走るその先に、見える世界   作:ひさっち

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12. 課題は残った

 気付くとレースが終わり、芝生に倒れていた。それが二人の認識だった。

 トウカイテイオーとメジロマックイーンの二人は、残り百メートルの地点からゴールへ向けて限界を絞り出すラストスパートを仕掛けた瞬間までの記憶はあったが、その先の記憶がはっきりとしていなかった。

 いつの間にかラストスパートした後、自分はゴールしていた。その程度の認識しか二人はできてなかった。

 

 

 

「はぁ……! はぁ……っ‼︎」

 

 

 

 全力で身体が酸素を求めているらしい。仰向けに倒れていたトウカイテイオーは芝生の感触を全身で感じ、そして深く呼吸をしながら、身体の力を抜いていた。

 身体全体。主に足から、未だかつてない程の疲労感をトウカイテイオーは感じていた。最早、指の先すら動かしたくないと彼女は身動きひとつせず、芝生の上で倒れていた。

 

 

 

「はぁっ……! はぁぁっ……‼︎」

 

 

 

 深呼吸を繰り返して、メジロマックイーンも仰向けに倒れていた。

 全身から感じる疲労感。残していた体力も使い果たした。いや、使い果たして、そして更に残り滓も残らず絞り出した後のような感覚すらあった。

 そんな無茶を通した代償なのだろう。もう呼吸以外の動作などできるわけがない。メジロマックイーンはそう思いながら、呼吸に使う口だけを動かして必死に酸素を身体に取り入れていた。

 

 

 

「お疲れ。二人とも」

 

 

 

 そんな二人に、スポーツ飲料を手に二本持った麻真が歩み寄った。彼に声を掛けられて、思わず二人が上半身を起き上がらせようと試みるが、その動作を身体が拒絶したようにパタリと芝生に倒れていた。

 

 

 

「動くな。全く、ここまでやるとは思わなかったぞ」

「マックイーンが……」

「テイオーが……」

「まだ張り合ってんのかよ……」

 

 

 

 倒れながらも互いに張り合う二人を見て、麻真が思わず顔を引き攣らせる。

 

 

 

「マックイーン、少しそこで休んでろ。呼吸は深く、ゆっくりと、焦って早く呼吸するなよ」

「わかりましたわ。ところで結果は……?」

「それは後で言う。今は落ち着くまで休んでおけ」

 

 

 

 そうメジロマックイーンに話して麻真は深い溜息を吐きながら、徐にトウカイテイオーへと歩み寄っていた。

 

 

 

「身体が動くようになったら、必ずこれちゃんと飲めよ?」

「はーい……」

 

 

 

 倒れるトウカイテイオーの頭の横に麻真がスポーツ飲料を一本置き、そして足元にしゃがむと彼は彼女の足を凝視していた。

 

 

 

「おい、ガキンチョ。足、触るぞ?」

 

 

 

 唐突に、麻真がそうトウカイテイオーに訊いていた。

 

 

 

「ボクになにする気……まさか疲れて何もできないボクに変なことする気なの……?」

「次にまたふざけたこと言ったら、二度とお前の相手しないからな?」

 

 

 

 顔だけを麻真に向けて、トウカイテイオーが麻真に僅かに嫌悪の目を向ける。しかし麻真は彼女に呆れ果てた表情を見せて、冷たく答えていた。

 麻真の真剣な声を聞いて、トウカイテイオーも彼が何か意図があって話していると察したのだろう。彼女は怪訝な顔を見せながら、小さく口を尖らせていた。

 

 

 

「ご自由に」

「ああ、好きにする。質問するから素直に答えろ」

 

 

 

 トウカイテイオーの返事を聞いて、麻真はそう言いながら彼女の足を触っていた。

 まず麻真が壊れやすい物を触るような手つきで、トウカイテイオーの足首を触っていた。左右に僅かに動かし、回したりなど様々な動かし方を行っていた。

 

 

 

「痛むか?」

「ううん。くすぐったいくらい」

「そうか、ここは問題ないか」

 

 

 

