エヴァちーと(さよならEVA ver)   作:支城

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エヴァちーと 第壱話 使徒、襲来 Cパート

 

葛城ミサトは苛立っていた。

自分から言い出したサードチルドレンの出迎えを寝坊によって遅刻したのは不可抗力で仕方がないとしても、国連軍によるN2爆雷に巻き込まれたせいで買ったばかりの愛車がベコベコになり涙したのも自己犠牲の精神で我慢しよう・・・。

 

しかし、今こうして自分が必死にケージに向かっているにも関わらず、そんな自分(迷子)を差し置いて初号機の発進準備がアナウンスされているのには我慢ならない!!

 

「作戦課長である私がまだ何の指示もしてないのに、誰がやっているのよ!!」

 

無論、出撃を指示したのは司令(ヒゲ)であり、準備は技術部長(金髪黒眉)の手によって滞りなく行われている。

 

わかってはいる。葛城ミサト29歳独身、ズボラだが馬鹿(?)ではない。

わかってはいるが、自分がのけ者にされているのは許されざる事態なのだ。

 

とある展開の14年後であれば、彼女も大いに成長(?)しているのであるが、現時点ではまだまだ人間として未成熟な部分も多々あるのである※1。

 

激しく苛立ちながらも、少しずつ少しずつケージへと近づいていく。

 

ケージからは第一発令所への直通エレベーターがあるのを知っているので、発令所に戻るにしても結局はケージへ向かったほうが近いのである。

 

「日向君も連絡が取れないし・・・って、あら・・・なんでこんなとこに居るの?」

 

奇跡的なのか当然なのかようやくたどり着いたケージの入り口に、1台のストレッチャーが置かれていた。

ストレッチャーには先日の零号機の起動試験の際に大けがをして病院に入院しているはずのファーストチルドレン『綾波レイ』が寝ていた。

 

「レイ?あんたここで何してるの?」

 

「・・・・・・司令から待機するように命令がきています・・・・・・」

 

蒼い髪、紅い眼のアルビノ少女はミサトの質問にか細い声で答えた。

全身包帯が巻かれ、所々血も滲んでおり痛々しい姿だった。

というかよくこの子はプラグスーツに着替えることができたものである。

 

「??えっだってサードチルドレンの子は到着して、もうエヴァに勝手に乗ってるんでしょ??発進準備までしてるし・・・もうあんたがここで待機する必要はないんじゃない??」

 

「・・・・・・わかりません・・・・・・」

 

「・・・まあ、わかったわ、上に昇ったら司令に聞いとくわ」

 

とりあえず、ミサトはレイのことは置いてケージの中に入っていった。

 

ケージ内では初号機の発進準備が進んでおり、整備員たちが忙しそうに走り回っていた。

誰もが作戦課長であるミサトが入ってきたことに気がつかず無視していた。

ミサトは口をへの字にして、初号機をひと睨みすると彼らの横を抜けていき管制所下の発令所行きエレベーターに乗り込んだ。

 

 

「遅いわよ!あなた今まで何してたの!!」

 

ミサトが発令所に到着すると長年の親友であるリツコから叱りの声が飛んだ。

 

「ゴミン、迷っちゃってて。次から気をつけるわ・・・。それで状況は?」

 

「次があればいいけどね・・・。ふぅ、まぁいいわ、現在サードチルドレン碇シンジ君が初号機にエントリーされたわ。シンクロ率は68%、ハーモニクスすべて正常値。起動も問題なし、現在は使途の状況などを『作戦課』の日向君が伝えているわ。発進はいつでも大丈夫よ」

 

「へーすごいわね。もうそこまで準備が進んでるの」

 

「ええ、彼一度言ったことはすぐ理解するし覚えてしまうわ・・・頭が良いのね。おかげでスムーズに準備が整ったのよ。シンジ君様々ね。ま、あなたが来るのをみんなで待ってあげていたと言ってもいいでしょうね」

 

「わかったわ。ありがとう」

 

