王のビレイグアカデミア   作:INANO

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金木がリカバリーガールの元へ運ばれた後。
個性に変化があったと報告を受けた彼女は、金木の採血を行った。
そして、その血は国立個性診断センターに送られる。
金木の血中に存在する細胞は、
その形状が、身体を丸めた胎児に似ていることから
奇しくも前世と同じ「Rc細胞」(Red child)と名付けられた。




個性

 

 昼休み、金木は相澤に言われた通り、職員室を訪れていた。

 

「来たか。ついてこい。」

 

ぶっきらぼうにそう伝える相澤に返事をしつつ、金木は後をついていく。

職員室の隣にある応接室に通された金木は、ソファに腰掛けた相澤の向かいに座る。

改めて見ると、顔に包帯を巻きつけた相澤の姿は痛々しく、その痛ましい姿が自分の力不足を痛感させる。

 

「まずは……すまなかったな。」

 

そんな金木に伝えられたのは、相澤からの謝罪だった。

 

「守る側の俺がお前に守られてしまった。」

 

 

「あの時は助かった。」

 

包帯の隙間から覗く充血気味の瞳が、しっかりと金木を捉え、そう伝えられた。

 

「いえ、そんな…」

 

「だが。あまり無茶するな。」

 

謙遜しかけた金木の言葉に被せて、相澤は釘を刺す。

 

「あの状況では無茶するなという方が無理だった。それに未知の個性を使えと言ったのも俺だ。だが、それでもお前はまだ子どもだ。教師として言うべきことは言わなきゃならん。」

 

「…はい。」

 

「お前の個性の使い方には、以前から少し懸念(けねん)があった。初回のヒーロー基礎学で使った個性は、体力測定の時と比べ物にならん出力だっただろ。おそらく身体に甚大な負荷がかかるはずだ。あれも自重しろ。」

 

「あれは…限界突破(オーバーフロー)と呼んでいます。仰る通り、使用できるのは10分ほどで、使用後は動けなくなります。……」

 

ついに言われたか。

金木はその言葉を観念して受け入れる。

個性を使用するたびに負傷する緑谷に対して、あれだけ厳しく言うのだから、いつかは自分も言われると分かっていた。

だが、それでも、自分の実力を底上げするために何度も試行錯誤を繰り返して会得した力を否定されたようで少し寂しい。

これから自分はどうやって強くなればいいのだろう。

 

「…勘違いするな。お前はそんなことをしなくてもやれることは多い。それに、俺の話はまだ終わっていない。」

 

グッと何かを噛み締めるような表情で話を聞いていた金木に、相澤は少し呆れつつ、なおも言葉をつなぐ。

 

「俺は無茶をするなと言っただけだ。“無茶”でなくせばいい。限界突破(オーバーフロー)だろうが、あの触手だろうが、無理なくしっかり使いこなせるようになれ。この学校の校訓だろう?“Plus Ultra”だ。」

 

「…っはい!ありがとうございます!」

 

相澤の言葉に胸が熱くなる。

そうだ、僕は、超えてみせる。

さらに先へと進んでみせる。

決意の灯った金木の黒い瞳を見て、相澤は心の中で微笑む。

活力に満ち溢れた若い芽の姿を見て、少しだけ自分の学生時代を思い出した。

そして、「そこで、ここからが本題だ。」と前置きした上で、相澤は淡々と金木に告げる。

 

「あの時見せたお前の個性だが…個性の再検査受けてこい。その上で、おそらく個性届の変更が必要になる。単純な身体活性では説明がつかんからな。」

 

そう言いながら相澤は、白い角2封筒から分厚い紙の束を取り出して金木に手渡した。

 

「これは…?」

 

「国立個性診断センターから届いた書類だ。お前から採取した血をリカバリーガールに送ってもらっておいた。先に目を通させてもらったが、何でも血中に特殊な細胞があって、触手はその細胞で構成されている可能性が高い、という内容だった。詳しい検査が必要らしいから、明日にでも行ってこい。」

 

「あ、はい。分かりました。行ってきます。」

 

 

「あぁ、明日は公欠扱いになるから心配いらないぞ。」

 

 最後に相澤にお礼を言いつつ、金木は応接室を後にする。

教室へ戻る道すがら、先程相澤に渡された書類に目を通す。

この世界では、誰しも幼少期に個性の診断を受ける。

当然、金木も例に漏れず幼少期に受けており、特殊な細胞もその時に発見されて伝えられている。

それを受けてAB特殊型という血液型だということは判明していたが、今回の事前血液検査で、その特殊な細胞には「Rc細胞」という名前がつけられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、金木は国立個性診断センターを訪れていた。

受付を済ませ、名前を呼ばれるのを待つ間、少し今朝のことを思い出して苦笑いする。

朝、隣に住んでいる渡我に学校を休む(むね)を伝えると「私も行きます!」と言って聞かなかったのである。

渋る渡我をなんとか宥めて、学校へと送り出してからここへ来た。

 

(そういえばトガさんからB組の話全然聞いてないけど、クラスで上手くやっていけてるのかな…)

 

「カネキさん。カネキケンさん。5番診察室までお越しください。」

 

思考回路が保護者のそれになっている金木の耳に、アナウンスの声が届く。

診察室では、病院でするような簡易検査を受けた後、いつ個性に変化の兆しがあったかなどの聞き取りが行われた。

そして、その後、研究員の方に連れられて「第7個性検査室」という広い体育館のような場所にやってきた。

曰く、ここで赫子(かぐね)を発現させてその動きを見て、赫子から再度細胞を採取して検査するとのことだった。

研究員の「始めてください」という合図で、金木は赫子を出すイメージを始める。

 

(あの時のイメージで……)

 