 トウカイテイオーの両足首を触って、麻真が安堵の表情を見せる。

 その後、麻真がふくらはぎに手を添えた。その手つきは足首とは比べ物にならないほど恐る恐ると優しい動作だった。

 トウカイテイオーのふくらはぎを下からゆっくりと触っていく。時折、触っている部分を指圧で押したりなどして、麻真がふくはらぎ全体を触る。

 

 

 

「ねぇ、くすぐったいよ」

「……痛まないのか?」

「全然、なんでそんなこと聞くの?」

 

 

 

 驚いた表情を見せていた麻真に、トウカイテイオーが首を傾げる。

 しかし麻真は真剣な表情を見せると、続いてトウカイテイオーの太腿を触っていた。

 

 

 

「本当に、痛まないのか?」

 

 

 

 一通りトウカイテイオーの足を触って、彼女が表情を一切変えないことに麻真は僅かに困惑したように眉を寄せていた。

 

 

 

「さっきから足触って変なこと訊かないでよ……どうしたの?」

「ラストスパートの最後、足が痛まなかったか?」

「ちょっとはふくらはぎに違和感あるけど……そんなに痛いとか思わないよ?」

「本当に、痛くないのか?」

 

 

 怪訝な表情のトウカイテイオーに、麻真が静かに訊いていた。

 先程から麻真がトウカイテイオーの足を触っていたのは、彼から見て彼女の走りが限界を通り越した走りだったと察してのことだった。

 特に最後の二百メートル地点から走り方を変えた以降、トウカイテイオーは自身の足に限界まで負荷を加える加速を行っていた。

 あまりにも度外視したトウカイテイオーの足の使い方に流石の麻真も足の不調を起こすと懸念していたが、彼の予想とは正反対に彼女の足には痙攣などの目立った問題が見えなかった。

 仮に骨に異常がないのなら、おそらくは過負荷を筋肉に与えた代償として明日か今日の夜から強烈な筋肉痛が起きることを麻真は密かに予想していた。

 もし明日以降に足の不調が見えるなら、それなりの対応をしなくてはならないと麻真は内心で思い、一人頷いた。

 

 

 

「ゴール前くらいからあんまり覚えてないんだよね。でも……」

 

 

 

 麻真に訊かれて、トウカイテイオーが僅かに言い淀む。その問いの答えを、彼女は持ち合わせていなかった。

 それもそのはず、トウカイテイオーにはラストスパート以降の記憶が曖昧だった。

 ふと、トウカイテイオーが眉を寄せて思い出そうと試みる。

 そしておぼろげに薄れていた記憶の中で、トウカイテイオーは感じていたことを口にした。

 

 

 

「最後のラストスパートの時、今までで一番速く走れた気がする。誰かに背中を押されたみたいに、フワッて」

 

 

 

 感覚でしか覚えていなかったが、トウカイテイオーはそう思っていた。

 最後のラストスパート。無意識に全力で走ったあの瞬間、今までで一番速く走れていた気がした。

 身体を限界まで使った走り、今までで一番の走りができたとトウカイテイオーは思っていた。

 

 

 

「そりゃそうだ。お前、俺の走り方で走ってたぞ」

「えっ……?」

 

 

 

 麻真の返答に、トウカイテイオーが呆気に取られた。

 その反応に麻真も気づいたのだろう。彼は小さく苦笑していた。

 

 

 

「最後のお前の走り方は、俺がルドルフと走った時に使った走り方だ。見た目しか似てない中途半端な走り方だったけどな」

 

 

 

 どこか小馬鹿にしたような口調で、麻真が話す。

 トウカイテイオーはそう言われても、実感がなかった。自分が麻真の真似をして走った気など微塵もなかったのだから。

 しかし麻真にそう言われて、トウカイテイオーは何となく察していた。

 自分が今までよりも速く走れた気がしたのは、麻真の走り方のおかげなのだと。彼が見た目しか似てない走りと言っていた以上は、そのフォームの本来の力は出ていないはずである。

 だが、そのフォームの力の一端を身をもって知れただけ僥倖だとトウカイテイオーは思っていた。あの時の感覚が、麻真の感じている世界。そしてメジロマックイーンが感じている世界の一端なのだと。

 

 

 

