破神の愛馬のお話   作:elf5242

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出場者は本当に適当です、突っ込みは受け付けません()
あと、ウイニングライブはどうしようか悩み中です。
そしてレース終了のファンファーレはお馴染みのファンファーレを脳内再生してください()


その10

「では、此方の方に聞いてみましょう。」

 

と、"迅雷"と名付けられた天候の中、テレビカメラとマイクを持ち合羽を来たキャスターが次々と会場の観客に質問していく。観客はそれぞれ思い通りのウマ娘を答えていく。中でも一番多いのは。

 

『いやぁ、やっぱりテイオーだよ!』

 

『三冠はテイオーに決まりでしょ!』

 

『とうかいていおー!』

 

中年の男や青年、舌足らずな子供までもがテイオーの名前を口にする。ここまで無敗で来ているトウカイテイオー、誰もがテイオーの勝利を望んでいる。その様子にカメラマンやキャスターも満足そうに同意している。そして次の観客にカメラとマイクが向けられる。

 

「では、次は此方の方に聞いてみましょう。こんにちわ」

 

「あ、なんだよ?」

 

「あ、あの今日のレース…誰が一位になると思いますか?」

 

「そんなの決まってんじゃん」

 

と、インタビューを受けた中学生くらいの少年がぶっきらぼうに答える。カメラマンもキャスターも前の観客と同じように答えるのだろう、と期待して答えを待つ。

 

「俺の姉貴」

 

「…え、えーっと…」

 

「三番人気のイクシオンだよ。」

 

「そ、そうなんですか…な、なんでそう思うのかな…?みんなトウカイテイオー、って言ってるんだけど…」

 

なんて、遠回しにテイオーを応援しろ、なんて言ってみれば少年の目つきはさらに悪くなる。

 

「あ?なんで?あんなちんちくりんに俺の…"俺たち"の姉貴が負ける筈ねぇじゃん。」

 

「ち、ちんちくりん…」

 

「姉貴は俺たちの為に走ってる…姉貴は俺たちの為になんだってやってきた、だから姉貴が絶対に勝つ。」

 

「そ、そうなんですね…ありがとうございました…」

 

と、苦笑いしながらキャスターたちが去っていく。望んだ絵が撮れなかったのだから当然なのだろう。そんな背中からすぐに目を離して。

 

「…俺はきっちり見とくからな…姉貴。」

 

なんて、じっとターフを…そしてゲートに入っていく自身の姉を見つめていた。柄にも無くぎゅっと両手を合わせながら。

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

天候は雷雨…いやどちらかと言えば雨よりも雷の方が激しい気がする。たしかにこれは迅雷だ…この雷が鳴るペースもなんだか懐かしく思える。そんな記憶はない筈なのに。少しだけ雨に打たれた後にゲートに入る。コンディションは大丈夫、緊張はしてない…といえば嘘になる…。だけど、そんなのは今はどうでもいい。今はあの子達の為に、勝つ。その為に一つ深呼吸を入れる。

 

「…よし。」

 

スイッチは切り替わった、もう誰にも負ける気がしない。あとはゲートで大人しくスタートを待つ。左右は共に学校ですれ違いざまに顔を見ただけのウマ娘ばかり…。

 

「……よし、いこう。」

 

覚悟は決まった、あとは勝つだけ。みんなには悪いけど私にも戦う理由が、負けられない理由がある。そしてアナウンスが開始され全てのウマ娘がゲートの中に揃う。

 

【are you ready?】

 

「出来てるよ」

 

『さぁ、各ウマ娘ゲートに出揃いました。』

 

胸の中に響いてきた言葉にそう答えると同時に思い切り身体に電気が走る。気合は充分、充電は完璧、身体は万全…さぁ行こう。スタートの瞬間をトレーナーが、チームメイトが、観客が…固唾を飲んで見守る。そして…。

 

『各ウマ娘、一斉にスタートしました!』

 

ついにクラシック三冠の初戦の火蓋が切って落とされた。そして私は"わざと"一瞬出遅れる。スタート直後は13位…最初は…これで良い。

 

『先頭は6番 トウカイテイオー。1バ身開いてニシノフラワー、マチカネタンホイザと続きます。』

 

