エヴァちーと(さよならEVA ver)   作:支城

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エヴァちーと 第六話 決戦、第3新東京市 Bパート

 

 

「私は・・・私は一体何をしてるの!!」

 

葛城ミサトはネルフ本部内、女性士官用ロッカールームに併設されているシャワールームでシャワーを浴びていた。

シャワーの温度はかなり低く、ほとんど真水に近かった。自分の逆上せた頭を無理矢理にでも冷まそうとしていたのだ。

そうして10分以上浴び続けた後、漸くミサトはシャワールームから出てきた。

 

ロッカールームに備え付けられている姿見に自分の姿が映ると、彼女は眉を顰め顔を背けた。彼女の胸から鳩尾にかけて残る大きな傷跡を今は見たくなかったのだ。

ミサトはバスタオルを巻くと、着替えることも無くロッカールームのベンチに座った。

 

(初号機を大破させてしまった。これで残る手段は未だ戦うのも覚束ない零号機のみ・・・。どうして私はあんな馬鹿げた作戦を執ってしまったんだろう・・・)

 

ミサトは先ほどの使徒戦を深く後悔していた。トウジ達の容体を確認するのが恐くて、つい発令所から日向と共に逃げ出してしまったことも後悔している。

第三使徒戦、第四使徒戦についても、よくよく考えれば自分の指揮は的外れで有り、そのために皆から非難されるというのも感情はともかくとして理解していたのだ。

本当ならはとっくの昔にネルフを放逐されていてもおかしくない失態続きなのである。

 

(でも・・・でも・・・まだ私はクビになっていない。今だって司令や副司令に呼ばれて叱責すらも受けていない。私はまだ上層部には見放されていない・・・大丈夫。大丈夫よ葛城ミサト!次こそ素晴らしい作戦を立てて使徒を・・・使徒のヤツを殺してやる!)

 

爪が刺さり血が出るほど拳を握り、歯が折れんばかりにギリギリと歯ぎしりをしてミサトは使徒に対する恨みを爆発させた。

 

 

葛城ミサトと使徒との因縁は彼女が14歳の頃まで遡る。

ミサトの父は研究者で『スーパーソレノイド理論』の提唱者だった。

もっとも彼女には全く理解の及ばない研究であり、そのために家庭を顧みない父を恨んでさえいたのである。

彼女には父の姿はただ『家族から逃げている』としか思えなかったのであった。

 

そんな父と母の離婚が決まり、ミサトはその事を喜んでいたのだが、どういうわけかその嫌いな父と南極へと行くことになったのだ。

いまだにその辺の記憶が曖昧で、なんでそんなことになったのかさっぱり覚えていない。

もしかしたら、家庭を犠牲にしてまで没頭していた父の仕事に多少の興味が沸いたのかもしれない。

ともかく、ミサトは父とそして父の研究者仲間達と南極へ向かったのである。

 

そして、そこであの『セカンドインパクト』が起こった・・・。

 

ミサトが覚えていることは脱出用カプセルに乗せてくれた父の最後の姿と暫くしてカプセルが開き見ることが出来た白い巨人、所謂『使徒』の姿だけであった。

 

ミサトは救出後ショックで失語症になり、2年後に漸く回復することができたのだが、そんな彼女にわき上がった思いはただ一つ『父の仇を!使徒に復讐がしたい!』という復讐心だけだったのである。

 

彼女は大学進学後戦自に入り、念願叶ってネルフに出向、そして遂に作戦課長の地位を得たのである。だからこそ今のこの現状は彼女にとって大いに不満であったのだ。

 

 

しかし、シンジはミサトの情報を600万ポイント使ってさらに詳しい情報を得ていた。

まず彼女の記憶はゼーレという組織によって操作されていること。都合の悪いところは消去され、さらには偽の記憶を与えられているのである。

 

まず父ととも南極に行った件だが、これは彼女の父『葛城博士』による拉致なのである。

彼女は父親に母親の元から連れ去れた後、眠らされそのまま南極まで連れてこられたのであった。

なぜそんなことが必要であったか?それは南極の白い月(ジオフロント)に眠るアダムを調査するため、彼女を使ってアダムをコントロールしようとしたからである。

 

発見されたアダムの動力源(コア)が当時葛城博士が提唱していたS2理論でしか説明ができないため、ゼーレによって葛城博士が招聘され調査チームが組まれたのである。

 

学会から不遇の扱いを受けていた葛城博士は突如としてゼーレに理論を認められると、国連の直轄組織である『人口進化研究所』の初代所長に抜擢され、まさに学者人生の前途は洋々だったのであった。

