エヴァちーと(さよならEVA ver)   作:支城

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エヴァちーと 第六話 決戦、第3新東京市 Cパート

 

 

「それじゃ行ってくるよ!霞もイリーナも初島の基地が完成したら一度呼ぶからね!」

 

シンジは見送りに来てくれた霞とピアティフにビシッと少し格好付けて敬礼する。

 

シンジとマナはこれより『黒百合(ブラックサレナ)』で第三新東京市に向かうのである。周りには見送りの二人以外にアーセナルの社員、整備員達も総出で集まっている。

 

「うん・・・待ってる・・・。頑張ってね・・・」

 

「シンジさん、ここは私たちに任せてください。ご武運を!」

 

二人はそう言ってシンジに敬礼を返した。シンジは二人に頷くと颯爽と『黒百合』に乗り込む。ユニットではすでにマナが発進準備を整えている。

 

「お待たせ、マナ。じゃあ早速だけど出発するよ」

 

「うん。準備は万端だよ。全システムオールグリーン、発進準備オーケー!!」

 

「よし『黒百合(ブラックサレナ)』発進!!」

 

漆黒の機体が上空へゆっくりと浮上すると、高機動ブースターが点火、黒百合は瞬く間に南の空の彼方へと飛び去っていく。

 

黒百合の発進を見ていた雪広重工の整備員達がその勇姿に歓声をあげる。

歓声の中、霞とピアティフの二人は静かに目を閉じ、手を合わせてシンジの戦勝を祈願するのだった。

 

 

一方その頃、『JA』に陽電子砲を取り付ける作業を続けていた富士演習場では3人の技術者が仮設プレハブに集まって頭を抱えていた。予想はしていたが作業は難航を極めていたのである。

 

「陽電子砲の基幹部分を取り外し、ネルフのポジトロンスナイパーライフルに取り付け、JAの背中にライフルを背負わせる・・・。ここまではどうにか間に合いそうですな」

 

「はい。背負わせたライフルとJAのリアクターとを繋げて電力を供給するのも問題ありません・・・いえ、無いわけではありませんが、なんとか間に合うかと・・・」

 

「問題は射撃の制御プログラムですね。JAが外部制御なのはリアクター内蔵なのを考えれば妥当なのですが、ミリ単位の射撃の制御を行うには力不足と言わざるを得ません。ライフルのシステムとの完全な統合が必要になります」

 

つまりネルフのポジトロンスナイパーライフルとJAとでは全く別のシステムで稼働している。無論ネルフと日重では別組織なので当たり前なのだが、JAでライフルの正確な射撃を行うには、この二つのシステムを連動させる必要があったのだ。それには両システムの統合が必要なのだが、今はその統合作業を行う時間が圧倒的に足りなかったのである。

 

これはネルフのポジトロンスナイパーライフルがエヴァのシステムと連動しており、目標に対して自動で照準を合わせるという極めて高度な制御プログラムが組まれていることに原因がある。今回はこのライフルの高い性能が裏目に出たわけなのであった。

 

「システムプログラムの統合と言っても・・・Reプログラムにどれだけ時間がかかるか、少なくとも数時間なんて言う話じゃない・・・数ヶ月単位の話だ・・・」

 

時田はリツコの言葉に絶句した。いまさらJAのブラックボックスを外部に開示することはなんらかまわないし、ネルフ側もライフルのプログラムをこちらと同様に開示するわけだから、そのことについては問題はない。とはいえ技術的にまったく違う体系のプログラムを連動させるというのは至難の業なのである。それをあと数時間で行うなど・・・。

 

「現在の時刻が16時、残り時間は8時間。とはいえ、戦闘配置までJAを移動させるのに少なくとも3時間は必要だとして、あと5時間・・・。ライフルの取り付けは出来てもプログラムまでは・・・とても手が出ない」

 

「しかし、いくらライフルを取り付けても陽電子砲を使徒に命中させなければ意味が無い。使徒の弱点であるコアを正確に狙わず、隙を作るだけに徹したとしても、使徒の体に当てるくらいの精度は必要だよ」

 

「最後の手段としては誰かが直にJAに乗り込んで、照準と射撃を行えば解決するわ」

 

「しかし、それは・・・もし使徒の反撃があったら・・・」

 

自殺行為だ。と時田が言おうとした時、一人の赤いジャケットを着た女性がプレハブの中に入ってきた。

 