現在200m地点…そう、1000mまでは…これで、いい。今回は追い込みで走る。時折一段と大きく踏み込むが大幅な加速はしない。この踏み込みはあくまでも前への牽制…あれこれ考えるのは1000m地点までだ…1000mを過ぎたら、考えるのは…やめる。

 

『トウカイテイオー、やはり強い!クラシック三冠はこのウマ娘のものでやはり決まりか!』

 

会場のアナウンスに観客席が沸く。そしてテイオーコールが始まればテイオーにも力が篭る。それで良い、現在700m地点…残り300…イメージはもう固めてある。あとはゆっくり脚をためるだけ。着々とその時は近づいていく。

 

『さぁ、残り1000m!折り返し地点だ!未だ先頭はトウカイテイオー!』

 

『そこに2バ身差でニシノフラワー、ハナ差でスーパークリークと続きます!』

 

『1バ身開いて8番、7番、11番。更にハナ差で5番、4番、10番、12番、9番、1番、13番と続きます。』

 

『三番人気イクシオン、13位と言う順位で大人しいです、それに心なしか戦闘集団以外はかかり気味な気がしますね。』

 

のこり1000m…たった1キロメートルぽっちだ…全力で駆け抜ける。もう、イメージは出来てる。

 

目の前に映るのは荒野…雨と雷の降り注ぐ荒野。私と一緒にいるのはそう、あの黄金色の角を持つあの生物…いや、ちがう…これは…これは私だ。そう認識した途端に生物は黄金色の角を持った私に姿を変える。誰にも負ける気は無い…だから、行こう!私が駆け出せば隣を黄金色の角を持った私も一緒に駆け出す。

 

「『疾風とは迷いなき心なり、迅雷とは迸る情念なり!』」

 

【疾風迅雷・雷鎚加速】

 

二人の私の声が重なれば、一気に脚を解放して加速する。勿論今までとは段違いの強さで踏み込んで、芝を抉るくらいの強さで加速していき、13位から一気に前を大外から抜かしていく。

 

『おっと!?ここでイクシオン加速した!速い!速い!ごぼう抜きだ!』

 

『まるで折り返し地点を待ってましたと言わんばかりに脚を解放しましたね!』

 

次々と視界に入る子達を抜かしていく…6…5…4…3…2…。見るのは常に真っ直ぐ、ゴールだけ。そして視界に捕らえたのは白い勝負服の子…トウカイテイオーただ一人…!

 

「(きた!正々堂々、勝負だ!)」

 

「(見えた、追いついた…あとは、突き放す…!)」

 

残り500m…まだまだ行ける、乾く喉を無理矢理開いて息を入れる。肺と心臓が痛い。でもあの子達のためなら怖くないし、痛くない。この体がいくら傷ついてもいい、それが、あの子達の為になるのなら。あの子達の支えになるのなら。

 

「……ばれ!………ちゃんっ…!」

 

残り400m…私とテイオーさんでほぼ並走状態…観客席はほぼテイオーコールで埋め尽くされており、簡単に言えばアウェー状態だ。けど関係無い…まだ走れる…勝てる…勝つ…!観客のテイオーコールの中で一つの声援を聞き取る…。本当にテイオーコールに混ざるように確かに存在する声援…。

 

「が…ばれ…!おね…んっ…!!」

 

「……っ!…けっ!」

 

世界がゆっくりに感じる。聞き慣れたその声を…その声達を聞き間違う筈がない。なにせ…毎日聞いてた声なんだから。

 

「頑張れーっ!!お姉ちゃんっ!!!」

 

「姉貴!!いけっ!!」

 

「ねぇちゃん!!!」

 

思わず口元が緩んでしまう…同時に力が湧いてくる。約束通りちゃんと来てくれた…あの三人が約束を守ってくれた…!こんなに嬉しいことはない…そしてこれ以上の声援は…ない!!脚を動かして真っ直ぐ前を見る。隣は見ない…見てる暇なんてない。テイオーさんの姿は、視界からまだ消えない…なら、もっと…もっと早く!何度もしつこいようだけど具体的なアウトラインは気にしてられない…そんなのを気にしたら、絶対に負ける。

 

「シィィィ…!」

 

歯を食い縛り、そのまま駆け抜けて行く。もう一人の私も力を貸してくれてるのだ…ここで負けたら、申し訳が立たない。

 

