プリンセス・アート・オンラインRe:Dive   作:日名森青戸

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(・大・)<プリコネ3・5周年生放送見てきました。

(・大・)<レギオン・ウォー、アイテム交換、新イベ……。

(・大・)<いろいろあった。(脳死)

(・大・)<――って訳で更新です。


※8/24:加筆修正しました。


「棺は嗤う」

 

昨日の一件の後、ノゾミは《始まりの街》周辺のフィールドにやってきた。モンスターが少ない開けた場所で、手に入れた《連刃剣舞》の練習だ。

 

(《連刃》は、2つから3つの剣舞系曲刀ソードスキルを繋げることができるとはいえ、クールタイムの合計を受ける。まずは1回だけ試してみましょうか)

 

刀身に紅い光を纏わせ、4方向に描いた弧が円を作る4連撃剣舞《ダルード・ルーネイト》を放ち、続けて三日月のような剣閃を2回描く《ダブルムーン》。を放つ。ここまでは普通の曲刀スキルだ。

合計クールタイムを使い切り――――再び動けるようになると今度は《連刃剣舞》を設定して再度ソードスキルを組み込む。

 

(これの違いは覚えている曲刀ソードスキルならどれでも連結が可能。ただし突進系は最初のみ、または突進系の次に1回だけ連結可能。……見た感じ実感は無いんだよね)

 

それでも物は試しと、再び刀身に光を纏わせた。基本技の一つである《サーブ》から始まり、流れるように《セレノ・グラフィー》。更にもう一度《ダブルムーン》。

踊るような斬撃の後、クールタイムが発生―終了。

 

(硬直が短くなっている。繋げられるスキルに制限は無いから、使いどころは多いわね)

 

初期ソードスキルを絡めたとはいえすぐに終了したクールタイムに初めて実感が湧いてくる。

同時に、欠点――というか、別の感想も浮かんだ。

 

「相当なじゃじゃ馬ね。このスキル」

 

思わず口に出てしまった。

この《連刃剣舞》は、TCGで言えば手札を多く維持しつつ戦線を維持、相手の陣形が崩れた所を一斉攻撃するというものだ。

手札が多ければ戦略の幅が広がり、同時に戦略の組み立てが必要となる。

要するに、相当な場数を踏まなければ真にマスターできないというスキルであるということだ。

 

「……あ、そろそろアルゴさんが来る時間ね」

 

視界の片隅に映る時刻は既に8時を回っていた。あと30分もすれば昨日の事を調べてほしいと呼んだアルゴが来る時間になる。

実験もそこそこに、ノゾミは踵を返して《始まりの街》へと戻っていった。

 

 

 

 

「なるほど。随分面白いスキルを手に入れたもんだナ、ノゾちゃん」

 

《始まりの街》に戻った時には、既にアルゴがギルドホームで紅茶(らしきもの)を啜っていた。

彼女がここに来た理由は、昨日ノゾミが手に入れた《連刃剣舞》の情報掲示と、【十戒の寺院】に関するクエストの存在についてだった。

あらかたノゾミからの説明を受け、アルゴは納得したように頷いた。

 

「確かにこれはソロだと鬼畜だナ。パーティでも対応可能って点からも、製作者の性格の悪さが見て取れるヨ」

 

「あはは……でもこれでこのクエストに関する死人は減らせるんですよね?」

 

「ま、ゼロになるってのは大げさだけど、初見殺しへの対応にはなったヨ。初見殺しってのは、事前情報が無い時ほどデカい驚異になるからナ。自信が無いなら最初から参加しないのも手だヨ」

 

「それで、あの寺院はどうなんですか?」

 

「そっちに関してはまだまだ謎だらけって感じダ。いきなり現れたクエストに関係しているのは確かだし、それらの所得条件らしきものが書いてある文字も扉の隣に見つかっタ。けど、どれもこれもまっとうな条件じゃ無いんだよナ」

 

「条件?」

 

「1回の戦闘で短槍か長槍を5回以上換装しろとか、鞭と両手槌の熟練度カンストしたうえで、とんでもない重量の扉を開くとか、視界に入った同格以上の敵を10秒以内に葬るとかナ」

 

さらっととんでもない内容に思わず顔を蒼くする。

特に最初と最後はソロだろうとパーティだろうと到底クリア不可能な無理難題レベルに思わず絶句する。

 

「いずれは話す時が来るかもしれないケド、今はそのスキルの熟練度を高める事ダ。いずれ実戦で使うことになるかもしれないからナ」

 

