破神の愛馬のお話   作:elf5242

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その13

桜花賞も終わってやっとひと段落…と言いたいところなのだがまだ早い。次は日本ダービーとオークスだ。日本ダービーではトウカイテイオーさんのリベンジが。オークスではエアグルーヴさんとの勝負が待っている。

 

「っ…!!!ぁぁああああああああああっ!!!」

 

そんな中、私はトレーナーさん所有の隠し練習場にて、トレーナーさんの指示のもと四トントラックと綱引きをしている。綱引きとといっても私の腰とトラックの後ろ部分をロープで繋ぐだけ、四トントラックは荷物満載でアクセル全開である。運転手はトレーナーさんの実家の使用人みたいだ。本当にこの人何者なんだろう…?いや、そんな事を考えてる余裕がない…4トントラック相手に踏ん張りつつも引き摺り、引き摺られを繰り返し地面は抉れっぱなしである。そんな中、思い切り踏み込んだ後に靴裏からバキンッ!!!と嫌な音がした。

 

「はい、いったんしゅーりょー。」

 

と、トレーナーさんが手を振ってトラックとの綱引きは一度終了。トレーニングシューズの裏を見れば見事に蹄鉄スパイクが真っ二つに。

 

「いやぁ、見事に踏み砕いたねぇ。これで何個目だっけ?」

 

「18個目です…。」

 

「履き潰したトレーニングシューズは?」

 

「9足目です…。」

 

「相変わらず凄まじいねぇ、ウケるw」

 

そう言いながら地面に座り、新しいトレーニングシューズの靴裏に新しい蹄鉄を打ち付ける作業を始める…あらかじめ打ち付けたのを何足か作るべきかな?なんて考えてると。

 

「あ、ちょーっと待ってて…よい…しょっ、と…」

 

と、トレーナーさんにストップを掛けられる。そして真新しい蹄鉄を渡される。だが…。

 

「っ…!?お、もい…!」

 

油断していたのか、一瞬バランスが崩れそうになった。ウマ娘ですら重みを感じる重さの蹄鉄。これを片手で渡してきたトレーナーさんって…。いや、考えるのはやめよう。

 

「気をつけてね、それ片方80キロくらいあるから。」

 

「はい…?」

 

…この人本当に人間ですか?と怪しんできた今日この頃です。ですが、まぁ、受け入れましょう。…大丈夫、考えるのをやめたわけじゃありません…多分。そしてトレーナーさんに渡された蹄鉄を新しいシューズに打ち付けていきます。少し遠くに目を向ければ会長さんは6トントラックと引き合ってました。会長さんもこの蹄鉄付けてるんでしょうか?

 

「ドルフには30キロのやつしか渡してないよ。というか、君が色々と規格外なんだからね?」

 

「は、はぁ…」

 

「まぁ、いいや。最終的にはアレとやって貰うから。」

 

と、トレーナーさんが指差せばそちらの方を向く。そこには人が小さく見えるほどの大きな車…車と言っていいのだろうか…?タイヤだけでも人間の倍以上はある。

 

「トレーナーさん。」

 

「ん〜?何〜?」

 

「なんですか、あれ?」

 

「リープヘル」

 

「名前じゃありませんよ…」

 

「ダンプカー」

 

「失礼を承知で言います、バカなんじゃないですか?」

 

「大丈夫大丈夫、順調にいけば勝てる勝てる。」

 

流石に死にますよ?トラックとは馬力も重量も違いすぎるじゃないですか。

 

「え?君らもタイヤ引きであれのタイヤ使ってるし大丈夫でしょ。」

 

聞きたくなかったそんな事実、いや、たしかにそうだけど。まさかあんな大きいダンプカーのものだとは思いもしませんよ。

 

「ふむ、イクシオンと二人なら勝てるだろうか?」

 

「やめてください会長さん、無理です。」

 

「というか、ドルフも見事に踏み砕いたねぇ。はい、新しいやつ。」

 

