トレセン学園…正式名称"日本ウマ娘トレーニングセンター学園"。予備知識が無かった為知らなかったが、私みたいに耳や尻尾のついてる女の子達をウマ娘と呼ぶらしい。そしてここはそんなウマ娘達が切磋琢磨しながら夢を叶える場所、という事でOKらしい。情報ソースはタカにいちゃん。そして今タカにいちゃんはウマ娘用のトレーニンググッズの作成や販売を行う会社の社長らしく、本人曰く怖いくらい経営が順調、社員過労死しねぇよな…ブラック認定されるのだけはごめんだぞ?とつぶやいていた。あと、ちなみに転入に関しての試験は合格しました。ただし、正式に通うのは次の4月かららしい。
「まぁ、詩音なら余裕のよっちゃんイカだろ…まぁ、よっちゃんイカ、もう無いんだけどな。」
「なにそれ?」
「俺がガキの頃にあったお菓子だ。ちょっとすっぱい味のするイカだ。」
「美味しくなさそう」
「食わず嫌いは良く無いぞ、詩音。」
そんな他愛もない会話をタカにいちゃんの愛車…ハチロク?っていうらしい。のなかでしながら。
「ほれ、ついたぞ。」
タカにいちゃんのお店の本店に着く。タカにいちゃん自体がいろんなお店に飛び回ってるらしくお店に入ると従業員達がピシッと姿勢良く挨拶をしている。そんな姿を見て本当に社長なんだと思ってしまう。
「社長…そちらのお嬢さんは…?」
「あー、俺の妹。児童養護施設育ちだっていったろ、おれ。」
なんて、店長さんらしき人とタカにいちゃんが何やら話している。そして話が終わりタカにいちゃんが手招きしてくると素直にタカにいちゃんについていってみる。
「てなわけで、今から採寸だ。トレセン学園の制服はうちでも扱ってるからな。」
「そっか…学校なんだから制服だよね。」
「そういうこった、こっちにきな。」
タカにいちゃんに連れられて、奥の部屋についていけば女性の店員さん複数人が待ち構えていて。
「なるほど…たしかにこれは…」
「だろ、こいつにぴったりのを見繕ってくれ。」
「おまかせを、社長。では詩音さん…こちらへ。」
「終わったら呼んでくれ〜、おれは少〜しばかり用事を済ませてくる。」
そう言ってタカにいちゃんは奥へと消えていく、代わりに女性の店員さんに連れられればすぐさま店員さん達に丁寧に上着を脱がされてインナーだけになる。そしてあちこちをメジャーで測られる。スリーサイズから二の腕やふくらはぎ、太ももに至るまでありとあらゆるところを図られるとくすぐったいし、なんだか恥ずかしい。
「ありがとうございます、詩音さん。それでは楽しみにしていてくださいませ。」
「あ、いえ…ありがとう、ございます…?」
と、採寸をしてくれた店員さんにこちらも挨拶を返して。楽しみにって…なんだろう、学校の制服なんだし特に…なんて考えながら着替えていると奥から「申し訳ありませんでしたぁ〜…!!」と、情けない声が聞こえてきて。
「まったく、変な声を俺の妹に聴かせるんじゃねぇよ。妹の鼓膜が腐る。」
と、凄みを効かせた声がタカにいちゃんから聞こえる。おそらく店長さん、何か悪いことでもしたのだろう。昔からタカにいちゃんはチャラチャラとはしているが怒った時は物凄く怖いのだ。
「さて、お?終わったか。」
「うん、用事は終わりなの?タカにいちゃん。」
「おう、制服とかいろいろ、楽しみにしておけよ。」
「……?うん、分かった。」
タカにいちゃんの言葉の意味がいまいちわからずに首を傾げてしまう。タカにいちゃんのこの言葉の意味を知るのはずいぶん後になってからだったのは言うまでもない。
♢♢♢♢♢♢♢♢
数日後、タカにいちゃんと一緒に日用品や私服などを買いに行く。トレセン学園は全寮制らしく、色々持っていかなきゃ行けないらしい。車の中でトレセン学園のパンフレットや渡された書類、校則などを読み込んでいく。転校させてもらう学校の事くらいはちゃんと把握しておきたい。
「っと、こんなもんかぁ…どうだ?緊張してるか?」
「ちょっとだけ…」
「まぁ、いきなり環境も何もかも変わっちまうからなぁ…まぁ、しっかりバックアップはしてやる、まかせろ。」
と、タカにいちゃんはサムズアップしてくる。その姿は私にとってヒーローのようで。