「誰かがあのロボットに乗り込めばいいのね?」

 

「ミサト?!あなた何を言っているの!馬鹿なことを言い出さないで!!」

 

ミサトはリツコの声を意に介さず、ツカツカと時田の目の前まで歩いて来る。

 

「私はネルフの作戦課長、葛城ミサトです。JAには私が乗り込みます」

 

「日重の時田です。しかし・・・危険ですぞ、葛城さん」

 

「危険なのは百も承知です。とはいえ、この使徒戦に我々が敗北すればサードインパクトが起こります。そう考えれば安全な場所などどこにもありません。私は使徒と戦うためにネルフに志願して入りました。こんな時に命を賭けないでなにが人類の防波堤か!心配ご無用です。命を賭ける覚悟はとうにできています」

 

ミサトの言葉と迫力に時田はたじろいだ。確かに彼女にJAに乗り込んでもらえれば、技術的な問題はほぼクリアになる。すでに残り時間も少なく決断の時だった。

 

「わかりました。この時田、その覚悟に感服致しました。斎藤さんも結構ですね?」

 

「ああ、そもそも使徒戦の優先権はネルフにある。そのネルフの作戦課長殿が率先して乗り込み戦うのであれば反対などあるはずも無い。頑張ってくれ給え」

 

リツコはただ沈黙していた。この馬鹿な親友は一度言い出したことは決して覆さない頑固者なのだ。だから無駄な労力を使って貴重な時間を浪費する暇は今は無かった。

 

(ライフルの引き金をネルフの人間が引くのはこちらの立場的に悪い話じゃ無いわ。命だって賭けているし、対面的にも御の字ね。ミサトの万一の時は・・・骨は木っ端微塵だから拾えないとして、まあ、英霊として祭ってあげればいいでしょう。発令所に神棚を作ればいいのかしら?日向君に管理させてあげれば彼も喜ぶでしょうし)

 

案外冷たい親友だった。まあ女の友情などこんなものである。

 

とにもかくにもミサトがJAに乗り込むことが決まり作業は最終局面を迎えるのだった。

 

 

作戦開始6時間前、富士演習場にナガサキより戦術機と3バカ達を載せたトレーラーが到着した。3バカ達は早速トレーラーから『撃震』を降ろしていく。

 

初めて直に見る戦術機の姿にJA開発チーム、戦自研、ネルフ技術者達は興味津々にその様子を眺めていた。エヴァを見慣れているネルフの技術者達はそれほどの驚きは無かったものの、その他の者達はまるでテレビアニメから出てきたかのようなロボットの勇姿に大興奮であった。

 

「これを見せられると、我らがJAのデザインがもっさりとしているのが悲しいな」

 

「そう言うなよ、これはこれで俺は愛着があるんだから。でも戦術機は格好いいな!」

 

「ああ、いずれ模型がボー○スから発売されたら絶対に買うぞ」

 

『お前ら!遊んでないで手を動かせ!あと3時間しかないんだぞ!!』

 

時田は自身も本当は戦術機の見学に走って行きたい衝動を堪えつつ、取り付け作業が停滞しないようチームの連中に目を光らせた。

ちなみにすでに陽電磁砲のライフルへの取り付けが完了している戦自研の連中や、JA開発チームにそのライフルを引き渡したネルフの連中は全員戦術機の方へ見に行っている。

もちろん斎藤やリツコもここにはいない。

 

(くぅ・・・うらやましい。いや、私は何を考えている。戦術機はJAの敵?ではないか!しかし、素晴らしいデザインだ。次期JA開発の際は参考にさせてもらおうかな・・・)

 

時田がそんなことを熟々と考えていると、周りの技術者達がなにやら西の空を指さして騒いでいる。

 

「ん?どうした」

 

「チーフ、あれを見てください!!」

 

そう言われた時田がその指を指した方向を見てみると、一つの黒い点がこちらに向かって飛んできていた。

 

「なっ!なんだあれは?!」

 

黒い点は瞬く間にどんどん大きくなり、その姿が徐々に鮮明になってくる。

爆音を響かせて近づくその機体?は演習場上空で急制動をかけるとピタッと止まり、そのままの姿勢でゆっくりと降りてきた。

 

その謎の機体は『漆黒』の『異形』の姿をしており、先ほど到着した戦術機よりも一回りは大きい巨大なロボットであった。

 

