「いやぁ、本当にやっちゃったねぇ。」
「はい、ごめんなさい…」
なんて、トレーナーさんと病室で話します。どうも秋華賞を終えたばかりの私です、イクシオンです。ちょっと秋華賞で無茶し過ぎちゃいました…。
「全治2ヶ月半…筋肉断裂と皮膚裂傷による出血。まぁ、それだけ出したってことだし、これは僕が読み違えた結果だなぁ…反省反省。」
そんなわけで私は今病院です。病院に運ばれてすぐに部分麻酔による手術になりました…レースを終えた後の私の左足ですが、思った通り大変なことになっていて…トレーナーさんの言う通り筋肉と皮膚が裂けて出血してました。
「伸び切った左脚をあんなに酷使したからねぇ。まぁ、そうなるか。」
「…ごめんなさい…」
トレーナーさんの言う通り、全治2ヶ月半、年末過ぎ辺りまで走れません…。同時に下半身トレーニングもあまり、と言うか一切できません。当然ですが、左右の脚で差が出来てしまうと走りにくくなるのです。
「僕の方は気にしなくて良いよ。君に無茶をさせたのも僕の責任だし、君の潜在能力を見誤ってたのも僕だ。そろそろメンタルキツいんじゃない…?」
「……。」
バレてますね、気不味そうにトレーナーさんから視線を逸らします。その通りです…。実際ちょっと…いや、かなりキツい…。色んな人との約束を守れなかったことがかなり心に刺さってます…。
「大丈夫、きみは僕の想定以上の全部を出し切っただけ…それを読みきれなかった僕の失態だよ。まぁ、しばらくはオフだと思ってゆっくり、怪我を治してね。」
と、トレーナーさんは病室から出て行きます…コツ、コツ、コツ…と足音が遠ざかれば…もう、限界です。
「…くぅぅっ…ぅぅっ……!」
と、頬を熱いものが零れ落ちます…それは病院のベッドのシーツに確実にシミを作って…。無事な方の右足を体育座りのように曲げて、その足に向けて額を押し付けて。
「あぁぁっ…!うあぁぁぁぁぁぁっ…!!!!」
悔しい…こんなに悔しいと思ったのは初めてだ…。レースに負けたと言うのもある。…角まで出して…もう一人の私の力を使って挑んだのに、負けた…。けど、レースに負けたのも確かに悔しい…だが、本当に悔しいのは…。
「みんなっ…!ごめっ…!ごめんなざいっ…!おねぇぢゃん、やくそく、まもれながった…!!」
そう、弟妹達との約束…必ずみんなに強いお姉ちゃんの姿を届けるから、と言う約束を…守れなかった…!それが、それがたまらなく悔しい…!!
「ぁぁぁっ…!!あぁぁぁっ…!!」
そのまま病室で一人ぼっちで…泣き疲れて寝てしまうまで泣いた…。
♢♢♢♢♢♢♢♢
「……」
イクシオンが泣き疲れて眠ってしまうところから少しだけ時間を巻き戻して…。
「いまはやめておけ、スズカ。」
号泣する声が聞こえる病室の扉に手をかけようとしたのはサイレンススズカ。それを静止するのはエアグルーヴ。
「…でもっ…!」
「私達も奴も全てを出し切った、その上での結果だ。
真剣勝負に負けてその上、同情までされた者がどれだけ惨めな気持ちになるかを考えろ。」
「…っ!」
「こればっかりは私も賛成だね。」
「フジ先輩…」
と、そこに現れたのはフジキセキ。その手には段ボールが抱えられていて。
「それは…?」
「これかい?まぁ、彼女に取っての宝物、かな…?」
と、段ボールを開ければ中に入っていたのは手紙で、辿々しいながらも一生懸命描かれた様子が、宛先からだけでも伝わってくる。内容は今日こんなことがあった、などの微笑ましい日常のお話で。
「これは…?」
「奴が孤児院出身だと言うのは聞いたな…?とある理由で孤児院は閉鎖になったのだが…」
「彼女は一番上として、下の子達を弟妹として大層可愛がっていたみたいだよ。これは全国に散らばったその子たちから送られてきた物だね。」
と、やがて鳴き声が聞こえなくなって…三人がそっと病室の扉を開ければ目元を赤く腫らして眠っているイクシオンが…。
「今日のところはこれを置いてお暇しようか。」
と、フジキセキがそのままベッドのテーブルに手紙の入った段ボールを置いて。