もちろんリツコの『皮肉』に気がつくことなどなく、ミサトはシンジにあれこれ情報提供している部下の日向の元へ向かった。

 

「・・・うん。残念なことに現状武器はプログ・ナイフのみなんだ。だから接近戦に持ち込むしかない。しかし相手は光線を放つ能力があることが確認されている。問題はいかに接近するか・・・だから初号機を使徒の真後ろに出すからそこから不意をついて接近、相手が気付いて正面を向いたら弱点であるコアを狙って一刺しという感じで・・・」

 

『『『はじめまして碇シンジ君!!『作戦課長』の葛城ミサトです!!!』』』

 

日向がシンジに作戦をアドバイスしている横からミサトが大声で割って入る。

いかに精神を強化しているシンジとはいえ、この不意打ちには驚き悲鳴をあげてしまった。日向は鼓膜が破れたんじゃないかと思うくらい右耳がウワンウワンしており頭を抱えて悶絶している。

 

「いい、シンジ君。私の指揮にちゃんと従うのよ。いいわね!!」

 

「(このオバさんあの写真の人か・・・写真より老けてるような)・・・はい・・・」

 

シンジはジト目でミサトを見つめた。リツコの話では駅での待ち合わせ時間に2時間以上遅れた挙句、ケージでの出迎えにも本部内で迷って遅れている遅刻魔ということなので、ミサトの評価はかなり低かったのだが、この大声でさらに一段階下げることにした。

 

「じゃあ、リツコ発進オーケーなのね?」

 

「・・・ええ、大丈夫よ」

 

「よし・・・では・・・よろしいですね」

 

ミサトは後ろを振り返り、上司であるヒゲ司令に確認を取る。

 

「無論だ。使徒を倒さぬ限り我々に未来はない」

 

「エヴァ初号機発進!!」

 

いよいよネルフの初陣、そしてシンジの長い戦いが始まった!!

 

 

「おおっ出てきた!出てきたのじゃ!!」

 

美羽が部屋に設置された61インチの巨大な液晶テレビに映し出されてた紫の巨人に歓声をあげる。雪広ビルに残ったハーレムの面々はそれぞれ動き始めていた。

 

アヤカは父親に事情を説明して協力を仰いだり(シンジのことについては誰もが協力的)、イザベラはセキュリティサービスの諜報部に連絡を取って、早急に第三新東京市に置ける体制構築について指揮していた。この上の騒ぎが終わればネルフは雪広に対して諜報活動を強化してくるのは疑いようがない。防諜もそうだが、こちらからの攻撃も必要なのだ。

 

ユイとようやく目が覚めたキョウコはネットを繋ぎ、この世界の情報収集を始めた。

無論、第3市東京市のネット環境はマギの管轄化にあるため当たり障りのない内容に留めている。

ちなみにTV電話に関しては雪広が打ち上げている衛星を介しているので一応は大丈夫であると思う。このあたりはチートシステムを使って補う必要があるようだ。

 

美羽と七乃はテレビ観戦である。

外の様子を雪広が各所に設置してあるカメラを切り替えながら、使徒の様子を伺っていたのである。決して二人に仕事がないわけではない※2。

 

美羽の声に全員手を止めてテレビの前に集まってくる。

 

「いよいよだね。ぞくぞくするじゃないか」

 

「ええ、でもシンジ様であればあっさり倒してくれますわ!」

 

「当たり前じゃ!妾の主さまじゃぞ」

 

「ですよねー楽勝余裕ですよ」

 

 

ガシャン!!