残った紅茶を一気に飲み干し、自分の仕事へと戻るアルゴ。

去り際のその言葉はいかにもな雰囲気を残し、ノゾミに一抹の不安を覚えさせた。

 

 

 

 

アルゴに情報を渡して、早いものでもう2ヶ月が過ぎた。

アルゴのアドバイスでノゾミは《連刃剣舞》を中心に熟練度とレベルを上げ、【ゴスペル・メルクリウス】のメンバーも治政の合間に着実にレベルを上げて行った。

住民達の大半はせいぜい第1層の安全マージンまでレベルアップしたものの、安全第一を目安に主街区からほど近い場所での狩りを続けている。

そんなある日の事。レインとマコトは19層に来ていた。

 

「確か、この層で手に入れられる花に用があるんだったな?」

 

「うん。ポーションの調合素材にすると回復速度が上昇するのよ。これから先、多用するからストックが欲しくてね」

 

この19層は霧が濃く不気味な雰囲気を持つが、ここにしか生えない薬草系の素材は最下級の薬草と調合すれば10層クラスにしては50層から60層半ばでも活用できるポーションやバフ薬を作ることができる。それより上に行ったとなるとお役御免だが、長い時期使用されるアイテムがあるなら最前線の商品としては十分だ。

難点としては、霧のかかった小高い丘にしか生えないという事。日付が変われば再び採取できるが、この地域ではマップ抜きでは迷いやすく、モンスターの群れに自分から足を突っ込むことになりかねない。レインもマコトもマップを持っている為その心配は無いが、万に一つの可能性もある。

早速小高い丘を目指し得て歩き出したが、10分後には深い霧に包まれ、前も後ろも分からなくなる。

 

「うへぇ、凄い霧だな。レイン、離れるなよ?」

 

マコトが声を上げるが、レインからの返答はない。

 

「……ん?レイン、どうした?レイン?」

 

周囲を見渡してみると、レインの姿が見えない。他に見えるのは1メートル弱周囲の地面と、僅かに影として認識できる岩や木の影。

それを知った途端、マコトは青ざめた。

ひょっとして、これは……?

 

「……はぐれた?」

 

 

 

 

「うん。大体こんなもんかな」

 

大方の素材収集を終えたレインはそそくさと戻ろうとしていた。日付が変わればまた採取できるのだが、レインは――ひいては彼女の知るポーション生産を主力にしている職人プレイヤーは丸ごと搾取しようとは思っていない。

SAOにおいて「プレイヤーのHPを故意にゼロにしてはならない」という不文律が攻略組にもあるように、職人プレイヤー達にも「再び採取可能な素材でも必要以上に搾取してはならない」という不文律を持っている。職人プレイヤーは自分だけではない。自分以外のその人が困らないためにも、自分以外に知らないスポットだったとしてもいくつかは残しておくのがいつの間にか不文律になっていった。

 

「ほぅ、この時期に呑気に採取をするプレイヤーが居るとはな」

 

帰ろうとした矢先、白い制服を着たプレイヤーの集団に鉢合わせた。その数は彼女を含めて13人と、この層にしてはかなり大げさな人数である。

声を掛けたのは20代前半の金髪の女性。顔つきもレイン視点で美人に該当すると同時に滲み出る威圧感に若干押され気味だ。

白と赤をベースにした服に、マントのような白い肩掛けという組み合わせで、獲物は両刃の両手剣。

 

「貴女……確か【血盟騎士団】の副団長さんの、クリスティーナさん?副団長自らこんな所で何をしてるんですか?」

 

「ははっ、自分の状況を見ずに私の状況を尋ねるか。たった1人でこんな辺鄙な場所をうろついているとは大した度胸だよ」

 

「……え?」

 

クリスティーナから聞き捨てならない台詞を聞き、ようやくレインは血の気が引く思いをした。

急いで周囲を見渡すと、肝心のマコトの姿が無い。

そこで彼女もようやく気が付いたのだ。

 

「……はぐれちゃったみたいです」

 

「護衛が遭難するとは大した奴だな。各員、2人1組で19層全体を捜索。ダンジョンにも潜んでいる可能性がある。フレンド機能の光点による現在地の把握と報告を忘れるな」

 

クリスティーナの指示の直後、連れていたプレイヤー達は2人1組になって散開。

一人残ったクリスティーナは、今だ顔を蒼くしているレインに事情を説明しだした。

 

