ノジャロリドラゴンアンデッドオニギツネ(学名:Nojalolia inalius)   作:放出系能力者

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INARI爆誕

 

「クククク……ついに我らの研究の集大成が完成する! 合成魔獣、ノジャロリドラゴンアンデッドオニギツネが!」

 

 ここは悪の秘密結社『ダークネスエンパイア』が保有する地下研究所。怪しげな研究者たちがモンスターから採取されたDNAを掛け合わせ、未知の魔獣を生み出す禁忌の実験を繰り返していた。

 

 現代では絶滅した種族『ノジャロリ族』は、いくつもの派生種族を生み出し地上の覇権を握るほどの力を誇っていたと考えられている。

 

 空の支配者ノジャロリドラゴン、闇の支配者ノジャロリヴァンパイア、地の支配者ノジャロリオニ、米の支配者ノジャロリギツネ。一つの種族をとっても、その強さは天変地異に匹敵する。

 

 それだけの力を持つ彼女たちが滅んだ理由は解明されていない。しかし、永久凍土から発掘されたこれらノジャロリ族の遺体が悪の組織の手に渡り、合成魔獣として現代に蘇ろうとしていた。

 

 緑色に照らし出された培養槽の中に一人の少女らしき存在が浮かんでいた。こがね色の稲穂を思わせる長髪、その頭の上には狐の耳が生えている。さらに小さな鬼の角らしき突起も生え、背中にはコウモリのような羽も生え、トカゲにも似た鱗のある尻尾も生え、股の間にはおいなりさんも生えていた。

 

 彼女、いや彼こそがノジャロリ族の全てのDNAを取り込み作られたノジャロリドラゴンアンデッドオニギツネ、個体名『INARI』である。

 

 マッドサイエンティストたちが操作するロボットアームが培養槽の中で動き、INARIの下腹部にレーザーで焼き跡をつけていく。これは合成魔獣に対して組織への絶対服従を誓わせる『命令紋』である。

 

 その焼付作業の最中のことだった。沈黙していたINARIの目蓋がゆっくりと見開かれる。

 

 

 ドクン!

 

 

「な、なに!? バカな、まだ目覚める段階では……」

 

 ピシリと水槽に亀裂が走った。培養液がこぼれ出す。けたたましくアラートが鳴り響き、バイオハザードの発生を施設全域に知らせる。

 

「ノー……ジャー……」

 

 少女が外へ出てくる。その体はみるみるうちに変貌していく。全身の筋肉が風船のように膨張した。鬼の角がビキビキと音を立てて勇ましく屹立する。それにともない骨格までもが変化。150センチ代だった身長が2メートルを超える。INARIに備わる変化形態の一つ『ノジャオニマッスルモード』である。

 

「戻して!」

 

 研究員が悲痛な叫びをあげようと解放されてしまった実験体はもはや元に戻らない。研究者たちは我さきにと逃げ出し、入れ替わるようにして全身を完全武装した処理兵たちがなだれ込む。魔法銃を突き付けられた実験体は、自身の肉体美を見せつけるようにポーズを決めた。

 

 ダブルバイセップス。美しき上半身の逆三角形が光る。神々しささえ漂わせるバルクと極限まで絞り抜かれたプロポーションの黄金比率。そこに可愛らしい八重歯を覗かせた天使の笑顔が合わさった。

 

 

 プンッ

 

 

 処理兵の一人が突然吹き飛び、壁に叩きつけられて失神した。その現象を引き起こした原因とは、少女の大胸筋である。左胸の筋肉をピクピクさせた。その衝撃が空気を振動させ、人ひとりの意識を奪い取るほどの攻撃と化したのだ。

 

 処理兵たちの脳裏に絶望の二文字が浮かぶ。この怪物を止める手段はないと悟った。

 

 

 * * *

 

 

「いっけなーい! 遅刻しちゃうー!」

 

 セントラー冒険学校初等部の生徒、桜原マカロンは急ぎ足で登校していた。口には食パンを咥えている。

 

 遅刻しそうな焦りもあったが、それ以上に今の彼女は気分が高揚していた。このシチュエーションならば、曲がり角でぶつかった男子と素敵な出会いがあるかもしれないという期待があった。

 

 マカロンはサキュバス族である。悪魔族特有の羽と尻尾が生えている。容姿に関しては人並み以上の自信があった。母親譲りのストロベリーブロンドの髪の手入れは毎朝欠かさない。そのせいで遅刻しかけているわけだが。

 

 まあしかし、そんな漫画みたいな出会いなんて起きるはずないかと思ったそのとき、偶然にも曲がり角を飛び出した先で人とぶつかってしまった。

 

「きゃっ! ごめんなさい!」

 

 とっさに謝ったマカロンの先には筋肉の壁があった。全裸の筋肉巨体だった。しかし、首から上は笑顔の美少女。まるで合成写真のような気味の悪さだ。股間のふぐりも不釣り合いなくらい小さい。

 

「ピピッ……敵対行動ヲ確認……最優先デ排除シマスノジャ」

 

 INARIは自力で研究所から脱走はしたものの、完全に自我を確立しているわけではなかった。命令紋を書き込みが途中で終わってしまったため、暴走状態に陥っていた。ぶつかってきたマカロンの反応から敵と認定し、殺気を向ける。

