走るその先に、見える世界 作:ひさっち
「大儀ッ! まさに期待通りの結果であるッ! お主ならば必ずやってくれると思っていたぞッ!」
心底嬉しそうに、秋川やよいが扇子を開いた。満面な笑みを浮かべて、どこか誇らしげに慎ましやかな胸を張っている。
その扇子に書かれた“流石ッ‼︎”という文字はいつ書いたのだろうか。見る度に幾重にも変わる扇子の文字の謎は、彼女と出会ってから一向に明かされていない。
やよいの持つ扇子に視線を向けながら、麻真は呆れ混じりの溜息を漏らした。
「そこまで言われることはないですよ、理事長。それにメイクデビュー戦に勝ったくらいで喜び過ぎです」
メジロマックイーンのメイクデビュー戦が終わって一日経ち、その翌日に麻真はやよいから理事長権限で呼び出しを受けていた。
現在の時刻は、時計を見れば午前十一時頃。トレセン学園内にいる生徒は、一般教養の授業を受けている時間であった。麻真も、この時間は比較的時間を持て余している時間だった。
その時間を指定されて、麻真は渋々ながらも理事長室へと足を運んでいた。
理事長室のソファに麻真が座り、テーブルを挟んで対面のソファに座るやよいは終始笑顔を見せていた。
「いえ、そんなことはありませんよ! メジロマックイーンさんのこの結果は本当に素晴らしいです! 流石麻真さんですねっ!」
そしてやよいの隣に座る理事長秘書の駿川たづなも、嬉しそうに頬を緩める。
そんな二人の反応を前に、麻真は居心地が悪そうに眉を寄せていた。
「……たかがメイクデビュー戦ですよ?」
「否ッ! メイクデビュー戦と言えど公式レース! それを圧倒的な勝利を収めた事実は変わらぬッ! 勝利を祝うのは当然のことであるッ!」
やよいの言う通り、所詮メイクデビュー戦と言えどURAが主催する公式レースで勝利した事実は変わらない。
URAには記録として、メジロマックイーンの成績に今回のレース結果はしっかりと残る。そんなレースを勝てたことを喜ぶのは、至極当然の反応だろう。
だがそう言われたところで麻真が目指している目標の高さを考えれば、デビュー戦など勝って当たり前なのだ。こんなところで躓くようでは話にならない。
メジロマックイーンが天皇賞制覇を二年連続。または天皇賞制覇とクラシック三冠を獲得。そして今後行われるURAファイナルズというレースで優勝するのが、麻真が退職する条件なのだ。序盤のデビュー戦程度、勝たずにどうするのかと。
確かにメジロマックイーンがメイクデビュー戦を問題なく勝てたことには、麻真も少なからず喜びはある。しかし今の彼女の実力を考えれば当然の結果、加えて今後の課題が多く増えたレースでもあった。それを考えれば、彼も気軽に喜ぶわけにもいかなかった。
「結果ッ! これを見て大儀と言わずに何と言うのか! あれば言ってみるがよいッ!」
唐突、やよいが目の前のテーブルに右手を叩きつける。その手の下には、先程からテーブルに広げられていた新聞があった。
麻真の目の前に置かれた新聞。それが、やよいが麻真をこの場にまで呼び寄せた理由だった。
つまるところ、仕事の成果を称賛する為にこの場に呼び出されたのだろう。その新聞を見た瞬間、麻真はそう察していた。
『メジロマックイーン、デビュー戦初勝利! 驚異の大差勝ち!』
テーブルに置かれた新聞には、その見出し書きと一緒にメジロマックイーンの写真と記事が掲載されていた。
新聞にトゥインクル・シリーズのレース結果が載ることは非常に多い。世間のウマ娘の人気を考えれば、当然のことである。特に重賞レースの記事は特に人気がある。
しかし重賞レースが開催されない週がある以上、その手の記事はいつでも書けるものではない。そんな時、重賞ではないレースの記事が書かれていることは麻真も知っていた。
「確認ッ! 先程、お主もこれを読んだであろう? 世間は期待の新星たるウマ娘が現れたことに興味津々であるはずッ! これはまさしくウマ娘界に新しい風を運ぶであろうッ!」
理事長室に来て早々に、麻真はやよいに件の新聞を渡されてメジロマックイーンの記事を見せられた。