「最近、この層を中心にプレイヤーの死亡が確認されてな。確認してみた所、大半がどうもモンスターや罠によるものではないらしい」

 

「な、なんでわかるんですか?確かに【生命の碑】には死亡原因や武器が書かれますけど、誰が原因なんて……」

 

「この層で武器を使うのはフロアボスのみだ。状態異常を持つモンスターも19層(ここ)にはいない。存在しないはずの武器を持つモンスターと、状態異常。ここまで揃えば嫌でも解るだろう」

 

存在しない武器を持つモンスターや状態異常を操るモンスター、武器や状態異常によって死亡したプレイヤー、攻略済みの層に大勢で来た攻略組……。

これだけの情報はレインにある一つの答えを導き出すには十分すぎた。

同時に最高に危機感を感じるにも十分すぎる答えに。

 

「意図的に……プレイヤーを殺しているプレイヤーが現れたって事ですか……!?」

 

 

 

 

「参ったな。こんな霧が深いなんて思ってなかった……」

 

フレンド機能の光点と地図を照らし合わせて、レインのいる場所へと合流を目指し彷徨うマコト。本来なら街道沿いに移動すればすぐに主街区や園内村に到着するはずだ。だが、この霧の中では方向感覚を狂わせてしまう。

5分、いや3分も地図から目を離しているといつの間にか目当ての方向から大きく逸れてしまっているのだ。逐一方角と現在地を照らし合わせなければまともに歩けない。数分前には足を滑らせて崖から転落しそうになったくらいだ。

 

「……おっ。人だかり。ラッキー」

 

暫く歩いた中、15メートル先で4人分の人影を発見した。

狩りの途中でも帰りでも構わない。彼らについていけば少なかれ主街区近くまで連れてって貰えるだろう。

 

「おーい!連れてってくれないか?道に迷って――」

 

一安心とマコトが駆け寄り――、

 

「駄目!逃げてッ!!!」

 

少女らしきプレイヤーが鬼気迫る形相で叫び、直後にフードを目深に被ったプレイヤーの両手剣が彼女の背中を斬り裂いた。

無防備な背後に攻撃され、HPが一気に尽きたかのように少女の身体に一瞬のブレが生じ、ポリゴン片となって砕け散った。

 

「……え?」

 

ビデオの一時停止のようにマコトの身体と思考は硬直した。

今起きた光景は、初日に浮遊上から飛び降りたプレイヤーと同じく、アバターの消滅――現実の死を意味するものだった。

その光景が、飛び降り自殺でもモンスターによるものでもなく、同じプレイヤーの手によって再現された。

 

「…………うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?!?!?!?」

 

長いようで短い硬直の直後、踵を返して逃走した。

 

(なんだあれなんだあれなんだあれ!?あいつら、プレイヤーを殺した!?嘘だろ!?ここで死んだらどうなるのか分かってやったのか!?)

 

振り返ると両手剣のプレイヤーと同じくフードを目深に被った両手斧と片手剣のプレイヤーが彼女の後を追ってきている。

両手斧のプレイヤーならまだしも、片手剣のプレイヤーからは、この鬼ごっこを続けていてはいずれは追いつかれるかもしれない。

マコトの俊敏性(AGI)はそこまで高くないし、両手剣プレイヤーのステータスは、耐久力(VIT)筋力(STR)に偏りがちだ。追いつかれるのは時間の問題だろう。

 

(あんなのに捕まったら絶対に殺される!とっ、とにかく隠れっ、隠れる場所を……!!)

 

このままでは遅かれ早かれ彼女の後を追うのは明白。

やり過ごす場所を探さなければ。必死に視線を右へ左へと移しながらやり過ごせる場所を探していた時だった。

 

「――うぉわっ!?」

 

足を滑らせた。いつの間にか急斜面のほうへ逃げていたのか、思い切り足を踏み外してそのまま転がり落ちた。

受け身が取れない状態での転倒で、HPが微量ながらどんどん減っていく。3割ほど減った所で漸く止まって、小さな横穴を発見する。

後はもう無我夢中でその横穴の中に入り、息を殺して滑り降りたフードのプレイヤー達が去るのを待った。

 

「……そうだ、レインに連絡を――」

 

安全な場所に隠れて頭が冷えたのか、心配しているであろうレインに連絡を入れようと右手を動かした。

次の瞬間、両手剣のプレイヤーが気が付いたように洞窟のほうへと顔を向けた。フードと距離の所為で細部までは見えなかったが、痩せすぎとも言えるような細い顔と、フードの奥から獲物を狙うかのような眼光が見えた。

マコトは心臓が止まる思いで動きを止めた。メニューを開けば必ず起動音が鳴る。プレイヤーにその音を消す方法はない。

今下手に連絡を入れたら、その時の音で気付かれる。その先は――。

 

(どうしろって言うんだよ。こんな状況で……!)