離婚を決めたのもこの頃で、彼からすれば邪魔な者を切り捨てるくらいの感じだったのだろう。

 

彼は南極へ出向く前にアダムとは人を介して『意思疎通』が出来るのではないか?という碇ユイというまだ研究者になりたての女性から意見を受けた。

彼女は学生時代からいくつもの論文を学会に提出し、注目を受けていた若き天才であり、彼を招聘した国連の上層部からも手厚く保護されていた。

 

葛城博士も彼女は自分の専門分野とは畑違いであるため、とくに嫉妬をすることもなく、彼女の意見を取り入れアダムとのコンタクトを試みることになったのである。

 

碇ユイからアダムと接触させるには12~16歳くらいの子供がもっとも適合しているという報告を受け、彼は自分の娘を人身御供にすることをあっさりと決めたのである。

 

彼は自分の娘を拉致すると南極へ連れて行き、さらに薬を使って催眠状態にしなんでも自分の言うことを聞くように操り人形にした。

 

そしていよいよ実験当日、彼は娘を使ってアダムとの接触、コントロールに臨んだのである。そして実験は失敗、彼は娘や仲間達とともに爆発に巻き込まれ死亡したのである。

 

この失敗は予め仕組まれていたものだった。碇ユイが解読に成功しゼーレに提出していた『死海文書』にセカンドインパクトが南極にて起こるという記述が有り、その記述通りにセカンドインパクトを起こすためユイによってプログラムにエラーが仕込まれていたのである。

 

彼女の夫になる予定の六分儀ゲンドウが実験の前日に持てるだけの調査資料を持ってさっさと逃げ出していたのも、最初から失敗が仕組まれていたためである。

 

セカンドインパクト後、葛城ミサトはただ一人南極からの生還者『ゼロチルドレン』としてゼーレによって保護された。彼女もまた死海文書の記述に登場するためである。

 

『ゼロチルドレンの指揮によって使徒戦が行われる』

 

ただ一つのこの記述のためだけに、ミサトはゼーレによって記憶を操作され、使徒への深い憎しみを植え付けられたのであった。

 

ミサトが覚えている最後の父の姿も白い巨人も全て作られた『嘘の記憶』なのである。

そしてその洗脳のキーとなっているものこそ、彼女がいつもぶら下げていて『父の形見』だと思い込んでいるあの『十字架』であった。

 

そもそも少女だった彼女が『使徒』などという存在の呼称を知るはずもなければ、セカンドインパクトを起こしたのが『使徒』であるなどわかるはずもないのであるが、彼女はそのことを疑問に思うようなことは無かった。

 

唯一、その矛盾に気がついたのはとある目的を持って彼女に近づいた加持リョウジただ一人である。

 

ミサトはゼーレの操った通りに大学から戦自へと進むと、ゼーレは彼女をネルフへと出向させ作戦課長の地位を与えたのである。まさに全てが『計画通り』だったのである。

 

さて、南極で死んだはずの『葛城ミサト』が、なぜ今こうして生きているのか??

その続きを知りたい場合は追加でさらに3000万ポイントが必要になる・・・。

 

「ふざけんな!ここまで読むのにもう400万ポイント追加で出しとんじゃい!!」

 

シンジはここで一旦読むのを止めたのであった。まあ、すでに原作者も説明を放棄しているところなので(爆)、これ以上はただの蛇足になるのかもしれない・・・。

というか新劇場版ではこの辺りのことを全て無かったことにされているため、神はふざけるなと唾棄したい気持ちで一杯ある。ふん!

 

ミサトがゼーレによって操られていることを知ったシンジは、だからこそあの時あずみとまりもにミサトを万一の時は『殺す』許可を与えたというわけである。

 

 

なにはともあれ、葛城ミサトは気持ちを新たに服を着替えると作戦一課へ向かった。

作戦一課には副官の日向がなにやら画面を凝視していた。

 

「どうしたの?日向君」

 

「あっ葛城さん。いえ、現在二課が使徒に対して威力偵察を行っていまして、その様子を見ていたんです」

 

「ほんと!あいつら何を勝手に・・・。私にも見せなさい!!」

 

ミサトは日向を押しのけてモニターを見る。画面上では12式自走臼砲が使徒によって打ち抜かれ消滅する様子を映していた。

 

「これまでに二課が採取したデータによりますと、目標は一定距離内の外敵を自動排除するものと推測されます」

 

日向は二課から一応こちらへも送られてきている分析結果のデータを読む。

 

「エリア侵入と同時に過粒子砲で100%狙い撃ち、エヴァによる近接戦闘は、危険すぎますね・・・」

 

「ATフィールドはどう?」

 