「うん、ありがとう…タカにいちゃん。ちょっとだけ元気出た。」
「そいつぁ、良かった…っと、はぁいもしもし?お、そうかそうか…今から行く。」
「タカにいちゃん?」
「トレセン学園の制服、出来たみたいだぞ。取りに行くか?」
「うんっ!」
「よぉし…んじゃ、詩音。一走り付き合えよ!」
「え?きゃぁぁっ!?」
そういうとタカにいちゃんはいきなりすごいドライビングテクニックを見せつけてくる。具体的には某頭文字の人達くらいに凄かった。ただ調子に乗った結果、後日タイヤ交換をする羽目になったらしい。そしてタカにいちゃんのお店にまた来ればいきなり奥に通される。
「はい、詩音さん。此方です。」
と、ちょっとしたテレビの箱よりも大きい段ボールが手渡される。まぁ、確かにそうだ。中学の時の制服もこんな感じだった。ブラウスや冬服なんかもまとめて入っているのだろう。そしてそれを受け取った後は…何故か問答無用で試着室に案内された…着替えて見せてからと言う事だろうか、カーテンの向こうでタカにいちゃんがワクワクしているのが簡単に想像できる。
「これかな…冬服、で良いよね?」
おそらく入学の時には冬服を着ることになるので着慣れた方が良いだろう。ということで早速着用してみる。私も内心はちょっと楽しみで。思ったより良いデザインに合わず頷いてしまう。濃淡の紫色ベースの角襟セーラー服と紫色のプリーツスカート…尻尾がある分スカートが履きにくいのはご愛嬌、ちょっとばかり苦戦しながら最後は尻尾用の穴に尻尾を通して。
「………ぁぁぁぁあああああ"あ"あ"あ"っ!!!?」
試着室のカーテンを開けて、外に出てみると一瞬間が空いた後におおよそ人間のものとは思えない声が聞こえてきた。そしてタカにいちゃんは何故か膝から崩れ落ちて土下座のような体制を取っている。
「やべぇ、天使がいる…なぁ、俺の妹をどう思う!?天使だよなぁ!女神だよなぁ!結婚したいとか言ったらぶっ殺す!」
「天使…」
「女神…」
「結婚しよう(迫真)」
「よーし、お前らそこにならんで歯ぁ食いしばれ…!」
タカにいちゃんが何やら覗いていた男の従業員さん達とコントを繰り広げているが気にしないでおこう。男の従業員さんたちはタカにいちゃんに一発ずつ殴られて「ザクっ!?」「ドムっ!?」「グフっ!?」と変な声をあげてましたが。
「よし、抹殺完了…んで、着心地はどうよ?」
「うん、サイズもぴったりでいい感じ…ありがとうございます。」
「いえいえ、こちらもいい仕事をさせていただています、社長の妹さんがウマ娘で、そのお手伝いができると言うのであれば、私たちにとっても光栄です。」
と、女性の店員さんはきっちりと挨拶をする。まるで職人さんのようだった。そうして制服を受け取りタカにいちゃんと帰路に着く。そして徐にタカにいちゃんが車の窓を開ける。
「さて、明日から荷物を寮に運んで…入学の一週間前には寮暮らしだ。そうなるともう俺も簡単にゃ出入りできねぇ…一人になっちまうが…やれるか?」
「うん、大丈夫だよ…タカにいちゃん。だって、私はお姉ちゃんだもん…!」
「はっはっはっ…泣き虫ちびっこが良くここまで大きくなったもんだ…おっと…どうやら雨が降ってきちまったらしい…」
「雨…?たしかに少し曇り気味だけど雨なんか…」
「うるせぇ…俺が降ってるって言えば降ってるんだよ…」
なんて、ちょっとタカにいちゃんの声が上ずっているような気がした。
「しつこいくらい言うが…頑張れ。友達もたくさん作れ…連れてきたら、たまには飯くらい連れてってやるよ…」
「うん…ありがとう…タカにいちゃん…あはは、本当だね…雨、降ってる…」
「だろ…雨なんだよ、今日は…」
「タカにいちゃん…わたし、頑張るから…!みんなに強いお姉ちゃんを…しっかり見せるから…!!」
「おう…!」
タカにいちゃんと握り拳をぶつけ合った。
♢♢♢♢♢♢♢♢
1週間後、トレセン学園の寮の入り口にトラックが着き、荷物を搬入している。私のような転校生や新入生などの荷物も運び込まれているようで。そしてトレセン学園の職員さんから渡された寮の鍵を受け取り荷物を整理する。基本寮は相部屋になるらしい。
「うん、これで全部だね。」