「(絶対…絶対負けない!会長とおんなじ、無敗の三冠ウマ娘になるんだ!!)」

 

「(あの子達の為に…負けられない…!!絶対に取る!!!)」

 

お互いの意地のぶつかり合い…もう何も気にしてられない。今頭の中にあるのはこの人よりも先にゴールを潜ることだけだ。

 

『トウカイテイオー!イクシオン!共に並んでいる!!クラシック三冠への道を掴むのはどちらだ!!!?』

 

私達のデッドヒートに呼応するように雷が激しくなる。観客の完成が雷鳴に負けないくらいに声援が大きくなる。当然、あの子達の声も聞き取れる。言い方は悪いが…有象無象の幾千幾万の声援よりもあの子達の声の方が何倍も力が出る。

 

「(強い…楽しい…!こんなの初めて…!)」

 

「(強い…けど、負けられない…!負けない!!気持ちで負けるな…私も強い…!!!!)」

 

『残り直線400メートル!トップ争いは加速している!イクシオンか、トウカイテイオーか!?破神の愛馬が帝王を下すか、帝王が破神の愛馬を退けるのか!?』

 

『譲らない!お互い譲らない!テイオーが抜かせばイクシオンが抜き返す!イクシオンが抜かせばテイオーが抜き返す!どちらが意地を通せるでしょうか!!!?』

 

残り200mを切り観客達も声援を送りながらどちらが勝つのか声援を送りながら見守る。

 

「(レースを…純粋に勝負を楽しめるウマ娘にこそ…!)」

 

「(自分を捨てて…誰かの為に戦えるウマ娘にこそ…!)」

 

「「勝利の女神は微笑む!!」」

 

お互いが同じタイミングで踏み込み更に加速する…そして加速して1秒弱…ゴールの音が響く。

 

『トウカイテイオー、イクシオン!!並んでゴール!!これよりビデオ審議に入ります!!』

 

ゴールしたあとはゆっくりと速度を落としてから脚でブレーキを掛ける。そしてそのまま膝に手をついて深呼吸。だいぶ肺や心臓に負担を掛けた…短く浅くなりがちな呼吸をゆっくりゆっくり深呼吸で沈めていく。全身に酸素が行き渡る。血流がゆっくりと落ち着いてきて、当たった体がゆっくりと覚めていく。

 

「はぁっ…はぁっ…(そうだ…あの子達は…)」

 

と、息を沈めながらあの子達を探していく、確かに聞こえたんだ…あの時に。どこに、どこにいる…?と観客席をゆっくりと見回しながらあの三人を探す…私に会いにいくと言う約束を守ってくれた…あの三人を。

 

『お待たせいたしました!!ではこれよりアルティメットスローカメラのフレーム映像を交えながらの順位発表を行います!』

 

アナウンスが会場に響き渡ると同時に次々と順位が表示されていく。そして三位まで表示されたところで止まり、そして巨大スクリーンに映像が映し出される。そしてコマ送りのように少しずつ映像が進んでいく。観客も、ほかのウマ娘も…私もテイオーさんもスクリーンに釘付けだ。一枚ずつフレーム映像が進んでいく。進んでいくと同時に天候が変わっていく。雨と雷の降り注ぐ迅雷から、真っさらな晴天に段々と変わっていく。

 

『ゴール判定はイクシオン!!ハナ差にも満たない僅差で初戦の皐月賞を制しました!破神の愛馬、ここにあり!!!初めてのG1レースを、そしてクラシック三冠の初戦を見事に勝ち取った!!!!』

 

そして運命の時は来た…先にゴールラインを越えたのは…ほんの数ミリの差で…私だ。そして一位の欄に13番が表示される。

 

「……〜〜〜〜〜っ!!」

 

『 Eorzea terra nata fantasia 』

 

やったんだ…!!まずは一勝を成し遂げた…あの子達の目の前で…!あの三人の目の前で…!!そして、一位の表示に少し遅れて会場にはいつもと違うファンファーレが流れた。ファンファーレに合わせて、掌で出来た雷球を握りつぶした後に、腕を振り上げ、そしてすぐさま振り下ろせば…晴れた空に一閃の…晴天の霹靂が走り私の背後に落ちた。

 