「毎回すまないな、トレーナー。」

 

「いいのいいの、このくらいなら文字通り痛くも痒くも無いし。」

 

会長さんもどうやら蹄鉄を踏み砕いてしまったらしく、交換の為休憩中。そしてリープヘルを見て一言。いや、私もちょっとだけ希望を抱きましたけど、流石に二人でも無理っぽいです…後一人私たちと同じような実力の人がいればまだ確率は上がりますけど…って、何を考えてるんですか?私は…。

 

「まぁ、今の二人ならギリギリじゃない?将来的には一人で勝ってほしいけど。」

 

「そうか、ならものは試し…」

 

「せめて日本ダービーとオークスが終わってからにさせて下さい…」

 

と、会長さんにお願いする。トレーナーさんの態度を見てると明らかに「やれるもんならやってみな?」という、挑戦状臭がする…。やるならせめて怪我をしてもある程度余裕のある日本ダービーにしてくれると嬉しいです()

そんなこんなで今日1日は、ひたすらトラックと綱引きしてました…あんな大きいダンプカーに勝てるんですかと不安になるところですが。そして、翌日に学園に戻ったときに事件というか、トラブルは起きました…とあるマッドサイエンティストウマ娘の研究の成果のおかげで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでトラックと綱引きをして、数日後。一週間に一度アレが行われており、最近は相手が8トントラックになりました。これは喜んで良いのでしょうか。トレーナーさん曰く、下手なマシントレーニングよりよっぽど身になる、との事。ただ、足の筋肉痛がすごいです。

 

「いたたた…これ、レースまで待つかな…」

 

と、筋肉痛に耐えながらカフェテリアへ移動する。今はお昼時なので昼食を取りに来た子たちで溢れかえっている。私も軽くサンドイッチを3〜4個ほど取り、ミルクティーと一緒に頂きます。一つ食べた後にミルクティーで一息…そのあとは女神像広場で本でも読もうか、なんて予定を立てる。特に何事もなく昼食を済ませ、女神像広場へ…が、何やら様子がおかしい。

 

「どうかしたんですか?」

 

「あ、イクシオンさん…!…うしろっ!!」

 

と、周囲にいた子達の一人に声を掛ける。声をかけた子が声を上げた瞬間に、後ろから飛んできた蹴りを話しかけた子を庇いながら蹴りで相殺し、そのまま蹴り抜いて蹴りをかましてきた犯人を吹き飛ばす。

 

「…穏やかじゃあ、無いですね…周囲にいる子達は逃げて!ねぇ、あなたにお願いしていい?誰でもいい、生徒会の人たちを呼んできて。」

 

「わ、分かりました…!」

 

「ありがとう…行って!この場はなんとかする。」

 

と、庇った子にそう言いながら目の前の子と相対する。目を見開き歯を剥き出しにしながらこちらを睨んでいる…明らかに正気を失っているようだ。少しおとなしくさせたいがあまり乱暴なことは出来ない、この子にもレースがあるかも知れない。と、構えを取る。

 

「自分も怪我をしない…相手もあまり傷つけない…両方やらなきゃいけないのが辛いところですね…」

 

覚悟は良いか?私は出来てる。叫び声を上げながら向かってくる子を丁寧に捌く。がむしゃらなワンツーは腕で弾きつつ隙を作り、こちらからは反撃しない…反撃しても腕などのなるべく問題無い箇所に掌底などを集中させていく。当然蹴りなども飛んでくるがこれは受ける。

 

「っ…!!(おっ、もっ…!)」

 

ウマ娘なだけあって脚力は並以上だが…異常に重い。まるでドーピングでもされているような感じだ。

 

「(とりあえずおとなしくさせない、と…!)」

 

