持つ者と、持たざる者だ。
持たざる者は必死に足掻き、
やがて限界に気づく。
そして、持つ者を呪うんだ。
つまりどういうことか、分かるか?
金木、俺はテメーを許さねぇってことだ。
俺だけじゃねぇ。
世界中の非モテ男子はお前を許さねぇ。
偏差値79。一般入試の倍率300倍。
一線級のヒーローを育成するためにエリートが集まる高校。
それが雄英高校ヒーロー科だ。
そんな特殊な学校にあって、授業内容は
プロヒーローであるプレゼントマイクが行う英語の授業を受ける。
同じくプロヒーローのランチラッシュがいる食堂で昼食を摂る。
これが普通かと問われればそれは違うが、授業の内容自体は至って普通だ。
だが、他と大きく違う点、それが「ヒーロー基礎学」という授業。
単位も一番多く、一生徒としてもヒーローの卵としても外せない授業。
入学後初となる、そんなヒーロー基礎学の授業が今日の午後から始まる。
午前の授業が終わり、現在はランチタイム。
金木は食堂に来ていた。
午後からのヒーロー基礎学の授業に想いを馳せつつ、昼食に
だが、その表情は憂鬱そのものだ。
ランチラッシュが作る料理は絶品で、さすがにクックヒーローの名は伊達ではないと思う。
では、なぜこんな表情をしているのかと言えば、自分の周囲だけ
そして、その騒音とも呼んで差し支えない声は全て自分に向けられている。
「金木ぃ!昨日のあの子とは付き合ってるの!?」
「おい金木!抜け駆けはズリィぞ!」
「…チッ!!リア充が!!」
「金木ちゃん、意外と手が早いのね。」
こうなってしまった原因は、昨日の学校帰りのこと。
トガさんと一緒に帰っているところを芦戸さんに目撃されたことにある。
いや、普通に帰っていたのなら問題なかったはずなのだが。
………回想………
「ケンく〜ん!!なんで入学式もガイダンスもいなかったんですか?」
学校を出て少し歩いたところで、後ろからトガさんが駆け寄ってきた。
「あ、トガさん。待ってれば良かったね、ごめんごめん。A組は個性把握テストっていうのをやってたんだよ。」
「はぇ〜。いいですねェ、A組は。B組はなんというか落ち着いた方が多いというか、興味が沸く人がいないというか、そもそもケンくんがいないというか。A組が良かったです!!」
「…ははは。」
「というわけで、ケンくん成分を摂取させてくださ〜い!!」
「ちょ!?トガさん…っ!?」
「あ、金木じゃん!おつかれー………って、え?…」
急に飛びついてきたトガさんに不意を突かれ、押し倒されてしまう。
そこに、タイミング悪く芦戸さんが現れた。
2秒、いや3秒だろうか。
その場の誰もが声を発さず、状況の理解に努める。
このたった3秒は、少なくとも僕にとってはものすごく長かった。
そしてその沈黙を破ったのは、やはりというかトガさんだった。
僕の肩に無言で噛み付いたのだ。
「痛ァっ!!?」
わりと本気で噛んだんだろうけど、服の上からだし、血が出ることはなかった。
それでも、ものすごく痛いけど。
「この人、誰です?」
心なしかトガさんの機嫌が悪い。
芦戸さんに殺気の
芦戸さんは「ひぅ」と一声鳴いた後、僕に助けを求める目を向けてきた。
助けを求められれば救けるのがヒーローである。
「この人は芦戸さん、A組のクラスメイトだよ。…芦戸さん、こっちはトガさん。えっと、中学からの同級生で、今はヒーロー科のB組だよ。」
「…え、あー、芦戸です。よろしく?」
「…………。」
「……あー、その、芦戸さん今日はお疲れ様でした。それじゃまた明日…。」
「あ、うん?また明日…」
歯切れが悪すぎるまま芦戸さんと別れ、一言も発さなくなってしまったトガさんと共に帰る。
家に帰って血を届けに行ってからは少し機嫌が直ったようだったけど、なぜかどっと疲れた。
そして今日、登校してからやたら芦戸さんから視線を感じると思っていたら、食堂でついに捕まって質問攻めにされてしまったのだ。
そこに上鳴くんと峰田くん、蛙吹さんも加わって、この現状である。
「トガさんとは付き合ってないよ!中学が一緒だったり、2人で事件に巻き込まれたり、雄英受けるために毎日一緒にトレーニングしてたから仲は良いけど……」
「お”ぉん!?それは自慢かカネキィッ!!」
「ザ☆リア充。天に召せ。」
上鳴くんと峰田くんは憤怒に顔を歪めてドス黒いオーラを放っている。
助けを求めて芦戸さんを見れば、天高く拳を掲げて「恋バナきたぁああ」と叫んでいる。
「つまり、トガちゃんはカネキちゃんに片想いしてるけど、カネキちゃんはその気がないのにトガちゃんを
「KAIJUU!!FUKETSU!!!」
蛙吹からのトドメの一撃で、金木は単語を復唱するだけのポンコツと化した。
明後日の方を見ながら、フケツ…カイジュウ…と呟く金木を見て、上鳴は少し微笑む。
「いや、でも、なんつーか。金木も轟とかと一緒で推薦組のエリートって感じで、もっとスカしてんのかと思ってたわ。」
「それ分かる!真面目です!って感じだし、休み時間すごい本ばっかり読んでるし。でも喋ってみると意外にノリもいいし、仲良くなれそう!」
「さっきのは冗談よ、金木ちゃん。私も仲良くなりたいわ。」
「上鳴くん…芦戸さん…蛙吹さん…。」
「梅雨ちゃんと呼んで。」
「あ、うん。梅雨ちゃん。」
