呪いの人形は恋を知らない   作:酎はい人形

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・・・半分実話です


8 昔の俺と呪いの人形

何時からだろう・・・

ただ無機質に無意味に生きるようになったのは・・・

無意味に上司に怒られ、晒され、殴られ・・・

こんな事をする為に俺は・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

〜8年前〜

 

 

 

「・・・・・・」

 

高校を卒業して、すぐ就職した

就職先は飲食店の正社員

人と接するのは好きだったし、バイトで接客もしてたから・・・

元々ホールを希望してたけど、厨房に配属されたのは予想外だった・・・

まあそれでも、何とかなるとか軽く考えてた・・・

 

 

 

 

今日も終電か・・・

たった1人で厨房で仕込みをする俺

予約の分の仕込み+‪αをやらないと・・・

・・・・・・・・・

とてもじゃないけど終わる気がしない・・・

その上司は先帰るし・・・

ただ「やっとけ」と言われ、無機質に手を動かす

・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

電車のホームに佇む・・・

別に、常に死にたいとか思ったことは無い

でも不意に、ここで飛び込めば明日から仕事に行かなくても良いって・・・

そう何となく考えてしまう・・・

・・・・・・・・・

色々限界なんだろうな・・・

人の少ない電車に乗り込み、目的の駅までボーッとする・・・

・・・あぁ、何度これを繰り返さなければならないのだろうか

 

 

 

 

 

電車を降り、家路を歩く・・・

・・・・・・・・・

何の為に、ここまで頑張らなければならないのだろうか・・・

何の為に、自分を偽り続けているのだろうか・・・

・・・・・・・・・

俺は・・・・・・・・・必要とされているのだろうか・・・・・・

俺は・・・・・・・・・

 

「・・・」

 

視界の端に何か居る・・・

何だ?

近寄ってよく見る

 

「・・・日本人形か」

 

電柱の傍らに置いてある・・・いや、捨てられているのだろう・・・

箱ごと捨ててあるとは・・・

・・・・・・

お前も・・・同じなんだな・・・

・・・・・・

 

 

 

 

 

 

何故そうしたのかは分からない・・・

ただ、そうしたかったのは事実

だから、この日本人形を拾ったのだろう・・・

部屋に置き、埃をタオルで拭き取った

・・・・・・

もの悲しげだな・・・

それもそうか・・・

持ち主に棄てられたのだから

 

「・・・・・・」

 

俺、何やってんだかな・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上司「本当お前使えねぇな!」

 

「・・・すみません」

 

上司「もういい!お前はサラダの仕込みでもしてろ!」

 

「・・・はい」

 

・・・「ッチ」という舌打ちが背後から聞こえる

他の人は見て見ぬふり

助けてくれる人なんて誰も居ない

助けてくれる人なんて誰も居ない

誰も居ない

誰も居ない

誰も居ない

誰も居ない

誰も居ない

誰も居ない

誰も居ない

誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も誰も

 

 

 

 

もう・・・・・・終わらせたい・・・

こんな生活を終わらせたい・・・

視界が狭くなる・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗な部屋の中、俺はネクタイを天井に固定する

・・・・・・

ただ死にたいとか、そういうことじゃない

ここで首を括れば、明日から仕事に行かなくて良い

・・・そうか

そうすれば良いのか

そうすればやっと聞こえなくなるのか

そうすればやっと見えなくなるのか

そうすればやっと考えないで済むのか

そうすればやっと苦しまないで済むのか

固定したネクタイに首を通す・・・

 

「使えねぇなお前は」「なんでこんなことも出来ないんだよ」「自分で考えろよ」「昔いたやつの方がよっぽど使えたな」「何しに来たんだよ」「残業なんて出ると思うな」「お前が終わらせられなかったんだ」「自業自得だろ」「みんな迷惑してるんだよ!」「お前のせいなんだよ!!」

 

俺のせいなんだ

俺のせいなんだ

俺のせいなんだ

俺のせいなんだ

 

 

 

全部・・・・・・・・・俺のせいです・・・・・・・・・ごめんなさい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「ふざけんじゃないよ!!!」

 

・・・・・・・・・・・・え?

 

?「何があんたのせいよ!!なんにも悪くないじゃない!!」

 

・・・・・・・・・・・・誰?

 

?「もしかしたら、これからアンタは幸せになるのかもしれないのよ!?」

 

・・・・・・・・・・・・幸せに?

 

?「そんなふざけた連中のせいで死ぬなんて馬鹿みたいじゃない!!」

 

・・・・・・・・・・・・だって・・・俺・・・

 

?「今死んじゃったら!これから来るかもしれない幸せはどうすんのよ!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・俺・・・

 

?「せっかくアンタは命があるのよ!!」

 

・・・・・・・・・・・・

 

?「あたしと違って!アンタには命があるのよ!!!」

 

・・・・・・・・・・・・

 

?「死にたいくらい辛いなら!辞めちゃってもいいじゃない!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・あぁ・・・

 

?「アンタはもう、十分頑張ったじゃんか!」

 

・・・・・・・・・・・・・・頑張ったよ・・・

 

?「自分の心の声を聞いてみて・・・」

 

・・・・・・・・・・・・・・・心の声?

