とある英雄馬の深き衝撃   作:静かなるモアイ

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ディープインパクトの衝撃的なデビュー


衝撃波が迸る

チームシリウス。嘗てはG1制覇も出来るほどのメンバーを保有していたトレセン学園の主力チームだった。だった…過去形だ。今のシリウスはなんとか形を残してるに過ぎない、解散寸前のオンボロチームなのだ。

 

嘗ては伝説的なOGであるクリフジ、シンザンと言った殿堂入りと称される伝説のウマ娘が所属していた。だが、クリフジやシンザンも遠い昔に現役を引退して卒業していき、その栄光は終わりを見せ始める。数年前だろうか、当時のキャプテンであり日本記録を幾つも塗り替えたトキノミノルという無敗のウマ娘が在籍していた。だが、トキノミノルは病により、選手生命を絶たれてしまい皐月賞と日本ダービーを制覇した数日後に現役を引退し…シリウスを去った。誰もが出来ると思っていた史上初の無敗での三冠ウマ娘。その寸前での電撃引退からの自主退学。故かトキノミノルは幻のウマ娘と呼ばれるように成った。

クリフジとシンザンが卒業し、トキノミノルという絶対的エースが頂点に立ったまま辞めたシリウスは次々とメンバーが脱退していき今のオンボロチームと成ってしまったのだ。

 

「うわー、ボロいね!」

 

唖然とするディープインパクト。その隣ではボロいが、人生初の部活動に心を踊らすハルウララが立っていた。チームシリウスの部室は木製の小屋だったが、年期が入っておりぶっちゃけボロい。床を踏めばギーギーと床板が軋む音が響く程だ。

そんなシリウスの新入部員と成ったディープインパクトとハルウララ。その2人の前にはシリウスの顧問であるトレーナー。そして先に入部している白髪ポニテの少女であるオグリキャップ、高身長美女であるゴールドシップが居る。なんでもオグリキャップも先日に入部したばかりであり、学年はディープインパクトの1年先輩であるジュニアB組だそうだ。

 

「ゴルシが入ってくれるまでの数年間。シリウスは誰も居なかったからな」

 

部室に置いてあった少し錆びかけのパイプ椅子に腰掛けたトレーナーは語る。トキノミノルが自主退学し、次々とメンバーが脱退していき形だけと成ったシリウスは解体処分寸前に成っていた。だが、トレセン学園処か日本で最も速かったトキノミノルが所属していたという事も有ったのだろう。シリウスは部員が皆無に成っても直ぐに解体される事はなく、そのままにされていた。

だがトキノミノルの引退から数年経った2年前。シリウスは危機を向かえる。流石に数年経っても部員が入ってこないという事も有り、シリウスは本当に解体処分されようとされた。まあ、仕方がないだろう。当時、新入りのトレーナーであり誰も担当してなかったシリウスの担当と成ったトレーナーはなんとかシリウスを残そうと走り回った。その時だった。

 

『おーい。ベガってチーム追い出されちまったんだけど。入って良い?』

 

最古参であるゴールドシップが逆スカウトで入部。なんでもゴールドシップはチームベガに所属してたが、トーセンジョーダンという先輩が「気に入らないから」という理由でドロップキックを喰らわしてチームベガを入部3日で追い出されたらしい。

 

なんやかんや有り、ゴールドシップという部員が入ってくれたシリウスは解体処分の危機を免れた。しかし、部員は1人であり部費はそこまで出ない。その為にトレーナーとゴールドシップは学園農園の手伝いをしたりして、活動資金を集めては試合に出たりしてしてたのだ。

 

それから今年の春先。ディープインパクトとハルウララが入学した頃だ。地方にもトレセン学園は存在しており、地方トレセンからトレセン学園に転校してきたオグリキャップ。彼女は地方から転校してきた身であった為か、多くの人に相手にされなかった。これには理由がある。地方のトレセンはトレセン学園と比べて実力は低く、オグリキャップも体格で判断されたディープインパクト達と同じ様に何処にも入れて貰えなかったのだ。

 

『すまない。部員は募集してるか?』

 

そんな事でオグリキャップは先程までのディープインパクトとハルウララと同じく、自主練習を行っていた。そんな時に、偶然にもシリウスの事を知って彼女はシリウスに入部したのだ。

