呪いの人形は恋を知らない   作:酎はい人形

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家族は大切にね!


9 兄妹と呪いの人形

 

 

普段と変わらない日常に俺は居た

親父の家業を継ぎ、人形屋で人形をつくっていた

日本人形、洋人形、球体関節人形・・・

本当に色々作ってきた

本当は継ぐ気なんて無かった

 

「真夜お兄ちゃんのつくったお人形、可愛いから好き!」

 

そう言ってくれる妹が居た

妹が好いてくれるからつくってる

ただそれだけの理由で継いだ

シスコンなのは自覚している

でもそれでも妹の事が第一だった

妹とは歳も離れており、今は小学校に入学したばかり

何時も俺が人形をつくっていると、後ろで見ている

 

真夜「零子、危ないから作業台の物触っちゃ駄目だよ」

 

零子「はーい!」

 

親父とは仲があんまり良くはない

母親は俺が小学校卒業してすぐに亡くなった

だから高校卒業して、すぐに家を出てやろうと思ってた

でも、そうしたら妹は・・・

色々思い悩んで結局人形屋に留まった

自分のなりたいものなんて特にないし、人形造りなんて興味もなかった

・・・ただ・・・妹が心配だった

お袋が死んでからは、妹は俺とよく遊んでいた

別に苦でもなかった

親父は昔から家族に関心が無い

どんな時だって親父は俺達の事なんて見向きもしなかった

お袋が死んだ時も、親父はいつもの通りだった

少し経ったらまた人形をつくっていやがった

すすり泣いている妹を宥めながら、俺はそんな父親の背中を睨んだ

だから俺はこの子だけは・・・俺が守らなきゃいけない

この子の笑顔を守らなければいけない・・・

この子が笑顔でいてくれるならそれでいい

この子だけは、幸せでいて欲しい

この子だけは・・・・・・

 

 

そんな思いとは裏腹に『それ 』が起こった

 

父親「零子が・・・車に・・・撥ねられちまった・・・」

 

何言ってんだ・・・

そんなわけねぇだろ・・・

今日だっていつもと変わらない・・・

なんで・・・

 

 

 

 

どのくらい経ったんだろか・・・

気付けば俺と親父は霊安室にいた

白い布をかけられた零子が居た

冷たくなっている零子が

医者からは・・・即死だったと聞かされた・・・

いや・・・もうなんて言うか・・・

生きる意味なんて何も無くなっちまったな・・・

俺・・・なんの為に・・・生きれば・・・

 

 

 

 

これからどう生きればいいんだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからずっと、俺の時計は止まったままだった

親父との会話は益々無くなり、ただの同居人と暮らしてる感覚だ

不意に後ろを向く

そうすれば零子がまた見ているんじゃないかって・・・

バカみたいなこと考えてる俺・・・

 

 

父親「・・・おい、流司」

 

不意に声をかけられる

珍しい事もあるな・・・

 

流司「・・・」

 

顔も向けずに作業を進める

 

父親「・・・すまねぇな」

 

手を止める流司

・・・何言ってんだ?

 

流司「・・・何の話だよ」

 

父親「お前にばっか苦労させちまった・・・すまねぇな」

 

流司「・・・だから、何の話だよ!」

 

声を荒げる

言葉の通りなのだ・・・

何に対しての言葉なんだよ・・・

 

父親「零子にも・・・流司にも・・・父親らしい事なんて何一つやれてねぇ・・・」

 

流司「・・・・・・」

 

父親「・・・何もしてやれねぇまま佳奈子が死んで・・・零子も死んで・・・」

 

お袋と、妹・・・

 

父親「・・・お前は・・・先に逝かないでくれ・・・」

 

顔を見ると、親父は泣いていた

・・・何泣いてんだよ

・・・大の大人がみっともねぇ

・・・何なんだよ

 

父親「・・・悪いな・・・・・・そんだけだ・・・」

 

・・・・・・

・・・急に話しかけてきたと思ったら・・・・・・

・・・何なんだよぉ!!

・・・・・・何で・・・俺は

 

流司「・・・何で泣いてんだ・・・俺」

 

親父とも思わなかったあの人を、何故だかな・・・

初めて・・・親っぽい所を見た気がする・・・

先に逝かないでくれって・・・それは・・・

 

流司「・・・俺も同じなんだよ・・・バカ親父」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからというもの、俺は一心不乱にとある人形をつくった

どうしてつくろうとしたか・・・きっと寂しさを紛らわす為だ

だから俺は・・・『 造るんだ』・・・

造るんだ・・・亡くならないものを・・・

そして俺は・・・この子に・・・もう名前をつけた

零になってしまった俺達家族を・・・また一から始めるんだ・・・

・・・だから・・・お前の名前は・・・

 

流司「・・・イチコ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




愛とは難しいものですな

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