破神の愛馬のお話   作:elf5242

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その7

長距離が終わり、続いて短距離。ただ一人を覗いてみんなの心配事はただ一つ。イクシオンの脚だ。あれだけ全力で走ったのにも関わらず残り4つのレースを走り切るなど、誰もが無理だとヒソヒソと話していた。そんな中イクシオンを見ているのは、ウマ娘ライスシャワーとミホノブルボン。ライスシャワーはあらゆるステイヤーの登竜門として立ちはだかる、青薔薇の姫騎士、ミホノブルボンはその観察眼と分析能力で確実に勝利を掴む、サイボーグとして有名な2名のウマ娘である。

 

「い、イクシオンさん…脚、大丈夫なのかな…」

 

「現状は不明…ですが、既にある程度回復しているようです。それも走れるくらいには。」

 

「で、でもイクシオンさん、短距離にも出るんでしょ…?さっき長距離に出たばかりで…そ、それに距離も…。」

 

「あり得ませんが、おそらく彼女の脚質で走れない距離は無いものと断定…証拠にチームリギルの五十嵐トレーナーは先ほどから全く彼女に声を掛けていません。おそらく彼女が全てのレースを走り切る、そう確信しているのでしょう。」

 

「そんな…あんなのしてたら、脚が…」

 

「シミュレーション実行…完了…レース4戦目時点での負傷確率47%…」

 

「イクシオンさん…」

 

二人が見守る中、短距離のレースが始まる。軽く跳ねてスタートラインに立つイクシオン。番号は比較的内側の4番。タイキシャトルとはもう軽く話したようで。程なくして全てのウマ娘がスタートラインに立つ。

 

「…それでは、始めっ!」

 

と、二回目のスターターピストルが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

二回目のスターターピストルが鳴り響き、一斉にスタート。タイキシャトルさんの番号は6番。レースの展開も長距離と変わらず、最初こそ団子状態なものの、徐々に引き伸ばされる。そして一番は変わらずタイキシャトルさん…やはり短距離最強というだけあって速い。

 

「すぅ…!」

 

追ってもいい、だけどここは息を入れて、ある程度の脚を確保する。距離は1200m…残りは800m…残り300mで確実に差す…そのために目を離さない、確実にチャンスはくる。

 

「……」

 

まだ、まだだ。残り700…650…600…まだ、まだ残す…。中途半端な場所で差しても逃げられるだけ…差すなら確実に。のこり450…400…350…ここだっ!溜めた脚を踏み込みと同時に一気に解放、加速する。

 

「シィィィ…!」

 

タイキシャトルさんの隣に並べばタイキシャトルさんもペースを上げる、それに合わせて更に加速する。さっきと同じ、アウトラインは後回し…全力で勝ちに行く。残り150…100…50…。

 

「ゴール!」

 

と、ゴール係の声が響く。先ほどと同じ身の丈と同じくらいのフラッグを横8の字に振りゴールしたことを示す。

 

「はぁっ…はぁっ…」

 

「お見事デース…まさかあそこで差されるとは思いませんでシタ…」

 

「はぁっ…はぁっ…やるなら残り300しか無いと思ったので…」

 

なんて、タイキシャトルさんも少し息を乱しているようで。あとはビデオ判定待ちである。同時に先程もらった氷嚢を使い再び脚を冷却する。長距離ほど消耗はしていないが疲労は残る…短い時間だがしっかりと休ませて、残りのレースも備えなければ…。

 

「ビデオ判定出たみたいですネ、完全に同着デース!」

 

「はははっ…やっぱり強いなぁ…みんな。」

 

まだまだ、だね…私。なんて心の中で呟きつつ、両方の足を交互に冷やす。次はダートだ。なんだか私の足を露骨に削りに来てる気がする…手に入らないならいっそ…とかいうヤンデレ嗜好はお断りしたい…。

 

「おーい、大丈夫かぁ?」

 

「あ、はい…!すぐ行きます!」

 

また軽く跳ねて足を確認した後に小走りで次のダートのレースに向かう。さぁ、ジャンジャン行こうか。

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

「わ、私は…一体私は何を見ているんだ…」

 

「だから言ったでしょ?僕にとっては最高の原石だけど…君達じゃあ爆弾にしかならないよ。」

 