 

 

 

 

(……あれから、何時間経った……?)

 

待って。待って。待待ち続けて――。

10分、30分、1時間……。ひょっとしたらそれ以上にマコトは待ち続けた。

姿が見えなくなっても、彼女は疑った。ひょっとしたら、まだあの木の影にいるんじゃないか、霧の中に潜んでいるのかもしれない。

疑念が身体を強張らせて動けない。

 

「――ぃ、――誰――るぞ――」

 

「ッ!?」

 

隠れ潜む状況がついに動き出した。それも最悪な形で。

あのフードのプレイヤー達に見つかったのだ。このまま横穴の中に居ても確実に死ぬ。この時点で転移結晶を使おうと考えればすぐに解決できただろうが、今のマコトにそこまで頭が回る状態ではない。

 

(このまま……このまま殺されるくらいなら……!)

 

――奴らを、道連れにしてやる。

腹を括ったマコトは装備を両手剣から片手剣をへと装備を変える。

この狭い中では両手剣を振り回すどころか抜刀すらできない。しかし両手剣を装備するにはある程度片手剣の熟練度を必要としているので、初期の片手剣ソードスキルなら彼女も使える。

キィィィン……と小さく、甲高い音を立てて刀身が青白い色を帯びる。

 

チャンスは1度。穴から顔を除いた瞬間を狙って突進系ソードスキルを叩き込む――!

 

静かに待って、やがて入り口からぬっと顔を出した瞬間――、

 

「でやああぁぁぁぁぁッ!!!」

 

「ん?なんだ?光――おわぁッ!?」

 

雄叫びと共に《レイジスパイク》を放った。すぐに振り返って剣を構える。

 

「……あれ?テンカイさん?なんでこんな所にいるんだよ?」

 

「なんでじゃねぇよ!殺す気か!?」

 

と、そこで漸く相手があのフードのプレイヤー達ではなく、良く知るテンカイと白と赤の軽装に身を包んだアスナだということを知った。

最も、穴を覗き込んだテンカイは危うく頭を串刺しにされかねなかったようだが。

 

「レインから、おめぇとはぐれたって連絡してくれてな。探そうとした時にこの嬢ちゃんらを見つけたんだ。んで、そこから手分けして探してたら――」

 

「そこの横穴を見つけて、彼が覗いたらいきなりソードスキルを放ってきたあなたを見つけたって訳」

 

「な……なんだぁ~……」

 

やっと命の危機が去ったことで腰が抜けてしまった。

無理もない。攻略組でもないマコトが命の危機に陥る経験なんてそうはない。場数の少なさから恐怖と混乱に陥るのは当然のことだっただろう。

 

「それで?攻略組のアスナさんがどうしてこんな所に来たんだ?もう攻略は済んだんだろ?」

 

「そうね。あなたにも知って貰うべきかもしれないわね。テンカイさん。【MTD】と【ゴスペル・メルクリウス】に連絡をしてくれますか?」

 

「あ、ああ」

 

困惑しながらもテンカイは他のギルドマスターにも連絡を入れた。

そして25層ギルドシュタインを拠点にしている【血盟騎士団】の現本拠地へと足を運ぶことになる。

 

 

 

 

25層《ギルドシュタイン》。【血盟騎士団】現本部。

 

 

そこに集まっていたのは、ウィスタリアやテンカイ、シンカーにラジラジだけではない。攻略ギルドを筆頭に様々なギルドのギルドマスターやサブリーダーが集結していた。

唯一ギルドマスターでもサブリーダーでもないマコトは、何とも言えない場違いな感覚を感じながら召集の張本人たるヒースクリフの言葉を待った。

 

「……さて、十分に集まっただろうからそろそろ話を始めよう」

 

ついに口を開いたヒースクリフに、ギルドマスター達の表情も引き締まる。

 

「攻略組の者達には伝わっているかもしれないが、今回はそうでない者も交じっている。攻略組の諸君には二度手間になるが、再確認の為もう一度説明しよう」

 

