プリンセス・アート・オンラインRe:Dive   作:日名森青戸

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息抜きがてら、こんなのを作ってみました。
11月6日記念。SAOコラボを秘かに期待してたのにまさかのタイバニに裏切られたので自作しました。

※注意点

1.本編の設定とは全く関係ありません。
2.この話はSAOvsAWのサイドエピソード「最愛」の流れに沿ったものです。
3.つまりSAO側はゲーム版の設定となっています。プリコネ側は原作版(時間的に第2部13章辺り)です。
4.ムイミが激怒します。

それらが全てOKな方は本編をお楽しみください。




【番外編】こうあってほしかったプリコネ×SAO:前編

 

砂漠のど真ん中でムイミは一人佇んでいた。

 

「……」

 

彼女自身、どうしてここに居るか分からなかった。

来るべき決戦を前にセントールスで【自警団】の面々と策を練って、仮眠をしたところまでは覚えている。気が付けばこの場所に立っていた。

 

「……どう、なってんだ?」

 

混乱しそうになる状況だったが、冷静に自分の事を振り返る。

 

あたしはムイミ。歳は16。覇瞳皇帝との戦いでおかしくなった【レジェンドオブアストルム】にダイブした超能力者。

紆余曲折を経て真の黒幕がエリスであることを知り、一時撤退したあたし達はセントルースで【自警団】と一緒にエリスへの対抗手段を考えていた。

 

――大丈夫だ、問題ない。

 

「――いや大問題だろ!?」

 

思わず叫んでしまった。そりゃそうだ、寝入ったらこんな場所に飛ばされてたなんてありえない。【美食殿】の3人とユウキが出会った【ニュージェネレーションズ】や異世界の人間と一緒に戦ったりご飯を食べた事を聞かされたことはあったが、自分が迷い込む側になるなんて思わなかった。

 

(つーか、なんで天楼覇断剣を出してるんだ?)

 

更に不可解なことに、背には普段異空間ポケットに収納している天楼覇断剣(レプリカ)を装備している。

 

(とにかく、帰る方法を探さないと!このままこっちに取り残されるのは色々ヤバい!)

 

急いで脱出の手段を考えなければ、決戦に遅刻とか笑い話にもならない。いや、それ以前に帰れるかどうかも分からない。

 

「――うわあああああぁぁぁッ!!!」

 

その時、つんざくような悲鳴が響く。

聞きなれたその悲鳴に、直感的に悲鳴のする方へと駆け出した。

 

 

 

 

「けほっ、けほっ……イオさん、無事かい?」

 

「な、何とか……!」

 

吹き飛ばされたイオとカスミ。その正面には5体ものトカゲ人間が武器を手にじりじりと2人に迫ってくる。

 

(この魔物たち、私の知ってるリザードマンと全く違う!それに、私達の魔法も効き辛くなっている!)

 

出会い頭に魔物と出会い、退避しようとカスミが拘束系の魔法を発動。しかし、いともたやすくその魔法を破ってしまったのだ。

次第に距離を詰めるリザードマンの群れに、割って入るようにイオが剣を構える。

 

「イオさん!?」

 

「カスミちゃんはやらせないわ!」

 

「ダメだ、危険すぎる!」

 

正直、イオの剣術は同僚のマコトと比べれば児戯も同然。眼前の魔物に太刀打ちできるはずがない。

それでもイオの決意は固く、自分の説得程度で折れないのも理解していた。

 

「ギャオオォォッ!!!」

 

「たああああッ!!!!」

 

リザードマンが咆哮と共に槍を構えて襲い掛かる。イオも剣を下段にして構え、迎え撃つ――。その時だった。

 

「――えっ?」

 

一歩踏み込んだ途端、身体がまるで操られたかのように意志に反して身をよじる。刹那、リザードマンの剣がイオに当たる直前に横薙ぎに一閃。リザードマンの胴体を真一文字に両断し、他のリザードマンも吹き飛ばした。

 

「……うそん」

 

「え?ええっ!?なにっ!?今何が起きたの!?」

 

イオ自身何が起きたのか意味が分からなかった。困惑する中、討ち洩らしたリザードマンが駆け出した。

 

「やば――」

 

「うらぁ!!」

 

その時、横からムイミが天楼覇断剣で的確にリザードマンを両断する。直後にその姿がブレたと思ったら、ポリゴンとなって消滅した。

 

「――今のは?」

 

「ノウェムちゃん!君もここに来てたのね!」

 