なんて、背もたれに思い切り身体を預けながら頭の後ろで手を組んで悠々とレースを観戦する五十嵐と愕然とする相手トレーナー、ここまでの長距離、短距離と大差をつけられて惨敗、周りから見ればこれは酷いと言わんばかりの有様である。そこは良い…だが…。

 

「あのウマ娘の…あの脚はなんだ!?なぜ、全く真逆の脚質を走れる!?!?」

 

「それが彼女の才能だからねぇ…まだ自分で自覚してないと思うけど、一種の天才って奴だよ。」

 

「馬鹿な…そんな事は、ありえない…!」

 

「『有り得ないなんて事はない』…言ったでしょ?あんまり自分の物差し信用しすぎると、痛い目見るよ…お、じ、さ、ん…。」

 

なんて、口元をニヤつかせながら煽る。目の前ではダートのレースが開催されているが芝もダートもなんのその、と言った感じでイクシオンがヒシアマゾンとフジキセキに対して差すように走り抜けて行く。もちろん簡単に突破を許す二人ではなく、合わせて加速していく。まだまだ勝利は譲らない、と言ったところだろう。

 

「…もう少し基礎能力を上げれば追いつけるか…明日は十分に休んで貰って…」

 

と、レースそっちのけでイクシオンを含めた全員のトレーニングスケジュールを頭の中で組み直す。ぶっちゃけるとこのレース、各面々に本気でやれと言ったのはメイクデビューを経験し、更にハードになったトレーニングをこなしたイクシオンがどこまで出来るか気になったからだ。当たりをつけたり、シミュレーションする事はできるが、やはり百聞は一見にしかず、である。実際に目で見てデータを集めた方が、遥かに早い。

 

「さて、残すはマイルと中距離…マイルにはエル…そして中距離にはドルフとエア…どこまで喰らいつけるかな?」

 

と、そう呟いた後に口角を上げ、歯を剥き出しにして五十嵐は笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

「はぁっ…はぁっ…」

 

残りレースは二つ…脚を冷やしながら残り二つについて考える。あとはマイルと中距離、先にエルコンドルパサーさんとのマイルが来て…最後の会長、副会長さんと中距離だ。どちらも一筋縄ではいかない相手…より一層気を引き締めないと、やられる。周りの子達には悪いけど…今は眼中に無いんだ。

 

「辛そうですネ…大丈夫ですカ?」

 

と、次に一緒に走るエルコンドルパサーさんが心配そうにこちらを見てくる。氷嚢で冷やしている脚を心配しているのだろう。だが、一切の問題は無い…。いける、いかなきゃだめだ。

 

「ありがとうございます…この通り大丈夫ですよ。」

 

軽く脚を屈伸させたりして、足の調子を見せる。大丈夫、まだ走れる…今日は持って欲しい。

 

「分かりましタ!それなら、エルも手加減はしませン!」

 

「全身全霊でお願いします…!」

 

そういうとエルコンドルパサーさんとともにマイルのレースのスタートラインに向かう。大丈夫、いける。気力はある、体力もある…あと二回、走り切って勝つだけ。まずは1600mだ。エルコンドルパサーさんが7番、私が8番。お互いにサムズアップした後にスタートの構えを取る。

 

「それではマイル部門…はじめぇ!」

 

今日四回目のスターターピストル。展開もそれほど変わらず…というわけでも無い。先程とは違いほんの少し足が重い…だが、そんなのは言い訳にならない。なら、もっと足に力を込めれば良いだけ…さぁ、走り続けろ。

 

「今度は勝つ…!」

 

「負けま…せーン…!」

 

今回は先頭集団が5人ほどの団子状態で400m地点を通過…出来れば持ってくれよ、私の足…またちょっとだけ乱暴するから…!

 

「すぅっ…!」

 

「(息入れましたネ…!来るっ…!)」

 

息を入れたのを感づいたのか、エルコンドルパサーさんが加速する。それを見て私も入れた息を吐き出し、加速する。逃がさない…絶対にっ…!