 

?「アンタ自身は何を望んでるの?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・望み?

 

・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・に・・・・・・い・・・

 

・・・・・・に・・・・ない・・・

 

・・・・・・にた・・ない・・・

 

・・・・・・にたくない・・・

 

・・・・死にたくない・・・

 

・・・・死にたくない・・・

 

・・・・まだ生きていたい・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「・・・ちゃんと聞こえた?」

 

蹴ろうとしていた椅子に座り込み、項垂れた

何時からだろう・・・こんなにも涙を流したのは

何時からだろう・・・人との温もりを感じなくなったのは

俺は・・・ただ生きる事から逃げていた・・・

・・・・・・・・・・・・

大粒の涙が頬を伝う・・・

人形に説得されるとは思わなかったが・・・

驚きより恐れより何よりも・・・ただ口が動いた

 

「・・・ありがとう・・・・・・・・・」

 

精一杯の言葉だった・・・

顔を手で覆い、ただ流れる涙を見せないように・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

助けたかった

目の前に居るこの人を

今、まさに死のうとしていたこの人を

アタシを救ってくれたこの人を

放っておいたら死んでしまう

動くしかない

タブーを犯してでもこの人を救いたい

アタシは人形

動けばまた捨てられてしまう

それでも・・・アタシは・・・

この人を救いたい

救ってあげたい

助けてあげたい

生きて欲しい

自分を愛して欲しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どの位経ったのだろうか

茫然自失としながら、それでも彼女の前に向き合いながら、口を開く

 

「・・・あのさ・・・・・・」

 

人形に語りかける

・・・・・・・・・

だが反応はしない

おかしいな

絶対喋ってた

そりゃ精神的に参ってたのは事実

でも勘違いなわけない

・・・・・・・・・・・・

ようやく思考回路が追いついてきた

 

「・・・今更普通の人形のフリするのやめてくれ」

 

・・・反応無し

 

「・・・じゃあ勝手に喋ってくぞ」

 

・・・反応無し

 

「・・・俺、仕事辞めようと思う」

 

・・・反応無し

 

「・・・そんで、もう一度だけ自分なりに頑張ってみようって思うんだ」

 

・・・カタンッ

・・・反応有り

 

「・・・まあ、どうなるかわかんないけど、とりあえず友達の紹介のとこでやってみようって思う」

 

?「・・・良いんじゃない?」

 

うぉ・・・急に喋るんかーい

心臓に悪いなんてもんじゃねーよ

いやまぁ分かってたけどさぁ・・・

 

「・・・なんで、助けてくれたんだ」

 

?「・・・」

 

実はすげぇ聞きたかった

多分俺止めてもらわなかったら確実に吊ってた・・・

色々諦めてたからな・・・

 

「・・・先に言っとくとだな」

 

?「・・・」

 

「・・・すっげぇ感謝してる・・・本当に」

 

?「・・・アタシは、アタシの思ったことを言っただけ。それでアンタが思い留まったから、感謝なんて要らないわよ」

 

「・・・それでもーーー」

 

?「アタシはキッカケと選択を渡しただけ」

 

・・・

この人・・・もとい人形は・・・

・・・でもさ・・・それでもさて

 

「なら、俺がお前に感謝するのも自由だよな」

 

?「・・・ふん、勝手にしなさい」

 

というか、今更なんだが・・・

 

「・・・お前、曰く付き的なアレなのか?」

 

?「え、今更何言ってんのよ」

 

「いやほら・・・一応確認」

 

?「・・・まぁ、所謂そういう事よ」

 

・・・

イメージ全然違う

もっとこう・・・おどろおどろしい感じのアレみたいな

 

「・・・色々聞きたいんだが・・・どういう類なの?」

 

?「率直に言うと呪う系よ」

 

ストレート過ぎる

呪う系とか洒落にならねぇ!