「まあな。知った顔の奴がいて、正直助かった」

 

「ありがとうノウェムちゃん。また助けられちゃったわね」

 

「よっ、余計な礼はいらねぇよ!あたしはただ、聞いた事ある声がしたから、あたしの知り合いでもいるんじゃないかって思っただけだ!んな事より!」

 

「ああ、わかってるさ。どうやらこの状況、私とイオさん、ノウェムさんが何かしら異常事態に巻き込まれた、といった所だろうね」

 

照れ隠しするムイミを他所に、カスミは冷静に自分達の現状を整理する。

ムイミにも自分達の事情を説明すると、どうやら彼女らも寝入って目を覚ました時にここにいたらしい。

 

「……ノウェムちゃん、カスミちゃん。これからどうするの?」

 

「そうだね……できれば現地の人に会いたい。ここがどこなのか、最近何が起きたのか。それらを聞くだけでも十分元の世界に戻る為の糸口になりそうだ」

 

「……ところで、一つ良いかしら?」

 

その時、やんわりとイオが横やりを入れた。

 

「なんだかこの地面、沈んでない?」

 

「は?」

 

「え?――ああ、違うよ。これは地面が沈んでるんじゃなくて私達が……流砂に呑まれてるんだああああああああああああああ!!!!」

 

最後の方が絶叫になった時には既に3人とも流砂から逃げようと駆けていた。いや、単なる流砂ではない。自分達の周囲10メートルの地面がすり鉢状にへこみ始めている。

更にそのへこみの中心部から、何かが飛び出した。

 

「ギャオオォォォ!!」

 

「アリジゴクだああああああああ!!!」

 

「よりによってアリジゴクの真上で戦ってたの私達!?」

 

「いいから走れぇ!!走らないとアイツに食われて死ぬぞ!!」

 

全速力で駆ける3人だが、まるで嘲笑うかのようにどんどんアリジゴクに引きずりこまれていく。

 

「もう無理!引きずり込まれるぅ!死ぬ!死んじゃうぅぅぅぅ!!」

 

「死にたくなかったら死ぬ気で――いや、飛ぶ気で走れぇぇぇぇぇ!!!!」

 

ムイミの叫びに2人も雄叫びと共に限界を超えんばかりに走る。その甲斐あってか徐々にアリジゴクの中心から離れていく。

次の瞬間、3人はアリジゴクから飛び出した。

 

「――え?」

 

急に体が宙に浮いた感覚を感じて、カスミは我に返った。

頭上には後代に広がる砂漠。そして眼下には果てしない蒼穹と点在する雲。

 

「は?え?えええええぇぇぇ!?」

 

「私達、空を飛んでるの!?え?魔法も抜きで!?」

 

「どうなってるんだ、この世界はぁ!?」

 

次々起こる不可解な現象に頭を抱えるムイミ。頭を振って無理矢理落ち着かせると、カスミがいないことに気付いた。

 

「って、カスミは?」

 

「え?一緒にいたんじゃ……?まさか、あのアリジゴクに!?」

 

慌ててアリジゴクの場所を見ようとしても、既に肉眼では確認できないほどに遠く離れてしまっていた。何とか移動できないかもがいて見せるが、手足が空を掻くばかりでふよふよ宙を浮くだけだ。

 

「おーい!」

 

「この声は……カスミ!どこだ!?」

 

「こっちだよー!」

 

その時、別の方角からカスミの声がした。必死に手足を動かして探すと、崖の上で手を振っているカスミを発見する。

とりあえずアリジゴクに食われたという、最悪の結末ではなくて本当に良かった。そう胸を撫で下ろしたのも束の間、彼女の傍にあるものを見て絶句した。

 

「「……え?」」

 

それは、逆シャチホコの要領で身体を「く」の字に曲げて動かなくなっている猫耳の獣人族だった。

 

 

 

 

「お~い……」

 

「なんだ、随分と早かった――って、どうしたんだ?」

 

「いや、なんか迷子らしくてナ……」

 

その後、獣人――アルゴの案内によってアルンと呼ばれる街までやってきた3人。

満身創痍を現したような声を上げる彼女に、黒髪の少年が目を丸くしながら3人とアルゴを交互に見る。その隣にいた水色の髪の少女が3人に訊ねてきた。

 

「アルゴさん、この3人はひょっとしてアシスタントか何かですか?」

 