私の荷物は非常にシンプル。着替えと私服、学園の制服に日用品など。そしてすこし焦げてしまった写真立て。これは警察の人から渡されたものだ。シスターの遺体は蹲るようにして発見されたらしく、この写真立てを抱えていたらしい。そしてそこには三人組の中学進学祝いに撮った、桜並木での集合写真。途中シスターがこけたり何人かの子がトイレに行ったりと何度も取り直しをして、ようやくよく撮れた一枚だ。みんないい表情をしていて。弟妹達はみんな笑顔で、ゲンは私に撫でられてちょっと照れていてやめろと反抗気味で、ミオはそれを羨ましそうにジト目で見ていて、リュウはそれを苦笑いで、シスターはそれを優しく見守っていて。そんな幸せな写真で。
「待っててね…みんなに必ず強いお姉ちゃんを見せてあげるから…!」
ひとりぼっちの寮の部屋でそう決心を固める。今日からは寮暮らし。タカにいちゃんからスマホを契約してもらいたまにタカにいちゃんとLINEや電話で話している。シスターがくれたガラケーは今でも残している。捨てるには…思い出がありすぎる。
「ちょっと疲れちゃったな、寝よう…」
写真立てを机に置き、ベッドに横になる。隣を見ればメイキングだけされていて、他はまだ何も置かれていないベッドが目に入って。どんな人が相部屋なんだろう。なんて考えながらゆっくりと瞼を閉じる。ここ約三ヶ月ほどで色々ありすぎた…混乱しながらも日本各地に散らばってしまった家族の為にここで頑張ると決めたのだ。眠りに落ちる前にあの日のタカにいちゃんの声が聞こえた。
「
「出来てるよ…」
そう呟いて、眠りに落ちた。その日の夢は…ふしぎなゆめだった。
♢♢♢♢♢♢♢
入学式、及び始業式前日。新入生達もあらかた揃っておりみんなあちこち制服で歩き回っている。かく言う私もその一人で学園の地図くらいは頭に入れておきたい、と言うのが目的だ。多分みんな大半はそうだろう。しかし、広い。多分初見だったら地図が無いと絶対迷う。
「三女神像…」
そして、トレセン学園の中でも一番神聖な場所、三女神像の前に来た。文字通り女神と崇められている三人のウマ娘たちの像が噴水となっている。神聖な場所ではあるが同時に憩いの場でもあるようで、少しだけ近くのベンチに失礼する。暖かくなってきた風に混じった水飛沫の残滓が心地いい。なんだったらここで本でも読めばいい環境なんじゃぁ、無いだろうか…休日には本でも買ってこようか…なんて考えながら、空を見上げる。
「シスター…見ててね。大丈夫、私はお姉ちゃんだもん。」
『無理をしないように。身体を大事にしてくださいね。』
天国からシスターが応援してくれてるような気がした。そして、噴水広場で時間を過ごして夕方ごろ。周りに人がいなくなったので、自身も寮に戻ろうとする。そして。
「えっ…?」
誰かに呼ばれた気がして後ろを振り返る。誰もいない。あるのはいつも通り三女神の噴水で。気の所為かと帰路に着こうとすると。後ろから何かに追い越される感覚がして。
「何…あれ…」
『ブルルルッ…』
目の前にいたのは、四足歩行の生き物。久々に前世の記憶を引っ張り出す。前世では馬と呼ばれた生き物。ただし馬とは明らかに違う威厳を放っている。私と同じ白銀色の立髪、真紅の瞳…何より違うのは額から生えた形容し難い形をしている大きな黄金色の角。前世でいうユニコーンなのだろうか。それに身体の周りにはバチバチと電気が走っており、まるで認めたもの以外を拒絶しているようで。
『………』
その生き物はこちらに視線を向けた後に走り出す。そうした後に、何故か自分も走り出さないといけないような気がして、その生き物の背中を追って走り出す。
「………っ!?…なに…?今の…でも、なんだろう…悪くない気分…!それに、ずっと分からなかった何が分かった気がする…!!」
そして、目の前に光が満ちたところで目が覚める。あたりはすっかり暗くなっており、時間を見れば18時前で。居眠りでもしていたのだろうか、とりあえず締め出されないために早速寮の部屋に帰る為に帰路に着く。胸の中がなんだか暖かくて。悪く無い気分だった。スポーツで言う、ゾーンに入ったような感覚だった。
♢♢♢♢♢♢♢♢
『さぁ、トレセン学園選抜レースがいよいよ始まります!』