十バ身以上の差をつけて勝利しなければ表示されない、大差勝ち。それは稀に見る着差だった。あのレース直後、電子掲示板に表示された大差という二文字に、観客達は大いに盛り上がっていた。
着差の距離は、結果としてそのウマ娘の実力を示す。更に加えて走破タイムも、大きな意味を持つ。阪神二千メートルをジュニア級でありながらも、クラシック級にすら届く二分を切ってゴールしたという結果は、彼女の実力を世間に知らしめるものとなった。
そのレース結果から、少しはメジロマックイーンが記事になると思っていた。しかし新聞の一ページを埋めるほどの内容が書かれているとは流石の麻真も思っていなかった。
初めて麻真がメジロマックイーンの記事を見た時、怪訝に顔を顰めた程だった。まるで重賞レースの記事のような扱いである。
「まぁ、読みましたが……」
顔を顰めて、麻真がテーブルに置かれた新聞を一瞥した。それはその記事の内容を確認したからこその反応だった。
「記事の書き方が気になって、ここまで持ち上げられると気味が悪い」
メジロマックイーンの記事内容は世間が見るものからすれば面白いモノとして読めるが、麻真には難色を示す内容だった。
レースの大まかな流れとメジロマックイーンのレース展開について書かれた記事。特に強調して書かれていたのは、彼女の異様と見られた走りに関してだった。
始まりはメジロマックイーンのことを暴走列車などと好きに書いていたが、その結論はデビュー時点で既に実力はクラシック級以上などという随分と大層な書かれ方だった。
他には彼女の生まれであるメジロ家について、そしてチーム・アルタイルに関する内容が少々書かれている程度。その内容も、随分と大袈裟な書き方をしている文章だった。
「そんな風に捻くれるではない! 彼女が注目されていることを少しは喜ぼうとは思わぬのか!」
「捻くれたくもなりますよ。注目されるのは分かってましたが、こんな書かれ方すれば顔も顰めたくなりますって」
明らかに意図して書かれている。その記事を読んだ麻真は素直にそう思っていた。
メジロマックイーンがジュニア級の誰よりも強いことを特に強調し、読み手の興味を惹かせようとしているのが透けて見えた。自分の担当しているウマ娘が注目されるのは喜ばしいことだろうが、程度を超えた誇張表現は麻真の癪に障るものだった。
新聞や雑誌とは、そういうものである。それを理解していても、相変わらずこの手の記事は好きになれそうになかった。
「天才。そんな言葉をつらつらと書いてるのが気に入りません」
実のところトレーナーという職に就てから、麻真は新聞が好きでなかった。
シンボリルドルフ、エアグルーヴ、タイキシャトルを始めとした過去の担当ウマ娘達が新聞に載ることは多くあった。その記事に目を通す度に、彼は新聞という物に嫌悪感を感じるようになっていた。
あの子達の実力を才能という言葉だけで――たったそれだけの言葉で片付けて良いようなウマ娘達ではないと。
天才だから、才能に恵まれたから、トレーナーが優れているから、確かにそれはあるだろう。しかし一番大事なことが昔から記事に書かれないことに、麻真は心底不服だった。
長く積み重ねてきた練習、そして途方もない努力によって、彼女達はその強さを掴み取ったのだ。それを無かったことにしている記事が、麻真は嫌いだった。
「こんな単純な言葉で、アイツの努力を片付けて良い訳がない」
それはメジロマックイーンにも言えることだった。
その努力を僅かな期間でも見届けてきた。才能という芽はあれど、努力という水がなければ育たない。それを単に天才という言葉だけで強いと表されるのは、麻真からすれば彼女の努力が侮辱されているようなモノだったのだから。
その麻真の言葉に、やよいとたづなが意表を突かれてキョトンとした表情を見せる。しかしすぐに二人は揃って、呆れた笑みを見せていた。
「そういうところは……本当に変わりませんね、あなたは」
「お主もそういうところを彼女に見せれば良いものを……意固地な奴だ」
向けられる二つの視線から、麻真が目を背ける。僅かながらの抵抗だった。
「提案ッ! お主、少しは素直になろうとは思わぬか?」