漆黒のロボットは戦術機が待機しているすぐ近くに着陸すると、白い煙を出して排気を行った後静かに停止した。

 

そして、なにやら機体内部で稼働音がした後、ハッチが開き外で待機していた整備員達が機体にタラップを取り付けると、少年と少女の二人がそれを使って降りてきた。

時田は「あんな子供が操縦していたのか!」と驚いたが、そこではっと気がついた。

 

「彼が碇シンジ一尉・・・。今回の作戦の立案者であり総責任者か・・・」

 

 

シンジが演習場に到着した後、しばらくして時田の元に集合の連絡が届いた。

 

先ほどリツコ達と相談をしていたプレハブに時田が赴くと、すでに今回の作戦の主立ったメンバーが勢揃いしているようだった。また、いくつかモニターも用意されていて、それはどうやらネルフ本部と戦自の総本部に繋がっているようである。

 

「皆さん集まったようですね。では作業の進捗状況を確認してもいいでしょうか?」

 

シンジがそう切り出すと、まず最初にリツコが手を挙げた。

 

「シンジ君、その前に申し訳ないけどシンジ君が乗ってきた機体の説明が欲しいわ。気になって仕事どころじゃ無いもの。それとナガサキから来た戦術機はどうするのかも聞かせて欲しいのだけど」

 

「ああ、驚かせてすみません。僕の乗ってきたロボットは『黒百合(ブラックサレナ)』という機体です。といっても本体は『陽炎』といって、今日持ってきた『撃震』の上位機種になります。その陽炎に追加装甲と高速ブースターを取り付けたのが黒百合です。黒百合は高速ブースターによって長時間の飛行が可能になっています。また防御面も堅いため突撃性能に優れています。また追加の武装、サブウェポンも限界ギリギリまで装備されていることで戦闘能力も上げています。複座ユニットでメインパイロットが操縦とメインウェポンを担当、サブパイロットがサブウェポンの火器管制とナビゲーションを担当します。ご覧の通りコストが高いので量産は難しいでしょうね。おそらくは生産しても数機程度に留まると思いますし、パイロットの育成も難しいです」

 

「長時間飛行してきたみたいだけど・・・燃料はどうなってるの?」

 

「謎技術です」

 

「え?」

 

「謎技術です」

 

「・・・そう(汗。まあ、なんでもかんでも教えてはくれないわよね。ごめんなさい」

 

「いえ・・・(実際燃費とかおかしいんだよな・・・ご都合主義万歳)」

 

「それでは長崎から運んできた戦術機をどう扱うのかをお願いします」

 

「はい。といっても特にこれといって役目はありません。後詰めとして待機させるつもりです。パイロット達に戦場を経験させたかったことと、念のための処置です」

 

「なるほど・・・(実際に戦術機を複数晒すことで斯衛軍の力を誇示したいわけね)。それでは進捗状況を一尉に報告します。現在JAに陽電子砲を取り付ける作業はほぼ完了しているわ。ただ一つ問題があって照準を合わせるのが外部制御では正確にできなかったの。なので葛城一尉がJAに直に乗り込んで引き金を引くことになりました」

 

シンジは思わずミサトを見た。ミサトはシンジから一番遠い壁際に静かに立っていた。

シンジはミサトの様子に違和感を感じたが、とりあえず今は置くことにした。

 

「そうですか・・・(まあ、人一倍使徒に恨みを持たされている人だからおかしくはないか)。わかりました。葛城一尉どうぞよろしくお願いします(ペコリ)」

 

シンジの言葉にミサトは僅かに頷くだけだった。

 

「JAは2時間後に移動を開始。戦闘配置は下二子山の山頂、ここから狙撃します。指令車は万が一に備えて同所ではなく駒ヶ岳山頂に配置します」

 

「了解です。なら僕は北の強羅側に待機ですね。戦術機は下二子山南の海岸沿いに配置しましょう・・・。レイの、零号機の状態はどうですか?」

 

「問題無いわ。それと光線対策にJAの前方に配置する盾を零号機にも装備させます。盾と槍を持たせて零号機も強羅側に待機させましょう。いいわねレイ」

 

『はい・・・了解しました』

 

「ネルフ本部の状況はどうですか?」

 

『現在第10装甲板まで侵攻を受けています。到達予測時間に変わりはありません』

 

