なんでヴィヴィオがここにいるんだ? もしかしてアインハルトに合わせたい人っていうのはヴィヴィオの事なんだろうか?
「お、2人とも来たな」
俺が呆然として立ち止まっていると、ノーヴェさんが俺たちに気付いたようだ。俺たちに速く来いとゼスチャーをしてくる。
俺たちはそれに従い、ノーヴェさんたちの近くの席に座る。
「んじゃあ紹介するぜ。こっちの金髪の方がアインハルトに会わせたかった奴だ」
ノーヴェさんはヴィヴィオを指し示す。なるほど、なんとなく意図するところは分かったぞ。
さっきアインハルトから聞いた話では、アインハルトも方向性は少し違うものの、格闘技をやっている。ヴィヴィオも同じくストライクアーツ(つまり格闘技)をやってる。
だからこの2人を引き合わせて、互いに刺激し合ってほしいと考えているんだろう。
でも……なぁ……その考えは少し危険な気がするな。アインハルトの闘う理由が『ほかの王よりも覇王が強いことを証明する』だからなぁ。
昨日の発言を考えると、ヴィヴィオが聖王の関係者だってことは知ってるみたいだし。このまま普通に喧嘩を吹っかけてもおかしくないぞ。
そんな俺の考えを知ってか知らずか、ヴィヴィオは元気よく自己紹介する。
「はじめまして! ミッド式のストライクアーツをしています、高町ヴィヴィオです!」
「ベルカ古流武術、アインハルト・ストラトスです」
アインハルトは比較的冷静に答え、握手を交わしている。
俺の心配は杞憂だったのか? まあ、そうだといいけど。
「まあ、2人とも格闘技者同士なんだ。ごちゃごちゃ話すよりも手合わせしたほうが早いだろ」
そうなんだろうか? そんな拳で語り合うぜスタイルが、女の子の間で通じるものなのだろうか。
俺にはわからない世界なのかな。
「場所は抑えてあるから、早速行こうぜ」
俺たちはノーヴェさんに連れられてスポーツコートに向かった。
「で、なんでこんなことしたんですか、ノーヴェさん」
俺たちは今、ヴィヴィオとアインハルトの着替えを待っている。コロナとリオは2人で話しているので好都合だと思い、ノーヴェサンに事の真相を問いただそうとする。
「こんなこと?」
「なんでわざわざ、ヴィヴィオとアインハルトを戦わせるようなまねしたんですか? どうなるかは大体予想がつくでしょうに」
大きくため息を吐きながら、言葉足りなかった部分をつけ足す。
「簡単だよ。あいつに変わってほしいんだ」
あいつというのは、アインハルトの事だろう。確かに、今のような理由ではなく、純粋に競技者として技を極めて行けば、アインハルトはとんでもない選手になるかもしれない。
でも、モチベーションを他人から言われて変えるのは難しいのではないだろうか。
事にアインハルトは、その理由がご先祖様絡みときたもんだ。
「難しいのは重々承知さ。それでも、あいつには、知ってもらいたいんだよ。純粋に格闘技を競い合う楽しさを」
「そうですか……」
ここまで言うなら、なるようになれだ。あとは、その場の流れに任せるしかない。
しばらくして2人が出てくる。
ヴィヴィオは楽しそうな顔をしているが、アインハルトは浮かない顔をしている。
ノーヴェさんが2人に近づいていく。どうやらノーヴェさんが審判をするみたいだ。
開始の声と共に、ヴィヴィオは距離を詰める。
アインハルトは多少驚いたようだったが、すぐに無表情になり、繰り出される拳をさばいていく。
ヴィヴィオには悪いが、俺は始まる前からアインハルトが勝つと思っていた。
2人と戦ったことがある俺ならわかる。ヴィヴィオとアインハルトとでは、格闘技に絞るならば技量に差がありすぎる。
その予想通り、すぐにヴィヴィオは掌底を入れられ、後方に飛ばされる。それを見たノーヴェさんの姉妹は、慌てて受け止めに行く。
受け止められてすぐに顔を上げたヴィヴィオは、とても楽しそうだが、アインハルトは後ろを向いてしまう。
それを見たヴィヴィオは慌てて駆け寄る。
「お手合わせ、ありがとうございました」
「あ、あの……私、弱すぎました?」
「いえ、趣味と遊びの範囲でなら充分すぎるほどに」
「すいません! 今のスパーが不真面目に感じたなら謝ります! 今度は真剣にやります! だからもう1度……明日でも、来週でも……!」
ヴィヴィオは必死にアインハルトに訴える。
それを見たノーヴェさんは、来週、また試合をするという案を出す。
アインハルトは機械的にそれを承諾し、更衣室に歩いて行った。
「はぁ……」
帰り道、当たり前だがヴィヴィオは落ち込んでいる。
アインハルトは1人で帰ってしまい、スバルさんとティアナさんはそれぞれの自宅に向かい、ノーヴェさんの姉妹の皆さんとも、すでに分かれている。
つまり今ここにいるメンバーは、俺、ヴィヴィオ、リオちゃん、コロナちゃんだ。ノーヴェさんは俺たちの保護者として家まで送ってくれるらしい。