「健在です。相転移空間を肉眼で目視できるほど、強力なものが展開されています。誘導火砲、爆撃などの生半可な攻撃では、泣きを見るだけですね」

 

「攻守ともにほぼパー璧。まさに空中要塞ね」

 

「それと、使徒の下部からドリルが出てきてまして、我々の直上、第三新東京市、ゼロ・エリアに侵攻中です。直径17.5メートルの巨大ドリルが、ジオフロント内、ネルフ本部に向かい、穿孔中・・・とのことです」

 

「なるほど・・・。直接ここにあの光線を撃ち込もうってわけね・・・」

 

「ええ」

 

「しゃらくさい。で、到達予想時刻は?」

 

「はい、明後日の午前0時06分54秒、その時刻には、22層全ての装甲防御を貫通して、ネルフ本部へ到達するものと思われます」

 

「あと30時間ってとこね・・・初号機は?」

 

「だめです。コアはかろうじて無事だったんですが、もうボロボロでとてもじゃないですが出撃は無理でしょう。ただ零号機は現在も調整を続けていまして、先ほど一旦ジオフロント内で実際に稼働させるテストも行っていたようです。あの様子だと出撃は大丈夫そうですね」

 

「そう、それはいいニュースね」

 

「ただ、零号機は作戦二課長、シンジ君が自分の命令以外での出撃を禁じる上申を司令に上げてまして、司令もそれを許可していますから、我々では出すことは難しいです」

 

「ふん、まぁ初号機をあんなにしたんだから、言われなくとも司令の命令が無い限り出すつもりはないわよ。どちらにせよ私の作った作戦を司令部が認めればいいんだから!」

 

「はい・・・。そうですね。僕は白旗ですが、葛城さんはなにか腹案がありますか?」

 

「そうね・・・ちょっち、やってみたいことはあるわね」

 

 

数時間後、ミサトは司令室を訪ねた。現在時刻は〇時を回っているが、この喫緊の事態の中ネルフ内で寝ているような不心得者など誰一人存在していない。

 

司令室にはいつものヒゲ司令、ろうじん副司令の2人の他に、いつもは置いていない応接セットのソファに司令の妻である碇ユイとその他斯衛の制服を着た女性4名、そしてパイロット控え室『室長補佐』である阿賀野カエデの6名がいた。

 

ミサトは部外者達の存在に鼻白んだが、彼女達を無視して気を取り直すとヒゲに対し作戦の上申に来た旨を告げる。ろうじんに促されるとミサトは己の作戦の説明を始めた。

 

「目標のレンジ外、超長距離からの直接射撃か」

 

「そうです。目標のATフィールドを中和せず、高エネルギー集束体による一点突破しかこの使徒に勝つ方法はありません!」

 

「一応聞くがマギはどう言っていた」

 

「スーパーコンピューターマギによる回答は、反対2、条件付賛成が1でした」

 

「話にならんな・・・。勝算は8.7%か・・・」

 

「最も高い数値です」

 

「何に対して最も高い数値なのか知らんが・・・。その高エネルギー集束体とは具体的に何を指しているのかね。ウチのポジトロンライフルでは出力が足りんと思うが」

 

「戦自研の開発した陽電子砲を徴発します。そして日本中から電力を集めて使徒に向けて放つつもりです。引き金は私が指令車両から引きます。ご安心下さい」

 

「君はバカかね?何がご安心下さいだ!!戦自は現在斯衛軍との統合を行っている。斯衛軍には『独立権』があり、いかなる組織の干渉を受けないことを国連で定められているのだ。その引き替えにあの戦術機を国連軍にも配備することを彼らは認めさせられているんだからな。君の言う徴発などできんよ。それに日本中から電力を集めるだと?それでどれだけの被害が出るのかわかっているのかね?病人だけでも相当数にのぼるぞ!!」

 

「ならば要請します。使徒を倒さねば人類は滅びます。それは斯衛もわかっているはずです。協力を要請しましょう!電力についても特務権限を使えば政府の了承は得られるはずです」

 

ミサトのこの言葉にろうじん副司令は深いため息を吐いた。

 

「葛城君・・・。君はあそこに斯衛の方々が座っているのが見えんかったのかね?もうとっくに斯衛軍の方からネルフに協力を申し出てくれているよ・・・」

 

「冬月」

 

「ん?どうした碇?」

 

「もういい、いつまでもユイをこの部屋で待たすわけにはいかん。これから夕食を食べるのだからな。私は失礼させてもらうぞ」

 

「おっおい!私も一緒のはずだろう。ズルイぞ碇。ああ、阿賀野君!君が葛城君に作戦の説明をしといてくれたまえ」

 