「総本部、マスコミ対応は?」

 

『主要メディアの取材を許可した。もちろん危険を考慮してメディアセンターを総本部内に用意、状況は戦自のヘリの空撮と地点カメラを使って情報提供する予定だ。無論不法に現地に乗り込もうとする輩には発砲許可を出してあるので大丈夫だろう』

 

「作戦遂行問題無しと判断します。それでは、移動開始を予定通り21時、作戦開始を明朝0時とします。皆さん絶対に使徒を仕留めましょう!!」

 

『『『応!!!』』』

 

結局ミサトは一言も発しないまま、ブリーフィングは終了した。

こうしていよいよ第5使徒戦(作戦名特になし)が最終準備段階に入ったのである。

 

 

「ミサト」

 

リツコはJAの側で放射能防護服を着込むミサトに声をかけた。

 

「何?」

 

「何じゃ無いわよ、こんな無茶して。死ぬつもりなの?」

 

「誰かがやらなきゃダメなんでしょ。だったら私がやるのが一番適任よ。それに死ぬつもりなんか無いわ、私は最後の使徒を倒すまで死んでなんかいれないわよ」

 

「・・・はぁ。まあ、ここまできて翻意させようとは思ってないけど・・・」

 

「さすがに日向君をこれに乗せるのは可愛そうだしね。一緒に乗るのもキモイし。直接この手で使徒を撃てるチャンスをみすみす逃す訳にもいかないわ。必ずやり遂げてみせるわよ」

 

そう話し合う二人の所に時田がやって来た。

 

「葛城一尉」

 

「時田さん?あの、何かご用でしょうか??」

 

「『希望』・・・JAの緊急停止パスワードです。もし万が一の際はご使用ください。上層部に許可は得ていませんが、今回は喫緊の事態ですのであなたにお教えします」

 

時田のその言葉にミサトは背筋を伸ばして敬礼する。

 

「ご協力感謝します、時田博士。任務は必ずや遂行いたします」

 

「はい・・・ご武運を。葛城一尉、JAを頼みます」

 

時田は頭を下げる。ミサトは頷くとJAに乗り込むために取り付けられたタラップに向かって行った。リツコは再度ため息をつくと「処置無しね」と呟きプレハブに戻った。

 

 

「敵シールド、第7装甲板を突破しました!」

 

発令所に青葉の言葉が響く。

 

「あと2時間・・・といったところか・・・。上手くいくといいが」

 

ろうじん副司令がその言葉に反応して呟いた。すると、ヒゲ指令の隣の席に座り正面モニターを眺めていたユイがろうじんの方を振り向いた。

 

「冬月先生、大丈夫ですわ。シンジを信じてあげてください」

 

「ん?もっ、もちろんだとも(汗。作戦に心配などしていないさ」

 

現在、ユイを含めた斯衛軍の面々はヒゲ指令達と共に、発令所の一番上の階で戦況を見ていた。といってもつい先ほどまで昨日と同じように夕食を共に食べていたのだが。

 

今日は一日ヒゲの案内でのんびりネルフ本部の見学をしていた。さすがにセントラル・ドグマには下りなかったが、かなりの部分を斯衛の者達に内部を見せることとなった。

これはユイがヒゲを上手く誘導したこともあるが、ヒゲも別段ユイと長時間一緒に居られれば秘匿の件もそれほど気にしなかったのである。それと理由がもう一つ。

 

「ユイ・・・記憶の方はどうだ・・・。今日いろいろ見て何か思い出したか?」

 

ヒゲの問いにユイは軽く目を閉じた。

 

「そうですね・・・。具体的なところまでは思い出せませんが『セカンドインパクト』前後のいきさつについては朧気に思い出しています」

 

「そうか・・・。ならば『死海文書』の記述はどうだ・・・」

 

これはヒゲにとってかなりの賭だったが、ユイが記述について思い出しているかどうかは今後のヒゲ達の行動に深く関わることなので思い切って聞いてみたのである。

もちろん念のため『裏』というフレーズは抜いていたが。

 

「・・・・・・南極のこと、葛城さんのこと、使徒のこと辺りまでは・・・」

 

ユイはシンジから教えられている範囲で答えた。今はまだそれだけしかわからない。

ヒゲはユイの返答に少し考え込むと、改めて問いかけた。

 

「・・・それで、ユイは今何を目指す?」

 