蹴りを受けて返したあとは大振りの右がくる、そのタイミングで相手の右手首を左手で掴み、懐へ踏み込んで顎に向けて45度の角度で掌底を打ち込んで脳を揺らす…一瞬意識が飛んだのを見逃さずに体制を崩しに掛かる。右手首を掴んでそのまま外から回り込んで背中に移動した後に相手の膝を崩し、うつ伏せに押し倒してそのまま体重を掛けて相手を拘束する。さらに自身のもう片方の脚を相手の足に絡めて脚も拘束、これでよっぽどの事がない限りは抜けられないはずだ。

 

「うぅ…!ああああっ…!」

 

「一体何がどうなってるの…?」

 

まるで闘争本能を剥き出しにしている獣のようだ。理性が全く働いていない…。力も強くなっている…どういう事だろう。そのまま拘束していれば会長さんと一緒に医務室の方々が来てくれた。そして拘束してる子に鎮静剤を打ちこむ…。おとなしくなったところで拘束を解いてあげる。

 

「レースも近いのに済まなかったな、イクシオン。」

 

「いえ、大丈夫です…しかし一体何が…?」

 

「分からん、他のところでも同じように異変が生じたウマ娘が多数いてな。」

 

と、駆けつけてくれた会長さんたちが説明してくれる。異変が生じたウマ娘たちの共通点はなし。クラスも無ければ接点も無い。顔見知り、というのは学園に通っていれば嫌でも顔を合わせるので問題無い。

 

「完璧な無差別…?」

 

「ああ、だが原因はハッキリしている。アグネスタキオン、知っているだろう?」

 

「あぁ…私も血液取られましたけど…」

 

アグネスタキオン、今はレースから離れて医師免許を獲得…トレセン学園で擁護教諭として保健室を根城にしている人だ。本人曰く「合法的に研究も出来て、新しい薬も試せる。最高の環境じゃないか。」との事。

 

「そのアグネスタキオンが管理しているとある薬が盗まれたそうだ。」

 

「たしか、かなり厳重に保管してましたよね…?」

 

一度保健室にお世話になったことがあるが薬棚は強化ガラス製で鍵が何個もつけられている…かなり厳重に保管されていたはずなのだが…。

 

「実は…数ヶ月前とある薬が盗まれてな。あの厳重になったのはつい最近、そして警察と協力して今もなお捜査は進めているんだが尻尾のしの字も掴めていない。」

 

「そうなんですか…というか、良く盗めましたね…。」

 

「全くだ…そして、その薬なんだが、本人曰く…「本性を暴く薬」だそうだ。」

 

「本性を暴く…?」

 

「怪我などでトラウマを負ったウマ娘の治療に使う、闘争心を引き出す薬の副産物だそうだ。本人曰く「いくら希釈しても使えたものではない失敗作。」との事だ。」

 

「盗み出されただけでも一大事なのに…」

 

「あぁ、そしてこの症状はその薬の症状と99%一致しているとの事だ。つまり…」

 

「薬を盛った犯人が…まだ何処か…に…」

 

と、会長さんと話してる時に不意に大きく心臓が跳ねる。そして私はそのまま胸を押さえて崩れ落ちる。

 

「…!どうした…?まさか…!頼む!こっちだ!」

 

会長さんの声が聞こえる…その他周囲にエアグルーヴさんやナリタブライアンさんの声も聴こえる。あとは医療チームの人達も。

 

「(なに…こ、れ…心臓が…それに、頭も…痛い…!息が、うまく…でき…ない…!?)」

 

「不味いぞ!鎮静剤が効かない…!」

 

「(…これはダメ…!意識が…持たない…!)」

 

うまく動かない喉を酷使して潰れたような声で、私は周囲に伝える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は"な"……れ"て"……!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声にみんなが離れた瞬間に、私は意識を手放し…そして、この日一番大きな雷が私に直撃した。

イクシオンが負けるならどれ?

  • 菊花賞でライスかテイオー
  • 秋花賞でダスカ、ウォッカ、ライホ
  • 有馬記念でルドルフ
  • 天皇賞(春)でライスかマックイーン
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