いていたらしい。部下になったのは100年以上前だと言っていた。僕の大先輩や。
東仙さんは藍染副隊長に心の底から忠誠を誓っているのだと出会って数秒で理解出来た。
初めて言葉を交わした時の第一印象は、正義に拘る男といった感じやろか。どうして、そんな正義に拘る男が藍染副隊長みたいな人に従うのかよく分からん。
藍染副隊長が悪なのかと聞かれると、迷う所ではあるが、そこに正義があるのかと聞かれれば、それはないと断言していいやろう。
きっと過去に色々とあったのだろうが、そこに触れるにはもう少し時間を置くべきやろう。初対面の人が他人の心にバリバリ踏み込んでいくのは、あまり良くはない。
その方が仲が深めやすい人もいるのかもしれないが、少なくとも東仙さんはそれには該当しないだろう。踏み込み過ぎて、斬られるとかありそうでおっかないんや。
そういえば、東仙さんにある事を聞かれた。
「お前の正義はどこにある?」
そないな事を聞かれた。果たして、藍染副隊長に従い、藍染副隊長を騙し、多くの人を殺めるであろう僕の正義は果たして何なんやろか。そもそも、僕に正義なんてものがあるんやろうか。
世間一般的に言えば、人に賞賛されたりするようなものが正義で、非難されるものが悪なのかもしれない。
けど、正義と悪は人それぞれによって違うもんだと僕は思うねん。それは誰かにとっての正義であったとしても、他者にとっての悪となりうる。
正義とは、己の信念に従う事。悪とは、己の信念に反する事だと僕は思っている。信念は人それぞれで違うのだから、受け入れられない正義があるのが普通なんや。
きっと、僕の信念は、僕だけの正義は……
僕の答えを言ったら、東仙さんは「私のようにはなるな」とだけ言っていた。その時の東仙さんは、哀愁が漂っていて、過去に何かあったように感じられたんが、そこは突っ込まないでおいた。まだ、そこに突っ込むには付き合いが短過ぎると思うからや。
色々とあったが、こうして、僕は藍染副隊長の部下になったんや。
──────────
藍染副隊長の部下になってから、色々とやってきた。崩玉というおっかない物に尸魂界の住人の魂を与えたり、悪事と言われるような事に手を染めてきた。藍染副隊長が行う色々な実験で幾多もの死神や流魂街の住民を殺している。
その行いに心の痛みや罪悪感を感じていないと言ったら、嘘になるやろう。けど、そういう事に慣れてしまった僕が確かにいた。
最初の時は正直吐きそうだった。それを藍染に悟られるのはマズイ気がして、必死に心を偽った。そんな事を暫くしている内に、いつの間にか心が軋む事は少なくなったんや。
他者の命が失われても何も感じない人でなしの心と、誰かの命が失われる事で何かを感じる普通の心。どちらが僕の本当の心なのか、分からなくなってきていた。けど、これだけは言える。
藍染に復讐したい。乱菊が傷付く事なく、泣く事もない世界を作りたい。そう思うのは、絶対に僕だけの心なんやと。
──────────
藍染副隊長は、とある実験を行っている。それは「
そんな簡単に虚の力を手に入れる事は出来ず、別次元の頭脳を持つ藍染副隊長でさえ、長い試行錯誤の時を経て、ようやく実験段階になるという代物である。
僕が覚えている原作知識では、虚化を獲得しているのは、大体10人ほどだった気がする。たしか、主人公とヴァイなんとかとかいう集団が虚化を獲得していた気がする。自信はあまりないが、たしか合っていた気がするやけど、どうだったかな。
昔の事過ぎて、記憶が曖昧なんや。堪忍してくれや。
まぁ、それでなんで虚化の話をしたかというと、藍染副隊長が虚化の実験をしている最中だからや。そもそも虚化という存在自体を忘れていたが、藍染副隊長から虚化について聞いて思い出したんやけどな。
それでどうして、虚化の話をするのかというと、藍染副隊長への復讐の手札の1つにする為や。僕の【神鎗】の能力は、騙し打ちや奇襲に秀でている。刀身を伸ばせるのもそうだし、大体の死神も1撃で殺せるような能力も持っている。