友達が増えた喜びに打ち震える金木と、そんな金木を微笑ましく思う3人。
「彼女がいるのは許さねーけどな!」
そこに峰田がピシャリと冷や水を差したことで、話題は渡我のことに戻り、昼休みが終わるまで質問攻めは続いたのだった。
「わーたーしーがぁ………」
「普通にドアから来た!!!!」
午後、心待ちにしていたヒーロー基礎学の授業が始まる。
講師を務めるオールマイトが、コスチュームを着て教室にきた。
考えてみれば、これは本当にすごいことだ。
“No.1ヒーロー”、“平和の象徴”———
彼を表す言葉は数あれど、その偉業を考えれば全て納得がいく称号だ。
そんな彼が
その貴重さ、その価値たるや計り知れない。
どの授業もそうだが、この授業だけは本当に一言たりとも聞き逃せない。
「さっそくだが、今日はコレ!戦闘訓練っ!!!そして、そいつに伴ってこちら!!入学前に送ってもらった個性届と要望に合わせてあつらったコスチューム!!」
入学前に申請すれば、個性に合わせたコスチュームを作ってもらえる制度。
コスチュームひとつで自分の個性の利点を伸ばし、弱点を補うことさえできる。
学生には想像がつかないようなテクノロジーが使われていたりもする。
雄英高校に入学する者は、そんな便利に過ぎる制度を利用して、それぞれに合ったコスチュームをあつらえてもらっている。
更衣室に移動し、ケースからコスチュームを取り出す。
どんな仕上がりになっているか、みんなワクワクしながらケースを開けている。
そして、各々のコスチュームの仕上がりに満足の声を上げる。
しかし、金木はそこに何の感慨も湧かない。
なぜなら自分が要望で出したのは、ただの半袖の黒いTシャツにハーフパンツなのだから。
なんの期待もなく、ケースを開く。
開発してくれた人の遊び心なのか、トップスはパーカーになっており、黒のレギンスも追加されていたが、特に変わった点は見当たらない。
同封されていた説明書のようなものによれば、機能性は市販品に比べれば耐熱、耐寒、防塵などに優れているそうだが、まぁ普通よりちょっと丈夫で便利な服という域を出ない。
着替えを終え、オールマイトの前にコスチューム姿の生徒たちが並ぶ。
それぞれ個性に合わせたコスチュームでコーディネイトしていて、その多くはコスチュームというよりはアーマーという言葉が合うような装備で全身を覆っている。
(こうして見ると、僕だけすごい地味だ…。)
「かっこいいぜ!」とみんなを評していたオールマイトでさえ、金木を見たあと咳払いをしてお茶を濁した。
そんなオールマイトに、生徒から
訓練の内容や先日の相澤のような除籍などの処分(合理的虚偽)はあるのか、など、たしかに気になる内容ばかりだ。
それらを一蹴して、オールマイトは訓練内容を説明し始める。
「状況設定は、ヴィランがアジトのどこかに核兵器を隠している。ヒーローはそれを処理しようとしている。ヒーローは時間内に敵を捕まえるか、核兵器を回収すること。ヴィランは制限時間まで核兵器を守るか、ヒーローを捕まえること!」
「コンビおよび対戦相手はクジだ!!」
今年は例年と違い、1クラス21人になっているので、必然的に3人のチームが出来上がる。
そしてクジを引いた結果は………
Aチーム 緑谷・金木
Bチーム 轟・障子
Cチーム 八百万・峰田
Dチーム 飯田・爆豪・瀬呂
Eチーム 芦戸・青山
Fチーム 口田・砂糖
Gチーム 上鳴・耳郎
Hチーム 常闇・麗日
Iチーム 尾白・葉隠
Jチーム 蛙吹・切島
チーム分けが終わるとオールマイトはVILLAINと書かれた黒い箱と、HEROと書かれた白い箱に手を突っ込み、組み合わせを決めた。
「最初の対戦相手はぁ…こいつらだ!!」
「Aコンビがヒーロー、Dコンビがヴィランだ!他のものはモニタールームへ向かってくれ。」
(緑谷くんと一緒か、2人とも身体強化系だからシンプルな作戦が良さそうだ。)
作戦を相談しようかと緑谷に目を向けると、彼は爆豪に
「ヴィランチームは先に入ってセッティングを。5分後にヒーローチームが潜入でスタートする。」
その言葉で飯田、爆豪、瀬呂は建物に入っていく。
(3人相手かー、ちょっと厄介だな。)
(飯田くんの機動力、爆豪くんの戦闘力、瀬呂くんの包囲力、どれ1つとっても強個性。これで3vs2の構図になっちゃったら、こっちの勝ち目はなくなる。)
3人の個性のことを考えつつ、金木は緑谷に歩み寄る。
「緑谷くん、よろしくね。」
「あ、うん。こちらこそよろしく!金木くん!」
「カネキでいいよ。さっき爆豪くんに睨まれてたけど大丈夫?」
「あ、僕もデクでいいよ。…かっちゃんとは幼馴染なんだ。で、ずっとバカにされてて…。」
「…なるほど。じゃあ尚更、負けられないね!」
正直、まだ勝てるビジョンは見えない。
でも、負ける気だってない。
意思のこもった瞳を向けて、金木はにこやかに緑谷に手を差し出した。
「っうん!勝とう!」
緑谷もそれに同じく強い意思を宿した目で応える。
急造コンビにもかかわらず、互いにどこかシンパシーを感じていた。
原作主人公同士のチーム発足。
ごめんね麗日さん。
てか思ったけどデクとカネキの口調の差別化が難しい。
書いてる本人ですら読み直した時わかりにくい。
はやくカネキ闇落ちさせなきゃ!!(使命感)