破神の愛馬のお話   作:elf5242

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また、ウイニングライブのアンケートでもしようかな…。


その6

「はぁっ、はぁっ…!!」

 

「どうした?そんなものか?」

 

「まだ、まだぁ…!」

 

「うむ、その意気だ。ではもう一本行くぞ!」

 

「お願いします!」

 

今日も今日とてスパルタトレーニング受けてるイクシオンです。私のメイクデビューから数日、トレーニングもより苛烈になりチーム内はトレーニング中はよりギラついているように感じる。かくゆう私も闘志というかやる気剥き出しで先輩二人との模擬レースに喰らい付いていく。

 

『と、言うわけでっ。イクシオン、君には重めのトレーニングをこなしてもらいながら、重めなレースにいくつか出てもらう。そして今年中にはG1レースに出てもらうから。とりあえずの目標は桜花賞と皐月賞ね。』

 

と、話始めに歌舞伎の見栄のような変なポーズをしているトレーナーさんからヒマラヤ山脈よりも高い目標をいただきました。ただトゥインクルシリーズのなかで一番格式高いG1レースなら注目度も高い…みんなが目にする機会も増えるだろう。

 

『最終的な目標?このお菓子の美味しさの秘密と一緒。』

 

『………?』

 

『何が言いたいかって?つまり…教えてあげないよ♪ジャン♪』

 

トレーナーさんにも最終的な目標を聞いては見たが、教えてくれず…某サクサク三角なお菓子を使ったネタはちょっとだけイラッときたが。とりあえずは当面の目標は出来たのでそれに向けて、スパルタトレーニング中、と言うわけだ。今はシンボリルドルフさんとナリタブライアンさんの二人と模擬レース中、5分ずつのインターバルを取りながら二人と交互に走っていく。

 

「用意…はじめっ!!」

 

「っ!」

 

「シッ!」

 

5分のインターバルが終わり、またシンボリルドルフさんと模擬レース。以前はプレッシャーに押される部分が大きかったが、今は多少なりともそのプレッシャーに対して突っ込めるようになった。もう今は何も怖くない…いや、言いすぎましたごめんなさい。怪我とか火とかちょっと怖いです…。

 

「ッ…!」

 

私のトラウマの話はひとまず置いておいて…模擬レースの距離は2400m、ひとまずの目標としている皐月賞と同じ。そして皐月賞に行くためには参加できるレースのグレードを上げていくしかない。そのためにはまずGⅢ、GⅡのレースを制覇していかないといけない。道のりはまだ遠い。

 

「…だぁぁぁ!」

 

「(そうだ、もっと私に迫ってこい…そして願わくば、打ち倒してくれ!)」

 

そんなハードながらも充実した日を送っていたところに、まさかこんなトラブル…トラブルと言って良いのか、サプライズと言って良いのか…ともかくこんな出来事が舞い込んでくるとは、思いもしなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

そのままトレーニングを続けてお昼頃、一度トレーニングを中断して昼食である。メニューは完全にお任せ、食べすぎると後のトレーニングに響くので腹七分目で抑える。

 

「いただきます。」

 

しっかりと両手を合わせてから箸をつける。お任せした結果の西京焼き定食である。しっとりとした鶏胸肉と脂の乗った鯖…どちらもしっかりと美味しい。しっかりと噛み締めながら白米の一粒すら残さずにしっかりと食する。

 

「ご馳走様でした。」

 

食後の麦茶までしっかり味わってから食事を終えて一息。メモ帳を見ながら次の予定を考える。トレーニングもそうだが出場するレースもだ。なるべく多くレースに出ないといけない。そうなると1日たりとも無駄には出来ないのだ。

 

「……よし、トレーニングいこう。」

 

なんて、食堂を後にして空いた時間で筋力トレーニングに励むことにする。もちろん脚力を上げる為のウェイトトレーニングだ。軽く手続きをしたあとはひたすら脚を中心に鍛えていく。

 

「はぁっ…!はぁっ…!ふんっ…ぐぅっ…!」

 

インターバルで時間を少しずつ開けながら少しずつ重りを追加していく。トレーナーさんの予定ではあと1週間後には2連続でレースだ。

 

「………っ、はぁっ…!はぁっ…!」

 

「随分と詰めるな、お前もお前で気合十分という事か。」

 

「会長さん…」

 

そんなところに飲み物を持って現れた会長さん、どうやら会長さんも色々終わったらしくトレーニングに来たようだった。手に持っているスポーツドリンクの一本を渡してくれる。

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「そんなに硬くならなくていい。ここでは私もウマ娘の一人さ。」

 

なんて、インターバルを挟む私の隣に座る会長さん。改めて会長さんにいただきます、と言いながらスポーツドリンクを飲む。水分とその他不足してるものが身体に染み込んでいく。流石、人の身体に近い水、を売りにしてるだけあって染み渡る。

