さっきカネキって奴が呼んでたよ。
「え…ケンくんがですか?」
ああ、あっちでキミのこと探してた。
「ホントですか、ありがとうございます!」
いいや。……こちらこそ。
先程の障害物レースの順位に応じて割り振られた手持ちのポイント。
第二種目の騎馬戦は、そのポイントの争奪戦となる。
騎馬戦の制限時間は15分。
各自が持ったポイントの合計が騎馬のポイントとなり、そのポイント数が表示されたハチマキを騎手が装着して、それを奪い合う。
組む相手によって騎馬自体の持ちポイントが変わるため、上位の者が組めば必然的に高ポイントとなるが、その分狙われやすくなる。
争奪戦である以上、ポイントは奪えばいいのだから、自分たちの初期ポイントが低くても、相手からポイントを奪いやすい組み合わせを組めばいい。
自分の個性と、先程まで蹴落とすべきライバルだった同級生たちの個性、それらを組み合わせてひとつの騎馬を作る。
簡単なようで、とてつもなく難しいことだ。
勝ち上がった42名は、A組とB組のヒーロー科に普通科1名、サポート科1名という内訳だが、そもそも同じヒーロー科であるA組とB組ですら、全くと言っていいほど交流がない。
そして、チームを組んで次に進めば、チームメイトはまたライバルになるのだから、対戦相手として自分が苦手な個性を持つ者はできるだけここで沈んでほしい、そんな思惑も生まれるのである。
それらの問題を理解した上で、自分は誰と組むべきか…。
・ハチマキは首から上に巻くこと。
・制限時間内ならばアウトにはならないこと。
・悪質な崩し目的での攻撃は一発退場になること。
・騎手は地面についてはならないこと。
など、細かいルールがミッドナイトから伝えられた後、15分間の交渉タイムが始まった。
(15分……短いな。)
(まずは……)
「ケンくんっ!!組みましょう!!」
誰と組むのがいいのか思案していた金木の腕に、渡我が抱きついてくる。
渡我とは何度も共にトレーニングをしてきただけに、連携はしやすい。
だから金木は元々渡我とは組むつもりでいた。
「うん、組もうか。」と微笑み、渡我が嬉しそうに飛び跳ねる。
そんな二人をA組の面々が囲う。
「金木、ウチと組もう!」
「カネキちゃん、組みましょ。」
「尻尾同士で連携しやすいと思うんだけど、どうかな?」
「金木くん、私も組みたい!」
耳郎さん…
梅雨ちゃん…
尾白くん…
…?…あ、葉隠さん…!
正直、この4人ならば誰と組んでも様々な戦法を考えられる。
最も良い組み合わせはどれか…。
そんな金木の一瞬の思考をまるで無視して、渡我が告げた。
「ダメです。ケンくんに近寄らないでください。」
(……えぇぇ。)
金木の中学時代の同級生だとは聞いているが、それ以外に情報がない少女に4人は気圧される。
「いや、あの……」と、尾白が口を開いたが、なおも目を細めて「や!ダメです」と連呼する渡我に、4人は困惑してしまう。
だが、一番困惑しているのは金木なのだ。
そして、そうこうしている間にも、時間は経つ。
制限時間のことを考えた4人は、金木が何か言う前に残念そうに他の相手をスカウトに行ってしまった。
「あ………。」
金木が突き出した右手を、風が撫でる。
もうあたたかい気候だというのに、肌寒さを感じた。
自分の周りではクラスメイトたちが続々とチームを結成している。
「渡我さん…僕たちも組む人を探さないと!」
「えぇー、2人じゃダメなんですかァ?」
「うん、やっぱり4人で騎馬を作った方がいいと思う。」
「じゃあ私のクラスの人誘いますか?呼んできます!」
言うが早いか、渡我はピューとどこかへ走り去ってしまう。
「あ………。」
またも金木が突き出した右手を、風が撫でる。
遅い。
渡我が走り去ってからもう数分経っている。
参加者は、まばらではあるがそこまで離れているわけではないのに、どこに行ったのか。
キョロキョロと辺りを見渡す金木に、後ろから声がかかった。
「カネキ、だったよな?」
「……えぇと。はい、金木です。」
「俺、B組の骨抜。…組まない?」
歯が剥き出しになった、強面の青年が頭を掻きながらそう言った。
骨抜、と名乗ったその青年には、どこか見覚えがあるような…。
金木が返事もせぬまま、そんな思考に陥っていると、骨抜は言葉を続けた。
「俺も推薦組でね。推薦の試験の時とさっきのレース、2回とも完敗だ。みんなクラスで固まってるみたいだけど、別クラスで組んでもいいんじゃね?」
なんて柔軟な思考…!!