やよいの言葉に、たづなも頷いていた。
担当するウマ娘のことを案じる麻真の姿勢は、トレーナーの手本とすら思えるモノだった。
しかし麻真は、決して担当のウマ娘にそのことを悟らせないように立ち回っていることを二人は知っていた。損をする役回りをする彼の行動は、昔から一向に改善は見られない。
その行動に麻真なりの意図があると、二人も分かっている。だが、それでも彼の心遣いを担当ウマ娘に知ってもらえれば、その関係はより良くなるだろうと思ってしまう。
「俺は素直ですよ。それに必要なことはしっかりと本人に伝えています。言う必要がないから言わない、それだけです」
やはり変えるつもりはないらしい。麻真の返答に、やよいは深い溜息を吐き出してしまった。
「……そこまでお主が頑なに変えぬと思うなら、それでも良い。お主の“それ”を見抜く者がいるのだから、どちらにせよ遅いか早いかの違いなのだろう」
結局、麻真は担当ウマ娘に懐かれる。どれほど気持ちを内側に隠そうとも、察するウマ娘はいる。彼がトレセン学園に帰ってきた今でも過去の担当ウマ娘に好かれるの要因が、トレーナーとしての能力以外にもあるのは容易に分かることだ。
麻真の走ることを教える能力は、トレセン学園内にいるトレーナーの中で随一の実力を持つ。その為、彼が指導する練習はとても厳しいと言われている。
ウマ娘に厳しく接するトレーナーも、実際に多く存在する。その厳しさ故に、トレーナーとウマ娘の関係が崩壊し、契約が解消されたトラブルもある。実際、トレーナー側に問題があった場合もあり、トレセン学園も厳格に対処したことは過去に何度もあった。
しかしそんなトラブルが麻真の元で過去に起きたことはなかった。担当ウマ娘がトレーナーを怖がるなどということもなく、関係は良好な状態を築いていた。
担当ウマ娘達が麻真に全幅の信頼を向けている。それは彼と担当ウマ娘達が一緒にいる風景を見れば、一目瞭然であった。
それが何よりの答えなのだろう。やよいは麻真のことを案じながらも、そう納得することにした。
「俺のことはもう良いでしょう? 話を戻しますよ? 理事長、俺をこの場に呼び出したのは単に成果を労うだけではありませんよね?」
これ以上の追求が面倒になって、麻真はそう言って話を無理矢理戻した。
やよいも頑なに意思を曲げない麻真に言及する気もなく、頷いて彼の問いに応えることにした。
「うむ! だがしかしっ! お主の成果を祝い、労いたかったのは事実! それは本当であるから素直に受け取ってほしい! それ以外に私がお主に聞きたかったのは、私の興味本位の質問であるっ!」
そしてやよいが麻真をこの場に呼び出したもうひとつの要件を伝えた。
コホンと小さく咳払いをして、気を引き締めながら慎ましい胸を張りながら、やよいは誇らしげな表情を見せた。
「今回のレースで、彼女は世間に注目される存在となった! 今後、彼女の出走するレースの予定をお主がどう考えているのか私は非常に興味があるのだ!」
それが、やよいの興味を惹かれることだった。訊かずにはいられないと、輝かせた目を麻真に向ける。
色々と訊かれることを即座に予想していた麻真だったが、思いのほか取り留めのない質問だった。
「一応……幾つか考えています」
別に答えられない質問ではない。そう思って、麻真は答えていた。
メジロマックイーンは、今回のレースでトゥインクル・シリーズで一目を置かれる存在になった。今後、彼女がどのようなレースに出ることを予定しているか、興味を惹かれる人間もいるだろう。
それはウマ娘の活躍を人一倍応援し、心を躍らせて楽しみにしているやよいならではの質問と察するのは容易だった。
「関心ッ! 是非教えてほしいッ!」
「マックイーンの練習が問題なく進めば、今年の後半に幾つかレースに出る予定です。可能ならば、年末に重賞レースに出ようと考えています」
麻真が頭の中で考えていた予定を思い返す。そして頭に浮かんだ“とあるレース”をメジロマックイーンの年内の目標と定めていた。
「年末ですか? ジュニア級のメジロマックイーンさんが出れる重賞レースということは……もしかして“あのレース”ですか?」