「そういえばさ。ボクとマックイーン、どっちが勝ったの?」

 

 

 

 おぼろげなあのラストスパートの感覚を思い出しながら、トウカイテイオーはふと思い出したように訊いていた。

 勝負の最後の瞬間を覚えていない。自分とメジロマックイーンのどちらが勝ったのか、トウカイテイオーは知らずにいた。

 

 

 

「ああ、お前とマックイーンの勝敗か……」

 

 

 

 トウカイテイオーの足を触っていた麻真が立ち上がる。今度はメジロマックイーンの方に向かって、彼が背を向けた。

 麻真の背中を見ながら、トウカイテイオーが彼の言葉の続きを待つ。

 

 

 

「頭ひとつ差で、マックイーンが勝った」

 

 

 

 そして麻真から伝えられた勝敗の結果に、トウカイテイオーは静かに麻真から視線を外すと――空を見上げていた。

 負けてしまった。無敗を志した自分が、負けてしまった。今まで校内のレースでは、負けたことはなかったのに。

 トウカイテイオーの目が次第に熱くなっていく。何かが目からこぼれたような気がした。

 

 

 

「前半の足に力を入れ過ぎ。身体が柔らかいからって必要ないところも身体の可動域を全開で使うのが癖になってる。中盤から身体に負担を掛けるから後半で残せたはずのスタミナと筋力を浪費しやすい。足の力を無駄に入れる癖があるから足を痛めやすい。最後も、過負荷を掛けるから力が逃げて速く走れる力を無駄に使ってる」

 

 

 

 麻真から、唐突に怒涛の如く言葉攻めをトウカイテイオーが受ける。

 至らない点が多いと言われているようで、無意識にトウカイテイオーの表情が歪んでいた。目から、とめどなく涙が溢れていた。

 動かない左腕を無理矢理動かして、トウカイテイオーが自分の目に腕を添える。汗で濡れたジャージでも、涙くらいは拭ってくれていた。

 

 

 

「だが、最後のラストスパートだけ。そこだけは下手くそだったが小指の先くらいは見れた」

 

 

 

 そんなトウカイテイオーに麻真が背を向けたまま、伝えていた。

 

 

 

「俺からの条件だ。俺以外のチームに入ってから、俺のところに来い。それをしてくれば、助言くらいならしてやる」

「……ほんとに? そうしたらボクの走り方、ほんとうに見てくれるの?」

「俺に見られても良いって言うトレーナーを見つけたらな」

「……ボクが次にマックイーンと勝負して勝ったら、ボクのトレーナーになってくれる?」

「勝てたらな」

 

 

 

 そう答えて、麻真は嗚咽を漏らすトウカイテイオーから離れていた。

 麻真の歩く音が遠くなっていく。それを聞きながら、トウカイテイオーは我慢できない嗚咽をひたすらに漏らしながら泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マックイーン、足の調子はどうだ?」

「もう動きたくありませんわ……」

 

 

 

 メジロマックイーンの疲れ果てた声を聞きながら、麻真は苦笑して彼女の足を触っていた。

 何度も慣れたことだとメジロマックイーンは聞きもせずに足を触る麻真を特に咎めることもなかった。

 

 

 

「正直に答えろ。足は傷むか?」

「ほんの少しだけ、右のふくはらぎが痛みますわ」

「骨か? 筋肉か?」

「筋肉、だと思いますわ。使い過ぎて痙攣したと思います」

 

 

 

 筋肉が痙攣している感覚が右足のふくはらぎにあった。

 筋肉を過剰に酷使した際に起こる症状のひとつとして、筋肉の痙攣が起こることがある。その原因の大きな要因は、多量の発汗により生じた脱水や電解質異常によるものである。また他に極度の緊張によって、脳の反応から無意識に起こる筋肉の収縮などから起こるとされている。

 麻真はそれを聞くと、すぐに横に置いていた飲料をメジロマックイーンの手に握らせていた。

 

 

 

「それを慌てずに飲め。後、軽く足をマッサージするぞ」

「よろしくお願いします」

「身体が起き上がらないなら、マッサージした後に飲ませる」

「……子供ではないので自分でやります」

 