あっ、そうか、推薦の試験の時に組み分けは違ったけど地面を沼みたいにしてた人……!
「ごめん、思い出した。…こちらこそ、よろしく!!」
金木が突き出した右手は、今度は骨抜によって強く握られ、クラスの枠を超えたチームがここに誕生した。
「カネキの個性は
「うん、僕の個性はその認識で間違い無いよ。」
「俺の個性は『柔化』。触れたものを柔らかくできるけど、生物には使えない。」
「…なるほど。……あっ!あと、ここにはいないんだけどトガさんが……。」
そう言いかけた金木の隣に、ザッと一人の男が立つ。
「A組のカネキ、だっけか?悪いけどそのトガさんは俺のチームに入るってさ。」
「…?」
声のした方を振り返ると、
そして、その後ろにはボーッとした表情で渡我が立っている。
「トガさん?」
金木の呼びかけにも応えず、渡我は心操の後について去っていく。
あまりにいつもと違う渡我の様子に、金木は困惑を隠せず、その後も何度か声を掛けるが返答はない。
(シカト……。僕、なんかしたかな…。)
姿が見えなくなった頃、頭を抱えて「えぇ……。」と呟く金木の肩に、骨抜がポンっと手を置く。
「あー、なんつうか。…御愁傷様?傷心のとこ悪ぃけど、そろそろ時間もねー。組む相手探そうぜ?」
優しさが沁みる。
渡我の翻意には少し、いや、だいぶ驚いたが、時間がないのも事実。
渡我が抜けたことで、現在、金木のチームは骨抜との2人だけ。
骨抜とのタッグをより強化するためのチームメイトを見つけなければならない。
だが、パッと見渡した限り、A組はほぼチームが出来上がっている。
「ごめん、ありがとう骨抜くん。……B組の中で防御力と遠距離攻撃に長けた個性の人、いるかな?」
冷静さを取り戻した金木は、骨抜と共にB組の生徒へのスカウトを開始する。
ヘイトを買っている現状、そして違うクラスの自分と組んでくれるのか。
そんな金木の不安を吹き飛ばすように、スカウトはすんなりと成功した。
B組の骨抜が一緒に声を掛けたことも理由の一つだが、そもそもB組は物間を除いて金木を敵対視していない。
選手宣誓でヘイトを買ったという認識が間違っているのだ。
なぜなら、B組の生徒は
……真面目に授業を受けていたかと思えば、次の瞬間には窓の外の雲を見てニヤニヤ。
……個性を使った戦闘訓練のはずなのに、体術のみで相手を圧倒。
……理由を聞くと「ケンくん以外の血は飲みたくありません!」と
……では不良かと思えば、B組担任のブラドキングの言うことには素直に従う。
などなど、渡我の奇行は枚挙に
では、渡我はB組で浮いているのかと言えばそうでもなく、クラス委員長である
まぁそんなわけで、金木に対する先入観などはなく、骨抜とともに新たにB組の生徒2人をスカウトすることに成功した。
「……よし、急造チームだけど、僕らの個性ならたぶん誰も
『さぁ起きろイレイザー!15分のチーム決めタイムを経てフィールドに12組の騎馬が並び立った!!!』
『さぁ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!』
フィールドにプレゼント・マイクの声が響く。
そして、12組の騎馬が出揃った。
それぞれの騎手が、総ポイント数が書かれたハチマキを額に巻く。
「緑谷チーム」(10000300ポイント)
緑谷10000000・麗日125・発目5・常闇170
「爆豪チーム」(630ポイント)
爆豪195・切島160・瀬呂165・芦戸110
「金木チーム」(625ポイント)
金木205・塩崎185・骨抜180・黒色55
「轟チーム」(580ポイント)
轟200・上鳴85・八百万120・飯田175
「心操チーム」(450ポイント)
心操70・尾白150・庄田40・渡我190
「峰田チーム」(390ポイント)
障子135・峰田115・蛙吹140
「葉隠チーム」(350ポイント)
耳郎100・口田105・砂糖130・葉隠15
「鉄哲チーム」(330ポイント)
鉄哲155・泡瀬145・鎌切30
「物間チーム」(230ポイント)
物間25・円場90・回原95・角取20
「拳藤チーム」(185ポイント)
拳藤65・小森35・取陰10・柳75
「小大チーム」(130ポイント)
小大50・凡戸80
「
鱗45・宍田60
『3…2…1…』
『スタート!!!!』
後に、この試合を切っ掛けに金木は
そんな金木の運命を決める第二種目の騎馬戦が今、始まった。
いや、始まらんのかーい!!
雄英体育祭編はトガちゃんたちと絡ませられるので書いてて楽しい。
B組の人たちの口調や特徴に違和感あったらすみません。
あと何回も計算し直したんですが、ポイント間違ってたらすみません。