「久しぶりだな、学校来るの」
実に1週間ぶりとなる登校に、思わずそんな声が漏れる。
あの後は色々なことがあった。
まず、俺がガジェットを破壊してすぐにノーヴェさんが来て、敵だと思われて攻撃されそうになった。
その誤解はすぐに解けたけど。
そのあとは一時的に管理局の施設で保護してもらい、家に帰ったのは夜9時過ぎだった。
翌朝になり、学校から1週間の臨時休校の連絡がきた。
ガジェットは同時多発的に現れたらしい。
幸い学校は無事だったそうだが、さまざまな施設が破壊されたため、管理局はてんてこ舞い。
それでも、たった4日で混乱が収まったのは、流石といえるんだろう。
そのため、休校中はなのはさんたちは家に帰ってこず、代わりにノーヴェさんとその姉妹であるチンクさんが、かわりばんこに家に来た。
そして今日、入学式ぶりに学校に来たというわけだ。
そんなことよりも大きい問題がある。それは友達がいないという事だ。
初等科からそのまま上がってきた人たちならともかく、実質、学校生活2日目の俺に、友達なる存在がいないのは仕方がないことなのだが、この状況はかなりきつい。
誰とも話してないやつに話しかけてみるか。
そう思って周りを見回してみるが、みんなそれぞれに会話を弾ませていて、話しかけることのできる感じじゃない。
しかし、一人だけ、誰とも話さず、席に座って窓の外を眺めている。
アインハルトさんだ。
……いや、無理だろ。
話しかけるなオーラをバンバン放ってるし。
俺はため息をついてうなだれた。
結局そのあと、ほかの生徒に話しかけてもらい、どうにかおしゃべりできるようになった。
いくらほとんど混乱が収まっているとはいえ、まだまだ通常状態には程遠い。
なので学校も半日で終わる。
ヴィヴィオはコロナちゃんの家に遊びに言ったし、なのはさんたちはお仕事の為、俺は一人で街を適当に散策していた。
それにしても暇だ。
やることがなさすぎる。
各地で爆破事件が多発している~なんてニュースが、ビルの側面に備え付けられているテレビから聞こえてくる。
「あれ?」
人ごみの中にノーヴェさんが見えた。
「ノーヴェさ〜ん!」
「ん? ああ、翔か。どうした? こんなところで?」
「いや、暇で暇で適当に歩いてたんです。ノーヴェさんは?」
「ま、アタシもそんな感じだ。うちの家族がアタシ以外全員仕事でな」
「そうなんですか。じゃあ、どこか一緒に行きます?」
「まあいいけど……」
というわけで、俺とノーヴェさんは、ゲーセンに行ったり、喫茶店でお茶したりした。
特に目的がなったのは同じだったけど、2人でいるとそれだけで時間が過ぎるのが早く感じる。
気が付くと、もうあたりは暗くなっていた。
「それじゃあ、そろそろ帰りますか」
「そうだな」
俺たちは手を振って別れようとした。
その時だ。
「ストライクアーツ有段者、ノーヴェ・ナカジマさんとお見受けします。貴方にいくつか伺いたい事と、確かめさせて頂きたい事が」
声の方を見ると、街灯の上にバイザーをつけた女性が立っていた。
俺は急いでカバンからからデバイスを取り出す。
ノーヴェさんも警戒して腰を落としている。
「質問すんなら、バイザー外して名を名乗れ」
「失礼しました」
女性はバイザーを外して答えた。
「カイザーアーツ正統、ハイディ・E・S・イングヴェルト、『覇王』を名乗らせて頂いています」
え? アインハルト?