「今はシンジとレイちゃんと・・・二人の行く末を側で見守りますわ。それにまだ私は全ての記憶が戻っているわけではないですから・・・。確か記述では来年早々の予定でしたわね、あれは・・・」

 

ユイには何の予定なのかわからないが、シンジが使徒戦終了後にゼーレとネルフが何かを企んでいる所までは推察しており、ユイはそのことをぼやかしてヒゲに答えたのだ。

 

「そこまで戻っているのか・・・ならばいい。今は使徒戦の最中だ・・・使徒戦の間はゼーレもそう派手には動くまい。ただゼーレはユイの動向を気にしている。儀式になんらかの悪影響を与えるのではないかとな。記憶がそこまで戻っていることは伏せることだ」

 

「(儀式?)ええ、それでゲンドウさんはどうしますの?」

 

「私か?私は・・・ネルフの指令だ。今は使徒戦を行うだけだ。それにゼーレの命令にも従わんとな。今、彼らに反旗を翻しても待つのは死のみだ。ユイがユイのシナリオを遂行しないというのならば私がそれを行う意味も無い」

 

「(私のシナリオ?)そう・・・。わかりました。私たちは夫婦なのです。たまに二人で会って情報交換できればと思いますわ」

 

「そっそうだな・・・(ドキドキ)」

 

「雪広ビルの最上階の屋敷の一部、今までメイドさん達従業員の控え室などがあったところを改装して『展望レストラン』にするのです。もちろんそこを利用できるのは限られた人だけですけど・・・」

 

そう言ってユイは胸ポケットから一枚のカードを出し、ヒゲに手渡した。

 

「このカードがあれば25階のエントランスからエレベーターを乗り替えてレストランまで来られますわ。私が本部に出向くよりも、ゲンドウさんにこちらに来てもらった方が安全でしょう?もちろんお連れの方と一緒に来て頂いてもかまいませんわ。赤木博士とか(ニコリ)」

 

ヒゲはユイの言葉に思わず椅子から立ち上がる。そしてろうじんをキッと睨んだ。

 

「な!碇。私は知らん。私じゃ無いぞ!!」

 

「そう、やっぱり・・・。浮気してらっしゃるのね・・・ゲンドウさん(怒」

 

ろうじんはそのユイの言葉にしまったという顔をした。かまをかけられたようだ。

 

実際は夏美によって司令室に仕掛けられていた盗聴器によってバレていたのだ。

ユイにとってこのヒゲは自分の夫とは別人とはいえ、一応は妻として振る舞っている以上ヒゲの浮気を簡単に許すわけにはいかない。というかなんかムカツク。

 

「ちっ違うんだユイ・・・。実はこれはシナリオ上必要なことであってだな・・・」

 

「今は使徒戦中ですわ、ゲンドウさん。このような些事は使徒戦が終わったら、ゆっくりと三人でお話ししましょう。赤木博士をちゃんとエスコートして連れてきて下さいね」

 

ユイは笑顔を顔に張り付かせたまま、狼狽するヒゲに無言のプレッシャーをかける。

 

「わ・・・わかった。赤木三佐と一緒に行こう・・・問題ない・・・」

 

「冬月先生もお時間のあります時にいらっしゃってください。これをどうぞ」

 

ユイはヒゲが椅子に座り直し手を組んでいつものポーズで硬直しているのを無視して、カードをろうじんに渡した。

 

「ありがとう。是非行かせてもらうよ」

 

ろうじんはカードを大事に胸ポケットに入れた。今日は大安吉日だっただろうか。

 

「(ウチの上層部はこの非常事態に一体何をしているのやら)はあ・・・」

 

発令所で一人だけ真剣に仕事をしているのが少しだけ阿保らしくなった青葉であった。

 

ちなみにマヤはリツコの手伝いで不在だが、日向もなぜかミサトについて演習場の方へ行っているためオペレーターが自分一人しかいないのである。

もちろんサブにカエデが一時復帰して手伝ってくれているので、問題はないのだが。

 

 

その日向は零号機の発進準備の手伝いをしていた。

実はミサトと一緒に演習場に来ていたのだが、ミサトがJAに乗り込むこととなり、先ほど彼女はJAと共に配置場所の下二子山の方へ向かってしまったため、彼は一人取り残されたのである。

 