「さっきも言った通り迷子らしいんダヨ、アーチャン。大体、出会い頭に空中タックルをかました後、スクリューパイルドライバーを決める奴をアシスタントにできるカ」

 

「……おい」

 

少年冷めきった視線が方々からカスミの身体を貫く。

 

「し、仕方ないだろう!?本当に飛べるとは思わなかったし、空中の制御なんてやったこと無かったんだから!――いや、それでもスクリューパイルドライバーは無いか。アルゴさん、本当に申し訳なかった」

 

「いいヨいいヨ。しかし変わったビギナーダナ。飛び方も知らないなんテ。そういや3人とも、名前はまだだったナ。なんて言うんダ?」

 

「ああ。私は――」

 

その時、不意にカスミが言葉を止めた。不思議そうに首を傾げる2人が声を掛けるより早く、カスミが2人をアルゴ達から引き離した。

 

「お、おい。どうしたんだよ?」

 

「急にゴメン。でも、一つ思うところがあるんだ。ここは私達の知らない世界。自分の名前をおおっぴろげにするのはどうかと思ってね」

 

「確かに本名がバレでもしたら後々面倒だな。あたしはカスミの案に賛成だ」

 

イオからも特に反対意見は無く、改めて少年たちに振り返る。

 

「さっきは申し訳ない。改めて私はキーリ。探偵だ」

 

「あたしはムイミだ!んで、こっちの色々デカいのが……」

 

「初めまして。私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「センセーと呼んでください。さん、はいりません」

 

「「ズゴーッ!!!」」

 

真顔で名乗ったイオにカスミもムイミも思いっきりずっこけた。いや、確かに偽名を使えとは言ったが……。

 

「随分変わった名前だな……まあいいや。俺はキリト。彼女がアスナで、スクリューパイルドライバーを食らったのが情報屋のアルゴ」

 

「オイ」

 

若干引き気味の少年、キリトが改めて自己紹介をすると、部屋の中にいたメンバーを紹介する。

 

大柄な体格の商人のエギル。

バンダナに和鎧姿のクライン。

竜使いシリカと、その相棒のピナ。

鍛冶師リズベット。

キリトの妹のリーファ。

猫妖精の狙撃手シノン。

キリトとアスナの娘のユイと、立場上その妹ストレア。

【スリーピングナイツ】に所属し、絶剣と呼ばれる凄腕の剣士ユウキ。

 

因みにカスミとムイミはユイとユウキがいると聞いて【トゥインクルウィッシュ】のユイとプリンセスナイトのユウキと勘違いしたのを記載する。

 

「それにしても、なんでアルゴさんはあの場所にいたんですか?」

 

「ああ。こいつらの依頼でアルフの事を調べた帰りダヨ」

 

「帰り?もう終わったの?」

 

イオの問いにアルゴは「まぁナ」と頷いた。

光妖精アルフは、この世界の妖精の上の存在だったが、未だその姿は誰にも見せなかったという。そんな中、妖精王オベイロンが自らの妾を探しているという噂を耳にした。キリトはアルゴに調査を依頼したのだが、なんでも自己主張が激しくすぐに見つかったらしい。その帰りにカスミ達と遭遇した、と言うことだ。

その様子を聞いてユウキは思い出したように声を上げた。

 

「そういや姉ちゃんたちと一緒にボクも行ったけど……いきなり触ろうとしてきたから剣で斬りかかったら逆ギレされて追い出されちゃった。流石にみんなもう一度受けようって気にもならないって」

 

「恐ろしく自己主張の激しい人だね……それで他に何か言ってなかったんですか?」

 

「そういやこんなことも言ってたナ。――我が守護者はどこだ。人間と獣、悪魔の世界より召喚した守護者はどこだ、って」

 

「人と獣と悪魔……なるほど」

 

カスミはすぐに気が付き、すぐにキリトに話しかける。

 

「私達も同行して構わないだろうか?」

 

「本気?魔法も飛び方も、ましてソードスキルも知らないルーキーが行くには危険すぎるよ」

 

「心配するな!あたしが守ってやるよ!この天楼覇断剣でな!」

 

自信満々にムイミが剣を掲げる。小柄な体格のせいで頼りなさが拭えないが。

 

 

 

 

その後、紆余曲折を経てアルゴの案内の元、オベイロが目撃されたと言われるダンジョンへと乗り込む一行。

 

「リズベットさん、エギルさん、ありがとうございます。私達の装備を用意してくれて」

 

「気にしなくていいわよ。約1名、あんな格好をさせるわけにはいかないからね」

 

