[完結]わすれじの 1203年   作:高鹿

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15.5

夜、全員でなんとか寮に帰って、シャワーを浴びてくたくたになりながらベッドに倒れ込んで、今日のことを思い出す。

 

『ありがとう……! クロウじゃなかったら頼めなかった……』

 

そう言ってあいつは無防備に胸に飛び込んできた。

正直、無謀だと思った。どう考えたって現役の猟兵相手に喧嘩売って、人質取られて、それでも武装解除して手を挙げる際にオレにこの銃を取れって背中で誘ってきたあいつは頭がおかしい。

それでもオレは、その意図をおそらく正しく理解しちまって、ARCUSを落とすっていう何気ない合図を引き取って、背中を蹴り飛ばしながらその腰の銃を抜いて速射したんだ。まぁ別の発砲音もあったわけだが。

 

あんなギリギリの博打を打ち切ったっていうのに、抱きついてきたその身体はいつもみたいに小さくて、正直どうしていいのかわからなかった。だから、ああやって抱きしめたのが正解だったのか"俺"にはわからなくて、今でもなんか腕に感覚が残って、どうしようもねえことを考えてる。

だけど本当に、あいつからじゃなかった場合にあの意図を自分が受け取れたかどうか。且つ、それを実行しようと思ったかどうか。たぶんNOだ。だから、オレにしか頼めなかったってのはそうなんだろう。実行したオレもオレだ。サラがいることには気がついちゃいたが、手を出すかどうかは五分五分、いや、こんな案件に突っ込ませてる段階で手助けするつもりがあるのかどうかっていう疑問が湧くわけだから、二分くらいだったか。

 

たった三ヶ月だ。

鉄道憲兵隊や帝都憲兵隊の目を欺くためにこの士官学院に入った。身分の偽造に偽造を重ねて。名前だけは捨てられやしなかったけど、まぁ六年前に街から消えたガキの話なんてもうどっかにいっちまってるだろう。戸籍の改竄だって祖父さんが死んだ後に市庁に忍び込んでやり切るくらいワケなかった。アームブラスト姓もあの辺じゃ珍しいもんじゃない。帝国にだっていたりするだろう。だから、おそらく俺は見つからない。

そういう空虚な存在だ。誰でもない、どこにもいない、あの男を恨む貴族どもをパトロンにしたただのテロリスト。正義を謳うつもりは毛頭ない。ただ、してやられた事実があるってだけで、俺はエゴで仇を討つって決めただけだ。祖父さんが生きてりゃ止めたろうが、ま、死んじまってる。どうしようもない話だ。

 

だって言うのによ。無茶振り無謀な作戦を誘われて、それに乗っかって、やり切っちまった。違う。情じゃない。あそこで見捨てるよりは、見捨てない方がこれからが楽だったって計算をしただけだ。トワはどう考えてもあのチームの要だ。精神的支柱であり、まとめ役。どうしようもねえ我の強い奴らをとりまとめられる稀有な人材。

つまり、あそこでトワを助けるのは良手だった。これからも俺がオレでいるために。あの四人は上手い隠れ蓑になってくれる。仲良しこよしの、単なる一人の学院生として俺をそう規定してくれる。

 

だからあれは間違っちゃいなかった。

いなかったんだ。

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