王のビレイグアカデミア   作:INANO

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入試とは、受ける当人とそうでない人間にとって全く見解の違うものだ。
当人にとっては「合格か不合格か」しかない。
それは時として「生か死か」に等しい。
自分の進む先には2つの結末しか用意されておらず
その2択を自分で自由に選ぶことすらできない。
生殺与奪を他人に委ね、受験生は今年も己を試す。




入試

 

 2月中旬。

金木は現在、推薦入試の筆記試験に挑んでいる。

偏差値が驚異の79という最難関高校の受験問題は伊達(だて)ではなく、各教科ごとに様々な知識を求められる。

だがまぁ、(さじ)を投げるほどのレベルではない。

 

 金木はもともと秀才である。

そして、受験を決めてからは肉体改造と並行して勉強にも力を注いできた。

そんな金木にとっては、まぁ想定の範囲内と言える程度の問題だ。

推薦入試だからこの難易度なのか、一般入試も同じような難易度なのか…

「がんばってくださいねェ!!」と満面の笑顔で送り出してくれた一人の少女の顔を思い浮かべる。

 

(これは…帰ったら最後にもう1回勉強会しないとな…)

 

優しい笑みを浮かべながら猛スピードで問題を解いていく金木に、周囲の受験者たちは少し焦りを感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

「筆記は以上で終了だ!次は実技!!」

 

 ジャージに着替えた金木ら受験生は、屋外へと連れられ、実技試験に臨む。

周りを見渡すと周囲の受験者たちは自信に満ちた表情をしていて、金木の心の中で芽吹いた不安の種は、水を得た若葉の如く、さらにグングンと大きく育つ。

少し(はや)る心臓を落ち着けていると、会場で試験官が説明を始めた。

 

(あの人…『プレゼント・マイク』だっけ…?雄英の教員は現役ヒーローって聞いてたけど、本当だったんだなぁ。)

 

 プレゼント・マイクが、金木とは180°違うテンションで語った試験内容は、要約すると6人ずつ行われる3kmのマラソンだ。

個性の使用もOK、というか個性を使わなければ完走は難しいということらしい。

鍛えた身体と自分の個性がどこまで通用するのか…

当然、不安はある。

だけど、ちょっと、ほんの少しだけ楽しみだ。

 

 

 先程からプレゼント・マイクが何度か言っている「Plus Ultra(プルス ウルトラ)」という言葉。

スペインのローマ皇帝の言葉だったか。

さらなる前進、を意味する言葉である。

そして、「Plus Ultra」と共に語られた、ナポレオンの言葉。

『真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者のことである』

 

多くの偉大なヒーローを輩出した雄英高校らしい言葉に、少し気分が高揚していく。

大きくひとつ深呼吸をして平常心を保つように努める。

少しの緊張と少しの期待を新たに芽生えさせながら、スタートの合図を待つ。

そして——

 

バアン!!と号砲が鳴り響いて、金木と同じグループの受験者は一斉に走り始める。

 

目指すは3km先のゴール、さらにその先、雄英高校の合格。

そして、さらにその先に待つヒーローという夢に向かって、

金木はスターターピストルの号砲とともに駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 3kmのマラソン自体はタイムを度外視(どがいし)すれば多くの受験者にとって簡単だ。

金木もその例に漏れず、日々その倍以上の距離を走り込んでいる。

スタミナは大丈夫だ。

だが、そのコースはマラソンというより障害物競走では?と思わせるような地形だった。

切り立った崖もあれば、至る所にトラップまで仕掛けてある。

受験者は個性を使い、それらを切り抜けていく。

 

6名ずつ審査されるこの実技試験。

全長の1/3ほどの距離…つまり1km地点に着く頃には、先頭走者と最後尾では大きな差が開いていた。

同じ中学生、同じ推薦受験者といえど、実力の差は出てしまう。

金木は中間あたりで、自分のペースを保ちながら走っている。

 

マラソン上位者たちの個性や身体能力に素直に感心しつつ、金木も少しペースを上げる。

眼前には大きな岩壁があり、周囲の受験者は個性を使ってその岩壁をよじ登っている。

 

(負けてられないな!)