「へ?はっはい!!」

 

席を立ちユイの方へ歩いて行くヒゲを、ろうじんも慌ててその後を追う。

 

実はユイは今回の作戦に「うん」とヒゲが言ったら、これから夕食を皆で一緒に食べようという交渉を行っていたのである。

これにヒゲもあっさりと陥落し、先日隣に作った会食会場に夕食の準備をさせていたのだ。まあ、すでに夕食と言うより夜食になってしまったが。

 

迷惑なのがヒゲ行きつけのレストランのシェフ達である。彼らはこの深夜にネルフ本部に態々呼びつけられディナーの調理をさせられていたのだから・・・。

 

斯衛の面々とヒゲとろうじんはミサトとカエデを置いてさっさと部屋を出て行ってしまった。一人残されたカエデはかなり居心地が悪かった。

 

「あの、葛城一尉・・・。発令所で他の皆様方にも説明をしたいので、申し訳ないのですがそこまでご足労願えますでしょうか?」

 

そんなカエデをギロリを睨むミサト。カエデは思わずヒッっと声を上げた。

 

二人は沈黙したまま発令所へと向かった。

 

 

発令所には事前に連絡を受けていたリツコやマヤ、青葉の姿もあった。日向ももちろんここに来ているし、その他にも各部長クラスの面々が集まっていた。

 

「なぜ作戦を説明するのに発令所なの?ブリーフィングルームでいいじゃない?」

 

「すみません。実は皆さんには二課長自ら作戦を説明したいとのことでしたので・・・。マヤちゃん、これを使ってナガサキに繋いでもらえますか?」

 

カエデはマヤにカードキーを1枚渡すと、マヤはそれを自分の席に先日シンジによって取り付けられていたカードスロットにスライドさせる。

 

このカードキーはナガサキ・アーセナルに繋ぐための暗号キーになっており、これを使うことによって簡単に繋げることが可能なのである。

もちろん、今から繋がるところは一般には開放されていないところである。

 

ほどなく発令所の画面に金髪の白人女性が映った。

 

「はい、こちら雪広重工業『ナガサキ・アーセナル』イリーナ・ピアティフ技術二尉です。そちらは?」

 

「初めまして、国連特務機関ネルフ、伊吹マヤ技術二尉です。阿賀野カエデ三尉より碇シンジ一尉に繋ぐよう依頼されました」

 

「了解しました。・・・はい、大丈夫です。それでは碇一尉に繋ぎます」

 

ピアティフがそう言うと画面が切り替わり、本部地下のケージのような場所が映った。

 

「これは・・・『戦術機』のケージですかね?だとするとアレが・・・」

 

鈴原整備部長が興味深そうに画面を見つめている。画面奥には2機ほどロボットが格納されており、その周りではたくさんの整備員が忙しそうに働いている。

 

「すいません。お待たせしました。碇です」

 

薄汚れたツナギを着ているシンジが画面に入ってきた。

 

「皆さんお集まりですか?僕がこうして呼ばれたということは父さん、碇司令は二課の作戦と斯衛からの要請を受諾したんですね。カエデさん日重の方はどうでしたか?」

 

「はい!現在こちらに向けて『JA』を運んでいるところです。明朝六時には到着の予定です」

 

「よし。ではこれで作戦の前提条件は全て整ったわけですね」

 

カエデの報告を聞き、シンジは少し顔を綻ばせた。

 

「シンジ君。そろそろ、その作戦を説明してくれないかしら?一応あなたの要請通り『零号機』の稼働テストは行ったわよ。今のところ特に問題は出てないわ」

 

シンジはリツコのその問いに大きく頷いた。

 

「はい。ご苦労様でした、リツコさん。でもまだまだお世話になります。今回の作戦ですが、戦自研の陽電子砲を『初撃』に使います。電力は日重が開発した『JA』を使います。JAはリアクターを内蔵しており、いわば小型の原子炉を持っています。このJAに陽電子砲を繋いで使徒にぶっ放そうという計画です」

 

「ちょっとまって、いくらそのJAが小型の原子炉を持っていても使徒のATフィールドは突破するには出力が足りないでしょ?!作戦ミスなんじゃないの!!」

 

ミサトがすかさずシンジに作戦の不備を突っ込んだ。

 

「ええ。多分足りないでしょう。この辺りは日重の技術者と戦自の技術者、そしてリツコさんをはじめとするネルフの皆さんのがんばり次第でどうなるかわかりませんが・・・。とはいえ僕もどんなに出力を上げてもJAと陽電子砲では使徒のATフィールドは破壊出来ないと思います」

