走るその先に、見える世界   作:ひさっち

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episode.3
1.仲良くなりたい


 

 

 

 北野麻真がトレセン学園に戻ってきて、早一週間が経った。

 麻真がトレセン学園に戻ってきた翌日に行われたシンボリルドルフとのレースをキッカケに、北野麻真というトレーナーの名前は瞬く間に中等部にも知れ渡っていた。

 そしてそれと同じくして、中等部・高等部共にトレセン学園の全校生徒達に北野麻真はメジロマックイーンの専属トレーナーであるという事実も知れ渡っていた。

 北野麻真というトレーナーを獲得したメジロマックイーンは、彼をトレーナーとしたその“代価”をこの一週間で嫌と言うほど痛感することとなっていた。

 

 

 

「……疲れましたわ」

 

 

 

 食堂の席に座ると早々に、メジロマックイーンは心底疲れた表情で肩を落としていた。

 麻真がトレセン学園に来て一週間経っても、多くの生徒が所構わずにメジロマックイーンのところへ訪れるようになったいた。

 朝の登校時、各授業の間の休み時間、放課後とメジロマックイーンの時間が空いているタイミングに合わせて、彼女のところには学年やクラス問わずに生徒達が集まってくるようになっていた。

 中等部の生徒からは麻真がどのような人間なのかや彼とどんな練習をしているかなど訊かれ、また自分も麻真に教えて欲しいと懇願されることが多くなった。

 高等部の生徒からは、相変わらず自分に麻真を譲って欲しいと言われる日々が続いていた。

 そんな生徒達に対し、下手な対応をして揉め事にならないようにメジロマックイーンが細心の注意をして対応し続けていた。

 最初の数日はメジロマックイーンも我慢できた。しかしそれが一週間も続くとなると、流石の彼女もいい加減にして欲しいと心底嫌気が差していた。

 本来ならこの昼食の時間にも、他の生徒がメジロマックイーンの元に集まる。穏やかな昼食の時間などそこにはなく、落ち着いて食事をして休む時間もない。

 しかしここ数日前からこの時間になると、彼女の元に他の生徒が集まることがなかった。

 それは肩を落としていたメジロマックイーンの元に来た一人の男性のお陰――もとい彼の所為であった。

 

 

「まだ練習してない癖に、疲れた顔してるな。お前」

 

 

 トレーを両手に二つ持った麻真が小バ鹿にしたような顔で、疲れた表情のメジロマックイーンに話し掛けていた。

 そう話しながら自分の向かいの席に座る麻真に、メジロマックイーンは半開きの目で批判するように彼をじっと見つめていた。

 

 

「……一体、誰のせいだと思ってますの?」

「なにを言ってるのやら……大体予想はできるが、それは気にするだけ疲れるだけだぞ。特に“そういうこと”はな」

 

 

 呆れた表情で答える麻真に、メジロマックイーンは深い溜息を吐いていた。

 

 

「気にするなと言われても、こうして私は現に実害を被っていますのよ?」

「正直なところ、ここまで騒ぎになるのは俺も予想外だったが……それは俺をトレーナーにした代価ってやつなんだろうさ。マックイーン、そこはお前が上手くやってくれ」

 

 

 そう言って、持って来ていた二つのトレーの内のひとつを麻真がメジロマックイーンに差し出す。

 身勝手な麻真の話に不貞腐れながらも、メジロマックイーンは渋々麻真からトレーを受け取っていた。

 

 

「え……?」

 

 

 そして受け取ったトレーの食事を見て、メジロマックイーンは言葉を失った。

 麻真から受け取ったトレーの上には、巨大なハンバーグににんじんが丸ごと突き刺さった存在感のある“にんじんハンバーグ”と大盛りの白米に味噌汁が乗せられていた。

 麻真から受け取ったトレーに乗せられたその“豪勢な食事”を見るなり、メジロマックイーンは顔を思わず強張らせた。

 昼食にしてはあまりに重量のある献立に、メジロマックイーンは目の前のトレーの上にそびえ立つ“にんじんハンバーグ”と麻真の顔を数回交互に見ていた。

 

 

「……これを食べろと仰いますの?」

「ウマ娘なら、これくらい食べるだろ?」

 

