俺があの女性―――名前はフェイト・T・ハラオウンさんの養子になって2週間がたった。
フェイトさんの家に行ってみると、まあびっくり。お母さんが二人というとんでもない状況なのだ。
俺のもう一人のお母さんの名前は『高町 なのは』さん。
何でも二人は子供のころからの親友らしい。
それで二人の養子というのは、金髪にオットアイという容姿の持ち主である『高町 ヴィヴィオ』。
立場的には俺の義理の妹になるわけだ。
会ったその日に大事な話があると言われて『ヴィヴィオは聖王のなんたらかんたら~』と説明を受けたが、記憶を失っている俺にとっては『だから何?』という感じだったのでその考えを正直に話したところかなり感激された。
ちなみにいうと俺の名前はなのはさんの名字の『高町』とぼろぼろの俺の服に書いてあった名前と思しき『翔』という字を合わせて『高町 翔』になった。
話は変わり今日は、学校の入学式の日だ。
今俺は、ヴィヴィオと二人で学校に向かっている。
「お兄ちゃん、早く行かないと遅刻するよ」
ヴィヴィオが少し前で止まってこちらに向かって話してきた。
「いや、まだ大丈夫だと思うんだけど」
俺はぼやきつつも、少し足を速めてヴィヴィオに追い付く。
しばらく歩くと、目的地である学校に到着する。
「ここがSt.ヒルデ魔法学院だよ」
「なかなか大きいな。確か初等科と中等科では棟が違うんだったよな?」
「うん、そうだよ。それと今日はストライクアーツの練習の日だから、忘れないで校門のところにいてね」
ヴィヴィオはそう言って、クラス分けの表があるところに走っていく。
「あ、そうだったな。忘れてた……」
俺も自分のクラス分けを見て、校舎に入っていく。
ちなみにいうと、俺は今、柄にもなく緊張している。
理由はもちろん、この場所にいるためだ。
知識では知っているこの『学校』という物も、実際に来てみてたくさんの同年代の子供に囲まれると、かなりの息苦しさがある。
これならの事についての不安、もちろん期待も入り混じって複雑な心境だ。
自分の教室、机を見つけ座っていると、筋肉質な男性が入ってくる。
ふむ、あれが『先生』かな?
「静かにしろ! HRを始めるぞ!」
その言葉と共にHRが始まる。
HRは滞りなく進み、時間が余ったので、残りは自己紹介の時間になった。
その中でも、銀髪ツインテールの子の、
「アインハルト・ストラトスです。魔法は古代ベルカ式です。よろしく」
この子が特に印象に残った。
理由は、と聞かれれば、少し答えづらい。
確かにメチャクチャ可愛かったというのもあるだろうけど。
なんというか……言葉にはできないけど、第6感的なものが働いて、危険を感じ取った感じである。
と言っても、危険を感じ取ったからといっても、何かおこるわけではなく、HRはそのまま終了した。
校舎を出て、言われた通り校門の所で少し待っていたら、ヴィヴィオが駆け寄ってきた。
「お兄ちゃーん」
「おう、ヴィヴィオ。すぐに行くのか?」
「うん。早く行こう!」
「お、おい。引っ張るなって!」
俺はヴィヴィオに袖を引っ張られつつ練習場に向かった。
さて、練習場に到着した。
ちなみにいうとこの練習場は、格闘技だけでなく魔法も使用可の練習場だ。
練習場着くと、3人―――2人はヴィヴィオと同じくらいの女の子で1人はなのはサンたちと同じくらいの女性―――が待っていた。
「ごめ〜ん、待ってた?」
ヴィヴィオはその3人に謝りながら近づいていく。
「いーや、そんなに待ってないさ。話してた兄貴ってそいつか?」
短い赤髪の一番年長であろう女性は、俺を一瞥してヴィヴィオに尋ねる。
「はい。ヴィヴィオの義理の兄の高町 翔です。よろしくお願いします」