 

「そらみなさい。ならさっさと作戦を取り下げることね」

 

「破壊は出来ませんが、使徒に隙を作ることは出来ます。使徒は攻撃と防御を一緒には出来ないようです。当初は零号機で使徒が攻撃をしている最中にATフィールドを中和させて、逆方向から僕が乗る『戦術機』で高速突撃、コアを破壊するつもりでした。しかし威力偵察の最終の結果を見るに零号機は必要ないかもしれません。しかし、不測の事態も考えられますから、零号機にはプログ・ナイフを槍のようにして持たせて使徒に対して攻撃できるよう待機させようと思います。それに万が一使徒のATフィールドを中和させる必要だってあるかもしれませんしね」

 

「ネルフとしては・・・零号機でトドメを刺したいところだけど・・・」

 

リツコがそう呟くとシンジはクビを振った。

 

「その気持ちはわかりますが、エヴァは空を飛べません。僕の戦術機は長時間の飛行が可能ですから、上空に待機して超スピードで使徒のコアが狙えます。速度を比べたらウサギとカメほど違うでしょう・・・。僕は使徒を倒すために万全の策を使いたいのです。それは皆さんも使徒を倒しサードインパクトを防ぐという高い志を持ってネルフに来られているのですからわかって頂けると思います。大丈夫です。エヴァの価値は落ちません。ATフィールドを展開出来るのはエヴァだけなのですから。今回は譲ってください」

 

「・・・ふぅ・・・そうね。シンジ君の言う通りよ。それで私たちへの指示は?」

 

「技術部には零号機の準備を、先ほどの槍もですね。それと戦自と日重の技術者達との協力もお願いします。確かポジトロンライフルを作っているんですよね?その技術の提供を是非お願いします」

 

「了解したわ」

 

「整備部の皆さんもお願いします」

 

「ああ、もちろんだとも。全力を尽くすよ」

 

「市民の避難指示も余裕を持ってお願いします。とくに作戦域周辺には絶対人を立ち入らせないでください。JAは原子炉を積んでいます。万が一使徒に破壊されたときは大惨事になるので、JAの配置に関しては十分注意してください」

 

「そうね・・・第三新東京市内で爆発されたら酷いことになるわ・・・。配置に関してはこちらに任せておいて・・・。そうなるとそのJAを守る盾も必要かしら?それもなにか考えてみるわ」

 

「よろしくお願いします。僕はこっちの整備にかかり切りになるので、その辺の采配はリツコさんに頼みます。・・・それでは失礼します」

 

通信画面からこちらに敬礼をしたシンジの姿が消える。

それを合図にネルフの面々は早速各々の仕事に取りかかり始めた。

 

ミサトただ独りそのままの体勢でジッとシンジの消えた画面を見つめていた。

彼女の顔にはなんの感情も浮かんでおらず、ただ無表情にジッと佇んでいたのである。

 

 

発令所を出たリツコであったが、クールな表情とは裏腹に内心では焦りまくっていた。

実はこれはまだ斯衛軍の発足発表以前の話だったのだが、ヒゲ司令より日重が開発しているJAについて『妨害工作』を仕掛けるようにとの命令があったのだ。

 

もちろんJAなどエヴァからすれば取るに足らぬ玩具であるし、使徒戦で運用するなど夢のまた夢、ゴミ同然の代物であった。

 

JAはゴミでも作っている大本の日本重化学工業は日本の三大重工の一角で有り、雪広と那波が接近していたことから、ネルフ、というよりゼーレがJAの発表会で事故を起こし、それによって下がった日重の株式を買い占め、その傘下に収めようと考えたのである。

 

ネルフにとってもエヴァに関する全ての部品を単独で賄えるはずも無く、海外からの輸入ではスピードに欠ける。外部に作らせてもかまわないものに関しては日重に生産をさせるというのは全くもって理にかなっている事だったのである。

 

というわけで、リツコはマギを使い日重のJA開発チームのスパコンに侵入、暴走させるウイルスプログラムをJA内部に仕込んだのである。

 

無論、それがいつ暴発するのかはある程度リツコによって操作できるので、問題ないと言えば問題ないのであるが、これからJAには陽電子砲を付けることで様々な改造が施されることになる。

 

となると基幹プログラムにも様々な変更が加えられるし、新たに足されるものもあるだろう。

そうなるともうリツコには仕込んだウイルスのコントロールができなくなる恐れもあるのだ。

また、マギを使ってウイルスを事前に取り除こうにも、そんな下手を皆の前で打ってネルフを窮地に追いやることもできないし、もちろん自分も捕まりたくない。

 