 

長いトンネルを抜け、ようやく初号機が外に出てくる。

 

「使徒の真正面!!日向さん話が違うじゃないですか!!」

 

『エヴァンゲリオン初号機リフトオフ』

 

「いい、シンジ君。まずは歩くことだけを考えて」

 

シンジの非難の声はスルーされ、ミサトからは敵が真正面に控えているのにも関わらず前に歩けとののんきな指示が出された。まあ、今日初めてエヴァに乗る少年なのだし、そもそも初号機自体初めて動いているのだ。この指示もあながち的外れではない。

 

「は!?歩く!?って危ない!!」

 

使徒から初号機目掛けて光線が飛んできた。慌てて右にローリングして避け、兵装ビルの影にしゃがんで隠れる。その動きはスムーズで洗練されていた。

 

そんな初号機の動きをあっけにとられて見ている発令所の面々。

歩くことができるかどうかという赤ちゃんがいきなり華麗にローリングしたのだから驚愕しても無理はない。無理は無いが今は戦闘中なのだ。思考停止している暇など無い。

 

「葛城さん!これからどう動くんですか?指示をください」

 

「えーーーーっと・・・。接近してやっつけて!!」

 

「は!?それは『願望』であって『指示』じゃないでしょ。どういう援護があって、どのルートを通ってあの化け物に接近するのか『作戦』を教えてくださいよ(汗」

 

ごもっともなシンジの意見であったが、どうやら作戦課長様には感心をよばなかったらしい。最初の指示を無視し、さらには新たな指示に反抗する生意気なパイロットに大いに苛立ったのである。

 

「ごちゃごちゃ言ってないでやっつけなさい!男の子でしょ(怒!!」

 

「・・・まじか・・・」

 

ここに至ってシンジはミサトを見限った。

まあ、まともな作戦を何一つ指示してこないのだから、これ以上彼女を気にしても仕方がない。先ほど少しだけ動いたが、驚くほど滑らかに動かすことができた。

操縦スキルのレベルを上げておいたおかげだと思う。

 

(とりあえず、あの光線に注意して当たらなければ戦えそうだ。とにかく回り込んでいくしかない・・・しかし、この尻尾みたいなケーブル邪魔だな・・・これのせいでかなりルートが限られるし・・・って・・・ん!?あれは!!)

 

二つ先のブロックのビル影にどういうわけか女の子が座り込んでいた。

カメラでズームすると将来、具体的に14年後あたりに可愛く成長しているのではないかと思われる幼女だった。シンジにはその姿がはっきりと脳裏に浮かんでいる。

 

(あの子を助けないと!!絶対あの子に恩を売っておかないと将来後悔しそうな気配がプンプンする。なんだろう・・・ガチでエヴァに乗るなとか怒られそうな気配が・・・)

 

シンジのニュータイプを超えた(?)レベルまで強化された感覚が、あの子は絶対助けないとやばいと言う警報を鳴らしていた。神もいままで書いたSSで結構不遇な扱いをしていた(怪我をするのは止められない、コアになるのも止めれない等)ので映画館での彼女の怒鳴りに大いに落ち込んだ一人である。マジで凹みちょっと泣いてしまった。おかげで続きをまともに見れなかったくらいだ。そのため同じ日にもう一回観るはめになったのである。17年の積み重ねは恐ろしいものだね。しみじみ。

 

シンジは幼女の側へすばやくエヴァを移動させると、エントリープラグを射出させ急いで外に出る。そして、ワイヤーで降り蹲っている幼女を抱きかかえると、またワイヤーで戻ってプラグ内に入った。

 

シェルターに入り損ねうろうろしていた幼女は目の前に化け物が現れ腰を抜かしていたのに、今度は巨大なロボットが現れて、あっという間、電光石火にそのパイロットに拉致られてしまったのである。茫然自失とはまさにこのことであろう。しかし、さらにはいきなりLCLのなかに入れられ溺れさせられた時にはさすがに目が覚めた。

 

「ぶふぁーけほけほ、兄ちゃん酷いわ!いきなりなにすんの」

 

「ごめん、『サクラちゃん』。息大丈夫?気持ち悪いと思うけど、でもあのまま外にいたらよくて片足骨折、悪くて脊髄損傷でどちらにしてもろくでもない目にあっていたと思うから慌てて助けにいったんだよ」

 

「それでもびっくりしたわ・・・って兄ちゃんなんでうちの名前知ってんの??」

 

