愛することは命懸けだよ。
甘いとは思わない。
──太宰治──
心中とかロマンがあって好きです。
太宰さんの本はどれも繊細でしゅごい………
特に『斜陽』ほんと好き。
今回も良い感じに気持ち悪くなったので短めです。
多分そのうち編集して内容増やします。多分。
「……………悪いけど帰ってくれ」
なんとか休日まで過ごしきり、食事も睡眠も手につかないような暮らしを続けていた、そんな日のことだった。自宅のインターフォンを鳴らし、訪れた男にそう言い放つ。だが、彼は真剣な目で答えた。
「黒滝、話がある。
それを話すまで、帰るつもりはない」
「……………散らかってるが」
「構わない。別に此処で話してもいいけど」
「…………はぁ、上がれよ。
課題が終わってねぇし、早めに帰ってくれ」
嘘を言い、分かった、とだけ返す彼から視線を外し家へと入れる。一度、彼と会って話をしたいとは思ったが………どうしても、行動に繋がらなくなっていた。何の気力も沸かず、歩くことですら苦しさを感じるほどに。
彼を家に上げてテーブルに案内、冷蔵庫から麦茶の入ったペットボトルを差し出す。彼は頭を軽く下げてそれを受け取った。
「ありがとう」
「……………で。何の用だ、
溜め息をつき、その向かいに座る。
武川………彼女に告白し、付き合っている張本人だ。
「彼女について、だ。
君も分かってると思うが」
「前置きはいい。俺のことも知ってるんだろ。
惚気話なら他所でやってくれ」
何が、君も分かってると思うが、だ。
お前が知ったような口を利くな。
武川を睨みつけ、催促する。
「………一昨日、彼女の家に行った。
彼女の姉から君の話を聞いたよ」
「その話は忘れろ。あいつは覚えてない。
それは直接聞いたからな、とっとと本題に入れ」
苛立ち交じりにそう言う。
武川は少し気まずそうに視線を泳がせ、それから、眼に力を込めてこちらに負けぬ気迫で、言った。
「彼女と付き合う権利を、僕にくれないか」
即座に立ち上がる。
その胸元を掴み上げ、壁に背中を叩きつける。
「そんなことを言いにきたのか、武川」
「げほ、っ……!そんなこと……!?
それは君が……!!」
「余計な気遣いなんざいらねぇっつってんだよ!!
俺なんかに憐れみでもかけてんのか!!?
あぁそうだろうよ憐れだろうよ!!
俺は約束忘れられてるのに気付かずに、
なのにずっと信じ続けた馬鹿だからな!!
それがこのザマだ!!」
「…………すまない」
「謝るくらいならあいつの所にでも行け。
俺なんか気にしてんじゃねぇ、
そんなことで気を遣ってんじゃねぇ。
付き合う権利なんか俺が決めることじゃないし。
俺はあいつの保護者でもなんでもない……」
心が、軋んでいく。
視界の全てが色褪せていく。
歪んでいく。
崩れていく。
「ただの、1人の友達でしかないんだから」
白と黒しか色がなくなった視界で、武川の酷い顔が見えた。
「罪悪感なんか感じる必要はない。
だって、それでいいんだから。
お前も、あいつも、それでいいんだからな」
その顔から見て取れる感情は『理解が出来ない』。
何故そんな顔をするのだろうか?
言葉を放つ思考の片隅で、今の自分を鑑みる。
けれど、答えは武川の口から放たれた。
その息を呑み、恐怖を噛み殺したような顔で。
「なんで─────笑ってるんだ………?」
笑っていた。
遠くの姿見で見た、俺は。
確かに、笑っていた。
自分への呆れ笑い、ではなかった。
そんな笑みではないことは自分でも分かった。
言うなら、それは。
気が触れたような、笑い方だ。
「おい!?黒滝!?大丈────!?
─────………───……───────
遠くなっていく。
全てが、遠く離れていく感覚。
意識が薄れていく。
なんだろうか、これは。
あの時の、苦しい感覚とは違うことが分かる。
意識がこうして消えていくのは、二度目。
だから、この感覚に気がついた。
気がついてしまった。
────消えていく感覚に、歓喜を感じることに。
あぁ、そうだ。
消えてしまえば、何も問題はないじゃないか。