『どんなレース展開…どんなドラマが待ち受けているのか、注目しましょう!』
入学式も厳かに終えて間もなく、選抜レースというものに出場することになった。と言うのも転入生はどうやら運が悪く私一人だったようで、学園が直々に招いた転入生ということもあってか、出さざるを得ない状況らしい。説明してくれた名前が覚えにくい生徒会長さんが説明してる時も本当に苦渋の決断だったらしい。
『1番、ーーーー』
女性のアナウンスの声で出走する子たちの名前が呼ばれる。もちろん私は一番最後だ。体操着に9番のゼッケンで呼ばれる時を待つ。
『9番、ーーーーー』
名前を呼ばれれば、同時に大型モニターに私の顔が映し出される。生徒会長さん曰く「腕試しのようなものだ、気楽に挑みたまえ。」との事らしいのでそれなりに緊張感を持ちつつ身体を解す。そして出走者全員がゲートと呼ばれる機械の中に入る。
『各ウマ娘、ゲートに出揃いました!』
『全員気合十分ですね、いいドラマが見れそうです!』
「えー、それではシンプルにスパッとだらっとやりましょ〜…」
と、スタート係らしきやる気のなさそうな男が矛盾する発言をしていることに心の中で突っ込みながら目の前に集中する。予備知識はある程度付けてきた、だが、百聞は一見にしかず。目で見て体験しないことには分からない。
「さーん」
スタートの構えを取る。
「にー」
足に力を入れる
「いーち」
あとはその時を待つ
「カマ〜…」
間延びした間抜けな声、カを言い終わった直後にゲートが開き、9人が一斉にスタートする。距離は1600m。数秒もしないうちに集団は団子状態から徐々に、徐々に引き伸ばされていく。
『さぁ、各ウマ娘綺麗なスタートを切りました!』
『400m通過、現在の順位は先頭7番、後ろに3番、1馬身離れて5番、ハナ差で9番…』
アナウンスによる実況が嫌でも耳に入ってくる。引き伸ばされたレースは今の所私が4番。観客席も盛り上がっているようで歓声が上がる。もちろんトレセン学園で行われているのでトレーナーやこれから先輩、同級生、後輩になる子たちもたくさん見ている。出走前にカメラも来ていたことから、テレビにも映るかもしれない…あの子達が見るかもしれないと考えると…負けられない。
『1200m通過!残り400!ここからが勝負!4番、逃げ切れるか!?』
「(ここだっ!)」
約束したんだ、タカにいちゃんとシスターと。見ているかもしれない弟妹達のために、強いお姉ちゃんを見せるって!!その瞬間に時間が引き延ばされる感覚がする、広い平野のど真ん中に自分が立っている、そしてその自分に雷が直撃するイメージ、そのイメージをそのまま思い切り強く地面を芝を踏みしめる、次の瞬間には加速していく。踏みしめた音に驚いたのだろう、後ろから軽く悲鳴が聞こえた気がする。苦しそうな表情の5番と3番の子が驚いたような表情で私を見るが関係無い。
『ここで9番!!飛び込んできた!!はやい、はやい!あっという間に先頭の背中を捉える!!』
『残り200!7番も喰らいつく!!しかし9番、振り払う!!速い!9番速い!圧倒的加速で、今ゴールイン!!選抜レースを制したのは9番!!』
「はぁっ…はぁっ…!!」
ゴールインしたあとになんとかスピードを落とそうとするが何故かなかなか落ちない。仕方ないとばかりにちょっとだけ芝を削ることになるが仕方ない。このまま止まらずに大怪我をするのは私だ。走りながら足に力を入れジャンプ、同時に横にひねりを入れて着地、直後にまた踏み出してジャンプ、そして次のジャンプでゴールの方へと向く、つまり軽く腰を落として後ろ向きに進みながら軽く芝を削りながらなんとか止まる。
『9番!イクシオン!!圧倒的加速で勝利をもぎ取った!』
私が一番…良かった。このレース…あの子達も見ているだろうか。もし、見てなかったとしてもあの子達の目に強いお姉ちゃんを届ける…そしてまたもう一度、家族と一緒の未来を作って見せる。自身の真紅色の瞳に覚悟をのせて…私はレース場を後にした。
ウイニングライブで何が聞きたい?
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