プリンセス・アート・オンラインRe:Dive   作:日名森青戸

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(・大・)<有休をとったので上げます。

(・大・)<もう12月ですね……。自分は今年をふり開けるとすると……なんか今年もコロナに持っていかれた気がします……。

(・大・)<来年も、自分の小説の2つの作品を宜しくお願いします(気が早い)。


狂剣士(バーサーカー)

「――るぐぅああ嗚亜アあああAAAAA阿あああああああ亜ああaaあ吾あアアアッ!!!」

 

 

 

 

雄叫びと共に一瞬で起き上がった直後のスカーネイルに肉薄した。

 

「おっと!」

 

刺突を紙一重で回避する。そこからシズルは身体を捻り、1回転する要領で追撃の回転斬りを放つが、スカーネイルはさらに後方へ飛んで避ける。

 

「うっひょう!まさしくNow It’S a Show,Time!!だな」

 

まるで目当てのおもちゃでも見つけたかのような声を上げるスカーネイル。そこから高笑いをしながらシズルにその凶刃を向けて向かっていく。

そこから繰り広げられるシズルとスカーネイルの攻防は、凄まじいものだった。

シズルの剣の一振り一振りが轟音を鳴らし、衝撃波を巻き起こし、仮想の花々を散らして花弁が舞い上がる。

 

「通常攻撃でここまでの威力とはな。まるで嵐だな」

 

「ああ。流石に予想外だったけどッ!」

 

キリトも大男の振るう鞭を回避にしながら距離を詰めようとするも、予測しづらい鞭の攻撃に距離を詰められそうにない。

 

「……そろそろか」

 

「何?」

 

僅かにキリトがほくそ笑んだのを見た大男は一瞬眉をひそめたが、直後にハッと何かに気付いたように沈黙する。

そしてシズルの猛攻を回避し続けるスカーネイルに向けて叫んだ。

 

「何か集団がこちらに向かってきているぞ!」

 

「ぁン?」

 

大男の声にノゾミも《索敵》と《遠視》を発動する。

視界からは人影は見えない。だが、僅かに緑色のカーソルが複数目撃した。

 

「あれは……?」

 

「【解放隊】に情報をリークしといたんだよ。お前らを捕まえるついでに、連中も捕まえとこうと思ってな」

 

「貴様……!」

 

「さあどうする?このまま獲物に固執して捕まるか?連中がAGI軽視してる連中だらけだとしても、5分もすれば到着するぞ」

 

剣を向けて告げるキリト。

大男はしばらく沈黙していたが、やがて観念したように息を吐く。

 

「撤収しましょう」

 

「……チッ。流石に捕まるのは御免だ……なッ!」

 

シズルの攻撃を跳躍で回避し、《跳躍》を用いたバックステップで大男の元へと下がる。

 

「さて。ショーはつまらん連中に水を差されてしまったが、今回はここまでとしようか」

 

「まっ、待ちなさい!」

 

ノゾミが止める間も無く、スカーネイルは袖口からビー玉サイズの球体を取り出し、地面に叩きつける。次の瞬間、真っ白な煙が周囲一帯を覆い尽くす。NPCショップで格安で売られている煙幕だ。白い煙はすぐに風に流されて視界が晴れていく。が、当の【(笑う棺桶)

目的のプレイヤーが消えて、残されたプレイヤーも呆然となるが、キリトだけはシズルの方へ向き直る。

 

「シズルさんが居たのは予想外だったが、おかげで手間が省けたよ」

 

「……」

 

「……?シズルさん?」

 

声を掛けるも返事は返ってこない。

様子がおかしいことに首を傾げながらキリトが彼女の元へ歩み寄ろうとした時だった。

いきなりぐるりと顔をこちらに向けたかと思った次の瞬間、

 

「牙亜Aアッ!!」

 

「なッ!?」

 

牙をむき出しにしてキリトにも襲い掛かってきた。

咄嗟にガードしたが、思わず体勢を崩してしまいそうになる。

 

(なんだこの威力!?片手剣なのに重さがまるで両手剣……いや、むしろ両手斧レベルだろ!?)

