王のビレイグアカデミア   作:INANO

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俺は強い。
壁を乗り越える?辿り着く?
意味が分からねぇ。
普通に歩いてりゃここまで来れる。
オールマイト以外で
俺が勝ちたいと思うのは俺自身だけだ。
俺は今日の俺に勝って、また前に進む。




縛覇

 雌雄(しゆう)が決する数十秒前。

緑谷は爆豪に追い詰められていた。

 

「何で個性使わねぇんだ!!俺を舐めてんのか!?ガキの頃からずっと!!そうやって!!」

「俺を舐めてたんか!てめェはぁ!!!!」

 

「っ…違うよ。」

「君が凄い人だから、勝ちたいんじゃないか!!」

 

「…勝って!!超えたいんじゃないかバカヤロー!!!」

 

「そのツラやめろやクソナード!!!」

 

否、追い詰められているのは爆豪も同じなのかもしれない。

余裕のない表情で互いの気持ちをぶつけ合う2人には、オールマイトから伝えられる制止の声も届かない。

互いに右。

緑谷は涙を滲ませながら、拳を握り込み、振り上げる。

爆豪は焦りと憤怒を感じさせる笑顔で、爆破させながら右掌を振りかざす。

羨望・屈辱・敵対心…

焦り・嫌悪・侮蔑…

複雑に絡み合った互いの心を乗せた、2人の拳と掌が交差し、………

 

 

 

『…っヒーローチーム!!!ぅWIIIIIIIIIIIIIIIIIN!!!』

 

 

 

終了を告げるオールマイトの声に反応もできず、2人の攻撃は互いを捉えた。

緑谷は左腕でガードしながらも、爆豪の顔面スレスレにデトロイトスマッシュを叩き込む。

 

「…ハァ……ぐっ。ハァ…使わないつもりだったんだ。使えないから…。体が衝撃に耐えられないから……相澤先生にも言われて…たん…だけど。」

 

グローブは焼け焦げ、左腕も火傷を負っている。

そして、緑谷は意識を失ってドサリと倒れた。

だが、完全に左腕で防いでいたのだ。

それはつまり。

 

(右……デクは読んでた…!読んだ上で…俺に当てずに逸らしたんだ…)

(そりゃつまり…ガチでやり合っても、俺 完全に デクに )

 

「戻るぞ爆豪少年、講評の時間だ。」

 

込み上げる焦燥感と屈辱で呼吸を荒げる爆豪の肩に、オールマイトは優しく触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

モニタールームにて。

 

「さぁ講評といこう。」

「まずはヒーローチーム、おめでとう!緑谷少年はハンソーロボで保健室に直行してしまったが。金木少年、おめでとう。君の活躍は圧倒的だったな。だがまぁ…あえて指摘するとすれば2つ!誰か分かる人っ!!?」

 

「はい、オールマイト先生!」

 

オールマイトからの問いに一切の躊躇なく、八百万が手を上げ、発言を続けた。

 

「金木さんの個性は凄まじかったですが、今のこの姿を見れば反動も相応のものであると判断できます。時には反動を覚悟で動かねばならないでしょうが、今回バディが他の敵と交戦中にも関わらず、個性の使用を中断せずに単独で敵の本拠地に乗り込んだことは少し早計だったかもしれませんわね。今回は相手の個性や戦力が分かっていましたが、実戦ではこうはいかないでしょうから。あと1点は、瀬呂さんとの交戦時に騙されて隙を作ったこと。くらいでしょうか。ですが、金木さんの能力はこの中では突出していました。」

 

ここまで一気に言い放った八百万の意見に、誰もが納得した。

だが、彼女はそこで止まらず、スゥッと大きく息を吸い込むと、さらに続けた。

 

「爆豪さんの行動は私怨(しえん)丸出しの独断。屋内での大規模攻撃のような悪手もさることながら、数の有利を生かそうとしないあたり、一人だけ訓練ではなくただの私闘を仕掛けていたように見えました。瀬呂さんについては、そもそも爆豪さんの様子を見に行くなら機動力に長けた飯田さんが行うべきで、拠点防衛に長けた瀬呂さんが行ったのは愚策と言わざるを得ませんわ。ヴィランらしい思考で金木さんを惑わせたところや最後の作戦は良かったですが、せっかく個性のテープで拘束したのですから、テープに確保テープを組み合わせて巻きつけるなり、拘束した上で、そのまま交戦するというのも選択肢としてありました。あと、トラップはやるならダミーを混ぜる、それが無理なら確保テープを使った二重トラップを(ごく)少数用意した方が効果的です。トラップで居場所をバラすのも、頭の悪いヴィランの典型のようで愚策ですわね。そして飯田さんについては、最後の攻撃は作戦としては良かったですが、破られたときの対処ができていませんでしたね。あと、勝者ではありますが、緑谷さんは金木さんと同じく反動で動けなくなること、そして中盤、せっかく金木さんが爆豪さんを捕らえたにも関わらず、気の緩みで取り逃がしてしまったことは重大なマイナスポイントですわ。」

 

「ですから、他の4人に比べて金木さんは状況判断も戦闘力も完全に頭一つ抜けておりますわ。」

 

 

(((っめっちゃ喋るぅううう!!!!!!!)))