 

 何を言っているのか分からないと言いたげに、麻真は自分の目の前にあるメジロマックイーンと同じ献立の乗ったトレーに視線を向けていた。

 確かにメジロマックイーンも他のウマ娘と同様に“そこそこ”食べる量は多い方である。運動することが多いウマ娘である以上、それはウマ娘なら誰もが通る道である。

 しかしウマ娘だからと言っても、メジロマックイーンはカロリー摂取量のコントロールはしているつもりである。ウマ娘とは言えど“女性”である以上、食べる量に比例してその分だけ身体に反映される“代価”がある。それは女性ならば、決して甘んじて受け入れてはいけない“代価”なのだ。

 昼食ならば、メジロマックイーンはいつもなら軽めの食事を選ぶか、もしくは普通の定食を選ぶ。何をとち狂って昼食に高カロリーである“にんじんハンバーグ定食”などを選ぶかと。

 しかし料理人に作ってもらい、麻真が持ってきてしまった以上は料理を残すという選択を選ぶことはメジロマックイーンにはできなかった。それは料理をした人に対して、最上位の無礼であることを彼女が理解していたからだった。

 

 

「はぁ、なぜ昼にこんなモノを……」

 

 

 故に、メジロマックイーンに食べないという選択はなかった。彼女が箸を持ってから「いただきます」と呟くと、目の前のにんじんハンバーグに渋々ながら箸を入れていた。

 メジロマックイーンが昼食を食べ始めたのを見て、麻真も彼女と同じように自分の食事を食べ始めていた。

 

 

「なに一丁前にカロリー気にしてるんだか……食える時に食っとけ。それに放課後に嫌ってほどトレーニングするならこれくらい食べとかないと持たないぞ」

「そのトレーニングを私にさせている貴方にそう言われると、何故かとても腹が立ちますわ」

「良いから食っとけ。よく動いて、よく食べて、よく休む。これができないと強いウマ娘になれないからな?」

「私をあまり子供扱いしないでもらえませんか?」

 

 

 食事を進めながら、二人がテンポ良く会話をする。

 そして昼食を食べ進めながらメジロマックイーンが麻真を見つめていると、彼女は数日前から疑問に思っていたことを訊いていた。

 

 

「麻真さん、よろしいかしら?」

「……なんだ?」

「あまりにいつも自然にいるから訊けませんでしたが……なぜ貴方は私と“生徒しか来ない時間の食堂”で一緒に昼食を食べてますの?」

 

 

 それはここ数日間、メジロマックイーンが思っていたことだった。

 トレセン学園の食堂兼カフェテリアは、基本生徒達が多く利用する施設である。特に生徒のみしか利用できない訳ではないが、先生やトレーナー達が食事時に食堂を利用している場面をメジロマックイーンは見たことがない。

 メジロマックイーンが噂程度で聞いた話では、先生やトレーナー達は生徒達が利用する時間を避けて利用していると聞いたことがあった。おそらく、立場のある人間が同じ空間にいることで生徒達の食事を邪魔するなどが懸念されるからだろう。

 しかし麻真はなに食わぬ顔で数日前からメジロマックイーンと昼食を共にしていた。メジロマックイーンも麻真と一緒に食事をするのが嫌とかではないが、他のトレーナーと違う行動をする麻真に対して怪訝な顔をしていた。

 

 

「なんでって……そんなのお前と飯食うからに決まってるだろ?」

 

 

 それが当然と言いたげに、麻真は即答していた。

 あまりに自然に言われたことにメジロマックイーンの反応が遅れる。そして理解していくにつれて、彼女は照れ臭そうに頬を僅かに紅くしていた。

 

 

「そうハッキリと仰いますと、照れてしまいますわ」

 

 

 恥ずかしそうにするメジロマックイーンを見て、麻真は苦笑していた。

 

 

「お子ちゃまがなにマセたこと言ってるんだか」

「……ではなぜ私と食事を一緒にするか、理由を是非ともお教え頂きたいですわ」

 

 

 麻真に子供と言われたことに、メジロマックイーンが口を尖らせる。

 拗ねているメジロマックイーンを見ながら、麻真は食事を進めながら答えていた。

 