 

「はっ…はっ…!」

 

後続の子達も私達を見て加速するが関係無い、すぐに私達二人が先頭集団から抜き出てくる。現在は私とエルコンドルパサーさんで並走中…現在、1000m地点…残り600…。

 

「……っ、!…っはぁぁっ…!」

 

「(無理矢理息を入れタ…!?どんな心肺能力ですカ…!)」

 

全力で走ってる最中に一回だけ息を入れる。心臓もめちゃくちゃ痛いし、肺への負担も馬鹿にならない…けど負けたくない。団体戦の前に決めたんだ、具体的なアウトラインは後回し…全部のレースで全力を出す…!!息を入れたあとはそのまま踏み込む。

 

「疾…風…迅…雷…!!」

 

踏み込んだならあとは力と体重を掛けて、それを前に前に倒して加速する。エルコンドルパサーさんも並走する。歯を砕けんばかりに食いしばる。あの子たちの為に私はまだまだ強くならなきゃいけない。この団体戦はその登竜門の一つだ。

 

「シィィっ…!」

 

「(負けませン…!)」

 

並走する私たちについて来ている人は居ない…一番高くても6バ身は離れている、ならこのままエルコンドルパサーさんに勝つだけ…!空を切れ、風を蹴散らせ。あの子達の為なら、出来る。のこり400…350…300…250…200…。

 

「っ…!(キッツイ…でも、いかなきゃだめだ…脚は絶対止めない…!)」

 

「(流石デース…でも、でもっ…負けませンっ!!私だって…!!)」

 

私たちの目にはすでに風景は無数の線に早変わり、残りの距離はほんの200m…もう数秒で決着はつく。そして。

 

「ゴール!!」

 

本日四回目となるゴールの声と共に8の字に振られるフラッグ、足でブレーキを掛けずにそのままゆっくりと速度を落として止まる…そのままコースの内側に移動すればそのまま座り、新しい氷嚢と水のペットボトルを貰う…氷嚢を押し当てれば少しばかり呻きながら脚を冷却する…ペットボトルの水とうまく調整しながら、ゆっくりと冷やしていく。まだ後一回、走れる…後一回だけ、乱暴するから持ち堪えてね…そう思いながら身体の方もしっかりと休める…途中の水分補給もしっかりとして…多分今日は食事は喉を通らないな…。

 

「後一つ…後一つ…!」

 

なんて、自己暗示のように言い聞かせる…。ラストは会長、副会長さんとの中距離。距離は2200…。勝てないまでも食らい付いてはいきたい…会長さん、副会長さんと本気で勝負出来る滅多に無い機会…出来れば、勝ちたい。

 

「…大丈夫か?」

 

と、副会長さんがこちらに声を掛けてくる。それに対してちょっとだけ力の抜けた笑みで答える。

 

「大丈夫です…ありがとうございます。団体戦もこれで最後です…手加減無しで、お願いします…!」

 

「気を付けろ…お前はまだこれからだ。それに…」

 

と、副会長さんが手を出してくる。その手をゆっくりと取れば握り締められて、そのまま立つ手助けをしてくれる。

 

「今まで私はお前を下に見ていた…すまなかった。これまでのレース、見事だった。だから、私はお前をもう下だとは思わない。皆と同じく対等に戦わせてもらう。」

 

「…ありがとうございます」

 

「早くG1に上がってこい、私も楽しみにしている。」

 

「すぐにでも、追いついてみせますよ。」

 

と、会長さんに引き続き副会長さんともしっかりと握手を交わして。

 

「ふむ、私はお邪魔だったかな?」

 

と、そんな中に会長さんもやって来る。私たちの様子にどこか満足気な笑みを浮かべていて、うんうんと頷いている。

 

「さて、イクシオン。早速全力で戦える舞台が来た…全身全霊、決死の覚悟で来るといい。」

 

「そうさせて貰います…!」

 

「よし、気合は十分だな…脚はどうだ?」

 

と、会長さんも脚を気にしてくれているようだ。脚は…うん、十分とは言い難いがある程度は回復出来た…問題無い、うん。いける。

 

「大丈夫です、問題ありません…お二人ともよろしくお願いします…!」

 

「うむ」

 

「ああ」

 

そのまま言葉を交わし終わればあとは不要…あとはレースの中で語るだけだ。そのまま脚の具合を確かめるかのようにしてスタートラインに並ぶ。私は…今回は3番。最後のレースということもあり全員が息を呑んで見守っている。距離は2000m…。よし、行こう。

 

「それでは団体最終戦…中距離部門…」

 

心臓が高鳴る。心が湧き立つ…こういう時はなんでいうんだったっけ。そうだ…。

 

「心火を燃やして…ぶっ潰す…」

 

感情を燃料に心が燃える、心が燃えればそれはエンジンとなり身体が動く…あぁ…早く走りたい…この人達に…勝ちたい。

 

「はじめぇ!!」

 

最後のスターターピストルが鳴り響けば、全員が一斉に走り出す。そして、先頭集団から早々に抜け出す。メイクデビューと同じ…初めから全力で。周りから響めきが聞こえるが、気にしない。まだまだいける…いけるっ…!

