王のビレイグアカデミア   作:INANO

29 / 33
かっちゃんに轟くん、そしてカネキ。
3人とも本当にすごくて、
実力じゃまだ敵わないかもしれない。
それでも。
いや、自分が認める人たちだからこそ。
勝って、見せたい。
同じところに、僕が来たってことを。




競走

 渡我はレースが始まってからずっと、金木が視界に入るギリギリの距離をとっていた。

身体能力だけを見れば、彼女は他の参加者に比べて決して劣ってはいない。

それどころか単純な身体能力だけでも、もっと前に陣取れているはずである。

だが、それでも後方にいた。

B組は物間が打ち出したクラスの指針として、この予選では実力を抑え、ギリギリ予選が突破できるであろう上位40位くらいまでに入るあたりをキープしようと動いている。

が、それが理由で渡我が後方にいるのかといえば、それは違う。

そもそも物間の言うことなど聞かないのが渡我被身子という存在である。

 

ではなぜかといえば、普通科とサポート科の連合チームによって執拗なマークを受け、単純に前に行けなかったからである。

彼らは燃えている。

この()だけは、絶対に先に行かせないと。

 

(……二人同じ姿で同着ゴールしたかったんですが。)

(ケンくんに変身したのは間違いでしたかねェ……)

 

 レース開始前、渡我は個性『変身』を使って金木にその姿を変えていたのである。

そして金木は、非リア充の男子たちから壮絶なヘイトを買っている。

金木の姿のままで、ふぅとひとつ溜息をつく。

正確に言えば、トップスピードで頑張れば集団から抜け出すこと自体は可能だ。

だが、彼女はレースそっちのけで後方から金木の姿に見惚れていた。

 

(はぁ〜〜、頑張ってるケンくんいいですねェ。)

 

そして、金木が第二関門へと差し掛かり、赫子(かぐね)を出した瞬間。

渡我の興奮は最高潮へと達した。

 

(カグネっ!!いつ見ても綺麗です!!)

 

金木の腰から出た血の色をした触手。

個性飽和社会で異形型の個性を持った人間がざらにいる現代においても、なお禍々しいと表現するのが適切である赫子。

それを見ても、渡我には美しいという感想しか浮かばなかった。

初めて見せてもらったのは、もう10日ほど前のことだろうか。

そこから訓練相手になるという大義名分のもと、毎日赫子を間近で見てきた。

そして、その度に見惚れてきた。

なのに、このレースの第一関門では他の生徒たちが邪魔で一瞬しか見えなかった。

近くで見たい。

その想いが膨らんでいく。

 

金木の姿のままでハァハァと息を荒げ、頬を紅潮させる渡我。

邪魔をしていた集団は、その顔を見てあまりの気味の悪さにゾッとする。

そして、その姿から少し目を離した一瞬。

その一瞬で、渡我は集団を抜け出し、金木の元へと走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁいよいよ先頭集団は最終関門!!』

『最後は……一面地雷原だ!!!!』

 

 コース幅が大きく広がり、よく見れば地雷の位置は確認できる。

プレゼント・マイクの実況によれば、威力は大したことがないが音と見た目は派手だそうで、爆発させてしまえば大きなタイムロスになるのは間違いない。

現在トップを走る金木は、地雷のない地面を選んで進む。

現在の順位は単独トップ。

しかし、後続との差はたいした距離ではない。

ほどなくして、轟と爆豪がデッドヒートしながらも追ってきた。

 

 地雷原に入った轟は、金木と同じように地雷のない場所を選んで進む。

後方から爆発音が聞こえる。

誰かが地雷を踏んだのか、と思った轟のすぐ横を、赤い爆風が突き抜ける。

 

「じゃあな、半分野郎!!」

「宣戦布告する相手、間違えてんじゃねえよ!!」

 

爆速ターボで空中を滑空しながら爆豪が金木を追う。

 

「!くそっ」

 

轟は爆豪の腕を掴みながら、自身も金木の背中を追う。

前にはまだ抜くべき相手がいるのに、お互いが邪魔で一手先を打つことができない。

 

 

 

 

「ちょっと、あいだ失礼しますねェ!!」

 

 

 

 

そんな二人の肩に手を置いて、ピョーンと軽やかに跳び箱の要領で飛び越えた存在がいた。

轟と爆豪は、その存在を同時に睨む。

 

「「…!?はぁっ!!?」」

 

そして、驚きの声をあげたのも同時だった。

二人を飛び越えた存在、その姿が数メートル先を走る後ろ姿と全くの同一人物、つまり金木の姿だったからだ。

 

 

(もやし野郎の個性…じゃねぇな!…姿を変える個性か?)

(A組のやつじゃねぇ。俺らが知らねぇってことはB組か?)

 

((そんなことより……))

((先行かしてたまるか!!))