シンジもそれについては答えられないしわからない、大いなる意思(神)がこの子を助けろと命じていたからとしかいえないが、都合よく正面の画面に彼女の『ID』と『名前』が表示されていた。どうやらマギが自動で認識し表示してくれていたようだ。

 

シンジは画面を指さして、

 

「ああ、このロボットのコンピューターでわかるんだよ。所謂『ハイテク』だよ」

 

「へぇーそうなんかー。うちも『ハイテク』はすごいっちゅうのは知ってるよ」

 

「うん、『ハイテク』はスゴイよね。Foxconn製かな?」

 

「兄ちゃんそれはあかんで」

 

 

「・・・あの子何やってるの・・・」

 

シンジの幼女救出の様子は発令所でもライブで流れていた。

いきなり、シンジが外に飛び出したときは、誰しもがこれで「終わった」と思ったが、信じられない早業で幼女を担いでエントリープラグに戻ってきたのも驚いた。

 

「しかも・・・異物を入れてもシンクロ率が落ちてないわね・・・というより2%くらい上がっているわ・・・すごい・・・彼、本当に興味深いわね」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!シンジ君何を勝手に民間人を助けてエヴァの中に入れてるの!!そんな行為許されることじゃないわよ!!」

 

 

「なー兄ちゃん、この姉さんなんか騒いどるけど大丈夫なん??」

 

「よくやったって褒めてるんだよ。まさか女の子が戦場に迷い込んでいたのに見殺しにしろだとか国連の軍人さん達が言ったりはしないよ。そもそもネルフに志願している人たちは自分の命を犠牲にしてでも人類を守りたいという使命を持った『高潔な人たち』だよ。作戦中とはいえ人命を優先した僕の行動を非難するなんていう恥知らずなことは彼らは言ったりしないよ」

 

「そーやんなー。立派な人たちやで」

 

シンジはプラグ内のスピーカーを幼女を助ける際に偶然を装って蹴りで壊していた。

 

とりあえず指示が聞こえなかったということにしておけば、作戦無視の言い訳くらいにはなるかなと思ったことと、幼女に大人達の汚い言葉を聞かせたくなかったという紳士の心である。

この幼女はただの幼女ではない。14年後くらいに美少女になるいい幼女だ。そんな幼女をなによりも優先するのはクマ吉君じゃなかったシンジ君にとって正義なのである※3。

 

それにしても、この化け物、使徒はずいぶんのんびりとしている。

 

昼にここにやってきて、夜になっているにも関わらずこの町をフラフラしているだけだ。ジオフロントに降りるところを探しているのかもしれないが、シンジやネルフにとってはありがたかった。

 

「さて、サクラちゃん。本当は一旦戻りたいところだけど、敵はそれを許してくれない。怖いと思うけどあいつをやっつけちゃうから我慢して座っててね。しっかり掴まっているんだよ」

 

「わかっとる。兄ちゃんに任せるで!ばしっとやっつけてや!!」

 

シンジはエヴァをビル影に屈ませながら、ゆっくりと前進する。

幸先よく使徒は現在エヴァに背を見せていた。しかしケーブルはすでに限界まで引っ張っており、一か八かケーブルを外して内蔵バッテリーだけで戦うしかない。

 

シンジはすぐに決断すると、ケーブルを切断。一気に距離を詰めた。

 

「おおおおおおおおおおおぉーーいけーーーーっ!!」

 

「いけー!」

 

抜群のタイミングで駆け出し、プログ・ナイフを使徒に突き出す。

使徒はその動きに気がつき振りかえるが、隙だらけの体をさらしていた。

 

ナイフが使徒に到達するかの際に八角形のバリアが現れ、ナイフを止めてしまう。

さすがのシンジもこれは予想しておらず、慌ててバリアに衝突しないように体を崩しすり抜けてローリング、膝をつきながらも再びナイフを構えて使徒に相対する。

 

 

「ATフィールド!!あれがある限りエヴァの攻撃は使徒には届かないわ」

 

「シンジくんには教えてあるの!?」

 