 

保健室に行った緑谷と、茫然自失の爆豪を除いた19名にオールマイトを加えた20名の心は今、ひとつになった。

 

「ま…まぁ初訓練だし、ちょっと評価が辛辣だけど、まぁ…正解だよ。くぅ…!」

 

オールマイトからの講評かと思えば、まさかの八百万によってさらに上をいく講評(酷評)を叩きつけられ、瀬呂と飯田は床に手を突くほどに落ち込んだ。

だが、一番凹んでいたのは初授業で生徒にお株を奪われたオールマイトなのかもしれない。

 

「んん”っ!!!……さぁ、場所を移して再開といこうか!!」

 

 

 気持ちを切り替えたオールマイトの一声によって訓練は再開された。

金木は外傷があるわけではなく、治癒すれば余計に体力を減らすからという理由で、ぐったりとしながらも訓練の様子をモニターで眺めつつ、先ほどの訓練の過程を反芻していた。

 

(八百万さんの言う通りだな。褒めてくれてたけど、指摘されたことは真理だ。反動の出るこの使い方じゃ連戦はできないし、今回の勝利は設定に甘えたものだ。)

 

そんな金木に、念のために保健室で診てもらっていた飯田と瀬呂が戻ってきて近づいた。

 

「金木くん、お疲れ様。完敗だったよ。」

 

「あ、飯田くんもお疲れ様!お腹大丈夫だった…?」

 

「大丈夫!ただの打撲だ。敵ながら素晴らしい攻撃だった!」

 

 

「たしかに。つーか、あれ返してくるとは思わねぇよ。あ、途中騙して悪かったな!」

 

「いやいや、それこそ全然大丈夫だよ。ヴィラン設定だったしね。爆豪くんも含めて、3人ともすごい個性でいい勉強になったよ。ありがとう。」

 

「金木さぁ、それちょっと嫌味だぜぇ?」

 

「え?いやいや!!そんなつもりは…!」

 

「さっきの八百万の講評も、マジで凹んだわ。めっちゃ的確だったし。なんか俺の時だけ微妙に指摘多かったし。愚策って2回も言われたし。ヒーロー名『愚策ヒーロー墓穴掘り』にしようかな………。」

 

「いや!!ちょっ!瀬呂くんの個性はすごいよ!八百万さんも言ってたけど使い方次第では最強の拠点防衛だっただろうし、トラップも二重トラップは僕もめちゃくちゃ警戒してたくらいだよ!?」

 

ズゥウンという効果音が聞こえそうなほどに落ち込む瀬呂に、金木は慌ててフォローという皮を被った追撃を叩き込む。

 

「…………やっぱ使い方が悪かったんだな…。」

 

「金木くん!塩を塗り込んでるぞ!!」

 

と、そこへ訓練を終えた八百万が戻ってきた。

オールマイトの講評を聞き終えた八百万は「峰田さんの目つきがいやらしいですわ!」と、ご立腹の様子でこちらに歩いてきた。

 

「お疲れさま。やっぱりすごいね、『創造』の個性。弱点が見当たらない。」

 

「ありがとうございます。弱点はありますわ。…と、それより、先程は少し言いすぎてしまってすみませんでした。」

 

「いや、僕は本当に思い当たることばっかりで、指摘してもらえて良かったよ。」

 

「僕も己の未熟を突きつけられた思いだ。正直、ここまで自分が何もできないとは思っていなかった。」

 

「俺はただただ凹んだ。」

 

八百万からの謝罪を、三者三様の表情をしながら受け入れ、4人は再びモニターに目を向ける。

訓練も残り僅か。

現在は轟・障子チームが尾白・葉隠チームを瞬殺したところだ。

その4人から少し離れた位置で、爆豪はモニターを見つめて唇を噛み締めていた。

 

 

 

「お疲れさん!!緑谷少年以外は大きな怪我もなし!しかし真摯に取り組んだ!初めての訓練にしちゃ皆 上出来だったぜ!」

 

オールマイトからの労いの言葉で、屋内対人戦闘訓練は幕を閉じた。

更衣室へと戻って着替えた後、教室に戻るまで、爆豪は俯いたまま無言を貫いていた。

 