 

「遅くなったが、改めてメイクデビューおめでとう。良いレースだったよ。」

 

「ただがむしゃらに走っただけですよ…途中で散々迷いましたし…。」

 

「迷わないものなどいないさ。トレーナーも今どうするべきか悩んでいるのだろう。」

 

「そうだと、良いんですけど…」

 

「自己評価が低いのは君の欠点だな。」

 

なんて、インターバル中に他愛もない話を交わす。最終的な目標は自分でも分からない。でもあの子達の為に走るのは私がやりたい事だ。やりたい事をやる、タカにいちゃんと約束した事だ。

 

「そう言えば、トレーナーが話していた。君の日本での最終目標は6冠だそうだ。」

 

「6冠…?」

 

「まぁ、クラシック3冠は必須になるだろう…願わくば同じ3冠の君と本気の勝負をしたい…だから、駆け上がってきてくれ、ここまで。」

 

「…頑張ります。やるからには負けません…!」

 

「あぁ、楽しみにしている。」

 

トレーニングルームでガッチリと会長さんと握手を交わす。そしてインターバルというには長すぎる休憩をとってしまったので、会長さんと一緒にもう一度軽いアップから始めようとした時。

 

「会長、トレーナーからです。練習場に全員集合、との事です。」

 

「エアグルーヴ…何かあったのか?」

 

と、トレーニングルームにエアグルーヴさんが入ってくる。まとっている雰囲気的にも何やらただ事ではないらしい。その雰囲気を察したのか会長さんも真面目モードだ。

 

「団体戦を行うとの事です。」

 

「それはまた…分かった。すぐに向かおう。」

 

団体戦?レースに団体戦なんてあったのか、なんて首を傾げながらも会長さんとエアグルーヴさんと一緒に練習へと向かう。練習場に到着するや否や何やらトレーナー同士で…いや、違う、片方のトレーナーがこちらのトレーナーにほぼいちゃもんをつけているような形だ。

 

「この団体戦、私達が勝利したなら彼女を貰おうか。」

 

「それは彼女本人に言って貰わないとなぁ、彼女にも決定権はあるし。」

 

どうやら誰かを争っているらしい、というかウマ娘を景品扱いして良いのだろうか。

 

「というか、僕達トレーナーだよ?大事な子達を景品扱いするのやめない?」

 

トレーナーさんの言葉に全員が心の中でお前が言うな、とツッコミを入れたのは秘密だ。

 

「まぁ、団体戦自体は受け入れるよ。あの子達の練習試合には持ってこいでしょ。」

 

と、軽い感じで受け入れるトレーナーさん。それで良いのか…いや、トレーナーさんも自信があるから言うのだろう。トレーナーさんからの信頼のためにも負けられない。

 

「ひとまずの状況はわかった…とりあえずトレーナー、誰と誰を出すんだ?」

 

「おかえり、ドルフ。とりあえず中距離は君とエル、短距離はタイキ、長距離はグラスとオペラ、マイルはヒシとフジでいいでしょ…あ、イクシオン?君、全部出てね。」

 

「……はい?」

 

私の間抜けな声の後に全員が驚愕の表情と共に久々と話し始める。

「マジ?」「いや…あのトレーナーの目見なよ、本気だ…。」「こなせるの…?」「確かにメイクデビューは凄かったけど…」なんて声が聞こえてくる。正直私もこなせる気がしない…。

 

「五十嵐…貴様巫山戯ているのか…!」

 

「本気も本気、至って本気だよ。本気と書いてマジと読むくらい本気だよ。」

 

「一人のウマ娘が、全距離、全バ場を走れるわけない!そんな事はあり得ない!」

 

「あり得ちゃえるんだなぁ、これがぁ…♪あんまり物事を自分の物差しで図りすぎると…痛い目見ちゃうよ、おじさん♪」

 

「ぐぅっ…!貴様…!」

 

「この団体戦で、君が貰い受けようとするものがどう言うものか、見てみると良い…いやぁ、しかし…本当に羨ましいよ。」

 

「何がだ…!」

 

と、トレーナーさんが目隠しをあげて直接相手チームのウマ娘達をジロリと見る。そして先ほどまで巫山戯ていた雰囲気が反転する。背中に何かぞくりとしたものが走った。

 

「そんな程度の仕上がりの子達で、僕の最高傑作達に勝てると思ってるその頭が、羨ましいって言ってんだよ。」

 

誰が見ても分かった…これは完璧に…キレてる。

 

「てなわけで…最初は長距離だってさ。全員、スケジュールは調整するから…全力でやれ。」

 

「行きましょう、イクシオンさん。」

 

「はい…!」

 