どうやらプラグ内のスピーカーが破損したらしいことは、まだ生きているプラグ内のマイクによって発令所内には伝わっていた。若干ミサトが先ほどのシンジの言葉に顔を赤くしていたが、言っていることはごもっともなことなので、とりあえず今は不問ということになっている。

 

「いえ、彼には操縦のことくらいしか教えてないわ・・・時間もなかったし」

 

これは嘘である。ゲンドウたちはこの戦いでシンジを苦戦させ、初号機の中にいる母親の(この世界の)ユイを刺激し、目覚めさせ『暴走』によって勝利を得ようと計画していたのである。これはゲンドウのシナリオで重要な初号機の暴走と使徒戦での勝利の一石二鳥を狙った考え抜かれたナイスなアイデアだったのである※4。

 

「そんな!!じゃあどうすれば・・・そうだ!よし!!シンジ君『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』!!!」

 

ミサトはシンジが見ているであろう発令所のカメラに向かって、大きな口を開けて口の動きで伝わるように大声でATフィールドと連呼し始めた。

 

「ミサト・・・名称を言ったって彼にはわけがわからないわよ・・・」

 

そんなリツコの呟きもミサトには聞こえていなかった。ミサトは一生懸命『えーてーふぃーるど』と連呼し続ける。なぜか日向も立ち上がらせられ一緒に言わされていた。

 

「・・・碇・・・止めなくていいのか(うるさい)・・・」

 

「・・・問題無い(うるさい)・・・」

 

 

しかし、こういうお馬鹿な行為も意外と役に立つもので・・・。

 

「なー兄ちゃん、さっきからこの姉さん、同じことずっと叫んどるんやけど」

 

「えっ?・・・『えーてーふぃーるど』??ああ!!ATフィールドね!!」

 

(『通じた!!』)

 

発令所ではシンジの言葉を受けてお祭り騒ぎである※5。

 

(そうそう、使徒はATフィールドを使うって情報にあったね。忘れてたというか、そもそもATフィールドがどんな作用なのかがわからなかったから気付くわけないけど。たしか、このエヴァでもATフィールドが使えるとかなんとか書いてあったようななかったような・・・えーと)

 

とりあえず、エヴァにATフィールドを出してと念じてみる。あっさりと初号機の前面に八角形のバリアが出現した。さすがスキルを高めているだけのことはあるなとシンジは感心しきりであった。

 

 

「そ・・・そんな!いきなりATフィールドを発現させるなんて!!」

 

リツコは初号機がATフィールドをあっさり出したことに絶句していた。

 

「よーし、シンジ君!!いけるわ!!リツコ、この先はどうしたらいいの?」

 

「え・・・ATフィールド同士をぶつけ合えば中和できるわ(多分)、そうすればナイフをコアに届かせることができるのよ(多分)」

 

「わかった、よーし『ちゅうーわ』『ちゅうーわ』『ちゅうーわ』『ちゅうーわ』『ちゅうーわ』!」

 

ミサト(+日向)は今度も同じように大声で連呼を始めた。

 

 

「兄ちゃん今度は『ちゅうーわー』って言っとるで」

 

「中和ね。なるほど・・・重ね合わせれば消えるのかな?じゃあやってみよう」

 

 

発令所ではマヤが「なんて頭がいい子なのかしら」と感心していたが、リツコはさすがにシンジに対して疑念を持ち始めていた。

 

(頭が良すぎる・・・報告書では学校の成績は下の中くらいで酷いものだった。でも実際は操縦についても説明を即座に理解し、今も戦闘中にも関わらず的確に行動し、少しのヒントであっさり解答を導き出している・・・初号機が動いているということは彼が本人で間違いないのでしょうけど・・・そうか!雪広か・・・もしかしたら雪広がシンジ君に相当前から接触して仕込んでいたのかもしれないわね・・・普段の姿は擬態だったということも考えられるわ・・・まったく監視していた連中はなにやっていたのよ・・・買収でもされていたのかしら※6)

 