というわけで、根が真面目な日向は他の整備員たちと共に演習場から強羅防衛線、零号機の待機場まで移動して来たわけである。

彼は一応発令所のオペレーターで有り、技能は高いので意外にもちゃんと役立っていた。

彼は上司に恵まれて(?)いないが実力はあるのである。

 

彼はふと零号機とそのすぐ横に待機している巨大な漆黒の機体『黒百合』の方を見る。

機体の側にはパイロットである3人の少年と少女達が、緊張も見せずに楽しそうに話しをしていた。

 

 

「これで、死ぬかもしれないね。・・・ミサトさんは」

 

「どうしてそういうことを言うの?まだわからないわ・・・まだ死んでないもの」

 

「・・・・・・そうだね。僕たちだって死ぬ可能性もあるんだしね」

 

「シンジ君は死なないわ、・・・私が守るもの。葛城一尉は守らないけど」

 

「意外とレイちゃんって言うよね・・・。レイちゃんは、何故コレに乗るの??」

 

「・・・絆だから」

 

「絆??」

 

「そう絆」

 

「シンジくんとの?」

 

「シンジ君とみんなとの」

 

「強いなぁ、レイちゃんは」

 

「私にとってみんなとの絆、シンジ君との繋がりは何よりも大切なモノ・・・。まだみんなと温泉にも海にも遊園地にもピクニックにも行ってないわ。お母様にお料理もまだまだたくさん教えてもらいたい。シンジ君に食べてもらいたい・・・。だから死ねないわ」

 

「そっかー。そういや私も孤児でその上少年兵なんてやってたから、そういうのやったことないなぁー。これからは私もいろいろ経験したいな!それに、シンジ君の子供も孕まないといけないし・・・。うん!死んでなんかいらんないね!!」

 

「孕む??霧島さん孕むって何??」

 

「え??それを具体的に聞かれると困っちゃうんだけど(汗、えっとね、シンジ君のおちん○んをレイのおまん・・・」

 

「ストーーーーープ!!マナはバカなの??なにをレイに説明してるの?!そんなのは使徒戦が終わってからにしてよ!恥ずかしいでしょ!!というかもうちょっとオブラートに包め!!」

 

「・・・孕む・・・それは恥ずかしいこと・・・」

 

「いや別に孕むのは恥ずかしくないけど、それに至るまでの行為が恥ずかしい・・・オーケーオーケー碇一尉、わかりました。口を閉じますからその振り上げた拳は降ろしてください」

 

「はぁ、ほら、時間だよ。出発出発!!」

 

「あいあいさー(あんなにセクハラするくせに変なとこで純情だなぁ)」

 

「・・・・・・(コクっ)」

 

 

『ただ今より、0時、0分、0秒をお知らせします』

 

「作戦スタートです」

 

ネルフ本部から下二子山麓まで運んできた14式大型移動指揮車内でマヤが作戦開始を宣言する。

いよいよ第5使徒戦のリベンジマッチが始まったのである。

 

「JAのリアクター起動、出力を上昇させます」

 

「リアクターの冷却システム出力最大!電子凝縮システム正常です」

 

「補助変圧器も正常作動中・・・。ライフルに陽電子流入、順調です!」

 

「強制集束器作動!先輩どうぞ!!」

 

「最終安全装置、解除。・・・時田さん号令をお願いします」

 

本来一研究者の時田に号令をかける資格はないのだが、今回はこの作戦への日重の協力に敬意を払い、リツコは時田に号令を譲ったのである。

 

「はい。では・・・撃鉄を起こせ!!」

 

「ミサト、誤差調整は大丈夫そう?タイミングは任せるわよ」

 

『・・・大丈夫よ。心配しなさんな』

 

「陽電子送信管、集束を開始!全エネルギー、ポジトロンライフルへ注入!!」

 

『5、4、3、』

 

「目標に高エネルギー反応!!」

 

「何ですって!!」

 

『2、1、発射!!』

 

前屈みになってライフルを構えるJAから光線が発射された。それと同時に八角形使徒のコアからもJAに向かい光線が放たれる。

二つの閃光は干渉し合い、それぞれ明後日の方向にに着弾する。

 

「よし、特攻!!!」

 

「あいあいさぁーーーー!!」

 

使徒がJAに対し光線を発射したと同時に、シンジの駆る黒百合が全速力で使徒に接近し弱点のコアを狙う。

しかし、あとちょっとというところで使徒のATフィールドにナイフは阻まれてしまった。

 