 

「見事だ…だがっ…!」

 

「そう簡単に取らせはしない…!」

 

後ろから副会長さんと会長さんも追い上げる。他の子達は置いていかれたのだろう、やはり三人のデッドヒート…。距離はまだ1600mある…まだまだ、いけるっ…!!

それでもやはり会長さん達も早い、あっという間に追いついて並走してくる。カーブを曲がり立ち上がりも流石だ。

 

「はっ…はっ…!っ、すぅぅっ…!」

 

「(来るか、ならば受けて立つ。)」

 

「(お前の全力を肌で感じたい…だから、来い!)」

 

先ほどと同じように走りながら息を入れる。やはり心臓の鼓動が頭の中に響くくらいに大きくなるし、なんなら全身の血管という血管が脈打ってるような気さえする…段々と足に力が入ってるのか入ってないのかもわからなくなってきた、だけどもう止まれない。行けるとこまで行ってやる…!

 

「(行こう…!)」

 

常にイメージするのは雷…大丈夫、いける。貯めろ、回れ…そして…弾けろ!

 

「(エアロ…スパーク…!)」

 

さらに一段と加速する…心臓も限界まで稼働する。足も限界まで回す。あとは気力勝負…会長さん達も加速して並走する…いや、会長さんと副会長さんが僅かにリードしている、だが、たった数センチ…!いける…いけっ、いけっ…いけっ…!残り400m…まだ届かない…踏み出せ、一歩を大きくだ…!

 

「っ、…!?…っ、はぁっ…!!」

 

残り300…200…まだ届かない…いつのまにか会長さんとは一バ身…その間に副会長さん…あぁ、まだまだ遠いな…そう思いながら。

 

「ゴール!!」

 

その掛け声を聞いた。今出せる全力を全てのレースでぶつけられたんだ…まぁ、良いや…。ゴールしてスピードを落として、順位を聞いた瞬間に、目の前が暗転した。

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

不思議な夢を見た…私は前に三女神像の前で見たような気がした黄金色の角を持つ四足歩行の生き物で…誰かを背中に乗せていろんなところを走っていた。平原、荒野、森、獣道…時には空や水の中まで…。

いろんなところを巡って…そして、不意に背中が軽くなって…でも背中には誰かがいた痕跡がしっかりとあって…そして凄く寂しくなって、大きく鳴いたところで、目が覚めた。

 

「……あれ…?私…」

 

なんだろう、凄く穏やかで楽しかったけど…寂しくなった夢を見た気がする…どれもこれも私は見たことがない場所ばかりで…。というか今ここはどこだろう、ベッドがあると言うことは保健室…?確か団体戦の最後の中距離を走りきって…順位は3着で…それで…と記憶を掘り返してみる。

 

「あっ…」

 

「……あ、タイキさ…」

 

「hey!皆さン!起きましたヨー!」

 

そんな折に部屋に入って来たタイキシャトルさんを見れば、なんだかタイキシャトルさんは驚いた顔をした後にちょっと泣きそうな声で外に呼びかけている、いや、というかここ保健室なんだから静かにしたほうが…なんて思ってると続々と知ってる人から知らない人まで続々と入ってくる。もちろん会長さんや副会長さんといったチームのメンバーも来てくれて。

 

「更なる高みであれ以上のいい勝負をしよう。」

 

「折れるなよ、私もお前もまだまだ強くなれる。」

 

と、会長さん、副会長さんからのお言葉も貰った。その通りだ、これはあくまで非公式…非公式試合で勝ったところで、だ。勝つならしっかりとした試合で勝ちたい。その後も何やら色んな人が来てくれて。夕方には寮の自室に戻れることになった、が…明日1日は脚を休めるためにお休みを貰ってしまった、酷使した状態で詰めても怪我をするだけ、という満場一致の判断である。ちょっと歩きにくさを感じながら寮に戻ろうとすると。