 

金木もクライミングの要領で登りきる。

そして、岩壁の頂上から個性を全開にしてコース上の遥か先へと跳躍する。

 

 

 

 

『ゴール!受験番号103番1位です。タイムは全体の5位。』

『面接までの間、クールダウンしておいてください。』

 

 実技試験が終わった。

人工音声アナウンスの通り、金木は6人の中で1番早くゴールラインを通過した。

今年度の受験者の中でのタイムは上から数えて5番目。

まぁ上位5位以内なら合格圏内だろう。

今の全力をぶつけた結果だし、十分に上位と言える。

だが、全体順位の上位3人には、このレースでは何度やっても勝てないだろう。

現状に安堵しつつも、少し悔しく思う。

次の面接は受ける人数も少なくなっているので、おそらく早い段階で自分の番がくるだろう。

金木は思考を切り替えて、面接の応対について考え始めた。

 

 

 

 

 

 

 雄英高校の推薦入試の制度は、一般的な推薦入試とは大きく異なる。

まず1つに雄英側からのスカウトがある点。

スカウトがあったとしても、試験そのものは受けなくてはならないのでイコール合格ではないが、スカウトがある時点で見込みがあると見ていいだろう。

スカウトの基準になるのは、雄英高校からの正式な見解は発表されていないが、人を救ったことがあったり、事件に巻き込まれたことがあったりなど、おそらくヒーローとしての実績だと噂されている。

金木は実名は伏せられていたものの新聞やテレビなどのマスコミで一時期中学生ヒーローとして報道されたこともあり、今回、金木がスカウトをされたのはある意味セオリー通りと言える。

そして、推薦入試といえど倍率は高いというのが、もう1つ違う点である。

一般入試のヒーロー科が倍率300倍ということもあり、推薦入試も恐ろしい倍率を誇る。

全国の中学校は学校の面子にかけて生徒を推薦で雄英に送り出すが、合格できるのはほんの一握り。

筆記・実技・面接と、一般入試とは違って面接があるのも大きなポイントで、この個性飽和の超常世界において面接で自分をアピールするのは難しい。

テンプレ通りの優等生な回答が好まれるとも思えないが、奇を(てら)ったことを言えばいいというものでもない。

それでも、金木は模範回答を貫こうと決めており、質問を想定して何度も脳内シミュレーションを重ねてきた。

 

 

 

 

 

「金木くん、君がヴィランと対峙した時のことを教えてくれるかな?」

 

 思った通りだいぶ早めに面接の順番がまわってきた。

だが、順番のことよりも、予測していた質問とまるで違う問いをぶつけられたことよりも。

その質問をしてきた、自称校長のネズミの姿に驚いていた。

だが、この世界には異形型の個性で常人とは異なる見た目をした人間も多い。

気を取り直して、事件を要約しつつ説明する。

 

「ふむ。では金木くん、個性とは何だと思う?」

 

「個性はその人だけが持つ特殊な能力です。ですが、現代において、本来その言葉がもつ意味の範囲を超えてしまっています。個性は自身の一部であるはずです。ですが、個性に振り回されてしまう人が多い、と思います。良きにせよ悪しきにせよ、個性に影響されて人格に歪みをきたしている人もいます。僕は、個性を含めて自身を正しく認識することが大切だと思っています。」

 

「うん、そうだね。では、ヴィランについてはどう思う?」

 

「先の話と重複する部分もありますが、個性に振り回されているだけなら更生させるべきだと思います。悪いことをしたとしても、いつまでもその人が悪いままだと決めつけるのは早計です。ただ……人を傷つけるヴィランを相手にして情けをかけることはしません。更生はあくまで拘束後に考えるべきことだと考えています。」

 

「なるほどね。じゃあ最後に、君にとってヒーローとは?」

 

「人を、救けられる人のことです。災害や事故での人命救助はもちろん、市民を襲う凶悪なヴィランがいるならそれを倒すことも必要です。でも、ヒーローや警察は悪人を排除する人ではありません。僕が本当に心の底から尊敬し、なりたいと思うのは、人々の心まで救ってしまうようなヒーローです。」

「僕は、人を救けられる人になりたくてここにきました!」

 

 予期せぬ質問で出鼻くじかれ、想定していた模範回答を全て忘れて完全に自分の意見だけで答えてしまった。

ヴィランを更生させるとか、微妙に反感を買いそうな言葉まで言ってしまった。

……大丈夫だろうか。うーーーーん。。。

金木は合格発表までの数日間、時折このように「うーーーん。。。」と我を忘れて頭を抱えてしまうのだった。

 

 




推薦の日程や入試内容、面接などなど全部捏造設定です。
金木を推薦にしたこと後悔しました。

あと冒頭のポエム的なやつ
いつもは登場人物の誰か目線で書くことが多いんですが、
今回は誰目線でもありません。
受験生だった頃の自分を思い出して書きました。
頑張れ受験生!(来年)
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