・・・うーんでも

 

「・・・俺も呪うのか?」

 

?「アンタを呪う理由が無い」

 

「・・・そっか」

 

俺からしてみたら、彼女は恩人だ

俺を呪うことになったとしても、恨む事はない

当然捨てるつもりもない

捨てようとした命を、拾ってくれた彼女を・・・

 

「・・・そういえば、お前名前あるのか?」

 

?「・・・別に特に無いわよ」

 

名前ないのか・・・

それ色々不便だな・・・

・・・うーーーん

 

?「・・・好きに呼べば?」

 

「・・・そうか?ならーーーーー」

 

 

 

 

「・・・市子・・・なんでどうだ?」

 

 

 

 

 

 

 

この人形・・・もとい市子との会話はそれ位だった

次に日になり、俺は店長に離職届けを出した

店長とは別にそこまで関係性が悪かった訳じゃない

厨房の、所謂料理長との関係が最悪だった

店長の計らいで俺は厨房から外れ、残りの1ヶ月はホールで働く事になった

今までとは違う新鮮さに、かなり捗ったのをよく覚えている

・・・初めからホールで働いていたら・・・色々違ったかもしれないな

・・・未練なんて特にないけどな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィオラ「・・・・・・」

 

「・・・まぁ、こんな所だな」

 

悲しそうな顔してんなぁヴィオラぱいせん・・・

 

「まあ後は別にそんな大した話は無いな〜」

 

市子「そうね、最終日に店長に挨拶して、そのまま帰って引越しの準備して」

 

「そうだったなぁ、そっから友達の紹介で今の所で働いてるって感じだからなぁ」

 

・・・激動の人生な気がするわぁ

店長ともそれっきりだし、料理長となんて死んでも会いたくないし

あの後どうなったかなんて知ったこっちゃないしな

 

「ホント、人生ってどう転ぶか分かんねぇな」

 

ヴィオラ「・・・ショウさんは、今幸せですか?」

 

「ん?そりゃーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昔に比べたら・・・とんでもねぇ位幸せだよ」

 

彼はニコッと笑う

・・・・・・そっか・・・・・・・・・

アタシは・・・彼にその笑顔でいて欲しい・・・

あの時・・・アンタに拾われなかったらって思うと・・・本当に怖い・・・

道行く人は皆、見て見ぬ振りだった・・・

そんな中・・・足を止めてくれた・・・

アンタはアタシに・・・感謝してくれてるかもしれないけど・・・

実際は逆よ・・・

感謝してもしきれない・・・

・・・アンタの近くに居ると・・・暖かいのよ

何で暖かいのかは分からない・・・

人形の身体で、暖かいなんて意味不明よね・・・

でも・・・暖かいのよ・・・

 

「・・・さーて、明日も仕事や!風呂入って寝るから俺!」

 

ヴィオラ「・・・あ、そうですね、おやすみなさい」

 

市子「・・・おやすみ」

 

カチッと電気を消す

・・・・・・

ヴィオラは・・・どう思ったのだろうか

アタシの行動を・・・

 

ヴィオラ「・・・市子さん」

 

不意に声を掛けられた

 

市子「・・・何?」

 

ヴィオラ「ありがとうございます」

 

礼を言うヴィオラ

 

市子「どうしてアンタが礼を言うのよ」

 

ヴィオラ「市子さんがショウを止めていなければ・・・私はショウさんに会うことは無かったからです・・・」

 

市子「・・・そうね」

 

ヴィオラ「私・・・ショウさんが好きです」

 

予想外な事を言われ、驚く

 

市子「・・・え!?」

 

ヴィオラ「私たちを大切にしてくれるし、怖がることも無いし・・・」

 

・・・なるほどね

 

市子「・・・そうね、アタシも、アイツと話してると・・・暖かくなるしーー」

 

ヴィオラ「え?」

 

市子「え?」

 

ヴィオラの疑問に疑問で返す市子

 

市子「・・・アタシ、変な事言った?」

 

ヴィオラ「・・・いえ、まぁ・・・大丈夫です・・・」

 

市子「・・・何よ、煮え切らないわね」

 

ヴィオラ「兎角、私はショウも市子も好きです!」

 

アタシも入ってるのね

 

市子「そ!」

 

ヴィオラ「ちょっと!私の本心何ですよ!?」

 

市子「はいはい」

 

ヴィオラ「もーー!」

 

頬を膨らますヴィオラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの子が死んで・・・何年経った・・・

何時までも・・・俺は引き摺り続けるだろう

たった1人の妹だったんだ・・・

ある霊能力者に相談した

妹に会わせて欲しいと

却下された

引き摺り続けると、亡くなった魂が昇れなくなるからと

それでも・・・俺は妹に会いたい

会いたいんだ・・・

だから俺は・・・紛らわす為に・・・人形を作り続けた

妹が好きだった人形を

不意に携帯が鳴る

 

?「・・・はい、もしもしーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

櫻井「・・・櫻井人形店です」




今は部下を持ってる身、昔の上司は良い反面教師です
・・・同じことを考えてる方、1度落ち着いて考えてみましょう
死ぬ程辛いなら、戻ってみるのも人生です
1度全てをブン投げて頭を空にするのも手ですよ
仕事の為に人生を捨ててはいけません
相談するのも手です
思い悩んで仕事を辞めるのは逃げではありません、選択です
1人でも多くの方が良い職場、良い方々に巡り会うことを願っています
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