 

「というのがチームシリウスなんだ…」

 

チームシリウスの事を話終えたトレーナー。だが、チームシリウスは未だ終っていない。これからだ。トレーナーは思う、このチームシリウスの可能性は無限大だと。

最古参のゴールドシップは気分屋だが、実力は本物。最高峰のレースであるG1でも何度か勝っており、底知れぬスタミナとパワーがある。

オグリキャップは素質が高い。地方から出てきた身で、未だ誰もが信用していないが間違いなくG1のトップ選手に至れる可能性を持っている。地方でのレース経験も有り、地方出身という事も有ってか芝でもダートでも力を発揮できる。

ハルウララに関しては未だ良く見てないからトレーナーはどれ程の力が有るのか分からない。

そしてディープインパクト。女の子のような顔立ち、小柄な身長。だが、この少年が肉体に秘めた末恐ろしい潜在能力は計り知れない。天性の柔軟性とバネが産み出す瞬発力を用いた翔ぶような走り。体格に恵まれなかった為に、多くのトレーナー達が気付けなかった英雄の原石。

 

「まるで…シンデレラストーリーだな」

 

ハハッとトレーナーは未来を思い少し笑う。問題児と称されたゴールドシップ、地方から転校してきた故に誰にも相手にされなかったオグリキャップ。そして体格に恵まれなかったディープインパクトとハルウララ。

 

「ディープインパクトだったな?お前は必ず、頂に至れる。俺が保証する。だけど、お前がテッペンを取る為には1つ条件がある」

「条件?」

「お前のデビューは早くても来年の秋以降。遅くても来年4月だ。お前は女の子みたいな顔立ちだが、男の子。中1から中2の半ばが成長期のピーク。それを過ぎるまで辛抱してくれ」

 

ディープインパクトは男の子。男子の成長期は女子よりも遅く成長期がやって来る。ディープインパクトは今が成長期のピークであり、骨や成長点が敏感だ。その成長期のピーク…最低でも骨の成長ピークが終わる頃まではレースに出さない方が良い。事実、史実の英雄ディープインパクトも兄弟達と比べて遅くデビューしたのだ。

 

トレセン学園の生徒は早ければジュニアAクラスから、普通でジュニアB、遅くてジュニアCからデビューする。そう考えればディープインパクトのデビューは少し遅めに成るだろう。

 

「はい!」

「良い返事だ。それじゃあ、チームシリウスの本格始動だな!!」

 

チームシリウス。このチームのシンデレラストーリーは今、此処に始まったのだ。

 

 

1年後、10月某日。

 

地方ではなく中央での新たなデビューをしたオグリキャップ。髪はポニーテールを辞め、額には母が現役時代に着けていた髪飾りを着けており、シリウスのチームリーダーである彼女は記者会見を受けていた。

 

「オグリキャップさん一言!」

 

「今の気持ちを教えてください!」

 

「シンザン選手以来、チームシリウスでのクラシック三冠達成のご感想を教えてください!!」

 

クラシック三冠。それはジュニアCクラス…中学3年生の僅か1年しか挑めない特別なタイトルであり、皐月賞、日本ダービー、菊花賞の3つを制覇したウマ娘は三冠馬と呼ばれる。クラシック三冠を達成したウマ娘は数えきれる程しかなく、無敗で三冠馬に到達したウマ娘はただ1人…トレセン学園最強チーム チームリギルのリーダーであるシンボリルドルフただ1人だ。

オグリキャップはそのクラシック三冠を達成し、チームシリウスでは30年以上前の選手であるシンザン以来の偉業を成し遂げたのだ。だが、クラシック三冠の他のレースでは負けた事があり、シンボリルドルフ以来の無敗での三冠馬には成る事は出来なかった。

 

「はい。ただ、この重圧から解放されて今はほっとしています」

 

クラシック三冠。それは周囲からの期待は高まるのは勿論のこと、皐月賞と日本ダービーを制覇して残り菊花賞だけと成れば重圧は高まる。だが、それでもオグリキャップは成し遂げた。

 

「ご褒美とかはどうします?」

「食べ放題の店に行きたいです」

 

