王のビレイグアカデミア   作:INANO

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力なき者を守るのが俺の仕事だ、と思っていた。
だが、守る力がなかった俺は…
守る対象だと思っていた者に守られた俺は…
この仕事を続ける資格があるのか?
本当に不甲斐ない。
でも、
俺も、彼も、彼女も、あいつも生きてる。
なら俺はまだ進める。
彼のように
俺はこれからも、人を守る。




立志

 

 金木の意識が戻ったことが分かると、病室は少し慌ただしくなった。

医師や看護婦が(せわ)しなくやってくる。

少し遅れて祖母もやってきた。

 

そして、金木の身体に異常がないことが分かると、翌日には事件の捜査のために警察が押しかけた。

その際、事件の時にヴィランにやられていたヒーローも警察と共に現れた。

詳しい事件の経緯を照らし合わせるためらしい。

 

金木は、渡我が自分を襲ったことは伏せて、事件の経緯を話した。

 

「出血して意識が朦朧(もうろう)としていたので、ハッキリとは思い出せないんですが、なぜか急に身体が軽くなって反撃できたんです。その一発でヴィランが倒れて、僕もそこで体力が尽きて…」

「……すみません、そこからは覚えてないです。」

 

 

 

ヒーローも警察も、ただひたすらに驚愕した。

 

強い個性をもつ少年と少女が協力して、なんとか倒したのだと思っていたからだ。

倒れた少女を守りながら戦って、しかも一撃で倒した……?

ヴィランの個性についての情報も踏まえて考えると、正直プロヒーローでも厳しい相手だ。

ヒーロービルボードに入るような者ならまだしも、そこらの事務所にいる新米のヒーローでは一人で戦える相手だとは思えない。

だが、この少年は嘘を言っているようには見えない。

さらに、少女も少年の証言をその通りだと認めた。

拘留中のヴィランは黙秘を続けており、今は裏付けがないが、きっと全て真実だと感じた。

 

金木は自分の個性使用が罪だと申し訳なさそうにしていたが、この場合は完全に正当防衛である。

金木の年齢や状況を考えれば、表彰ものの功績である。

 

 

 

「金木くん、本当にすまない。そしてありがとう。俺はあのヴィランを倒すことも、君たちを逃がすこともできなかった。…精進(しょうじん)するよ。今度はちゃんと人を助けられるように!」

 

ヒーローは事件のあらましを聞くと、深々と金木に頭を下げた。

恐縮する金木に向かって、ヒーローはさらに言葉をおくる。

 

「君はヒーローになった方がいい。いや、なるべきだ。金木くんは中学3年生だろう?高校は雄英(ゆうえい)を受験してみたらどうだい?」

 

ヒーローの熱量のこもった言葉に、警官もウンウン!と力強く首肯する。

金木はその熱量に少し押されながらも、「考えてみます」と少し恥ずかしそうに返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 事件から1週間。

病室を訪れた祖母や父から心配されたり、渡我の両親から感謝されたりと色々あったが、ついに明日、晴れて退院となる。

 

「いよいよ明日には退院ですねェ。私としては、もう少しケンくんの側にいられるこの時間を愉しみたいところですが。」

 

「まぁ退院しても同じクラスだし、すぐ会えるよ。」

 

この数日間、渡我とは色々な話をした。

お互いの両親の話、個性の話…

渡我が今まで好きになった人の話や、スリーサイズの話など、聞いてもいないのに乙女の秘密も聞いてしまった。

こうして話していると本当に渡我はクラスメイトと変わらない、普通の女の子だ。

血が関わること以外は、渡我の感性は歪んでいない。

 

だが、彼女の両親が来た時、両者の間に少しの溝を感じた。

両親はきっと娘の将来や人生を心配して、彼女を抑圧してきたのだろう。

渡我も両親の言葉に納得はしていなくても、()くあろうとそれに従っていたのだろう。

きっとそれは、自分と父の関係のように他人がどうにかできる問題ではない。

金木は彼女と両親の関係改善を祈りながら、両者を見ていた。

 

 そんな金木の想いとは裏腹に、渡我の両親は安堵していた。

嬉しそうに金木を紹介する様子や、少し困り顔ながらも仲良く接している金木を見て、我が子がようやく普通になったのだと。

その安堵は、もちろん金木と渡我の血の約束を知らないからに他ならない。

それでも憑き物が落ちたように笑う娘の姿に、両親は喜んだ。

 

 そして、ここ数日は渡我が金木の血を欲することはなかった。

金木が本人に聞くと、血はいつでも吸いたいが今は抑えきれないほどでもないとのことだった。

渡我が少しでも変わろうとしてくれているのは本当に嬉しいことだが、それよりも金木は自分から「血、吸わなくて大丈夫?」と聞くのは少しどうなんだ、と悲しくなった。

そんなこんながあった1週間も明日で終わりだ。

 

 

 

「ほんとに、ヒーロー目指すんですか?」

 

「うん。僕はやっぱり人を救いたい。だから、雄英を受けてヒーローになる。そのためにも、もっともっと強くならないと。」

 

「なら、私も目指すしかないですねェ。」

 

「…えっ!!?」

 

ニコニコと笑いながらそう呟く渡我に、金木は声をあげて驚く。

 

「ケンくんと離れるのも嫌ですし、私好きな人と同じになりたいタイプなので!!」

 

……僕はもしかして一人の少女の人生を歪ませているのでは?

と、内心不安になる。

いや、でも渡我を正しい道に導こうと決めたのだ。

ならば理由はどうあれ、彼女がヒーローを目指すのは悪いことじゃない。

 

 

 

 受験倍率は毎年300倍。

国立の高校で最難関と名高い名門校、それが雄英高校。

はっきりとヒーローになりたいと自覚した今、目指すはヒーロー科だ。

ペーパーテストはこのまま勉強していれば大丈夫だろうが、体力面は今のままでの合格は厳しいだろう。

個性に頼った今のままではダメだ。

そもそも個性をちゃんと扱いきれていないのも問題だ。

どちらにせよ、課題は山積みだ。

夢と目標を見定めた金木は、渡我に微笑みながら、気合いを込めて言い放った。

 

「じゃあ、二人で合格しよう!」

 

 




まさかのトガちゃん雄英志望。
こじつけだと思ったあなた、本当の恋したこと…(ry
あと、またまた今更ですが、冒頭のポエム的な語り。
あれは最近コードブルーのドラマ見返してて、冒頭に語りが入るのかっけぇ!と思って取り入れました。
かっけぇ!と思ったものは何でも取り入れる。
引き算のオシャレができないんだ。
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