麻真の告げた少ない言葉で、たづなは答えに辿り着いたらしい。
流石、というよりトゥインクル・シリーズに詳しい人間なら誰でも気づくだろう。
やよいも察したらしい。満面な笑みを浮かべて、“歓喜”と言う文字が書かれた扇子を広げていた。
年末に行われる重賞レースで特に有名なのは、有馬記念である。しかしクラシック級以上という出走制限があることから、メジロマックイーンは出走できない。
実のところ、ジュニア級で出走できる重賞レースは数少ない。その中で中長距離適正のメジロマックイーンが出れるレースは、ひとつしかなかった。
「ホープフルステークス。ジュニア級で最も強いウマ娘を決めるあのレースで、マックイーンには取ってもらおうかと」
「取る、ですか? 勝つではなく?」
怪訝に、たづなは小首を傾げた。勝つではなく、取るという妙な言葉に。
希望に満ちた。文字通りの意味を持つホープフルステークス。それはジュニア級で最も強いウマ娘を決めるレースとされている。
そこでメジロマックイーンに、麻真は何を
不思議そうにするたづなに、麻真は小さく笑みを浮かべた。
「ジュニア級最強のウマ娘って称号。最強のウマ娘になるってよく言ってるアイツには、ピッタリでしょう?」
楽しげにそう告げた麻真の表情に、二人が呆気に取られた。
そう言った麻真の顔は、相変わらず負けることを考えてすらいない自信に満ちた表情だった。
◆
割と時間が経っていたらしい。理事長室を出て、ふと麻真が時間を確認すれば時刻は十二時を過ぎようとした。
なんだかんだ色々と長話をしていたらしい。意外とあの二人と会話をすれば、何かと話題が尽きないのはどうしてだろうか。そんな疑問を麻真は抱いた。
別に疑問にすることでもないか。そう思い考えることを放棄して、麻真はトレセン学園内の廊下を歩いていた。
「そろそろ昼時か」
何気なく、麻真が呟いた。
まだ生徒達は授業を受けている最中だが、今の授業が終われば昼食の時間になる。その時間になれば、学園内の学食には生徒達が集まるだろう。
それならむしろ、麻真には良い時間だった。いつも通り、メジロマックイーンと昼食を済ませよう。
そう思って、麻真が学食に足を向けた時だった。
「おっ! ちょうど良いところにいたな!」
唐突に、麻真は声を掛けられていた。
学園内にいる生徒は授業中で、この場にいるはずもない。この時間に、この場にいる人間など限られていた。
それは聞き覚えのある声だった。その声に呼ばれて、何気なく麻真が声の方へと振り向いた。
「よっ! 久しぶりだな!」
振り向いた麻真の先に居たのは、随分と派手な格好の男だった。黒のベストとスラックス、そして黄色のワイシャツが特に目立つ。剃り上げた側頭部、長い髪を後ろでひとつに結った髪型は、昔から変わっていなかった。
その姿を見て、麻真は意外そうに少しだけ目を大きくした。その人間は、彼も知っていた人物だった。
「……沖野さん? どうしたんですか?」
「そんな他人行儀な話し方すんなって。俺とお前の仲だろ。久々にお前が帰って来たってのに、俺と全然話してくれなかったからな」
沖野と呼ばれた男が、麻真の前まで来るなり苦笑いを見せる。
麻真も返す言葉がないと、堪らず頬を引き攣らせていた。
「悪気があった訳では……すいません。何かと忙しくて」
無意識に頬を掻きながら、麻真はそう答えていた。
トレセン学園に戻って来てから、麻真は学園内にいるトレーナー達と交流を殆どしていなかった。
元より、あまり他のトレーナー達から良い顔をされていないこともあり、麻真は他のトレーナーと交流することは少なかった。
東条ハナのような例外のトレーナーもいるが、目の前の男もその数少ない例外の一人だった。
別段、麻真が彼を避けていた訳でなかった。自室に籠る以外の時間は全てメジロマックイーンに使っていたため、自分から他のトレーナーに話しかけに行くことが全くなかっただけだった。
「それは別に気にしてないさ。お前がそういう奴だってのは知ってるからな」
それを察したのか、沖野は肩を竦めていた。