シンジは冷静に使徒から素早く距離を取ると、黒百合を使徒の上空に飛ばす。

使徒からは黒百合を狙って破壊光線が放たれるが、障害物の無い空であればシンジの操縦技術を持ってすれば避けるのは容易である。

 

「初撃失敗、フェイズ2へ以降、JAは第2射準備!零号機は敵使徒のATフィールドを中和するため接近を開始して下さい!!」

 

「使徒が黒百合に対し光線を乱射していますが、問題なく避けているようです。零号機は盾を構えて前進開始!!」

 

「ん?なんだ?!緊急報告!!JAが使徒に向かって突然走り始めました!!」

 

「どういうことだ?!いきなりJAの制御が効かなくなったぞ!!」

 

「JA暴走!!JA暴走しています!!葛城一尉大丈夫ですか?!」

 

『問題なし・・・って言いたいところだけど、これじゃあ第2射が放てないわね。空に向かって撃ってもしょうがないし』

 

「何のんきなこと言っているの!早く緊急停止コードを打ち込みなさい!!」

 

『・・・そんなのもうとっくにやってるわよ!でも停止コードを受け付けないの!!』

 

「そんなバカな・・・」

 

時田は信じられないと顔面蒼白である。

ウイルスを仕込んだリツコからしてみればそれは当然のことなのだが。

 

(最悪のタイミングでウイルスが動き始めたわね・・・。というよりも想定していたタイミングかしら?はぁ・・・今日は厄日ね。ここからじゃどうしようも無いし・・・)

 

リツコのウイルスプログラムが正常に動作すれば数十分ほどで止まるはずだ。

まあ、そこまで使徒が待ってくれると到底思えないが、止まるまで使徒がJAに光線を撃たなければミサトは助かる。

 

「使徒は相変わらず黒百合に対し攻撃を継続しています」

 

「多分、この3者のなかで黒百合を最大戦力と見ているようね・・・。あんな形の使徒にも知恵があるのかしら?・・・興味深いわ。後で検証してみないと・・・」

 

リツコはすでにミサトの安否をあっさりと諦め、自身の知的欲求の解消を優先した。

 

「JAが使徒に接触!使徒に覆い被さっていきます」

 

JAが八角形使徒を抱きかかえるようにぶつかる。どうやら使徒が黒百合に光線を放った瞬間に接触したらしく、使徒のATフィールドの干渉を受けなかったようだ。

 

「・・・なぜ使徒はJAを撃たないんだ?」

 

「わかりません・・・。もしかしたらあの使徒はああやって密着されると、光線を放った際に自分自身もダメージを負うのかもしれません。つまり零距離射撃はできないのでしょう。であればあの体勢で光線を放つのは使徒にとって自殺行為ですわ」

 

「零号機到達、ATフィールドの中和を開始します。黒百合突貫!!!」

 

使徒の側に到着した零号機によって中和された使徒のATフィールドの間隙を、黒百合の持つプログ・ナイフが縫って使徒のコアを突き刺す。

 

使徒は特に叫び声もあげず、静かに下に墜落していった。それと同時にネルフ本部に侵攻していたドリルの回転も止まった。

 

「・・・パターンブルー消失!使徒活動を停止しました!!」

 

この報告に作戦車内はホッとした空気に包まれる。

 

「JAのリアクター圧力上昇が止まりません!!このままでは爆発します!!」

 

その叫ぶような報告に作戦車内は再び緊張と沈黙が支配する。

 

「使徒とぶつかって止まっていたJAが再び動き始めました!このまま東に向かわれては市内に突入してしまいます!!」

 

「まだ止まらないの?!」

 

リツコは大いに焦っていた。

もし第三新東京市内で爆発などすれば、さすがにリツコの責任も大っぴらには問われなくとも、裏の事情を知るヒゲやゼーレからは問われることになってしまう。

それはつまり『死』ということである。

 

リツコが目に見えて狼狽えていると、シンジから連絡が入った。

 

『リツコさん!黒百合でJAを沖まで運んでそこで爆発させます!!』

 

「そんな!!いつ爆発するかわからないのよ!!」

 

『ここで爆発させるわけにはいきませんよ。JAを使うと言った責任はとります』

 

 

シンジは一つ大きいため息を吐くと後ろのコクピットへ振り向いた。

 