 

 

 

 

 

 

教室に戻った後、爆豪は鞄を手に取るとそのまま教室を出て行こうとする。

 

「ちょ…おい!爆豪どこ行くんだよ!」

 

切島の制止も聞かず、爆豪はドアを開ける。

そこにはタイミング悪く更衣室から戻ってきた金木がいた。

 

「……どけ、もやし野郎。」

 

「…爆豪くん。帰るの?」

 

「…っあぁ、帰るんだよ。だからどけ。」

 

「逃げるの?」

 

「っ…んだと!?」

 

「…君は天才だと思う。個性も最強クラスだし、戦闘のセンスもピカイチ、成績だってきっと良いんだと思う。でも、まだ上には上がいるし、僕やデクを含め、下からだってどんどん君を追い抜こうとする人が現れる。」

 

「…っ!!」

 

「僕も、デクと同じように…いつか君に勝って、超えたいと思ってる。」

 

「…ってめえ!!」

 

金木の言葉に激昂した爆豪は、胸ぐらを掴み、今にも食い殺さんばかりの眼光を浴びせる。

対して、金木は眉を下げて困ったような表情でその瞳を見つめ返している。

 

「おいおい!やめとけって!金木もあんま煽んなよ!」

 

またも切島が間に割って入って仲裁し、爆豪は大きな舌打ちをひとつ残して、そのまま帰っていった。

金木は困ったような表情のまま、少し微笑んでその後ろ姿を見送っている。

 

「……ヒヤヒヤしたぜ。金木、お前あんな煽るようなこと言うやつだったか?」

 

「煽ったわけじゃないよ。ただ、爆豪くんはきっとこれから途方もなく強くなるだろうから……負けないように、自分に言い聞かせてたのかもしれない。」

 

 ほどなくして、緑谷が保健室から戻ってきた。

金木は労いの言葉をかけようかと近づいたが、麗日から爆豪が帰った旨を聞くと、そのまま教室を飛び出して行ってしまった。

 

 

 

「かっちゃん!!!」

 

「ああ?」

 

「……これだけは、君には言わなきゃいけないと思って…!」

 

 

「人から授かった“個性”なんだ。」

 

「誰からかは絶対言えない!言わない…でも、コミックみたいな話だけど本当で…!おまけにまだろくに扱えもしなくて……全然モノに出来てない状態の“借り物”で…!だから…使わず君に勝とうとした!けど結局勝てなくてソレに頼った!僕はまだまだで……!だから————」

 

「いつかちゃんと自分のモノにして、“僕の力”で君を超えるよ。」

 

爆豪からしてみれば、ゴチャゴチャと、反省と嘘を混ぜたような訳の分からない前置きを言われた後、清々しいまでのまっすぐな表情で宣戦布告をされた…本日2度目のだ。

 

「何だそりゃ…?借りモノ…?わけわかんねぇ事言って…これ以上コケにしてどうするつもりだ……なぁ!?」

 

「だからなんだ!?今日…俺はてめェに負けた!!そんだけだろが!そんだけ……っ」

 

「もやし野郎にも組み伏せられたっ!!!氷の奴見てっ!敵わねぇんじゃ、って思っちまった…!!クソっ!!ポニーテールの奴の言うことに納得しちまった…クソが!!クッソ!!なぁ!てめェもだ…!デク!!」

 

「こっからだ!!俺は…!!こっから…!!いいか!?俺はここで一番になってやる!!!」

 

「俺に勝つなんて二度とねえからな!!クソが!!」

 

涙を滲ませて覚悟を語る幼馴染に、緑谷は一層気持ちが引き締まる。

負けられない…!

 

「爆 豪 少年!!」

 

くるりと背を向けて校門をくぐろうとする爆豪に向けて、緑谷のすぐ脇をオールマイトが超スピードで駆けて行った。

 

「言っとくけど…!自尊心ってのは大事なもんだ!!君は間違いなくプロになれる能力を持っている!!君はまだまだこれから…」

 

「……っどいつもこいつもお人好しだな。放してくれ、オールマイト。歩けねぇ。言われなくても!!俺はあんたをも超えるヒーローになる!」

 

…あれぇ?と首を傾げるオールマイトをよそに、緑谷は、一つ殻を破ってさらに先に進もうとしている幼馴染の背を見続けていた。

 

 




かっちゃんはマジで天才でチート。
問題はメンタル面。
でもそこがキャラとして面白いポイント。
あ、あとめっちゃ細かいんですが、この時点での飯田くんの一人称は原作では「俺」なんですが、分かりにくくなるので「僕」にしています。すまんな飯田くん。
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