リツコはさらに監視の連中の評価を下げ、果てには裏切り者扱いをし始めていた。

眼前のミサト(+日向)は今度は『刺ーせ、刺ーせ』と大合唱している。

それは別に伝えなくてもいいんじゃないかと思うが、リツコはとりあえず戦況を見守ることにした。

 

 

シンジの操る初号機はATフィールドを使徒のATフィールドに重ね合わせていく。

ほどなく中和、侵食していき使徒のATフィールドが徐々に消えていく。

 

「よーし!いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

プログ・ナイフが使徒のコアに突き刺さる。

哀れのんびり使徒さんはギャースと叫び声をあげて暴れ始める。

 

(たしか自爆攻撃があるんだよね!!)

 

シンジはナイフをコアに突き刺したまま、使徒を上空に思い切り蹴り上げ全力でATフィールドを張った。瞬間、使徒は遙か上空で大爆発を起こす。発令所のモニターは真っ白になりなにも見えなくなったが、しばらくして映った画面には使徒はおらず、ただ紫の巨人が佇んでいるのみであった。

 

 

<<使徒破壊+原典破壊ボーナス>>

『おめでとう。君は見事第3使徒を撃破した。かつ碇ゲンドウのシナリオを狂わせた。その行為に敬意を表し3000万ポイント+100万ポイントを進呈する。』

 

 

「・・・勝った?・・・」

 

「勝った・・・勝ちましたよ!葛城さん!!」

 

日向の声を受け発令所で歓声が爆発する。

 

「・・・碇・・・これはシナリオと違うぞ・・・」

 

「・・・問題無い・・・とりあえずは使徒に勝ったのだ。使徒戦は始まったばかり、まだいくらでもチャンスはある・・・」

 

「そうだが・・・見た限りシンジ君がユイ君に依存してエヴァを暴走させるとは思えないのだが・・・」

 

「なに、子供だ、いくらでも追い込みようがある」

 

ヒゲは内心シナリオ通りにいかず怒り狂っていたが、それを表に出すことはなかった。

 

 

「なー兄ちゃん。これからどないするん?」

 

「地下のケージ、このロボットを作ってる秘密基地があるんだけど、そこへ戻る・・・しかないよね・・・今は」

 

これがシンジ一人であればさっさと逃げたのだが、さすがにこの子を一人おいて逃げるわけにもいかない。まあ、先ほどなんか信じられないくらいのポイントが貰えたようなので、自身の強化に使えば力ずくでも逃げ出すことが可能だろう。

 

「うう、うちめっちゃ怒られるんとちゃう・・・おとんもネルフで働いとるし」

 

「ああ、そうなんだ・・・でも大丈夫だよ」

 

「なんでなん??」

 

「涙目で『ふぇぇ・・・』って言っておけば許してもらえるさ」

 

「・・・兄ちゃんってけっこうアレな人やんな。見た目とずいぶん違うんやね」

 

幼女からの評価が下がった。おかしいな魅力スキルもずいぶん高まっているはずなんだけど。

 

 

「おお、やっぱり、あっさり勝ってしもうたのじゃ」

 

「まあ、そうじゃないと困るけどね。じゃ、アヤカ、そろそろネルフに爆弾を放り込もうか・・・このままだとシンジがここに帰って来れなくなっちゃうしさ」

 

「ええ、そうですわね。それではユイさん、それとキョウコさん、こちらにお願いしますわ」

 

「わかりました。イザベラさんとアヤカさんのシナリオ通りに頑張ります!」

 

「わたしは後ろに見切れていればいいのね~♪」

 

ユイは多少緊張しつつTV電話の前に座り、キョウコはその後ろにニコニコと立つ。

 

 

「ん??副司令!雪広より司令宛に連絡が取りたいと来ていますが・・・」

 

「何??今は忙しい。後にしろと断ってくれ」

 

「わかりました・・・えっ・・・お母様ですか??はぁわかりました・・・副司令!シンジ君のお母様から直だそうです。父親である司令に連絡が取りたいと・・・」

 