(・・・まあ、できる限りスキを見つけてウイルスを取り除くならそうする・・・。出来なければ運に任せるしか無いわね・・・。まあ、零号機で中和してシンジ君の戦術機でトドメを刺せばJAに万が一があっても大丈夫よね・・・多分)

 

リツコは何事もポジティブに考える楽観主義者などではないが、この問題についてはそう考えないと崩れ落ちそうなくらい動揺していたため、無理矢理頭の中から不安を追い出したのだった。

 

 

「ふー。とりあえず一段落だね」

 

ネルフの人たちに説明を終えたシンジはやれやれと一息つくと、再び己の戦術機の調整に向かって行った。

 

「ご苦労様です、シンジ様。あと少しで追加装甲の取り付けができそうです」

 

陽炎(改)の足下にいた巴雪乃がシンジに気付くと敬礼しつつ状況を報告した。

 

「うん。マナはまだユニットの中にいるの?」

 

「はい。でも彼女スゴイですね!初めて乗ったシミュレーターで吐きもせずに動かしてましたし・・・。抜群の適正ですよ」

 

「マナはずっと戦自でパイロットの訓練を積んでるし、それで体を壊したって言っていたから、恐らく戦術機よりも相当酷かったんじゃないのかな?そのトライデント級って。だから、僕はマナは絶対大丈夫だと思っていたよ」

 

「うー。私たちも負けていられませんね。私たちももう何年も戦術機には乗っているんですから・・・。それではシンジ様、私たちは今から第三新東京市へ出発します。到着まで15時間ほどかかりますので、明日の夕方五時頃になると思います」

 

「うん。僕もその頃にはそっちへ行くよ」

 

「空が飛べるっていいですよね・・・。まあ、私たちはトレーラー内で寝ていくのでそれほどたいしたことではありませんが」

 

「初島の基地もこの使徒戦が終わったら早速整備するよ。この基地に戻ってくることは無いと思う。やっぱりここは遠すぎるしね。雪乃達の私物とかあったら忘れずに持っていくようにね」

 

「はい。了解しました!それでは失礼します」

 

雪乃は再びシンジに敬礼すると、足早にケージを出て行った。

 

シンジは彼女を見送るとタラップを登って陽炎のユニットへ向かった。

複座型ユニットの後方、サブパイロット席にマナが真剣な表情で手元の資料を見ながら画面を操作していた。

 

「どう、マナ?いけそう」

 

「あっシンジ君!うん、大丈夫・・・だと思う。ええと、メインウエポンのハンドカノンはシンジ君の操作だからいいとして、私はこのチェーンガンと小型VLS6基の操作、あとナビゲーションを担当すればいいんだよね?」

 

「うん・・・まあ、実のところかなり無茶苦茶に武装はくっつけちゃったんだよね・・・。上手く動くとは思うけど。それに今回は多分ハンドカノンすら使用しないと思うよ。コアに向かってプログ・ナイフを一差しだと思うし。ナイフは向こうで借りるんだけど」

 

「それならナビだけだし全然問題ないよ。明日の飛行テストで私のナビのわかりにくいところとか教えてくれたらって思うけど」

 

「そうだね・・・。マナ、そろそろ今日は休んでよ。明日は本番だし、マナにとっては初陣だからね。十分に休息を取って欲しい」

 

「うん、わかった。じゃあ、お言葉に甘えて・・・。シンジ君はどうするの?」

 

「僕は徹夜だねー、残念ながら。マナと一緒に寝たいんだけど」

 

「あはは、それは終わってからのお楽しみということで。じゃあ行くね」

 

マナはシンジに敬礼しユニットから降りて行った。

 

 

「しかし・・・いくらチートシステムとはいえ、こんな無茶が通るとは・・・」

 

シンジはメインコクピットに座ると、早速機体の調整を始めた。

 

この機体は元々『陽炎』という戦術機の機体だった。『撃震』を第一世代とすると『陽炎』は第二世代。その性能は全て『撃震』を凌駕しているモノだった。

 

シンジはまず斯衛軍には一般衛士に『撃震』を、精鋭部隊に『陽炎』を配備するつもりだったのである。

 

しかし、その後第二東京で夕呼に会い、彼女にチートシステムを見せると彼女は戦術機以外の機種に着目したのである。最初は『IS』に関して興味を示していたのだが、残念ながら『IS』は必要ポイント数が高い上に、開発には篠ノ之束という人物が必要だった。開発者いるのでは夕呼は手出しが出来なくなるので却下され、次に『エステバリス』について検討し始めた。そして見つけたのが『ブラックサレナ』という機種だったのである。

 