ギリっ、と拳を握りしめた。怒りではない…トレーナーさんから立ち登る言い表しようのない、プレッシャーに耐えるようにだ。そうして私はグラスワンダーさんとスタートラインに向かっていった。

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

そうして始まった団体戦、まずは長距離。そばで走り実力を知るだけでも勉強になる、と走りたいウマ娘も参加して合計12人が走ることになった。

 

「手加減しないよ、イクシオン。」

 

「全力で行かせてもらいます。」

 

「はい、お二人とも遠慮なさらず。私もお二人に勝つつもりで行きますから。」

 

と、ゲートに並ぶ前に二人と少し言葉を交わした後にゲートに入る。正式な団体戦では無いため体育服のままだ。だが、約束したからには負けられない。私は一番大外…12番だ。

 

「始めっ!」

 

と、スタート係を任されたウマ娘の一人がスターターピストルを鳴らす。なった瞬間に全員が出遅れること無く駆け出して行く。オペラオーさんもグラスワンダーさんも全力で挑んでいる。長距離3200m、現在600m地点…現在はグラスワンダーさん、テイエムオペラオーさん、私で上位を独占している形。耳をすませば他の子達も食らいつこうとして入るが、本当に少しずつ離されている印象…いや、もう後ろの子を気にするのはやめよう。気を向けるのは後ろでは無く、前だ。更に踏み出す。加速する…本気でやれと言われたんだ。あの時と同じ、具体的なアウトラインは後回し。視界に入る数字はかなり進んで1400m…のこり1800m…行くならここしか無い。

 

「…すぅぅぅっ…」

 

「「!!」」

 

二人の耳が僅かに反応する。風を切る音の中でもどうやら聞こえたらしい。いや、違うずっと私をマークしてたんだ、二人とも。なんだか気分が少しだけ昂揚した。ライバルと認められた気がした。なら、見せるしか無い、魅せるしかない。

 

「シッ!!!」

 

「「(来たっ!)」」

 

私の加速に合わせて二人共加速する。やはり徹底的にマークされていたか。そのまま三人で加速して行きのこり1000m。後続を置き去りにしてリギル内でのデッドヒートとなっている。それぞれもう誰が抜け出てもおかしく無い。

 

「はっ…!はっ…!」

 

「っ、はぁっ…!はぁっ…!」

 

そのままカーブを曲がりのこり400m、最後の直線。もっと、もっと足を回せ…!

 

「初戦…貰い受ける…!」

 

「簡単には…譲らない…!」

 

しっかりと地面を踏みしめて蹴り抜ける。具体的なアウトラインは後回しにしたのだ。本気で勝負出来る時なんてあとはもう本番のレースくらいしか無いだろう。なら、もっと…まだ、まだ出せる。歯を食いしばりながら二人に負けじと足を回していく。ゴールが近づいて行く、300…250…200…150…100…。

 

「ゴール!!」

 

「っ、!!はぁっ…はぁっ…!!」

 

と、大きな声が響きゴール担当のウマ娘が大きなフラッグを8の字型に振る。脚でブレーキを掛けながら減速して、緩やかに止まる。身体は既にオーバーヒートのような状態、熱を持った身体を覚ますようにして熱い息を吐きながら、周りをちらりと見る。他の二人もだいぶ苦しいようで。

 

「お、お疲れ様です…!」

 

と、ウマ娘の一人がこちらに氷嚢やらを持ってくる。トレーナーさんの指示だろうか。とりあえずはありがたく頂戴するとしよう。タオルに包まれた氷嚢がオーバーヒートした脚をちょうどいい温度で冷やしてくれる。氷も水の温度もいい感じだ。

 

「はぁっ…はぁっ…ありがとう…ございます…。」

 

本気でやれと言われたから本気でやったが、あと残り4レース…ダート、マイル、短距離、中距離…。こんな状態で戦えるか、少し不安になってくる。だがやるしか無い。少しキツイが足がある程度冷えれば冷え切らないように力を入れては抜き、入れては抜きを繰り返していつでも走れるようにしておく。すぐさま次のレースに呼ばれるだろう。ほうら、来た。

 

「イクシオン、お疲れ様デース!」

 

「ありがとう、ございます…タイキさん。」

 

「先程の順位確定しました、惜しかったですネー!ハナ差で3着で デース!」

 

「あー…」

 

やっぱりまだまだ爪が甘いなぁ…と感じながらそのまま氷嚢を朝から外して。軽く跳躍…うん、次のレースも走れそうだ。

 

「次は短距離ですよね、行きましょう。」

 

「OK!イクシオン!are you ready?」

 

「出来てるよ…!」

 

さぁ、ジャンジャン行こうか。

次のウイニングライブについて。何が聞きたい?

  • キャラのモチーフ曲
  • 作者の趣味
  • キャラの雰囲気に合いそうな奴
  • なんでも良い、早よ書けボケナス。

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