 

奇しくも二人の意見はここで一致する。

轟は後続に道を作ることを懸念しつつも、地面を凍らせて地雷を無効化する。

爆豪は運動と怒りによってさらに汗腺から噴き出たニトロを点火して爆速ターボで加速する。

そして、今しがた自分たちを抜いた渡我を同時に抜き返す。

 

「…わっ!速いんですねェ!」

 

轟は、抜く瞬間にチラリと渡我の姿を見る。

どこからどう見ても金木にしか見えないが、苦しそうに呼吸を荒げている姿を視界に捉えた。

自分たちを抜くために無理な加速をしてきたのだろう。

ここからまた抜き返されることはない。

 

(問題は……)

本物(・・)をどう抜くかだ…!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 依然、先頭を走る金木は、チラリと後ろの様子を見る。

自分はスピードを緩めていないにもかかわらず、爆豪と轟がすぐそこまで迫っている。

ならば、と赫子で自分の後方の地面を薙ぎ払う。

大きな爆発音が鳴り響き、爆風にのって砂塵が舞い上がった。

これで少しは時間が稼げるだろう。

そんな金木の甘い考えは、一瞬で打ち払われた。

砂塵も爆発もなかったかのように、二人がさらに距離を詰めてきているのだ。

 

「くっ…。」

 

ここで抜かれるわけにはいかない。

後方では爆発音が連続している。

みんな追いついてきているのだ。

 

(すみません、相澤先生!もう1回無茶します!)

 

心の中で相澤に謝罪した後、金木は限界突破(オーバーフロー)を発動させる。

全身の筋繊維が悲鳴をあげる。

3km強の全力マラソンの後にこれは想像以上にきつい。

それでも、負けるわけにはいかない。

金木は地面に足跡がくっきりと残るほどに力を込めて加速する。

 

もう横に並ぶくらいまで追い上げていた轟と爆豪を置き去りにして、金木は再度単独トップに躍り出る。

そして、そのままの勢いで駆ける。

 

 

 突如、金木の後方から一際大きな爆発音が聞こえた。

爆豪だろうか?

ここにきて大技とは恐れ入る。

そんな予想をしながら、金木は後方を振り返ろうとした。

その金木の頭上を、爆風に乗った瓦礫が飛び越えていく。

そして、その瓦礫から飛び出た緑谷が前を走り出す。

呆気に取られた金木は、限界突破(オーバーフロー)を無意識に解いてしまっていた。

 

 

『序盤の展開から誰が予想できた!?』

『波乱に次ぐ波乱の第一種目!!!』

『今、一番にスタジアムへ還ってきたのは……』

 

『1年A組!!!緑谷出久!!!』

 

『そして僅差で金木!!轟!爆豪がゴール!!!』

『そして5位はーっ!?………ん?また金木?』

 

『…B組の渡我被身子だろ。』

 

 

 

 

 

 

 負けた。

荒れた呼吸を整えながら、金木は緑谷のもとへと歩いていく。

限界突破(オーバーフロー)の使い所をもっと考えていれば…

最後に驚いて発動を解いていなければ…

後悔は募るが、最後の最後に抜かれたのは結局自分の実力不足に他ならない。

 

「デク…すごかったね。やられたよ。」

 

「!!…いやいやカネキもすごかったよ!僕は運が良かっただけで……」

 

軽く握手を交わす二人を、轟と爆豪は悔しそうに睨む。

そして、そんな二人の背後から金木(・・)が現れて、金木に飛びついた。

 

「ワンツーフィニッシュできませんでしたァ!!!」

 

「えぇ!?……トガさん?」

 

飛び込んできた金木(・・)を受け止めながら、金木は困惑する。

渡我の姿が見えないと思っていたら、まさか自分の姿で走っていたとは…。

苦笑しつつ渡我の健闘を讃えようとした金木の胸の中で、金木(・・)はドロドロと溶けていく。

……デジャブを感じた。

 

「うわっ!トガさん、まだ解いちゃダメだよっ!!!」

 

個性『変身』を解いた素っ裸の渡我に、大慌てでジャージを脱いで被せる。

幸い観客の視線はゴールに注がれており、観客に見られることなく渡我の裸体をジャージが覆う。

…隣で顔を真っ赤に染めながら両腕を頭に巻き付けている緑谷以外には見られていないだろう。

 

「おお、ケンくんの香りがしますね。」

 

金木は少し笑いながら空を見上げて溜息をひとつついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく終了ね!それじゃあ結果をご覧なさい!」

 

1位 緑谷出久

2位 金木研

3位 轟焦凍

4位 爆豪勝己

5位 渡我被身子

……………………

41位 取陰切奈

42位 発目明

 

 

ビジョンに映し出された順位を改めて見る。

A組では青山くん以外は予選突破できたらしい。

 

「予選通過は上位42名!!!」

「次からが本戦よ!!キバリなさい!!」

「第二種目は〜〜〜〜………」

 

「騎馬戦!!!!」

 

 

ミッドナイトがビジョンに表示された文字を読みながら、大袈裟なポーズをとる。

 

「騎馬戦…?」

「個人競技じゃないけど、どうやるのかしら?」

 

「参加者は2〜4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!」

 

 

「基本は普通と同じ、1つだけ違うのが先程のレースの結果にしたがって各自にポイントが振り当てられること!与えられるポイントは下から5ずつ。42位が5ポイント、41位が10ポイント、といった具合ね。そして、1位に与えられるポイントは………1000万!!!

 

 

1000万。

10000000。

いっせんまん。

 

その数字が発表された瞬間、参加者の視線は一人に注がれる。

金木ですらもニコニコしながら緑谷を見る。

ポイントを奪い合うということは。

現在ポイントが高い者が狙われるわけで。

そう、つまりこれは…

 

「下克上サバイバルの騎馬戦よ!!!!!」

 




カネキとトガが入ったことで、青山くんと吹出くんにご退場いただきました。
本当は吹出くんではなく発目さんが41位なので、発目さん退場なんですが、そこはご都合主義ということで。すみません。
青山くん、吹出くん、ホンマすまんな。堪忍してや。
その他の面々は原作の順位+2位だと思ってください。
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