 

 

 麻真に飲み物を飲ませられている光景を想像したのか、メジロマックイーンが顔を強張らせる。そこまでされるのは、流石に恥ずかしいと思ってしまった。

 呼吸が落ち着いて、倦怠感はあれど身体を動かせると判断してメジロマックイーンは上半身を起き上がらせていた。

 麻真が自分の右足のふくはらぎをマッサージしているのを見届けながら、メジロマックイーンは渡されたスポーツ飲料を口に添えていた。

 焦らず、ゆっくりと、メジロマックイーンは水分を摂取していた。枯渇した水分が戻っていくような感覚が、とてつもなく心地良いと感じてしまう。

 

 

 

「それで、麻真さん。どっちが勝ちましたの?」

「頭ひとつ差でお前が勝った」

 

 

 

 即答だった。麻真に即座に答えられて、メジロマックイーンは反応に困った。

 しかし自分がトウカイテイオーに勝てたことに、メジロマックイーンは安堵していた。

 

 

 

「正直、どうだった? 今までの練習に意味はあったと感じたか?」

 

 

 

 マッサージを続けながら、麻真がメジロマックイーンに徐に訊く。

 トウカイテイオーに勝負で勝ったことに喜ぶ表情を見せないことから、麻真は自分が勝つことを疑っていなかったのだとメジロマックイーンは察した。

 だが、勝ったのだからそれなりの反応を見せても良いのではないかと不満そうに眉を寄せながらメジロマックイーンは答えていた。

 

 

 

「ありました。決して、あなたの指導は間違いではなかったと」

「走って感じたこと、言えるか?」

「身体全体、特に足の動かし方が分かりました。力の入れ方も、あの蹄鉄靴のおかげで。今までの筋トレも、意味があるものと理解しましたわ」

「及第点だな。まぁ、それが分かれば十分」

 

 

 

 渋々と麻真が納得して、頷いた。

 しかしメジロマックイーンは面白くないと口を尖らせていた。

 

 

 

「正解の答えを教えていただきたいですわ」

「それは自分で見つけてみろ。俺は教えない」

「甲斐性のない殿方ですわ……まったく」

 

 

 

 失笑して、メジロマックイーンが麻真を半目で見つめていた。

 

 

 

「覚えているか知らないが、最後のラストスパートの時……お前、なにか見えたか?」

 

 

 

 ふと、唐突に麻真がそんなことをメジロマックイーンに訊いていた。

 質問の意味が分からず、メジロマックイーンが首を傾げるが麻真の話していた内容を反芻した。

 ラストスパートの時に、何が見えたか。それをおぼろげな記憶の中でメジロマックイーンが思考した。

 

 

 

「あまり覚えてませんが……今までで一番綺麗に走れた気がしました。身体が風で押されたような感覚で、走る道が見えたような感覚でしたわ」

「そうか……」

「それに何かありまして?」

「いや、全力で走れたのなら良かったと思っただけだ」

 

 

 

 明らかにはぐらかされた。メジロマックイーンはそう思った。問い詰めるべきかと思ったが、渋々と彼女はそれを諦めていた。

 麻真の性格を理解しつつあるメジロマックイーンも、このような時は彼はどれだけ問い詰めても答えを言わないことを彼女も理解していた故だった。

 

 

 

「だが、勝てたと言えど……課題は残った」

「……はい?」

 

 

 

 麻真の言葉を聞いて、メジロマックイーンに嫌な予感が走った。無意識に背中に冷たい汗が流れるような錯覚を覚える。

 

 

 

「ある程度形にはなったが、全体的にまだまだ調整しないと駄目だな。各ハロン毎の速度の向上、加速に掛かる時間の短縮、身体能力向上によるフォームの矯正――」

「聞きたくありません! もうやめてください!」

 

 

 

 麻真の声を遮って、メジロマックイーンが頭を抱えていた。

 そして予期する。たった今、麻真の口した数々の問題点を修正する為に、彼は自分にどんな練習を考えるのだろうかと。

 片方に三十キロの重りを仕込んだ蹄鉄靴を用意するようなトレーナーである。そんな人間がどんな練習を考えるかと思うとメジロマックイーンはそれが効率が良いと分かっていても、今は聞きたくはなかった。