 

「バクシーン!!」

 

「…お疲れ様です、バクシンオーさん…」

 

「はいっ!お疲れ様です!」

 

と、自称クラス委員長を名乗るウマ娘、サクラバクシンオーさんが追いかけて来る。そして丁寧な手つきで鞄から封筒を2つ出せばこちらに丁寧に両手で差し出して来る。

 

「イクシオンさん!こちらイクシオンさん宛のお手紙になります!」

 

「あ、これはどうもご丁寧に…」

 

「いえいえ!これもクラス委員長のお仕事ですから!それではっ!」

 

と、やることを済ませたらまたどこかに消えてしまった、なかなかにパワフルな人だが…あのぐいぐい押して来る感じはちょっと苦手だ…。貰った手紙は自室で読もう…一体送り主は誰だろうか…以前の同級生か…それとも…なんて思いながら寮の部屋のドアを開けて…まずは入浴を済ませて。

 

「…よし…」

 

入浴を済ませた後にベッドに座り手紙を手に取る。送り主を見た瞬間にもう、少しだけ泣きそうになった。

 

「……ミオ…リュウ…ゲン…!」

 

手紙をくれたのはあの中1三人組…いや、もう時期的には中学二年生か…早いなぁ…なんて思いながらまずは早瀬 澪と書かれた手紙を開封する。

 

『お姉ちゃんへ

 

テレビ見たよ、お姉ちゃんも頑張ってるね。

 

そんなお姉ちゃんを見て、私も頑張ろうって思えた。ありがとう。

 

あと、あの時は…ごめんなさい。お姉ちゃんだって頑張ってくれたのに…。

 

今私警察官になろうって頑張ってるんだ。お姉ちゃんと一緒にみんなを守れるように。

 

だからお姉ちゃん、身体だけ気をつけて頑張ってね。必ず、私も見に行くから。

 

ミオより。』

 

「ミオ…」

 

ネストがなくなった時に一番動揺して、不安定だったあの子がこうして立ち直って頑張ってくれてる…良かった…と心底安心した。一枚目の手紙を丁寧に封筒にしまい、二つ目の封筒に手を掛ける。送り主は"栗花落 弦十郎"と"碓氷 龍之介"。

 

『姉貴へ

 

よう、姉貴。元気か?

 

姉貴のレースはテレビで見た…テレビだから多分ガキどもにも届いてるはずだ、ガキどもは姉貴の姿を見れただけで多分立ち直れるだろうよ。

 

俺とリュウは運良く二人一緒のところに行くことになった。そこで二人で話し合った結果、俺は大工に、リュウは建築士になる事にした。

 

俺は中学行きながら、今大工仕事を学んでる。姉貴のやろうとしてることは大体分かってる…。

 

いつかはネストを立て直す気なんだろ?だから俺達にも力になりてぇと思ったんだ。その点はリュウも同じだ。だからリュウもがむしゃらに頑張ってる。

 

誰にも相手にされなかった俺達を最後まで目をかけてくれたのはシスターと姉貴だけだったからな。

 

ガキどもも必ず全員見つけて、姉貴に会いに行く…だから、身体だけは気を付けてくれよ。五体満足でまた会おうぜ。

                         ゲン、リュウより。』

 

「ゲン…リュウ…!バーカ…余計なお世話だよ…!」

 

心の底から安心した…本当に良かった…!私のこの走りは無駄じゃ無かったんだ…そう思えた。だからこそだろうか。

 

「会いたい…よぉ…!」

 

一人だからか本音が漏れる。手紙を読んだ後だからか…余計に寂しさを感じる。人見知りな方だが…今だけは温もりが欲しかった。

 

「…ぅうわぁぁぁぁ…!」

 

私が破神の愛馬だというなら…神様…どうか、今日だけは、今日だけは泣かせて下さい…。今だけ…詩音として泣かせてください。また明日から、イクシオンとして、頑張りますから…!

次のウイニングライブについて。何が聞きたい?

  • キャラのモチーフ曲
  • 作者の趣味
  • キャラの雰囲気に合いそうな奴
  • なんでも良い、早よ書けボケナス。

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