「なっ!何を君は馬鹿なことを!!」

 

「冬月・・・かまわん、画面に映せ。どうせ養母の叔母を担ぎだしたのだろう。あの夫婦は金に目が無い愚か者だ・・・雪広に買収されていてもおかしくはない」

 

「なるほど・・・そうだな。よし、繋げ!!」

 

しばらくして発令所の画面に一人の女性が映し出される。

 

「「「「「ユイ!!!!!」」」」」

 

ヒゲはその女性の姿を見たとたん叫び声を上げて椅子から立ち上がった。

思わずサングラスを取り、目を見開いてわなわなと震えている。

 

「へーこの人が司令の奥さんなの・・・ずいぶん若いのねーうらやましいわ」

 

絶句している親友(リツコ)の横でミサトは人ごとのように評している。

残念ながらズボラな彼女はシンジの調査書など読んでいないのである。

 

そもそも碇ユイが実験で死んでいる(という)ことを知っているメンバーはヒゲ、ろうじん、金髪黒眉の3人で、他のオペレーター陣も今日来たばかりのサードチルドレンの履歴をまだ詳しく見ていなかったのである。マヤは気がつきそうなものだがポケーっと眺めている。「シンジ君はお母さん似でよかったーっ将来期待できるわ」とのんきに思っていた。

 

「久しぶりね・・・えっ?げ、、、ゲンドウさん(ニコリ)」

 

「ユイ・・・本当にユイなのか・・・」

 

「ええ、実は長い間記憶を喪失していたのだけれど、今日シンジに会うことが出来て、それであなたのこともほんの少しだけ思い出したの・・・」

 

「き・・・記憶喪失だと・・・」

 

ヒゲは混乱の極地にいた。愛する妻は初号機に取り込まれ消えてしまったはず・・・。

にもかかわらず、こうして目の前にあの頃より少し老けたが相変わらず美人な妻の姿があるのである。一体全体どういうことなのかわからなかった。

 

「そ・・・そうか・・・ナオコ君!ナオコ君が君を隠したのか!!」

 

冬月がいきなりそう叫ぶ。下の階ではリツコがビクッと震えた。

 

「(ナオコ・・・赤木博士ね。これは使えそうね)ええ、わたしは赤木博士に雪広の研究所へ連れて行かれたのです。そこで研究者として雇ってもらい、ずっとお世話になっていたのですわ・・・」

 

故赤木ナオコがヒゲに並々ならぬ思いを抱いていたのは、ずっと側にいた冬月、そして娘のリツコも気がついていた。あのナオコであれば、実はユイをサルベージ出来ていたとしても、さらにそれが完全では無く、都合良く記憶を無くしていたのであればヒゲ達に気付かれぬよう他所に運んで隠していてもおかしくない。

 

「ゲンドウさん。私はシンジと二人で暮らしたいの。あの子には十年以上寂しい思いをさせたのだから・・・・・・」

 

「わかった。もちろんだ・・・ユイ、これから3人で暮らそう・・・」

 

下の階では某技術部長がボールペンをへし折る音が鳴り響いた。

マヤが驚いて振り向いたがリツコはクールにペンをゴミ箱に捨てていた。

 

「それはだめ・・・あなたが夫であることは思いだしたけど、正直心の整理がついていないの、しばらくは離れて暮らしたいわ。それに私は雪広の主任研究員だし、あなたはネルフの司令。お互い守秘義務もあるし・・・あなたのお仕事は『いちパイロット』と比べても計り知れないほどでしょう・・・。だからたまに会って、もう一度最初からやり直しましょう。お願い・・・」

 

「ユイ・・・・・・わかった・・・(がっくり)」

 

「ユイ君!冬月だ!」

 

「あら、冬月先生もおかわりなく」

 

「いや・・・さすがに老けたと思うが・・・雪広にいるのであればすでに知っていると思うが、現在我々人類は使徒と呼称する化け物と戦っている。使徒にはエヴァでなくては勝てない。ATフィールドがあるからだ。そしてそのエヴァを動かせるのは現在シンジ君だけなんだ!すまないがシンジ君をネルフのパイロットにすることには同意して欲しい」