とはいえ、ブラックサレナはエステバリス用の追加装甲・高機動ブースターである。現在戦術機を全面に押し出しているのに、いきなり全くの別の機種を出すのは不自然だし、技術的にも時代がかけ離れ過ぎているのである。

戦術機は実は現代の科学力でも頑張れば生産できるというレベルの機体だったためだ。

 

そこで夕呼は「なら戦術機に取り付ければいいじゃない。それができてこそのチートでしょ?」という一言で、神様もその言葉に応えたのか、チートシステムで戦術機用のブラックサレナの開発が出来るようになっていたのである。

 

調子に乗ったシンジはブラックサレナにいくつか重量制限ギリギリで武装を追加し、ここに魔改造『陽炎(改)+追加装甲・高機動ブースター仕様』通称『黒百合』が爆誕したのである。といってもシステムでは開発できるだけなので、実際に作り上げるのは大変だったと生産責任者である霞とピアティフはシンジに愚痴ったものである。

 

模型でも作り方の書いた取説と材料があっても、それを上手に組み立てられるか?といえば人の力次第になるのである。チートシステムも取説と材料は生み出せても本体そのものは生産ラインで雪広重工の皆さんに頑張って作り上げてもらう必要があるのだ。

この辺、妙にリアルなためシンジも多少面食らっている所であった。

 

とはいえ、すでに20機以上組み上がっている『撃震』はかなりのスピードで生産できており、今も24時間フル稼働で生産を続けている。まあ、その割にパイロットは全然なので、毎日3バカ達はできあがった機体のテストに明け暮れていたわけである。

おかげで、彼女達も『撃震』に馴れもう熟練パイロット並である。

 

この『陽炎』と『黒百合』も最初の機体だったため苦戦したが、次回からもう少し楽に組み上げることが出来ると思う・・・多分。

 

(無茶苦茶でも、なんとか間に合ったね・・・。今回の戦いは使徒戦をネルフだけのものじゃなく斯衛やその他の勢力を巻き込んだ形にしたかったんだ。とくに僕の『影響力』を大きくしないととてもじゃないけどその他の危機になんか対応できないもの・・・)

 

シンジはシステムを起動させて『危機』について確認する。

 

(火星の状況については今はどうしようもない・・・。魔法世界も可愛そうだけど火星に行くための宇宙船なんていくらなんでもまだ開発できないし・・・。まあ、別に火星なんかなくなったって僕はかまわないんだけどね。火星が滅んだ後に地球に来ちゃうのが困るだけで・・・。中国の黄巾賊に関しては・・・これもぶっちゃけ他の国だし。中国人も人口多すぎるんだから少しくらい死んでもらってもいいでしょ、まだまだいっぱいいるんだしさ。最終的には核でも撃ち込んでおけばオーケーだよね、あはは。川神の薬物騒ぎは・・・イザベラ達に頼んで売人達を皆殺しでいいよね。下手に『真剣で・・・」の人たちを呼んで大事になっちゃ困るから(汗、まず先に潰しておいてから呼ぶようにしよう。あと大陸が浮かんじゃうのは(大汗、風石が原因らしいんだけどそんなのどうやって採掘するんだよ??見当もつかないや。このあたりはその世界の住人だったイザベラに相談するしかないよね・・・。彼女ドイツからいつ帰ってくるのかな?雪広ビルでデコチューして以来もう随分会ってないけど・・・)

 

シンジはしばし目を瞑りイザベラの光輝くおでこを懐かしむのであった。

 

 

JAを載せたトレーラーは直接第三新東京市には入らず、少し離れた陸上自衛隊『富士演習場』に到着した。これは当然ながらJAを起き上がらせ、稼働させるような広い場所が第三新東京市にはなかったためである。

 

それに、使徒は現在芦ノ湖東、鷹巣山北5kmの所に位置しており使徒の攻撃範囲を考えると、この辺りが準備を行うのには最適だったからである。

 

JA開発チームチーフの時田シロウは早速JAを改造する準備を始めた。

研究所にあった様々な機械や部品を持てるだけ持ってきたが、果たしてこれで陽電子砲が取り付けられるのか不安であったのも事実である。

 

「申し訳ありませんが、時田博士ですかな?」

 

少し考え込んでいた時田はその声にはっと顔を上げた。そこには戦自の制服を着た初老の男性が立っていた。

 

「はい、そうですが・・・。失礼ですがあなたは」

 

「これは失礼しました。私は戦自研の所長をしております斎藤と申します。陽電子砲一式をこちらにお持ちしました」

 