「「……あー、確かに」」

 

「どうかしたの?」

 

首を傾げたイオの衣装も変わっていた。

普段の煽情的な衣装から一転。リーファに似た意匠の服を着ている。リズ曰くあんなんじゃ街の中でも狙われる、だそうだ。そしてイオ自身は「そんなに狙われてる?」と本気で自覚が無いようなリアクションを返された。

 

「正直金属装備で固めれば良かったんだけど、剣の重さとか、身体のサイズとか色々あって没にしたんだけどね」

 

「だろうな」

 

「……」

 

「ん、アスナ?どうかしたのか?なんか表情が暗いぞ?」

 

「え、えと……確証は無いんだけど……なんか変な感じがするんだ……」

 

このダンジョンの入り口に来てから顔色が悪いアスナが、口ごもりながら切り出した。

どうにも彼女、このダンジョンに来てから「怖い夢を見る直前の気持ち悪さ」とか「嫌いな食べ物を前にした感覚」に似た嫌な感じが纏わりついているらしい。

キリトもアスナを気遣って「行くのを止めようか」と尋ねたが、そこは気丈に「大丈夫、きっと気のせい」と返した。

 

「よっし、じゃあ突入するぞ!」

 

 

 

 

ダンジョンの中はひらけた廃墟と化した神殿を思わせる場所だった。外周に浮遊する岩塊や石柱がカスミ達の世界には無い幻想的な風景を作り上げているが、そんなものに目をくれてやる暇は3人には無かった。

この世界での魔法や、飛翔を交えた立体的な戦術、更には連携してのソードスキルと、彼らの戦い方は【自警団】に身を置くカスミすら舌を巻くほどだった。同僚のマコトや、【王宮騎士団】団長のジュンが見てもきっと自分と同じようなリアクションをするだろうと言うのはカスミの想像だ。

しかしムイミも触発されたのか、全身鎧の羽の生えた兵士を相手に次々と倒していく。

 

「それにしても変わった人達ね。のうぇ――ムイミちゃんに斬られて血の一つも流れないなんて……」

 

介抱しようと触れた途端、斬られた妖精の兵士の身体がブレたと思うと、ポリゴンとなって消滅した。

 

「きゃっ!?き、消えた……!?」

 

「――やはりそうか」

 

驚くイオに対し、カスミは前々から確信していたように呟く。

 

「カスミちゃん?」

 

「センセー、そっちの名前は今は比較的使わないほうが良い。それと、一つ分かったことがある。ムイミさんにも聞いてほしいんだ」

 

カスミの真剣な表情にイオも僅かに圧倒される。それから戦闘を終えたムイミを連れ、一行から少し離れた場所に集まる。

 

「で、何だよ話って?」

 

「ムイミさん、あなたはあの時言っていたよね?私達はエリスの手によってゲームの世界に閉じ込められているって」

 

「げ、ゲームの?キーリちゃん、それってどういう……?」

 

「申し訳ないがそこを説明する暇は無いんだ。もしかしたら最悪、ずっとこっちに残ってしまう可能性があるかもしれない……」

 

カスミの深刻な一言に思わず耳を疑った。

 

「これは私の仮説だが……おそらく、ここはアストルムという世界とは別のゲームの世界だ」

 

「なんだって!?」

 

「実はさっき、魔物が消えたのを私はセンセーの時にも見たことがあるんだ。私達の世界じゃ魔物はあんな風には消えない。もし向こうでも同じルールがあるのだったら、今頃ランドソルは深刻な食糧不足で滅亡しているよ」

 

「王女様も魔物を食べるって言ってたけど、もしこっちみたいなことになったらひっくり返りそうね……」

 

【美食殿】ギルドマスター、ペコリーヌ。ランドソルの女王としての正体もあるが、美食を求めると言うギルド活動を始める時よりもずっと前に城を出て見聞を広めていた旅の際には、自ら狩った魔物を使った料理を食していたので魔物を食すことになんら抵抗は無い。仮に魔物も動物も、今の妖精兵士のように消えてしまうのであったら個人的に最もダメージが大きいのは彼女だろう。食べる為に倒した魔物が消えてしまっては何のために倒したのか分からないのだから。

3人の脳裏に涙目で消えてしまった佇む王女の姿が安易に

 

「ムイミさんに聞きたい。この状況、解決できたと思っているのかどうか」

 

「……はっきり言って、ノーだ。閉じ込められた世界が変わっただけに過ぎない。根本的な解決とは言えないな」

 