 しかし麻真はそんなメジロマックイーンを無視して、無慈悲に話を続けていた。

 

 

 

「それにお前には、今以上に知識がいる」

「……知識ですか?」

 

 

 

 意表の突くことを言われて、メジロマックイーンの耳がピクリを動いた。

 

 

 

「厳密に言えば技術の範疇だがな。細かいことを教えていく」

「……例えば?」

「さっきの勝負で、トウカイテイオーがお前の背後に張り付いていた理由は分かるか?」

「いえ、分かりませんわ」

 

 

 

 麻真の問いに、メジロマックイーンは素直に答えた。

 

 

 

「スリップストリーム、相手を抜く技術だ。事前に知っていれば、心を乱されないし対処も考えられる」

「つまりはレース中に冷静でいる為の知識を覚えろと?」

「そういうことだ。それに加えてレースの戦略とかも教えてやる」

「ある程度のことは学んでいますわ」

「常識の範疇、以外のことだ。本に書いてることだけ鵜呑みにするのは減点だ」

 

 

 

 諭すような麻真の口調に、メジロマックイーンがまた眉を寄せた。

 しかし麻真の語るそれがどのようなモノか想像できず、メジロマックイーンは不満な表情を見せることしかできなかった。

 

 

 

「まぁ、それは今後の話だ。とりあえず、メイクデビューに向けての良い練習にはなったから今は考えなくて良い」

 

 

 

 麻真に言われて、メジロマックイーンはハッと思い出した。

 気づけば、自分のメイクデビュー戦は二日後まで迫っていた。

 

 

 

「もうメイクデビュー戦でしたわね。明日も練習しませんと……」

 

 

 

 明後日のメイクデビュー戦に向けて、メジロマックイーンがやる気を見せる。

 しかし麻真は呆気に取られた顔を見せながら、メジロマックイーンに向けて言い放っていた。

 

 

 

「なに言ってんだ? 明日はほぼ休みだぞ?」

「……はい?」

 

 

 

 今、意味の分からないことを麻真が口走ったとメジロマックイーンは思った。反射的に訊き返してしまうほど、彼女は麻真の言葉を理解できなかった。

 

 

 

「レース前日に全力で練習させる奴がいるかっての。レースに備えて明日は休み。やるのはフォームの最終確認だけ」

「嫌です」

 

 

 

 再度、麻真が伝えた言葉に、メジロマックイーンは即答した。

 

 

 

「駄目だ。走らせない」

「嫌です。最後まで練習します」

「もし明日の休みに隠れて全力で走る練習したら、走るの禁止で基礎トレ半年と公式レース出場禁止。それでも良いならやれ」

「……は、半年?」

 

 

 

 暴挙とも言える麻真の発言を、メジロマックイーンはあり得ないと目を大きくして驚愕した。

 

 

 

「あの基礎トレを半年……? 走るの禁止で?」

「勿論、その期間中に破ったら回数毎に一か月加算する」

「なんて人ですの……!?」

 

 

 

 口に手を添えて、メジロマックイーンが表情を強張らせた。

 しかし麻真の口から出た以上、彼は本気でやりかねない。メジロマックイーンの脳裏に過ぎったのは、あの辛い基礎トレーニングの日々だった。

 あんなに辛かった日々が半年も続く。それがたったの一日練習しただけで、とんでもない代償である。

 

 

 

「わ……わかりました」

「聞き分けの良いウマ娘だ。頭を撫でてやる」

 

 

 

 麻真に頭を撫でられながら、メジロマックイーンが悔しそうに歯を食いしばる。そして苦渋の選択と言いたげに麻真を恨めしく睨みながら、彼女は頷いていた。




読了、お疲れ様です。

レースが終わり、そして二人に麻真が話す話です。
トウカイテイオーに麻真が色々と諭す部分ですね。
今後の彼女の立ち位置にも関わる話です。
メジロマックイーンに関しては、麻真から有難い今後の課題。
そんなお話でした。

次で、Chapter4を終えたい予定です。
それではまた次回にお会いしましょう。

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