 

「あへへえええええ!(畏怖)」

 

 その瞬間にマカロンは彼我の実力差を思い知らされた。顔面蒼白で白目を剥いてアヘり散らす。即座に戦意喪失を強いられるほどの濃密な殺気だった。

 

 そんな状態のマカロンに対しても殺戮マシーンと化したノジャロリモンスターが躊躇うことはなかった。片手を伸ばし、マカロンの頭を掴み取ろうとする。その握力があれば指が触れた瞬間、頭蓋の内部から頭部が爆発四散することだろう。

 

 マカロンは子供ながらに絶体絶命の窮地を本能で理解していた。彼女がただの幼子であったなら恐怖に身がすくんだまま身動き一つ取れなかった。

 

 しかし、これでも彼女は冒険者学校に通う〇学生だ。対モンスター戦の基礎を教育されている。極限状況下において彼女は思考を停止していなかった。

 

 走馬灯のごとく駆け巡る思考の中から打つ手を模索する。対抗できる手段は皆無。それでも死にたくない。生きたい。その一心がマカロンに行動を取らせた。

 

「フンハッ!」

 

 自身のブラウスに手をかけたかと思うと、それを左右に引きちぎった。ボタンが弾け飛び、下着もまだつける必要のないほど平たいマカロンの胸部が露出する。

 

 それはサキュバスとしての本能から導き出された最後の手段、色仕掛けだった。サキュバスにとって異性を魅了する能力こそが最大の武器だ。しかし、いかんせん彼女は幼かった。

 

 その表情に男を誘う妖艶さはない。抜き差しならぬ命の危機に直面し、歯を食いしばった決死の形相。生にしがみつこうとする執念に歪む。流れ落ちる汗、涙、鼻水が滴り落ちては乾いた地面に吸い込まれていく。まるで自分の寿命を暗示しているかのようだった。

 

 それを見た、筋肉の巨人の動きが止まった。にわかに小さく震え始める。何が起きたのかマカロンにもわからない。唐突に、巨人は鼻から大量の血を流しながら倒れた。

 

 

 * * *

 

 

 太古の昔、世界の全てを支配していたと言われるノジャロリ族。なぜ彼女たちは滅亡してしまったのか。その理由の一つが、繁殖能力の低さだった。

 

 エルフなどの長命種にはよくあることだが、個体数を増やすことよりも現存数を維持するために個の能力を高める進化を遂げている。ノジャロリ族の場合、ほぼ全ての個体が雌であるため繁殖力が極めて低かった。

 

 ごく稀に発生する『男の娘個体』は、子孫を残す限られた機会を無駄にしないため、性的刺激に対して非常にセンシティブである。そのエロ耐性は禁欲7日目の中学生男子を遥かに下回る。

 

 マカロンの胸を修正無しで直視してしまったINARIは興奮のあまり爆発的に心拍数が高まり、その強靭な心臓から叩き出される血圧値は3000を超えた。これにより全身の細胞が破壊され、おびただしい出血を引き起こしたのである。

 

 マカロンの活躍によりセントラー都の平和は人知れず守られた。オニモードが解除されたINARIは元の美少女の姿に戻ったが、瀕死の状態だった。全臓器と脳の損壊率は80%強に達していた。

 

「なんだこの患者は!? なぜこんな状態でまだ生きていられる!?」

 

「わからんが、とにかく輸血だ!」

 

 INARIはセントラー冒険大学病院の集中治療室に運び込まれた。マカロンが救急車を呼んだのである。手術を終えたINARIは一命を取り留めた。化け物じみた回復力により術後30分で全快した。

 

 酸素吸入器を取り付けられたINARIは病院のベッドの上で意識を取り戻した。その傍らにはマカロンが付き添っていた。

 

「あっ、よかった~! 目が覚めたんだね!」

 

「こ、ここは……?」

 

 マカロンはこの人外娘が危険人物であることを知りながら助けた。それは母の教えがあったからだ。

 

『マカちゃん、男と女は持ちつ持たれつ。出しつ出されつなのよ』

 

 一方だけが気持ちよくなって終わる関係ではならない。双方が納得するwin-winの関係であることが望ましい。

 

 人外娘の反応から見てマカロンの色仕掛けに悩殺されたことは明らかだった。全身の穴という穴から血反吐をぶちまけるほどの絶頂である。男の本懐と言えるだろう。

 

 だが、その与えた快楽の代償をまだマカロンはもらっていない。どんな手を使ってでも支払わせねばならない。平坦な胸を拝ませた対価を取り立てなければならない。それが悪魔の契約。

 

「ねぇ、キミはどこから来たの?」

 

「わからないのじゃ……」

 

 暴走状態から落ち着いたINARIの記憶は大半が失われていた。自分が何者であるかもわからない状態だった。マカロンは金銭による請求は困難と判断する。ならば体で支払わせるしかない。

 

「そうなんだ。あっ! いいこと思いついちゃった! それなら私の家に来ない?」

 

 今のところ精神状態は落ち着いているようだが、また暴走することがないとは言い切れない。その時は即座に乳首を見せ、もう一度生死の境をさまよってもらうことになるだろう。

 

 こうしてノジャロリとサキュロリの奇妙なコンビが生まれたのだった。

 

 

 

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