 

「俺はマックイーンのことをよく知らないからな。同じくお前も、俺のことをよく知らない」

 

 

 そう麻真が話した内容に、メジロマックイーンは僅かに目を吊り上げていた。

 

 

「別に麻真さんのことをよく知らない訳では――」

「なら俺の好きな食べ物が何か言えるか?」

 

 

 メジロマックイーンが話している途中で、麻真が彼女の言葉に被せるように口を開いた。

 麻真の質問にメジロマックイーンが思わず言い淀む。彼女のその反応を見て、麻真は肩を竦めていた。

 

 

「お前が答えられなくても、俺は答えられる。俺はお前の好きな食べ物が甘いものってことは分かるぞ。でも逆に、お前の嫌いな食べ物は知らないけどな」

 

 

 そして麻真が味噌汁を啜って、一拍置いてから話を続けていた。

 

 

「マックイーン。お前は俺の担当ウマ娘、そして俺はお前のトレーナーだ」

「そんな当たり前のことを何故わざわざ仰ってますの?」

「前にも話したと思うが、担当ウマ娘とトレーナーは一蓮托生だ。それこそ互いの信頼がないと成り立たない関係だと俺は思ってる」

 

 

 それは先日に麻真がメジロマックイーンに話していたことだった。

 トレーナーとウマ娘、二人の信頼がなければ練習もレースも結果が出ない。それが麻真の持論である。

 その話は、メジロマックイーンも覚えていた。しかしその話と麻真が自分と一緒に昼食を取るのが繋がるとは彼女には思えなかった。

 

 

「それは前に聞きましたが……それが私と麻真さんが一緒に食事することとなにが関係ありまして?」

「あるに決まってるだろ?」

 

 

 即答する麻真だった。

 麻真が食事の手を止めると、メジロマックイーンに眉を寄せていた。彼は少し目を細めると、彼女をじっと見つめていた。

 

 

「マックイーン。ウマ娘とトレーナーの信頼ってどこから生まれると思う?」

 

 

 その質問に、メジロマックイーンが少し考える。そして思いついたことを彼女はそのまま口にしていた。

 

 

「ウマ娘とトレーナーの関係でしたら……そうですね。トレーナーという育てる方の手腕とそれに応えるウマ娘の成長と結果、その積み重ねではないでしょうか?」

 

 

 ウマ娘が信頼するトレーナーというのは、おそらく自分を強く育て、そして結果を出せる人間である。またトレーナーが信頼するウマ娘は自分の指示に応じ、そしてその成果を出すウマ娘だろう。

 メジロマックイーンのその答えに、麻真は嫌気が差す顔をしていた。

 

 

「上っ面の模範解答。俺からすれば三十点」

 

 

 失笑する麻真だった。しかしメジロマックイーンからすれば、それ以上の答えはないと思っていた。それ以外に望ましい答えなどあるはずがないと。

 メジロマックイーンが不機嫌そうに目を鋭くする。麻真はそんな彼女に溜息を吐いていた。

 

 

「お前が言ってるそれは最前提だ。そんな関係は学校の先生と生徒だ。それ以上の関係がない」

「……大体そうなのではなくて?」

 

 

 教える者と教わる者。それ以上の関係などメジロマックイーンからすればあるはずがないと思っていた。

 メジロマックイーンの思っている関係は、結局は言ってしまえばトレーナーとウマ娘の関係は利害の一致なのである。

 トレーナーは“自分の評価”の為にウマ娘を育てる。そしてウマ娘は自分が“良い成績を残す”為にトレーナーに従う。

 互いに優秀な相方を探し、そして結果を出して評価される。つまるところ、行き着く先は“それ”しかない。

 その前提の上で、互いに信頼をする。それが大体のトレーナーとウマ娘の関係ではないのかと。

 

 

「そうだろうな。だが俺からすれば、そんな関係なんて薄っぺらくて見てられない」

 

 

 しかし麻真はメジロマックイーンが話した“その関係”を否定していた。

 

 

「お前が、ウマ娘が大舞台であるトゥインクル・シリーズに出るのは何故だ?」

「メジロ家の悲願……天皇賞制覇ですわ」

 