「はっ、これは大変失礼しました。JA開発チームのチーフをしております時田です。早速ですが今回の案件は我々にとって大いなる挑戦であります。ぜひご指導の程お願いします」

 

「いやいや、もちろんです。一緒にあの使徒に一撃を食らわせましょう。時田さんはもう見ましたかな使徒は?」

 

「はい・・・ここに来る途中で・・・。しかし私が思い描いていた化け物の姿とは全く違いました。信じられない姿です・・・」

 

「うん、だがあと17時間程でネルフ本部にあいつの下から出てるドリルが到達、ネルフ本部が破壊されるとどういう理由だか知らんがサードインパクトが起きるらしい・・・。まあ、ああして使徒が続々とあそこにやってくるのだからそうなんだろうさ。とにかく時間が無い。早速仕事にとりかかろうじゃないか!」

 

「はい!」

 

時田が頷くと斎藤は片手を上げて大きく振る。すると戦自のトレーラーがこちらに向けて動き始めた。どうやらあれに乗っているのが陽電磁砲のようである。

 

「失礼します。時田博士でよろしくて?」

 

すると今度は金髪黒眉の若い女性が、さらに若い童顔の女性を連れて彼の元にやって来た。さすがの時田も彼女のことはよく知っている。

マギのシステムアップを行い、あの使徒と戦っているネルフのエヴァンゲリオンと呼ばれるロボットの開発責任者である赤木リツコ博士だ。

 

スーパーコンピューターマギ、現時点において世界最高、最強のスパコンである。

開発者はリツコの母親の赤木ナオコであるが、システムアップしたのはリツコである。

本人は謙遜しているがこの世界において研究開発段階のシステムを実用段階までシステムアップさせることは、実は研究開発した人物よりも大きく評価されるものなのである。

リツコはマギをネルフだけに留まらず第三新東京市のありとあらゆるシステムに組み入れ活用することに成功しており、その成果は時田もリツコの実力を嫌でも認めざるを得ないのであった。

科学というものは研究だけでよいモノではない。現実に使えなくては意味が無いのだ。

 

これは時田が開発したJAにも言える。これが使い物にならなければ今までの苦労も何一つ評価をされないのである。

つまりはあの赤木ナオコも娘のリツコがマギを実用化しなければただの一学者で終わり、そのままその名前は埋もれていってしまったのである。

ノーベル賞で一つの研究に複数の学者が同時に受賞するのもこれが一つの理由である。

 

「ご高名は常々聞いております赤木博士・・・。開発チーフの時田です。どうぞお力をお貸し下さい」

 

時田はリツコに素直に頭を下げる。JAが日の目を見るならこんな頭いくらでも下げる。

 

「時田博士、顔を上げて下さい。協力を受けて助かっているのは我々ネルフの方ですわ。ネルフでもポジトロンスナイパーライフルを開発しています。実物とシステム両方持ってまいりましたわ。戦自研からもたくさんの技術者がきているようですし、きっと上手くいきますわ」

 

「はい!ありがとうございます。よろしくお願いします」

 

こうして日重、戦自研、ネルフの技術者は陽電子砲をJAに取り付けるべく、長いようで短い戦いを始めることとなる。

 

 

「ん・・・ここは・・・」

 

トウジはゆっくりと目を開いた。目に入ったのは無機質な天井だけだった。

ふと隣を見ると全身、顔まで包帯だらけの男が寝ていた。よく見るとケンスケのようだ。

 

「そうか・・・わいらは初号機で使徒に戦いを挑んだんやったな・・・。情けないのう、何にも出来ず負けてしもうた」

 

「そうね・・・情けなかったわね・・・」

 

トウジはその声に驚き、声の方に顔を向ける。しかし痛みによって結局は首は元の位置に戻った。

 

「ミサトさんでっか・・・。あの使徒はどうなったんです?」

 

「未だ健在よ・・・。今日の夜には再び使徒戦を行うわ」

 

「わいらは・・・無理として、今度は綾波がいくんでっか?」

 

「ええ、レイも戦うわ。今回は斯衛軍・・・戦自の連中と協同作戦になるわ・・・」

 

「はあ」

 

「だから、あなたたちに出番はないから、ゆっくり休みなさい」

 

「はいな・・・そうさせてもらいます。それでミサトさんはどうするんで?」

 

病室を出ようとしていたミサトはそのトウジの言葉に動きを止めた。

 

「わからないわ・・・でも、このまま役立たずで終わるつもりはないわよ」

 

そう言うとミサトは今度こそ病室を出て行った。

 

トウジはなにやらミサトの思い詰めた様子に嫌な胸騒ぎを覚えたのだった。

 

 

Cパートに続く

 

 

 

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