「あたしは、ノーヴェ・ナカジマだ。まあ一様、こいつらのコーチの真似事をやってる。よろしくな」
「私はヴィヴィオの親友コロナ・ティミルです。よろしくお願いします、お兄さん」
「私はリオ・ウェズリーです。よろしくお願いします」
「うん。みんなよろしくね」
順番に挨拶してくれるコロナちゃん、リオちゃんに笑顔でそう返す。
「んじゃあ練習始めっぞ。3人とも準備しろ」
「「「はい!」」」
ノーヴェさんのその声に3人の少女は元気よく答えた。
とはいえ、俺は別にストライクアーツの練習をしに来たわけではないので少し暇である。
なので俺は今、たった一つの記憶を取り戻す手がかりである、俺の所持していたデバイスを眺めている。
あれから少し時間が経った今考えてみると、大きいデバイスである。
なのはさんやフェイトさんのデバイスと比べてみても、かなり大きい。
もっとも、壊れているらしく、通信どころか起動すらしない。
修理しようにも、構造がなぜかとてつもなく複雑で、修理ができないというのだ。
こんなデバイスを持っているなんて、記憶を失う前の俺がどういう人物だったんだろう。
盗んだなんてことは、なしにしてほしい。
「ずいぶん暇そうだな」
ノーヴェさんに声をかけられたので、俺はデバイスをしまってそちらを向く。
「ええ、まあ。正直やることがないんで」
「だったらお前も、練習に参加すればいいだろ」
「俺が格闘技を? いやーでもあんまり興味ないですし……」
俺はノーヴェさんの提案を笑いながら否定する。
「おまえなぁ……やってもないのにそんなこと言うなよ……これは速めに言ったほうがいいから言っておくけど、アタシは、おまえのお母さんたちから、記憶喪失だってことは聞いてんだ。記憶を取り戻すためにも、いろいろなことをやってみるのは悪いことじゃないと思うぜ」
言っていることは正しいだろうけど、別に格闘技じゃなくてもいい気がする。
俺はもっと平和的なものの方がいいんだけどな。
「だからとりあえずやってみろ。おーい、ヴィヴィオ!」
「あ、ちょ……!」
俺が考えている間に、ノーヴェさんはヴィヴィを呼んで。いきなりスパーリングをしろなんて言ってる。
いやいや、さすがに無茶だろう。
遠くから見ていたけど、目で追うのがやっとなくらいのスピードの打ち合いだったし。
そもそも俺は了承していない。
百歩譲って了承したとしても、普通始めから
恥をかくだけのような気がする。
「ほら、行って来い!」
肩を強くたたかれ、前のめりになりつつも、俺はヴィヴィオの前まで行く。
「じゃあ、行くよ、お兄ちゃん!」
ヴィヴィオはそう言って構える。
「は~、分かったよ」
俺も見よう見まねでその構えを真似する。
「よーし、それじゃあ……始め!」
ノーヴェさんの声が聞こえたと思った瞬間には、ヴィヴィオの体は目の前にあった。
「ッ!!」
迫りくるヴィヴィオの拳。
それを俺は―――――
―――――冷静に受け流していた。
ヴィヴィオは驚いているようだが、俺はもっと驚いている。
なんでこんなに冷静に対処できるんだ?
ヴィヴィオの攻撃は全て鋭い一撃だが、そのすべてを最小限の動きで回避できる、できてしまう。
格闘技の動きを体が覚えている?
だから対処できるのか?
なぜかは分からないけど体は動く。
そして気づいた時にはみぞおちにカウンターを決めていた。
「あ、ご、ごめん。大丈夫かヴィヴィオ!?」
慌てて駆け寄って、尻餅をついているヴィヴィオの前にしゃがみ込む。
「うん。大丈夫。でも、すごいねお兄ちゃん! 初めてなのに!」
無意識のうちに手加減していたのか、それともヴィヴィオの防御がうまいのか、大したダメージはないらしくすぐにそう言って立ち上がる。
初めてか……
本当にそうなのか?
俺はいったい何者なんだ?