「ゴメンねマナ、死ぬかもしれないけど最後まで付き合ってもらうよ」

 

「なんの!シンジ君!死ぬ覚悟なんか戦自でトライデントのテストパイロットになったときからとっくにしてます!私のことはおきになさらず♪さぁ行きましょう!」

 

「うん、ありがとう。よし行くぞ!!」

 

黒百合はJAに後ろから抱きつくと、暴れるJAを持ち抱えてフルスロットルで上昇、海を目指す。

 

「シンジ君!!」

 

レイはこの状況について行けず、ただJAを抱えた黒百合を見送ることしかできなかった。

 

『シンジ君・・・あなた正気なの!!爆発するわ!もうおしまいよ、なにもかも!』

 

JAに乗っているミサトからの通信がシンジの耳に入ってくる。

 

「ふざけるな!たかがロボット一つ、ブラックサレナで押し出してやる」

 

『無理よ、こんなスピードで・・・もう今にも爆発しそうなのに!終わりよ!!』

 

「あなたほど急ぎすぎもしなければ、僕は絶望もしちゃいない。ブラックサレナは伊達じゃない」

 

『何も知らないくせに!あんたが現れてからなにもかも上手くいかなくなったわ!!この疫病神!!ちくしょう!!ちくしょう!!殺してやる!!』

 

「本性を現したか、愚かなヒトだ。これ以上お前が生きていても害悪しか生まない。ここで死ね」

 

その時、下二子山南、海岸沿いに配置されていた3バカの駆る撃震3機がブースト全開で黒百合に近づいてきた。そして黒百合の背中を掴むとバーニア噴かせて助勢する。

 

「私たちだっていることを忘れないでください!!」

 

「そうです、すぐ落ちちゃいますけどね!!」

 

「いけーーーーー!!」

 

撃震3機のおかげで黒百合はなんとか海岸線を抜け海に出ることができた。

 

「うぉーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

シンジはJAを全力全開で沖に放り捨てる。それと同時にJAのリアクターがとうとう限界を迎えJAは爆発した。

 

 

<<原典破壊ボーナス(特大)>>

『葛城ミサトが死亡した。彼女の死はこの世界のシナリオに多大な影響を与える。その影響を鑑みて君にボーナス5000万を進呈する』

 

 

<<システムからのお知らせ>>

『原典においての主要キャスト『葛城ミサト』が死亡しました。彼女が死亡したため、美少女召喚『碇シンジ育成計画』葛城ミサトが解除されました』

 

 

<<原典破壊ボーナス(中)>>

『JAが破壊された。JAの破壊はこの世界のシナリオに多少の影響を与える。その影響を鑑みて君にボーナス800万を進呈する』

 

 

<<使徒破壊ボーナス>>

『おめでとう。君は見事第5使徒を撃破した。その行為に敬意を表し5000万ポイントを進呈する。これからも頑張ってくれたまえ』

 

 

黒百合は爆発を見届けるとゆっくりと砂浜に着地する。黒百合の『不可思議』燃料はまだまだ健在なのだが、ブースターやシステムのあちこちにエラーが出まくっている。

暫くエンジンを冷ます必要があるようだ。

 

「はー、まぁなんとかなったね・・・」

 

「うん・・・はぁー、死ぬかと思った」

 

シンジとマナは黒百合から降りると、砂浜に腰を下ろす。

 

ドシンドシンドシンドシン・・・。

 

暫くするとなんと零号機がやってきた。

アンビリカルケーブルをパージしているところを見ると、無謀にも内部電源だけで走ってきたようだ。

零号機は限界に達したのか、崩れ落ちるように砂浜に倒れ込む。

 

そして、エントリープラグがイジェクトされるとレイがこちらへ走ってやってきた。

 

「はぁはぁ、シンジ君、私をおいていかないで!一人にしないで!」

 

レイが涙をポロポロとこぼしながらシンジに抱きつく。

シンジはレイをしっかりと抱き留めると、少し照れたような表情を浮かべた。

 

「ごめんね・・・レイ。こういうとき、どんな顔をすればいいのか、分からないや」

 

シンジがそう言うと、レイは顔上げシンジに向かって微笑んだ。そして・・・。

 

「笑ってよ、シンジ君」

 

そう言って再びシンジの胸に顔を埋めたのだった。

 

 

第七話 人の造りしものに続く

 

 

 

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