事なきを得て内心安堵する麻真だったが、唐突に沖野が話し掛けてくるとは思ってもいなかった。
「それで? 俺に何か用でも?」
「ああ、お前に用があってな。ちょっと時間良いか?」
「別に構いませんが……」
「その前に、その話し方はやめてくれ。前みたいに戻せって、もしかして俺嫌われてる?」
悲しそうに沖野が肩を落とした。麻真も意識していた訳ではないが、彼を久々に前にすると無意識に敬語が出ていただけだった。
軽い咳払いをして、麻真は意識して敬語を使わないよう気持ちを整えた。
「別に嫌ってない。嫌いなら話さないって。久々に会ったから出ただけだ」
「それもそれでどうかと思うがな」
「俺より歳上なんだから当然の反応だろ?」
「お前、歳上とかちゃんとする奴だったか?」
「アンタ、失礼だな。俺をなんだと思ってるんだよ」
「え? 高飛車な奴?」
「……その頭、かち割るぞ?」
「お前の筋力は洒落にならねぇから勘弁してくれ」
軽く会話をすれば気にならなくなった。もう敬語が出て来ることはないと麻真が判断する。特に最後のバカにしてきた言葉で、二度と目の前の男に敬語は使わないと決意した。
「それで? 改まって俺に用って何だ?」
そんな決意を持って、麻真は沖野に訊いていた。
トレーナーが別のトレーナーに用事があるとすれば、大抵はウマ娘のことだろうと予想できる。例外に友人として交流するためなどもあるが、沖野の場合は果たしてどちらだろうか。
面倒なことでないことを願って、麻真がその返答を待つ。しかし返ってきた言葉に、彼は驚くことになった。
「トウカイテイオーのことだ」
「……はぁ?」
沖野から返ってきた意外な言葉に、麻真が思わず目を見開いた。
他のトレーナーがわざわざトウカイテイオーの話をしてきた。それは麻真の中で、ある可能性を予期させた。
トウカイテイオーが所属するチームを決めてきた時、彼女の走りを見る。そんな約束を、麻真はトウカイテイオーとしていた。
しかしそれはトウカイテイオーが所属したチームのトレーナーが許可を出した場合のみに限る。そもそも、自分の担当ウマ娘が他のトレーナーの指導を受けることなど、あり得ない話である。
それを分かった上で、麻真はトウカイテイオーにそう伝えていた。可能性がないに等しい条件をクリアするのは容易ではないと思っていた。
「まさかアイツが……あなたの所に?」
咄嗟に訊いてしまうほど、麻真は驚くしかなかった。
まさかその条件をクリアする可能性が一番高いトレーナーを初っ端から選んでくるとは、流石の麻真も思っていなかった。
その彼の反応で、沖野は何か確信したように頷いていた。
「心当たりあるみたいだな……まぁそれは良いさ。なんとなくだが俺も予想はできたからな」
そう言って、意地の悪そうな笑みを沖野が浮かべる。
その笑顔に、麻真は不思議と嫌な予感がした。こういう時の予感は、大抵は面倒ごとになると。
「そこで、だ。ちょっとした俺の頼みがあるんだ」
「……それをダシに何を頼む気だよ?」
「話くらい聞いてくれって」
両手を合わせて、沖野が懇願してくる。
その姿を見て、麻真の中で嫌な予感が更に強くなった気がした。
一体、この男は自分に何を頼むつもりなのか?
そんな一抹の不安を抱えながら、麻真は怪訝に顔を顰めるだけだった。
読了、お疲れ様です。
この話でEPは終了です。次からはEP6になります。
さて、今回は麻真メインの回でした。
まずはメジロマックイーンのレース結果とその今後について。
ちなみに、アプリの“E”の悲劇にはなりません!
そして遂に出てきた新トレーナーです。
彼が出てきたということは、つまりそういうことです。
次回のEPから色々と出て来ると思いますので、お楽しみに。
ちなみに、沖野Tの名前。勝手に私で決めますのでご容赦ください。
それでは、また次回の話でお会いしましょう。
感想、評価、批評はお気軽に。
頂ければ、作者のモチベに繋がります。
追伸。
今回の話で本作を投稿して約一年経ちました。
変わったトレーナーとマックイーンの話を、これからも見守ってくださると嬉しいです。
それと執筆速度が上がらなくて申し訳ありません。頑張ります……