 

 その答えに、麻真は満足そうに頷いた。

 

 

「そう、お前に“夢”があるからだ。その夢を文字通り本気で応援してやるのがトレーナーの俺だ。自分の評価なんて関係ない、俺が思うトレーナーの本質は、相方になった人にどれだけ尽くせるかだ」

「どれだけ尽くせるか、ですか?」

「そうだ。その過程があってこそ、関係を深くして互いに信用して初めて信頼ってのが生まれると俺は思ってる。自分の育てるウマ娘に絶対の自信を持って、俺の全てをお前に捧げる。それにお前は努力し、応える。そして結果が生まれる……それが信頼になっていくんだ」

「……先程、私が話したこととあまり変わりないと思いますが?」

 

 

 端的に言えば、麻真が話していることはメジロマックイーンが出した答えと変わりがない。

 結局は、トレーナーの手腕とウマ娘の結果になる。なにが違うのか?

 麻真は話の本質を理解のできていないメジロマックイーンに肩を落としていた。

 

 

「……分からないなら良い。どの道、いつか嫌でも分かるようになるさ。とにかく、俺はお前を知る為に俺の時間をお前に使うって話だ」

「だから私と食事を?」

「そういうことだ。簡単にいうと……互いを知りましょうだ」

 

 

 麻真の長い話だったが、メジロマックイーンが思うに彼の話を簡単にするならきっと一言で終わると思った。

 

 仲良くなりたい、これだと。

 

 わざわざ色々な理由を麻真が話していたが、結局のところ彼は自分と仲良くなりたいのだとメジロマックイーンは思うことにした。

 

 

「だから俺はお前を知るために、お前と一緒に過ごす時間をできる限り増やす。練習だって一緒にやるし、時間があれば一緒に飯も食う。なんだったら一緒に遊びにだって行ってやる。お前のトレーナーであるからには、俺が“俺の時間”をお前に使うのは当たり前だろ?」

 

 

 それはただの過保護なのではないか?

 メジロマックイーンは、率直にそう思った。

 無関心よりは全然良いが、しかし過剰な干渉もいかがなものかとも思う。

 別にメジロマックイーンは麻真のことを嫌ってはいない。むしろ好感を持っている方だろう。

 そしてメジロマックイーンからしても、麻真を知る機会が増えるなら麻真の行動を拒否する理由は特別なかった。

 それと麻真が一緒にいれば、メジロマックイーンには大きな利点もひとつあったのだから。

 

 

「麻真さんがそこまで仰るなら、分かりました。お好きにしてくださいな」

「それなら良い。勝手にさせてもらうさ」

「……貴方が一緒に居れば、他の人も私のところに来ませんので好都合ですわ」

 

 

 メジロマックイーンはそう言って溜息を吐くと、食事を再開していた。

 いつもなら昼食時もメジロマックイーンのところには多くの生徒が集まるが、麻真が彼女と一緒にいる時だけは生徒全員が少し離れて距離を置いてくれるのだ。

 物珍しそうに麻真を見つめる中等部の生徒と、時折彼に気さくに話しかける高等部の生徒しか現れない。これはメジロマックイーンからすれば、天の恵みと勘違いするほどに歓喜することだった。

 安らぐ場が自室しかない。生徒達が自分に群がる辛い数日を過ごしていた中で、麻真といる時だけは静かな時を過ごせる。それはメジロマックイーンにとっては死活問題とも言えることとなっていた。

 と言っても、その原因を作っている当人がその原因を解決するという意味の分からない構図については……メジロマックイーンは考えないようにしていた。考えれば考えるほど麻真への苛立ちが増すことになるので、彼女はそのことを考えるのを“やめる”ことにしていた。

 

 

「なんだ……本当にしんどそうだな。面倒だから聞いてなかったが、一日“何人”くらい来るんだよ?」

 

 

 そして麻真はメジロマックイーンの考えなど知らずに、彼女の“それ”に触れてしまった。

 

 

「“何人”……ですって?」

 

 

 その瞬間、メジロマックイーンの箸が止まる。いつの間にか、彼女の手は小刻みに震えていた。

 それは悲しみや恐怖などではない。紛れもなく、それは麻真に対する怒りの震えだった。

 

