[完結]わすれじの 1203年   作:高鹿

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09/27 第六回特殊課外活動3

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1203/09/27(日) 夜

 

あの後、オレたちが魔獣を倒して休憩していたところへ真っ先に飛び込んできたのは灰色の制服、つまり鉄道憲兵隊だった。そして夜も更け始めようって時間から事情聴取という名の拘束をされそうになったところで、領邦軍を連れて来たトワが交渉を開始したわけだ。

一体どういう話術を駆使したのか。内容その他は不明だがオレたちが不利にはならない条件を鉄道憲兵隊に飲ませることが出来たようで取り敢えず今、鉄道憲兵隊所属の特急列車でトリスタへ戻っている最中になる。

 

「TMPの列車にはさすがに寝台がついてるんだねぇ」

 

いわゆる仮眠室に相当するだろうそれなりの広さの部屋に五人ぶっ込まれ、セリだけはそれに寝転がってトリスタへの到着を待っている。事情聴取を個別に取られはしたが、まあ今回の活動は別に帝国解放戦線が絡んでるでもなし、嘘をつくような意味合いはなかったから簡単なもんだ。

 

「しっかし到着まで起きるなっていうのは過保護だと思う」

「オレがどれだけ肝を冷やしたのか思い知れよお前」

「別に死ぬ怪我じゃなかったよ。現に回復魔法で塞がる程度のものだったし」

「仮に傷が浅くても血ィ垂れ流しながら走り回ってんじゃねーって話をしてんだ。お前が無茶したら止めるって約束させられてんだぞこっちは」

 

そうだったね、と笑うセリに手を伸ばし眉間をぐりぐりと指で押す。ぐぐう、と苦悶の声で抗議されて思わず笑っちまう。

 

────あん時は、本当に、誇張なしで心臓が止まるかとすら思った。目の前で死なれるなんて勘弁だっつーの。……だから、お前の傍にいる為の複数の道の内から一つを俺は選んだんだ。"相棒"って名前で関係を縛り付けることを。この感情の封印に名前を付けることを。

愚かだっていつか罵ってくれや。

 

「まあまあ、みんな無事でよかったよ」

「それは二人もそうだろう。領邦軍と鉄道憲兵隊との板挟み、想像に絶する」

「はは、博士の無茶振りに晒されるよりはマシだったかな」

 

ゼリカの言う通り、対外的な交渉は全部トワとジョルジュが行ってくれたようで、オレたちがあれからやったのなんて事情聴取に答えるくらいだ。あとはゼリカ自身の立場とかもフル活用だったみたいだが。

 

「でももう、こういうのも終わりなんだね」

 

ぽつりとセリがそう呟いた。寂しそうなそれが波及してか、全員黙りこくっちまう。課外活動が終わりってだけで別に会えなくなるわけじゃねえだろうに、ったく、仕方ねえな。

手を軽く叩いて全員の注目を集める。おうおう、どいつもこいつもセンチメンタルな顔しやがって。まー、こんな提案しようとしてるオレもその一人なんだろうけどよ。

 

「終わりが寂しいってんなら提案なんだがよ、学院祭で出し物やらねえか?」

「えっ、今から申請するの!?」

 

一番スケジュールを把握してんだろうトワが驚いた声を出すもんで、いいや違う、と否定する。

 

「講堂を全員でジャックすんだよ。ロックなライブでな」

 

申請なんてまだるっこしくて全員に出し物の概要が見えちまうような状態はサプライズに相応しいとは言えねえ。こういうのはいきなりやってド派手に決めるのが王道ってもんだ。

 

「ライブ? ああ、確かノーザンブリアやジュライなどの北の方でそういう形態の音楽発表舞台が存在するとは聞いたことはあるが」

「話が早えな、ゼリカ。そう、今はまだ北の方にしか殆どねえそれを持ってきてよ、学院祭をオレたちの手で盛り上げて終わろうぜ」

 

どうせならこんな泥くせえ思い出を上書きして終わりにするってのもありだろ。

ああ、本当になんでこんな提案してんだか。クラスの出し物に学院祭の他の企画だってある。忙しいにも程はあるが、まあ思いついちまったもんは仕方がねえ。パーツが揃ってそうなら提案するべきなんだよこういうのは。

 

「そう自信満々に言うってことは、音楽の目処や奏者の目処はついてるの?」

「おうよ。音楽イチから作ってる暇はねえからカバーだとして、まずお前鍵盤弾けんだろ?」

「まあ、一応。それなりには。ピアノとキーボードじゃちょっと勝手は違うけど」

「そんでオレがベース。ゼリカだってRFと仲良いんだからなんか弾けんじゃねーか?」

「ん、導力楽器のギターを手慰みに弾いたことは」

「最高だな。ジョルジュは」

「あー……ドラムを工科大学の先輩にやらされたことがちょっとだけ」

 

ギター、ベース、キーボード、ドラム。やっぱりなこんだけ揃ってりゃもう運命みたいなもんだろ。そんでボーカルにトワを据えたら目立つこと間違いなしだ。……まあ、ンなこと言ったらセリも表に立たせる方がいいし前の話を聞くからに頼み込めば了承してくれそうではあるが、これは俺の感情の問題がないとは言わねえ。

 

「なるほど、では私の愛しいトワがボーカルということか」

「ふえっ!?」

「まあそうなんだろ」

 

トントントントンと進んでいく会話の中で傍観者のように話を聞いていたトワが素っ頓狂な声を出しやがった。言っただろ、全員でジャックするって。それにはもちろんお前だって含まれてるっつーの。

 

「え、そ、それ私は後ろで演出とかじゃ駄目かなあ!? 確かに楽器は出来ないけど!」

「駄目だろ」

「ええー……」

 

まるで想像しちゃいなかったようで頭を抱えるトワの頭を撫でくりまわして、諦めろってと声をかけていたら、寝台から笑い声がする。

 

「……トワが渋るのはわかるけど、私は、みんなでステージに立てたら嬉しいな」

 

ベッドに寝転がったセリが肩を下に寝返りを打ってそう言った。

 

「無論、私もさ」

「僕も楽しそうだと思ったよ。クロウの無茶振りに乗るのもね」

 

次々に案外と賛成意見が集まり、自然、トワに視線が集まる。目を瞑って、眉間に皺を寄せて、腕を組んで、どうしたもんだかという顔をして、ついに諦めたのか「そうだね」とため息とともに肩が落ちた。

 

「楽しそうっていうのは私も同意するし……でも、ううん、ジャックかあ……」

「まあその辺の整合性は後で取ろうぜ。取り敢えず学院祭まで一ヶ月もねえから練習気合入れんぞお前ら」

 

ニヤリと笑って焚き付けてやれば、乗り気な三人が笑って拳を突き出してきた。

さあて地獄の月間の始まりだ。馬鹿騒ぎするなら踊らなきゃ損ってな。

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