「ならなおさら彼らの言う妖精王に会うべきだ。彼が召喚したという守護者、恐らく私達のことだろうし」

 

「そうなのか?」

 

「さっきアルゴさんが言っていただろ?人間と獣と悪魔を召喚したって。魔族のセンセー、人間のムイミさん。そして獣の私。偶然にしては出来過ぎている。妖精王が一枚嚙んでいるとみて間違いないだろう」

 

鋭い指摘にムイミも納得する。ここまで偶然が重なれば、もう偶然とは呼べないだろう。

そのオベイロンとやらが自分達がこの世界に連れてこられた原因ならば、彼から帰る方法を聞きださなければならない。

その時、ダンジョンの奥から数人のエルフが逃げるように飛び出してきた。

 

「もう何なの、アイツ!何が妖精王よ!只の変態じゃない!」

 

「あの、何かあったんですか?」

 

「え?あなた達ひょっとして、この奥に行くつもりなの?」

 

「はい、そのつもりですけど」

 

「冗談じゃない、やめときなさい!あたし達、変な奴に追いかけられて急いで逃げてきたのよ!自分は妖精王だ、とかなんとか喚いてニタニタ笑いながら、こっちの身体触ってくるのよ!NPCなのにキモ過ぎるよぉ!」

 

どうやら先客らしいが、3人とも三者三様で顔を青くしている。こちらの想像を絶するような目に遭ったのか、僅かに身体も震えている。

そのまま逃げだした3人の後ろ姿が見えなくなるまで見送ったイオは、顔を引きつらせて彼女らが逃げ出した最奥を見る。

 

「……なんだろう。センセー、絶対に行くなって頭の中でガンガン鐘が鳴ってきたんだけど……」

 

「……諦めてください。どのみち奴に会わなければ帰れないかもしれないんだから……」

 

「……悪党なら大人しく腹を括れって奴だ」

 

げんなりした様子のカスミとムイミも腹を括ったのか、気丈に振る舞うアスナと共に向かうキリト達の後を追って最奥へと足を進めるのであった。

 

 

 

 

最深部の印象は広い、何かの儀式をするような魔法陣以外何もない部屋だった。ダンジョンの入り口辺りの雰囲気はすっかり失せ、地下の大部屋か何かのようにな印象も与えている。そしてキリト達から見て奥の壁には淡い光を放つ紋章が浮かんでいる。

 

「ふふっ……くくっ……」

 

その中心に誰かいた。

その人物は、はっきり言って悪趣味だった。長い金髪に金糸で編み込まれた刺繍が施された白い服に、それを覆う濃緑色のローブ。蝶を思わせる薄い翅。きりっとした顔立ちは普段なら美形ではあるだろうが、ニタニタした薄気味悪い笑みが全てを台無しにしている。

 

「……えと、あなたがオベイロン、さん?」

 

恐る恐るエギルが悪趣味男に声を掛ける。

一応編成としてはエギル、キリト、クラインが最前線。

その後ろにリズとムイミとユウキ、ストレア。中衛のシリカ、カスミ、リーファにアルゴ。

後衛がアスナとイオそしてシノンとなている。

ユイは流石に近付け過ぎないようにとキリトが前もって彼女をアスナの元に移らせたからだ。

エギルに気付いたのか、悪趣味男はくつくつと笑いながら誇示するように叫んだ。

 

「そう!この私が幾多の妖精種族の頂点に立ち、このアルヴヘイムの大地を統べる者!オ~~~ベイロン!!」

 

大きく背を逸らした後ぐわりとこちらに向けて叫ぶ悪趣味男。どうやらアルゴの話は本当だったらしい。いや、想像以上に自己顕示欲が凄まじい。

 

「うわぁ……うわぁ……」

 

「これは……想像以上だ……」

 

「……」

 

「さ、3人とも大丈夫ですか?」

 

今の自己顕示欲まみれの名乗りに正直女性陣は大ダメージだった。特にこの3人は想像の遥上を行くキモさで言葉を失っている。

 

「ん?――おぉ!そ、そなたは……!」

 

「えっ?わ、私……見られてる?」

 

そんな中、オベイロンがアスナを見て仰天する。

 

「そなたはティターニアではないか!ようやく見つけた!」

 

「アスナの事でなんか喚いてる?僕らが来た時には手を出そうとしただけなのに」

 

「なんだ、貴様ら!その娘は、我が妃の筆頭候補ティターニアだ!気安く近づくな!」

 