 

「まさかとは思いますが“一桁”で済ませるおつもりですか? 朝昼夜、途切れなく来る人達が全員揃って麻真さんのことを飽きもせずに聞いてくる人達を……“一桁”しか来ないと?」

 

 

 そう言ったメジロマックイーンの目つきが変わっていた。

 メジロマックイーンの目が据わっている。その目を見た途端、麻真は流石に顔を固くしていた。

 麻真の予想よりもメジロマックイーンに群がる生徒の数が多いことに、流石に麻真も少し彼女が可哀想と思ってしまった。

 

 

「……すまん。俺から生徒会にちょっと言っとくわ」

「生徒会に言って変わると思いませんが?」

 

 

 いくら生徒会といえど、そこまでの強制力を持っているとは思えない。

 

 

「いや、色々あってな。生徒会に言えば高等部の生徒の方は大体は収まると思う」

 

 

 麻真が少し言いづらそうにしながら、答えていた。

 メジロマックイーンは首を傾けると、麻真に訊き返していた。

 

 

「どういうことです?」

 

 

 その質問に、麻真が少し言葉に詰まったように言い淀んだ。

 少し考える仕草をして、どう答えるか悩んでいる様子だった。

 麻真の返事を待つメジロマックイーンだったが、彼よりも先に口を開いていた生徒がいた。

 

 

「麻真さんの件で生徒会が命じると、高等部の生徒達は言うことを聞くんだ」

 

 

 その声がした方にメジロマックイーンが向くと、そこには特大に盛られた定食を持った葦毛のウマ娘が立っていた。

 芦毛の長い髪を揺らして、凛とした綺麗な顔立ちのウマ娘。それはメジロマックイーンも知るほどの有名なウマ娘だった。

 

 

「オグリキャップさん……⁉︎」

「オグリ? 久々だな、急にどうした?」

 

 

 オグリキャップと呼ばれたウマ娘が麻真にそう言われると、少し誇らしそうに胸を張っていた。

 

 

「麻真さんの担当ウマ娘が困った顔をしていたからな。つい定食をもらう時に話が聞こえてしまい……来てしまった。すまないな、メジロマックイーン」

「いえ、私はそんな……構いませんわ」

「なら良かった。それと隣、良いだろうか?」

「構いませんわ」

 

 

 オグリキャップがメジロマックイーンの承諾を得ると、彼女が安堵した顔を見せてから麻真の隣に座っていた。

 そして特大に盛られた定食を「いただきます」と呟くと、信じられない速度で食べ進めていた。

 

 

「それでオグリキャップさん。さっきの話はどういうことですの?」

 

 

 食べ進めているオグリキャップに、メジロマックイーンが我慢できずに質問する。

 オグリキャップはその質問を聞くと、食べ進めていた手を止めて答えていた。

 

 

「あぁ、昔に揉め事があってな。それで高等部の生徒は麻真さんのことで生徒会が命じると従うんだ」

「おい、オグリ。あまりその話は……」

 

 

 オグリキャップの話を麻真が遮ろうとする。しかしメジロマックイーンは、それを気にもせずに質問を続けていた。

 

 

「なにがあったのですか?」

 

 

 その質問に、オグリキャップが少し間を置く。

 そしてオグリキャップは、その質問に答えた。

 

 

「あぁ、詳しくは省くが……過去に麻真さんを貶した生徒を生徒会が鬼のように折檻したという話がある」

「はっ……? 折檻?」

「そうだ。その件であの“皇帝”シンボリルドルフが高等部から更に恐れられる存在になった訳でもあるが」

 

 

 オグリキャップの話を聞いて、メジロマックイーンが思わず麻真の方を向く。

 メジロマックイーンが見た麻真はオグリキャップの話を聞くなり、少しだけ表情に僅かに影を落としていた。




読了、お疲れ様です。
更新までの間にお気に入り、評価を頂けて感謝の限りです。
本当にありがとうございます!

episode3ですね。
今回は穏やかに進めていきます。
麻真とメジロマックイーンの昼食、学園の揉め事、そんな話です。
次からもメジロマックイーン、出していきますよっ!

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