ズッという音とともに、金木の腰から赫子が出現する。

壁面に貼られた鏡を見ると、左眼も赤く変化していた。

研究員はテキパキと赫子から細胞を採取し、金木に赫子を動かすよう伝える。

波打つ血液のようなそれは、金木の意思の通りに動いた。

だが、過去に4本出ていた赫子は、現在1本だけしか出ていない。

そのことを研究員に伝えると、感情がトリガーになっている可能性を伝えられた。

 

「先程の聞き取りの際にお聞きした印象ですが、誰かを救いたいと思った時や命の危機に直面した際に感情が(たかぶ)って個性が強まる傾向があるのかもしれません。」

 

その後、食物摂取による細胞量の変化など、いくつもの検査を終わらせると、もう外は夕暮れに染まっていた。

再度、診察室へと戻ってきた金木は、ぐったりと疲れていた。

 

限界突破(オーバーフロー)使った時より疲れたかも…)

 

そんなお疲れ気味の金木とは対照的に、研究員はウキウキした様子で結果を伝えてくる。

 

「今日採取した細胞を使って詳しい検査を行っていきますが、現在伝えられる範囲で言うと、金木さんは食物を摂ることで体内でRc細胞という特殊な細胞を生成できるようですね。特にお肉。お聞きしたお話にあったので生肉も先程食べていただきましたが、生肉を摂取した後だと爆発的に増えていますね。あと、左眼が赤くなるのは金木さんの感情や興奮状態に伴って血中のRc細胞が増殖・活性化した影響でしょう。なぜ左眼だけなのかは分かりませんが、視力に影響もないようですし“体質”くらいに捉えてかまわないと思います。それにしてもこのRc細胞は面白い特性を持ってますね。異形型や変形型の個性を持つ方々も特殊な細胞を持っていることが多いですが、この細胞は体外に出た時点で変質しています。カグネ状態、つまり体外に出た時点で硬質化しているんですよね。しかし、硬質化したままではなく軟化と硬化を繰り返すことで自在に動かせる。さらに再生もしやすくなっているわけだ。体内外でここまで変質する細胞は……」

 

研究員が緑谷のようにブツブツと自分の世界へと旅立っているのを、金木は困り顔で見つめつつ、先を促す。

 

「おっと、失礼。まぁつまり、金木さんの個性の本質は身体活性ではなく、自身の細胞の活性化と操作、ということになります。あぁ、ですが、身体能力はRc細胞とは関係なく向上されていたので、身体活性と細胞操作、というところでしょうか。」

 

(なるほど…。父さんの個性と母さんの個性、それぞれを受け継いでいたんだ。)

 

研究員からの結果を聞いた金木は、個人的にRc細胞を研究したい、という研究員に苦笑しつつも協力を申し出た。

 

「僕の個性のことですし、成長に繋がるならいくらでも協力します。というか、こちらこそよろしくお願いします。」

 

「おお!ありがとう!!……んんっ、では、詳しい検査結果は追ってお送りいたしますので、その書類とともに個性届を役所に提出してくださいね。」

 

金木の言葉に目を輝かせた研究員は、少し照れ臭そうに咳払いをした後、そう言って「お疲れ様でした」と金木を送り出した。

本当に長い一日が終わった。

自分の個性のさらなる可能性が見えた。

きっと使いこなしてみせる。

グッと拳を握りながら決意を固めて見上げた夜空には、満点の星が輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は遡って、数日前。

雄英襲撃に失敗した死柄木は、黒霧の個性ワープによってアジトに帰還していた。

自身には傷ひとつないが、襲撃の結果は完敗だ。

八つ当たりでカウンターチェアを蹴飛ばしながら悪態をつく。

 

「くそ…失敗だ……。子どもがあんなに強いなんて聞いてない……それに最後のあいつ……」

 

最後の最後に駆けつけてきた平和の象徴(オールマイト)

倒したのは雑魚だけとはいえ、その圧倒的な覇気…威圧感…全く衰えなど感じさせない圧。

身の毛がよだつような、その濃密なプレッシャーを思い出して、死柄木は一筋の汗を流した。

 

「……話が違うぞ先生。」

 

「違わないよ。」

 

いつの間に繋がっていたのか、モニターから返答が返る。

 

「脳無は?回収してないのかい?」

 

「ヒーローの増援が想定の何倍も早かった。回収の時間は取れませんでした。」

 

モニターから別の声色が聞こえ、それには黒霧が応える。

 

「せっかくオールマイト並みのパワーにしたのに…」

 

「パワー……そうだ……オールマイト並みの速さを持つ子どもが2人(・・)いた。」

 

「………へえ。」

 

「気味の悪い触手生やしたあのガキっ……!カネキとか呼ばれてた……あいつさえいなければ……っ!……あいつ…脳無に殺すって言った。…くそっ…なんであんなやつがヒーローなんて目指してる……。」

 

「へえ……そんな子がいるんだね。」

 

「……。」

 

「…まぁ今は悔やんでも仕方ない!死柄木弔!次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!」

 

(触手の個性……ねぇ。)

モニターに映る死柄木の荒れっぷりを眺めながら、殻木球大(がらき きゅうだい)は口の端を不気味に歪めた。

 

 




国立個性診断センターは、金木の個性の説明を掘り下げるために生まれた捏造設定です。
原作のRc細胞は赫包に溜め込まれるっていう設定でしたが、この作品では金木に赫包はありません。血中にRc細胞が多量に存在しており、それを赫子として噴出することができるという設定です。金木は母親の細胞関連の個性を遺伝として引き継いでおり、血中のRc細胞の量を増殖・操作可能という感じで理解していただけると幸いです。
あと、ここの金木は喰種の肉体ではないので、原作ほど硬くありません。メスも針も刺さるよ!
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