だが、それだけで藍染副隊長は殺せない。僕の見ている藍染副隊長が、【鏡花水月】によって見せられている幻であるという可能性が常に付き纏うからだ。失敗は絶対に出来ない。
だから、僕が復讐を実行するのは、藍染副隊長の【鏡花水月】の弱点を聞き出した後だけや。
けど、それだけじゃ足りない気がしてならないんや。相手は、あの藍染副隊長や。原作を読み、BLEACHの世界で実際に会ったからこそ分かるが、あれは真性の怪物。それを殺す為に手札は1つだけでも多い方がいいに決まっとる。
故に、虚化で僕自身を強化しようと思っている。正直、藍染副隊長に真正面から戦って勝てるビジョンが全く浮かばないが、それでも手札を少しでも多く持っている分には、悪くないだろう。で、問題は、どうやって僕を虚化を獲得しようかという事なんやけど。
はてさて、ホントにどないしよ。
──────────
今日は、前々から藍染副隊長からお達しの来ていた虚化の大規模実験の日や。今までも虚化の実験は行っていたんやけど、その対象となった流魂街の住民や一般の死神では虚化に魂魄が耐え切れずに消滅していたんや。
そこで藍染副隊長は、そこらにいる死神とは一線を画す隊長や副隊長たちを実験隊長に選んだ。
その中には、藍染副隊長の直属の上司である平子隊長まで含まれている。平子隊長を含めた実験対象になってしまった死神たちの顔を見て思い出したんやけど、その人達がヴァイなんちゃらっていう集団やった。虚化を使えるのも、藍染副隊長の実験台にされたからなんやなと1人で勝手に納得していた。
既に
今現在は、その虚化した隊長、副隊長とまだ虚化していない隊長や副隊長が戦っている所を観戦している所や。実際に虚化に成功したのが初めてなので、虚化によってどれだけ強化されたのかの観察中なのである。
藍染副隊長の【鏡花水月】で僕や東仙さん、藍染副隊長の霊圧や姿、全てを他者に感じ取れないようにしてもらっている。どれだけ藍染副隊長の【鏡花水月】が脅威なのか、身をもって体験している。
それにしても、ホントに虚化というのは凄まじいものや。虚化した副隊長が不意打ちとはいえ、隊長の1人を1撃で行動不能にしてしまったり、虚化した隊長に至っては、複数人の隊長、副隊長を相手取って戦っている。
これがもしも、藍染副隊長の身に起こったらと考えると怖すぎやろ。そんなおっかないものに勝てる人なんているんやろか。総隊長でさえ、片腕で捻り潰す怪物の誕生やろな。
でも、だからこそ、是非とも手に入れたい。その虚化を。けど、理性を失うような虚化は有り得へん。それのせいで、乱菊を傷付けたりしたら本末転倒もいいところ。論外としか言いようがない。
虚の力の手の入れ方は、もう少し慎重に、ゆっくりと考える方がいいだろう。
あ、虚化していた隊長と副隊長が無力化された。それと同時に
あ、藍染副隊長が東仙さんにゴーサインを出した。平子隊長以外の全員を、東仙さんが卍解を使って斬り付けていた。藍染副隊長には、1人2人程度の欠損ぐらいは許可されているが、極力殺さないように言われている。
続いて、東仙さんは平子隊長と刃を交わすが、そこは流石は平子隊長とでも言うべきか。虚化に抗っている事で体力を大幅に削られているにも関わらず、東仙さんとの戦いは平子隊長の方が分がありそうだ。
だが……
「があっ!?」
平子隊長の虚化が更に進み始めた。目の焦点は合わず、既に意識を保つのに精一杯なのだろう。フラフラとしており、虚化するのにはそれほど時間が掛からないであろうことは、容易に想像できる。
「最後に覚えておくといい」
藍染副隊長が自ら刀を抜く。ここらでこの場での虚化の実験を一段落させるつもりなのだろう。
「目に見える裏切りなど、たかが知れている。本当に恐ろしいのは目に見えない裏切りですよ、平子隊長。あなた達は素晴らしい実験材料だった」