そんな年頃の少女のような質問も投げ掛けられ、オグリキャップは笑顔で答える。

 

だが…記者会見の最後に彼女は告げた。

 

「最後に1つ。私はチームシリウスのエースではない」

 

三冠馬オグリキャップがエースではない。その言葉に記者達はざわついた。だが…その2ヶ月後。彼等はオグリキャップの言葉の意味を知ることになる。

 

 

12月19日。その日、日本に衝撃波が走った。

 

新人戦。この日、男のウマ娘がデビューすると聞いて物好きな記者達は競馬場に駆け付けた。

 

『さあ。先頭を行くのはコンゴウリキシオー、逃げる逃げる。この日のレースの主役は彼女に成るのか?』

 

始まったレースだったが、2000mという中距離のレースとは言え先頭を先行するのはコンゴウリキシオーというウマ娘。人気も高く、他のウマ娘はコンゴウリキシオーから遅れた集団の所に居り、誰もがコンゴウリキシオーの勝ちを確信した。

 

残り300mにコンゴウリキシオーが到達する前は。

 

「はぁはぁはぁ…行ける!!」

 

コンゴウリキシオーもスタミナが無くなってきた。後続が迫るが距離はリードしている。このまま行けば、彼女が優勝するのは誰もが理解できた。唯一、コンゴウリキシオーや他の選手達の悲劇を挙げるとすれば()と同じ日にデビューした事だろう。

 

その時だった。衝撃波が巻き起こる。

 

『後続の1人が仕掛けた!!』

 

実況の1人が叫ぶ。その瞬間、コンゴウリキシオーは死力を尽くして逃げようとする。だが…それは無意味だった。爆発的な加速で何かがコンゴウリキシオーを抜き去った。そのウマ娘は可愛らしい少女のような顔をした男だった。

 

「えっ?」

 

そのウマ娘はディープインパクト。彼は仕掛けた瞬間に翔ぶような走りを見せ、柔軟性高い関節が繰り出すストライドとバネのような筋肉を使うことで翔ぶように走り、ぐんぐん加速する。

 

『ディープインパクト!!加速した!!ディープインパクト!!最早、翔んでいる!走るじゃない、彼は地を翔んでいる!!ディープインパクト!!たった今、ゴールしました!!衝撃的なデビューで、文字通りの衝撃を見せてくれました!!』

 

差しではない。差しを越えた爆発的な仕掛け。その圧倒的な強さを見て、誰もが言葉を失った。遅れること数秒、他のウマ娘達もなんとかゴールした。しかし、彼女達はそこで知る。ディープインパクトの規格外を。

 

「なんで…ぜぇ…ぜぇ…」

 

全力で2000mを走った。息が上がり、肺が酸素を欲しがっている。心拍数は上がり、鼓動が早い。普通はそうだ。しかし、ディープインパクトは彼女達と違い涼しい顔で呼吸が一切乱れてなかった。

 

彼が天から授かったのは柔軟性と瞬発力だけではない。馬鹿げた肺活量。その肺活量がディープインパクトの最大の武器であり、最後の仕掛けた爆発力の源なのかも知れない。

 

成長期の骨格成長が終わり、オグリキャップ程の身長まで成長したディープインパクト。彼は涼しい顔をしたまま、フィールドを去った。

 

無敗神話の始まりである。




史実ネタが多めです(ウララちゃん以外)。

オグリもクラシック出ていたら三冠馬間違いなし。なのでクラシック制覇させました。

当然、馬界のハジケリストはゴルシワープしてます(笑)

てか、シンデレラ的なメンバーに成ったなチームシリウス。オグリは地方から出てきたスーパースター、ディープは期待されてなかったから英雄、ウララちゃんは1つの地方競馬を救った救世主であり愛されるという勝ち方をした名馬。む?ゴルシ?彼はハジケリストだ。フィクションより漫画のような実話の皆さんチームじゃないか

この作品、後10話以内…伸びて前後で終わります。もし、次回作書くならゴルシどうしよう。シリウスとスピカ、どっちも出てきます

  • ディープきゅんの居るチームシリウス
  • スペちゃんの居るチームスピカ
  • ゴルシはハジケリスト…風のように現れる
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