そう言ってアイテムストレージを操作し、小さ正八方面体の結晶を取り出した。

あのアイテムは結晶系アイテムの一つであり、名前は【録音結晶】。最大1時間もの音声や音を記録する容量を持つ、現実世界で言うレコーダーだ。

ヒースクリフがその結晶に触れると、結晶の中で光が泡立つように輝いた。

 

『――HAPPY BIRTHDAY!Dear……Laughiiiiiiiiiiing……Coffiiiiiiiiiin!!!』

 

再生した途端、陽気とも取れる男の声が静寂に包まれた部屋中に轟いた。

 

『よぅアインクラッドの諸君。俺はPrince of Hell……いや、流石にこの名前は長すぎるし我ながらクサいな。頭文字を取ってPoH(プー)と名乗ろうか。

さて、諸君らはこの閉じられた世界に退屈していないか?娯楽は碌にねぇ、代り映えの無い天候、攻略を待つだけの日々もしくはモンスターを狩り尽くす毎日……こんなのを毎日続けていたら俺は頭がどうにかなりそうだ。

そこでだ……お前ら、新しい刺激が欲しくないか?退屈過ぎる日常が、このバーチャル世界の身体が沸騰しかねないほどの刺激がよぉ?

なぁ、こうは考えたことは無いか?殺人や盗みを働いたらどうなるかって。犯罪者になる?それはこのシステムの中で、だろう?

この世界に俺達は確かに捕らわれているが、逆を言えば現実のあらゆる法則が通用しない。盗みをしようが裁かれないんだよ。――殺人も然り。

だからこそ俺達はここにギルド結成を宣言する。何、攻略組?とんでもない。犯罪者(オレンジ)ギルド?まだまだ温いね。

俺達はSAOのシステムに存在しない色、すなわち(レッド)――殺人(プレイヤー・キル)

 

声の主、PoHの最後の台詞にヒースクリフや一部の攻略組リーダーを除いた全員の背が凍り付くような感覚を覚えた。

 

『俺達の活動はそう、殺人(プレイヤー・キル)!俺達は殺人者(レッド)ギルド【笑う棺桶(ラフィン・コフィン)】の結成を宣言する!妙なフード連中のご挨拶はどうだった?あれは俺からの名乗りついでの挨拶みたいなもんだ。まだまだ俺らのギルドは人数は少ないから本格的な活動はまだまだ先だ。だが俺らが本格的に活動を始めた時は……この世界の住人の皆様に刺激的なShow Timeをお送りしよう!――最も、命の保証はできないがな』

 

3分間にも及ぶPoHの宣言は、不気味な一言を最後に録音も終了したことを告げるように光が消え、ことりとテーブルの上に落ちた。

部屋の中は静寂に包まれ、PoHというプレイヤーの宣言に呑まれ、誰もが閉口した。

恐怖。怒り。絶望。憎悪――。様々な負の感情が部屋の空気が一気に重苦しいものになる。

集められたギルドマスターが率いるギルドの中には、彼らの犠牲者になってしまった者もいただろう。ウィスタリアが横目に見渡してみると、何人かのギルドマスターの手が拳を作っていたり、肩が僅かに震えている者がいる。

 

(……ふざけてる)

 

その中で、一人マコトは胸の内で呟いた。

 

(あいつらの単なる()()で、あの子は殺されたっていうのかよ……!?)

 

思い返すのは、逃げる直前にフードのプレイヤー達に殺された少女の姿だった。

自分も危なかったはずなのに、自分に来るなと告げて消えていった。

ひょっとしたら、彼らに立ち向かっていれば彼女だけでも救えたのか?

ふつふつと湧き上がる怒りと共に、後悔と自分の行動への疑念が膨れ上がっていく。

 

「これは我々グリーンプレイヤー達にとって由々しき事態だ」

 

息苦しさすら感じられる空気の中、ヒースクリフが深刻な顔つきで告げ、その言葉にほとんどのプレイヤーが我に返った。

 

「攻略組だけでなく、彼らの中層下層ギルドにも十分に留意して頂きたい。以降この【笑う棺桶(ラフィン・コフィン)】と遭遇もしくは目撃した場合、速やかに連絡をしてほしい」

 

その一言に、全員思わず固唾を呑んだ。

【笑う棺桶】――後に、最凶最悪の名を確立したギルドが、今ギルドマスターの口から宣言された瞬間だった。

 




次回「プリズン・ブレイク:前編」
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