アスナを見てティターニアと喚きだすオベイロン。

 

「さぁさぁティターニア。再会を祝おうではないか。毎年毎年、身体を重ねた夜を忘れたとは言わせないぞ?」

 

「い、いやっ!近づかないで!」

 

「何を申すか。私とそなたの仲ではないか。今日は私とお前の中のちょうど50年目。素晴らしきこの日に、じっくりと私と言う存在を、これからそなたの身体に刻み――」

 

顔と指の動きがもう既に変質者のそれである。

だが、言い切る前にそのニタニタ顔が衝撃波に呑まれた。一瞬遅れて爆発音が無人の部屋に響きわたる。

その光景に何が起きたのか、誰もついてこれなかった。

ゆっくりとスローモーションな動きで男性陣が振り返る。

 

「……」

 

「む、ムイミ……?」

 

「……キリト、一つ良いか?」

 

表情が室内の蔭りで見えなかったが、カスミとイオからは普段の彼女からは感じられない何かを感じて戦慄する。

――静かすぎるのだ。

いつもハツラツなエネルギーを放つ彼女とは大違いだ。まるで水を打ったようにしんと静かに黙り込んでいる。

 

「アレ、中身は無いんだよな?」

 

「中身?アバターの事か?……多分、中身はAIが組み込まれたNPCだと思う。それに、この世界なら例え中身があっても実際の肉体への影響は限りなく0だ。殺っても問題ない」

 

「そっか……じゃあ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベツニコロシテモカマワナイヨネ?」

 

「「とんでもない殺気だー!?」」

 

思わずリズとカスミが叫ぶ。

オーラが視認できるのであれば、今のムイミからはオベイロンに対するどす黒い殺意が噴き出しているだろう。

 

「な、なにをする!?――ん?貴様、私が召喚した守護者ではないか!王に、支配者たる我に逆らうのか!?」

 

「じゃかましぃ!!!誰がテメェなんぞに召喚されるかァ!!!大体そんな聞き馴染んだ声でキモイことをべらべらべらべらと、耳障りなんだよ!!あと顔もキモイ!!」

 

まるで火山の噴火の如くブチギレたムイミの怒号に、味方であるはずのキリト達が圧倒される。

 

「うわぁ……」

 

「な、何あの子?いきなりNPC相手にブチギレて……」

 

「あー……。きっとムイミさん、オクトーさんと声が似てるアレを許せないみたいだね」

 

「んで、そのオクトーって奴とどういう関係な訳?あの子」

 

「彼女曰く、相棒らしい。さっきは余りのキモさに気付かなかったが、聞けば聞くほどオクトー先輩にそっくりだ。多分彼がそんなキモイ行動をしてると思って、我慢ならなかったんだろう」

 

「うおぉい!!守護者共ぉ!!早くこの暴走した小娘を止めろぉ!!」

 

カスミが困惑するリズベットやシノンに事情を説明し終えた途端、オベイロンが金切り声で助けを求めてくる。

 

「……悪いが私達も彼女も、あなたの守護者ではない。止めるつもりは毛頭ない」

 

「な、なにッ!?貴様も逆らうのか!?召喚の魔石で呼び出した者は召喚した者に絶対服従をするはずではないのか!?」

 

オベイロンが何か喚ていることをカスミは聞き逃さなかった。

 

「……それが私達をこの世界に呼んだ原因か。ムイミさん!奴から魔石を奪い取るんだ!それを使えば帰れるかもしれない!!」

 

「任せとけェ!!!塵も残さず消し飛ばした後で、ゆっくり奪ってやるよォ!!!」

 

「いや、できれば倒す前に奪ってくれ!」

 

「おのれおのれおのれぇぇぇぇぇぇぇ!!!どいつもこいつも僕をコケにしやがってええええええぇぇぇ!!!」

 

ヒステリックな金切り声に呼応するかのように、妖精兵士が次々と現れる。オベイロンにHPバーが現れる。

 

「!戦闘準備!アスナはなるべく離れてろ!」

 

察したキリトが声を上げ、各々が武器を構える。

 

 

「ははははは!このオベイロン様の下に跪け!低俗なる妖精たちよ!裏切り者の愚鈍な召喚者たちよ!」

 

 

今ここに、妖精の剣士たちと、妖精王の戦闘が始まる。

 

 






(・大・)<キリが良いのでここまで。

(・大・)<SAO10周年、おめでとう!
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