「おめでとう!!」

 

と、トウカイテイオーさんが駆け寄ってきて私の手を握ってくる。

 

「すっごく強かったね!!でも、僕ももっと強くなる!次は負けないからね!」

 

「はい、望むところです。」

 

勢いに飲まれそうになるものの笑顔でこちらを激励してくれるテイオーさん、それにこちらも笑みを浮かべて答える。

 

「それでは」

 

「うん、次は…」

 

「「日本ダービーで!!」」

 

と、固く握手を交わした後にそれぞれターフを後にする。そして疲労の残る足に鞭打って着替えるのも忘れてあの子達を探す…どこにいるんだろう…。と、人々の中をかき分けて探す。途中記者などもいたが振り切る。ごめんなさい、あなた達に構ってる暇は無いんです…。会場の入り口周辺を隈なく探すもいない…もう帰ってしまったのだろうか…と、少し肩を落とし掛ける。

 

「…また、手紙でもだそうかな…」

 

と、少しだけ足取りを重くしながら控室に向かおうとすると…。

 

「お姉ちゃん!!」

 

と、後ろから呼びかける声がする…そして背中に衝撃と温もりを感じる。

 

「お姉ちゃん…お姉ちゃん…!!」

 

「おいおい、姉貴も疲れてるんだぜ…勘弁してやれよ。」

 

「そうだよ、ミオ。」

 

と、少し泣きそうになりながらも後ろを振り返ればやれやれ、と言った顔で近づいてくる男二人組と私の背中に引っ付き虫のようにくっついている私の可愛い妹の一人。

 

「ありがとう…ゲン、リュウ、ミオ…」

 

貴方達のおかげで勝てた、と最後まで言いたい。けど言えない…言ったら泣いてしまいそうだから。泣くのはあの時で最後って…決めたんだから。

 

「…お礼を言うのはこっち…お姉ちゃん…ありがとう…」

 

背中に埋めている顔は既に涙でぐしょぐしょなのだろう、少し上擦った声が途切れ途切れで聞こえながら。

 

「お姉ちゃんの…おかげで、立ち直れた…だから、もっと私も頑張るから…!!だから、無茶だけしないでね…!!みんなで、またネストに帰るんだから…!!」

 

「そうだぜ姉貴…さんざ、姉貴に支えてもらったんだ。これからは俺たちも姉貴を支える。」

 

「もう、姉ちゃんの取りこぼししか出来ない僕たちじゃ無いんだよ。姉ちゃん。」

 

…あはは、ほんの数ヶ月見ない間に大きくなって…嬉しい限りだ。あとは、ちびっ子達が元気にしてくれたなら、それでいい。重荷が一つ、取れたような気がした。そしてミオを一度引き剥がしてから三人のおでこをそれぞれ指で軽く小突いてやる。

 

「頼りにしてるぞ、三人組。それじゃあ、またね。」

 

そう言って声を掛けた後に、私は今度こそ控え室へと向かう。控え室の中は一人、割と防音もしっかりしてるので…バレないだろう。扉を閉めてその扉に背を預ける形で…ゆっくりと座り込む。

 

「…良かった…本当に…!」

 

と、緊張の糸が切れてしまったのか溜め込んでいたものが溢れて頬を伝う。あの三人が立ち直って、歩き出してくれた。もうあの三人は大丈夫だろう。本当はぎゅっと抱きしめてあげたかった。でも、それをしたら自分の我慢ができそうに無かったから。

 

「ありがとう…ありがとう…!!」

 

ありがとう、ゲン、リュウ、ミオ…。会いに来てくれて、力をくれてありがとう…。そして我慢が出来ず控え室で思いきり泣いた。ごめんなさい、神様。約束破って…ごめんなさい。

 




「入っていくのは…無粋と言うものだな。」

「そうですね、会長。」

「トレーナーと職員にはもう少し掛かると言っておいてくれ。」

「はい、会長。」

と、ウイニングライブが終わった後に二人の気遣いを聞いて、めちゃくちゃお礼を言った。

イクシオンが負けるならどれ?

  • 菊花賞でライスかテイオー
  • 秋花賞でダスカ、ウォッカ、ライホ
  • 有馬記念でルドルフ
  • 天皇賞(春)でライスかマックイーン
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