リオちゃん、コロナちゃんが、何とか話題を提供して、場を盛り上げようとしていくれているが、ヴィヴィオは何も答えない。
近くにあった建物から大量の化け物が現れた。
「なんだ、こいつら?」
たしか、こいつらの名前はインベス。鎧武の世界にいる怪物だったな。
ノーヴェさんはそいつらを見て眉を寄せているが、俺は別の意味で眉を寄せていた。
なぜかこいつらに関する知識がすらすらと出て来たからだ。まるでこのデバイスを初めて使った時の様だ。
始めは意味が分からないといった様子でインベスを眺めていたノーヴェさんだったが、建物から出て来た人たちを襲い始めたのを見た瞬間に、デバイスを取り出した。
「ジェットエッジ!」
「変身!」
《KAMEN RIDE―――DECADE》
俺たちはそれぞれバリアジャケットを纏う。
「って、何やってんだ、翔!」
「人が襲われてるのに、黙ってみてられるわけないでしょ!」
「いや、だからな……あーもう、分かったよ! 無茶すんなよ! お前たちは下がってろよ!」
「はい!」
俺の中の知識によると、この形態のインベスの戦闘力は大したことはない。格闘でいなして、ライドブッカーソードモードで1体1体確実に仕留めていく。
せっかくだ、これを使ってみよう。
《KAMEN RIDE―――GAIMU》
《オレンジアームズ、花道・オン・ステージ》
真上にオレンジ状のものが出現、それが頭にかぶさり展開して鎧になる。さらに両手には無双セイバーと大橙丸が握られている。
仮面ライダー鎧武に変身したのである。
「ここからは俺のステージだ!」
決め台詞を叫んでインベスに切りかかる。
無双セイバーと大橙丸の二刀流と、無双セイバーについている銃の機能を使って次々と敵を切り倒していく。
《FINAL ATTACK RIDE―――GA GA GA GAIMU》
《ソイヤ! オレンジスカッシュ!》
「オラァ!」
大橙一刀を発動し、回転切りをする。剣の通った後には、輪切りにされたオレンジの断面が現れる。
「次はこいつだ!」
《FORM RIDE―――GAIMU PINE》
《パインアームズ、粉砕、デストロイ》
今度はパイナップルが落下してくる。仮面ライダー鎧武・パインアームズに変身した俺は、専用アームズウェポンである、パインアイアンを振り回す。
見た目はパイナップルをそのまま振り回しているようだが、威力は高く、その攻撃範囲も相まって多数のンべ巣を同時に葬る。
「最後はこれだ」
《FORM RIDE―――GAIMU ICHIGO》
《イチゴアームズ、シュシュッとスパーク》
イチゴアームズになった俺は、さらにもう1枚カードを装填する。
《FINAL ATTACK RIDE―――GA GA GA GAIMU》
《イチ、ジュウ、ヒャク、イチゴチャージ!》
無双セイバーを振るうと、巨大なイチゴクナイが発射される。それは空中で弾け、大量のイチゴクナイを模したスフィアが、俺の周りに雨あられと降り注ぐ。
それにより、俺の周りにいたインベスは全滅する。
「よし、終わり」
ノーヴェさんの方ももう終わってるだろう。
そう軽く考えていると、突然背中に何かがぶつかり、倒れてしまう。
ノーヴェさんだ。
「の、ノーヴェさん。大丈夫ですか!?」
「あ、ああ。気をつけろ。あいつ強いぞ……」
示されるままそちらを見ると、今相手にしていたインベスとは別次元の存在がいた。
ソイツは――――――――――――
――――――――――――――オーバーロードインベス『デェムシュ』。
視界にとらえたと同時に無双セイバーを振るっていた。
ファイナルアタックライドの効果が続いているため、クナイバーストがデェムシュに襲いかかる。
しかしそれらは、デェムシュが張ったバリアによってすべて軌道が変更され、掠りもしない。
この程度じゃダメみたいだな。
ノーヴェさんはその隙に立ちあがって、俺たちはデェムシュをはさむように対峙する。
俺はとっておきのカードを取り出す。今の鎧武では、最高の力を誇るカードだ。
《FORM RIDE―――GAIMU ZINBA-LEMON》
《ミックス! オレンジアームズ、花道・オンステージ ジンバーレモン ハハー!》
今自分が装備しているイチゴアームズが消滅し、新たにオレンジとレモンが現れる。それらは空中で融合。もはやフルーツの原形をとどめていない黒い物体となって、俺の新たな装甲となる。
これが仮面ライダー鎧武のジンバーレモンアームズだ。これは通常の鎧武の形態とは比べ物にならない戦闘力を持っている。
専用武器のソニックアローは遠距離、近距離どちらにも対応できるうえに防御力もさっきの比ではない。
さあ、第2ラウンドの始まりだ。