「また起きている時に来れば良い、奴が折れることなど絶対に無い。」
「…また、来ますね…」
そう言って三人が病室を去った後に、パチパチと電気が流れる音がした…。
♢♢♢♢♢♢♢♢
「それで、脚の方は大丈夫か?」
「はい、後一ヶ月もすれば退院出来そうです。」
入院して一ヶ月、トレーナーさんにお願いして、会長さんとライスシャワーさんを呼んでいただきました。ちなみに傷も塞がってきたので来週あたりには抜糸出来るそうです、と主治医さんに教えていただきました。ただリハビリも加えるともう後一ヶ月は掛かるそうです…早くトレーニングに戻りたいところですが、急がば回れ。回り道こそが最短の道だった、なんてことはよくあることなのです。
「良かったぁ…いっぱい血が出てて、ライス、凄く心配だったからっ…」
と、ライスシャワーさんも言葉を掛けてくれます。嬉しい限りです。リハビリが終わったらすぐにでもトレーニングです…その前に二人に伝えないといけないことがあります…。
「…それで、何かあるのだろう?如何したんだ?」
「…会長さんにはお見通しみたいですね。」
と、やはり会長さんは何か察してる様子…ですがご安心下さい。そんな大層な事じゃありません。目を閉じながら軽く深呼吸をして真っ直ぐにお二人を見ます。
「ライスシャワーさん…そして会長さん…いえ、いつまでも会長さんと呼ぶのは失礼ですね…シンボリルドルフさん。
次の天皇賞・春…そして有馬記念で…私と走ってくれますか?」
…これでもう後戻りは出来ない、勿論、戻るつもりも無い。お二人を見ればライスシャワーさんは目を閉じて色々と考えている様子…そして会長さん…いえ、この呼び方はもう辞めましょう…シンボリルドルフさんは口を開きます。
「おそらくだが…リハビリも合わせると血反吐を吐くことになるぞ?」
「承知の上です…!」
「そうか…決意は堅いというわけか…」
と、色々と考えて考えが固まったのだろう。次はライスシャワーさんが口を開きます。
「ライスは…走りたい。マックイーンさんとイクシオンさんに…勝ちたい!だから、ライスは待ってる…!天皇賞・春で…!」
「…ありがとうございますっ…!」
と、ライスシャワーさんは快く受け入れてくれました…これで次の目標が決まりました。もちろん負けるつもりで挑むわけではありません。勝つつもりで2人に挑みます。その様子を見た会長さんは…。
「…なら、私も負けるわけにはいかないな。」
「シンボリルドルフさん…」
「…待っているぞ。さて、面会時間の終了だな。」
と、満足そうな顔で去っていくシンボリルドルフさん…。去り際に…。
「…全身全霊、お互い全てを出し切ろう。」
その顔に思わず冷や汗が出てしまいました…完全にアレは獲物を見定めた肉食獣の目でしたから…。
「ら、ライスも!待ってるからね!」
と、ライスシャワーさんも小走りで病室を去ります…さて、これでもう私に選択肢はありません。
「やるんだ…!」
固く拳を握って誓います…もう弟妹達を悲しませない…。あの子達は今度こそ私が守ってみせる…だって私はお姉ちゃんなんだから…!
達成目標 ルートB
メイクデビューに出走 達成
スプリングステークス、フィリーズレビューで3着以内 達成
皐月賞、桜花賞で1着 達成
日本ダービー、オークスで1着 達成
秋華賞で4着以内
天皇賞春で3着以内
宝塚記念で1着
天皇賞秋で1着
有馬記念で2着以内
改めて見返してレース描写が単調気味になってきたと思うこの頃、どう思いますか?
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このままでも、ええねや。
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勉強してこい、ボケナス
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ポチンキ()