アインハルトSIDE
目が覚めた。
しかし、ここは自分の部屋ではないようだ。自分が寝ているベットは自分の家にあるものではないし、部屋も見たことがない。
「ここは……」
「よう、やっと起きたか」
あたりを見回そうとしたとき、横から声が聞こる。振り向くとノーヴェ・ナカジマが私と同じように横になっていた。
「………あの、ここは?」
だんだんと記憶がよみがえってくる。確か私は、ノーヴェ・ナカジマに決闘を挑んだ。でも彼女とは闘わず、一緒にいた―――
「そうだ、高町さんはどこに?」
「ああ、あいつは……」
ノーヴェ・ナカジマは体を横にして口を開く。しかし、言葉が口から出る前にドアがノックされたので、いったんそちらを向き、ドアの向こうにいるであろう人物に声を出す。
「入っていいぞ」
部屋の中に入ってきたのは、青い髪の女性とオレンジ色の髪の女性だった。
「おはよう、ノーヴェ。それから自称覇王イングヴァルト、本名はアインハルト・ストラトスさん。St.ヒルデ魔法能力学院、中等科一年生だよね」
自分の素性を知っている。高町さんがしゃべったんだろうか?
「ごめんね、翔君に無理やり聞いたの」
「色々あると思うんだけど、朝ごはんでもたべながら、お話聞かせてくれたらうれしいな」
その後、自己紹介された。ここは、ごはんを持ってきたノーヴェさんの姉貴のスバルさんの家。ノックして入ってきた青い髪の女性はスバル・ナカジマさん。オレンジ色の髪の女性はスバル・ナカジマさんの親友で本局執務官のティアナ・ランスターさんだそうです。
「古きベルカのどの王よりも覇王のこの身が強くあること、私はそれを証明できればいいだけで…
…」
「聖王家や冥王家に恨みがあるわけではない?」
「はい」
「そう……よかった。翔君が凄く気にしてたから……」
「あの……高町さんは?」
私は、今一番気になっていることを、恐る恐る尋ねる。
「あいつは学校に行かせたぜ。お前が起きるまでずっとここにいるって言ってたんだけどな」
つまり、今はここにいないと理解して、少し安堵する。面と向かって顔を合わせるには少し心の準備がいるから。
「それで……私を倒したの、本当に高町さんなんですよね?」
そして次に気になっていること、高町さんのあの強さ。
全身装甲の見たこともないデバイス。しかも姿が変わると能力値も変化した。それだけでなく、本人の格闘の技術も相当高いことが私にはわかった。
どうしてあそこまでの強さを私と同じ年の彼が身につけることが出来たのか。
「うん。そうだよ」
スバルさんが答えてきた。
私はうつむきながら問いかける。
「なぜ高町さんは、あそこまでの強さを身につけることが出来たのでしょうか……何かご存じではないでしょうか?」
少したっても返答がないので顔を上げてみると、3人とも苦い顔で、お互いの顔を見合っています。
何か、高町さんにはつらい過去があったのでしょうか。だったら余計、あの強さの訳を知りたい。私の悲願に近づくために、彼のことをもっと知りたい。
「あー……そいつは、翔に直接聞いてくれないか? あたしたちが勝手に話しちゃ悪いからな」
ノーヴェさんの言葉で、高町さんの過去に何かあったことを確信します。
「分かりました」
「ああ、それとさ、お前に会わせたい奴がいるんだけど、今日時間あるか? あ、ついでに翔も連れて来てくれ」
「時間はありますけど、会わせたい人……ですか?」
「ああ。おまえ学校行ったら翔と話すんだろ? その時翔にも伝えておいてくれ。その前にしっかり仲直りしてな」
「はい……分かりました」
その後、すぐに私は高町さんと戦ったことについての手続きをしに向かった。
翔SIDE
くそ、何やってんだ俺は。
ノーヴェさんに言われて学校に来たものの、これじゃいてもいなくても変わらない。授業中もずっとアインハルトのことが頭から離れず、先生の話も聞けなかった。
友達も俺のただならぬ様子を感じ取ったのか、ほとんど話しかけてこない。
とりあえず、アインハルトに会ったらすぐに謝るしかないな。
「はぁ……」
今日何度目かもわからなくなったため息を漏らす。その時、後ろから肩をたたかれ、さらに声をかけられた。
後ろを振り返るとそこには、
「アインハルトさん……いつの間に?」
「さっきの授業中です。気づきませんでしたか?」
「全然気づかなかった」
それどけ俺が上の空だったのだろう。普通なら、授業中の教室に入ってくれば、いやでも注目されるはずなのに。
「それと……少しお話したいことが」
「俺もだ」
願ってもない。いきなり謝罪のチャンスが来たのだ。
互いに話したいことがあり、かつみんなに聞かれたくはないことだったので、俺たちは教室を出て人が少ない所に向かう。
「「すみませんでした!!」」
そして俺たちは互いに謝りあう……って、え? なんでアインハルトが謝るんだ?
「なんでアインハルトが謝るんだ?」
「高町さんこそ」
「俺は……あの時は、女の子に対してやりすぎだと思ったから。ごめん」
「いえ、それは私が悪いんです。あの時は考えもなしにあんなことを言ってしまって……すみませんでした」
俺とアインハルトさんは頭を下げ合う。
「それで、1つ聞きたいことがあるんですけど……」
アインハルトさんは、モジモジしながら上目遣いになって聞いてくる。
「高町さんは一体どんな訓練をして、あそこまでの強さを手に入れたのですか?」
「え? 突然どうした?」
俺がそういうと、アインハルトさんは自分の事について話してくれた。路上試合を申し込んでいた訳、強さを求める訳。
正直、その気持ちは分からない。いや分かることが出来ないと、言ったほうがいい。
「ごめん、アインハルト、分かんないんだ。俺がどうしてこんな力を持っているのか」
「分からない、ですか?」
今度は俺が自分の話をする。
「すみません、軽々しくこんなことを聞いてしまって……」
「いや、いいよ。まあ、そのうち記憶は戻るかもしれないから、もし戻ったら話すよ」
自分の記憶。
それは一体どんなものなのか。
俺を懐に入っているデバイスの事を思い浮かべる。自分を様々な姿に変え、無限とも思える手札をもってして敵を破壊するマゼンダ色の破壊者。
記憶を失う前、俺はこれを使って何をしていたのか。
それは本当に人に話すことが出来る内容なんだろうか。
「そういうわけだから、これから仲良くしていこうじゃないか。俺の事は翔でいいぞ」
「はい、わかりました、翔さん。私の事もアインハルトでいいですよ。あ、それと、放課後、私たちに合わせたい人がいるってノーヴェさんが」
「会わせたい人?」
無事仲直り出来た俺達。さてさて、放課後にはどんなことが待っているのやら。
そして放課後、俺たちは一緒にノーヴェさんに指定された場所に向かっている。
そこにいたのは、ノーヴェさん、チンクさん、2人と一緒に騒いでいる数人の女性と、
「あれ? ヴィヴィオ?」
そこには、俺の妹の姿があった。