 

「はい、それは理解しています。子供を戦わせるのは辛いですが、、、ただし条件面については後ほど交渉させてもらいます。それと住むところですがこの雪広のビルでお願いします。私はここで仕事をすることになりましたから・・・」

 

「そうか・・・仕事・・・仕事ってユイ君は何の仕事をしているのかね?」

 

「すみません先生。それは内緒ですわ」

 

「そう・・・だな。いやーそれはすまなかった。はは」

 

「いえ、それでは。私はお伺いできないのですが、私の娘がそちらにお伺い致しますので、どうぞよろしくお願いします」

 

ユイはそう言って頭を下げると画面はブラックアウトした。

 

発令所内は静まりかえっていたが、いち早く動揺から抜け出したリツコが使徒戦の後始末の指示を矢継ぎ早に行うとにわかに活気が戻ってきた。

ちなみにミサトはシンジを出迎えにユイと司令の話しの最中にケージへと向かっていた。

彼女は別に夫婦の会話などさほど興味はなかったのである。

 

 

(母さん・・・とんでもない爆弾を残していたのね・・・やられたわ・・・)

 

 

「ナオコ君にやられたな・・・ユイ君の記憶、精神の一部が初号機に残っていたから我々は気がつけなかったが、まさかサルベージを不完全ながら成功させていたとは・・・」

 

「・・・ああ・・・」

 

「恐ろしきは女の妄執か・・・雪広もよくこれまで隠し通したものだ・・・まあ、さすがにこちらが探してもいないのだから仕方がないのだが・・・それにユイ君は所謂お前の人質として十分に価値がある。さらに保護者としても・・・シンジ君の親権を裁判所に訴えられたら勝ち目はないだろうな・・・それにユイ君は記憶を失っても優秀な研究者だ。なにを研究させているのやら・・・まったく一石二鳥どころか三鳥、四鳥の隠し球だよ・・・※7」

 

「・・・・・・・・・・・・(ユイ)」

 

 

「ふぅ・・・」

 

「ご苦労様でしたユイさん」

 

「ええ、それにしてもシンジの学校の先生達があちらにいてびっくりしましたわ。ゲンドウさんのことよりもそっちが気になってしまいました」

 

「へー世界が違うとそんな所も変わるんですねぇ」

 

「まっ、これでとりあえずネルフに一発ガツンとやったわけさ。これであちらさんには大いに牽制になった。諜報に関してはさらにさらに強化してくると思うけどね。それはこっちも望むところさ」

 

 

ケージでは鈴原父娘の親子げんか&感動感涙ショーが繰り広げられていた。

 

サクラの父親はネルフで整備課長を勤めており、初号機がケージに到着したときは真っ先に出迎えに来ていたのである。

 

見事初陣を勝利で飾ったシンジに整備員達は拍手喝采であり、鈴原親子のショーの横ではシンジの胴上げもまき起こっていた。

 

シンジを命令違反で叱りにやってきたミサトも、さすがにこの雰囲気の中ででシンジに何かを言うことはできなかったのだった。まあ、後で叱ってわからせればいいかと思っていたが、程なく副司令よりシンジに対しては接触するなと命令が出てしぶしぶ引き下がることとなる。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

盛り上がるケージの外の廊下では、忘れ去られたアルビノ少女が静かに待機し続けていた。

 

 

第弐話 見知らぬ、天井 に続く

 

 

※1 まあ、アレも相当酷いと思うが・・・

※2 本当だよ(震え声)

※3 可愛いは正義!YESロリータYESタッチ(え

※4 ナイスwww

※5 一体何が幸いするかわかりませんね。

※6 全て雪広のせいなのよ(キリっ

※7 全て雪広のせいなんだ(キリっ

 

 

追伸:友人との共同執筆はここまです。後は5話までのプロットを残すのみです。

 

 

 

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