バイザーを外した顔は、アインハルトをそのまま成長させたようなものだった。
「噂の通り魔か」
「否定はしません」
「ノーヴェさん、通り魔って?」
「通り魔って言っても、人殺しじゃない。近頃この辺で路上試合を申し込んでるやつだ」
「伺いたいのはあなたの知己である『王』達についてです。聖王オリヴィエのクローンと、冥府の炎王イクスヴェリア、貴方はその両方の所在を知っていると」
聖王のクローン。
一瞬何のことかわからなかったが、ヴィヴィオの事だと理解する。
怒りが、こみ上げてくる。
「ちょっとまてよ。黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって。ヴィヴィオは聖王のクローンなんかじゃない。イクスヴェリアって奴だってそうだ。俺とノーヴェはそんなやつは知らない。知ってるは、一生懸命に生きている普通の女の子だ」
「あなたには関係ありません、第一、貴方は誰ですか?」
結構グサッと来るな。
一応クラスメートなのに。
しゃべったこともないし当たり前か?
暗いから顔が見えないんだろう。
たぶん、きっと。
「俺は高町 翔だ。アインハルト・ストラトス……」
「あなたは同じクラスの……!」
「おい、おまえ、あいつと知り合いか?」
「はい、一応クラスメイトです」
一応、な。
今は俺の妹に手を出す敵だ。
「それで、あなたはどうしたいんですか?」
どうしたいか、だと。
決まってんだろそんなこと。
「ノーヴェさんと戦うつもりだったんだろ? その前に俺がお前を倒す」
「あなたに用はありません」
「なんだ? ビビったのか? ストリートファイターの覇王さんよ」
「……分かりました。そこまで言うなら、ウォーミングアップ代わりに相手してあげましょう」
俺の発言に怒ったのか、目を細めて怒気を含ませた口調で返してくる。
「上等だ。ウォーミングアップで終わりにしてやるぜ」
デバイスを腰に巻きつけ、カードを取り出す。
「おい待て翔!」
ノーヴェさんが慌てたように止めてくる。
「……すいません。でも、ここは引けないんです。変身!」
《KAMEN RIDE―――DECADE》
俺とアインハルトは互いに構える。
と、思った時にはアインハルトが目の前に来ていた。
ヴィヴィオの時も同じようなことがあったが、今はデバイスを起動している状態だ。
それでも反応するのがやっとだ。
しかも体術が、ヴィヴィオのものよりもやたらうまい。
受け流すことはできるが、ヴィヴィオの時のようにカウンターを入れる余裕がない。
一撃一撃が重く、独特のステップで離れてもすぐに距離を詰められる。
これではカードを使うこともできない。
このまま体術で相手をしていては負ける。
そう判断した俺は、回転しながらライドブッカーをガンモードにして至近距離で連射する。
魔導師が使うような球体ではなく、細い円柱状の魔力弾が大量にアインハルトにヒットする。
相手の得意分野で戦ってやるつもりはない。
卑怯だと言われようが、相手の苦手分野に引き込むのは闘いの基本だろう。
俺の場合、カードをうまく使えばどんな敵に対してもその戦法をとることができる。
距離を取ったアインハルトに休むことなく弾丸を発射する。
ところが、驚くことにアインハルトはそれらをつかんで投げ返してきた。
「マジか!」
格闘がうまいうえに、射撃が効かないのか。
「じゃあこれを使ってみるか」
《KAMEN RIDE―――AGITO》
俺の姿が、アギトグランドフォームに変化する。
基本スペックならディケイドよりもこちらのほうが高い。
だったら格闘で押し切ることも可能なはず。
再び格闘戦になったが、予想通り、こちらが押している。
正拳突きを食らわせると、苦悶の表情をして下がる。
「そろそろ終わりだな」
《FINAL ATTACK RIDE―――A、A、A、AGITO》
クロスホーンが開き、足元に金色のアギトの紋章が出現する。
「はぁ!」
「覇王、断空拳!」
アインハルトのパンチと俺のキックが激突する。
周囲に衝撃波がひろがる。
立っているのは俺だけだ。
アインハルトは気絶して倒れている。
「彼女は大丈夫なのか!」
「はい多分。非殺傷設定だったんで。それよりも……やりすぎましたね」
「そうだな……とりあえず家に運ぶぞ」
「はい」
そう言うと、俺達はアインハルトを担ぎ、ノーヴェさんの家に向かった。