その刃を平子隊長に向けて振り下ろそうとした時、何者かの刃が藍染副隊長に振るわれる。一応、藍染副隊長からの信頼度を少しでも上げておくためにアピールぐらいしておくか。信頼度を少しでも上げておいた方が【鏡花水月】の弱点を教えてくれるかもしれないし。
謎の男と藍染副隊長の間に瞬歩で割り込み、振るわれた刃を神鎗で弾く。追撃でその謎の人物に向けて、普通の突きを繰り出すが避けられてしまった。
「おや、これは面白いお客様だ」
謎の人物が雲の合間から差す月光によって照らされる。全身を黒い外套で覆い、フードも被っているが、フードの隙間から見える髪や、月光により照らされたフードの下にある顔には見覚えがある。その隣に立つ大男も見た事はある。
「何の御用ですか、浦原隊長、握菱大鬼道長」
黒い外套を纏った人物は、十二番隊隊長の浦原喜助。藍染副隊長が自分と同等以上の頭脳を持つと評している男であり、護廷十三隊の中で最も評価し、警戒している人物でもある。その隣にいるのは、握菱鬼道長。まぁ、要はめちゃくちゃ鬼道を使うのが上手い人である。
虚化の実験を見られた事で、東仙さんが刀を抜き、浦原隊長達に刃を向けようとする。
「いや、いいよ」
藍染副隊長は静止の言葉を掛ける。だが、それでも東仙さんは刀から手を離さない。確かにこの実験を見られたからには、ただで帰す訳にいかないというのも分かる。これがもしも護廷に知れ渡り、護廷十三隊全てを相手にするとなったら、流石の藍染副隊長もヤバいやろうし。
「要、僕はいいと言ったよ?」
「はっ! 戦場の物言い、お許しくださいッ!」
藍染副隊長の目が東仙さんに向けられる。僕に向けられた訳でもないのに、冷や汗が止まらん。その視線を受け、跪いた東仙さんの冷や汗はもっと凄い事になっている。盲目の人に眼力だけで冷や汗を滝のように流させるとか、ホントおっかないわ。
「藍染副隊長。ここで何を?」
浦原隊長が藍染副隊長に問いかける。ほぼ僕達が犯人であろうと確信していながらも問いかける。この現場を見て、僕達が犯人じゃないとか思ってたら、それはそれでヤバすぎるんやけど。
「なにも? 御覧の通り、偶然にも戦闘で負傷した魂魄消失案件始末特務部隊の人々を発見し、救助を試みていただけの事です」
藍染副隊長は白を切るつもりらしい。きっと、藍染副隊長には藍染副隊長なりの考えがあるんやろうし、僕は何も口を挟む事は無い。
「戦闘で負傷した? これが負傷? 嘘を言っちゃいけない。これは虚化です」
そこから答え合わせの時間が始まった。魂魄消失案件が虚化の実験の結果である事。その犯人が藍染副隊長を含む僕らである事。
かつて、藍染副隊長は言っていた。浦原隊長は、自分と同じように虚化による死神の進化に目を付けた男であると。藍染副隊長1人を相手に己を偽って、機を伺っているというのに、藍染副隊長並みの頭脳を持つ男が僕の新しい敵になるとか勘弁してほしいわ。
「今夜ここに来てくれて良かった。目的は達した。行くよ、ギン、要」
藍染副隊長は、刃を鞘に収め、浦原隊長達に背を向けて歩き出す。【鏡花水月】で僕達の姿を見れなくしたり、霊圧を感じれないようにして逃げるのだろうか。まぁ、藍染副隊長に付いて行けば、この場は容易に切り抜けられるだろう。
「”破道の八十八”【
後ろから大鬼道長の放つ八十番台の強力な破道が迫る。まぁ、藍染副隊長が何とかするやろ……
「ギン」
どうやら、僕に防げという事らしい。あの程度の鬼道ぐらい、自分の労力を割くまでもないという事だろうか。藍染副隊長1人だけだったら、直撃したとしても、煙の中から無傷で出てくる藍染副隊長という光景が容易に脳裏に浮かんだ。
ー”縛道の八十一”【断空】ー
轟音が森の中に響き渡る。だが、【断空】によって阻まれたそれは、僕達には届き得なかった。
色々と作者が暴走した結果、市丸ギンは原作よりも強化されています。詠唱破棄の断空で防げるぐらいには。ま、それでも「藍染>越えられない壁>今作ギン」なんですけどね。