 

ガキン!ガキン!と荒々しい攻撃にキリトの体勢も次第に片膝を地に着けるようになり、下から上への斬り上げの一撃に大きく後ろへと吹っ飛ばされる。

状況がより悪いほうへと傾きだしたことを予感したノゾミが叫ぶ。

 

「何やってんの!?」

 

シズルは獣のような唸り声を上げるのみで話をしようともしない。まるで本物の野獣に身を堕としたかのように、理性が完全に消え去ってしまっているようだ。

直後、シズルの目が標的を捉える。その相手はノゾミでも、レインでも、ツムギでも、キリトですらない。腰を抜かしてへたり込んでいる赤い女――。

 

「……まさかッ!?」

 

気付いた直後にシズルに変化が現れる。

オーラを纏った剣を右肩で担ぐように構え、ぐっと力を溜めるように腰を落とし――次の瞬間には風を切るような速さで駆け抜けロザリアへと迫る。

 

「ひっ!?」

 

咄嗟に腕で顔をかばったが、次の瞬間にはサクリ、という音と共に腕が地面に落ちた。同時に、シズルのマーカーも緑から犯罪者を示すオレンジへと変わる。

 

「ぎゃあああああああッ!!!腕があああああああッ!!!!」

 

耳障りな悲鳴を上がる。喚くロザリアに関せず、更に彼女の脚に一薙ぎ。膝から下が切り落とされ、足がポリゴンとなって消える。

 

「ぎゃひいいいいぃぃぃ!!!」

 

「おい待て!それ以上攻撃したら本当に死ぬぞ!!」

 

上体を起こしたキリトが焦燥を交えた声でキリトが叫ぶ。

しかし、シズルはそんな叫びが聞こえていない。血走った目が捉えているのは右腕と両足を切り落とされた、彼女が最も嫌うプレイヤー。

剣を高く構え、切っ先をパニックに陥ったロザリアの顔面の中心――人中へと向ける。それはさながら、首切り処刑と似たような光景だっただろう。

 

「ゥぅu……」

 

「待って!やめて!それ本当に殺せる奴!死ぬ!死んじゃう!死んじゃうから!!」

 

「ガAAAアア亜嗚呼アアあああaaaアア亜アッ!!!」

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああッ!!!」

 

絶叫、雄叫び。文字通り花々しいこの階層には相応しくない、およそ人の出せるものではない絶叫が木霊する。

事態を重く見たキリトが咄嗟に駆け付けようとした瞬間――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃんもうやめてッッッ!!」

 

つんざくようなシリカの悲鳴が辺りに響く。ロザリアに迫っていた剣がぴたりと止まった。

切っ先は彼女の顔数ミリの所で止まり、ほんのちょっとシリカの悲鳴が遅れて居たら、確実に彼女の顔を貫きHPを全損させていただろう。

当のロザリアは餌をねだるコイ宜しく目を見開いて口をパクパクと動かし、そのまま倒れた。

 

「ぁ……リノ……ちゃん……」

 

振り返ったシズルは獣のような形相から戻っていた。剣もオーラが煙のように消え失せ、からりと石畳に落ちて音を立てる。

小さくそう呟いた瞬間、力尽きたように膝をついた。

決着がついた石橋は全員アバターの身体が鉛のように重く、まともに動かせそうにない。

 

「貴様らそこを動くなッ!!」

 

その時、だみ声の混じった大声が静寂を突き破るようにつんざくった。

ガチャガチャとこすれた金属音が鳴り響く。気が付いて音のする方を向くと、漆黒に近い色合いのフルプレートの集団がこちらに近づいてきた。

 

「【ALS】?」

 

「隊長。報告の通り例のプレイヤー集団がいます。数が合わないようですが……」

 

「そうか。まあいい。【タイタンズハンド】を即刻連行しろ!」

 

リーダーらしき男の指示で部下のフルプレートたちが次々と抜け殻状態の【タイタンズハンド】――ロザリアのみだったとはいえ――を【回廊結晶】で開けたゲートに次々と放り込んでいく。

ノゾミもツムギも、レインもその様子をただ見守るだけだった。

 

 

 

 

「――ハッ!?」

 

ガバリと起き上がると、そこは室内だった。あの時見た夢とは異なる木製の壁が見えたことから、SAO内部であるということは理解できた。

窓の外を見てみると、一面に花畑が広がっているのでここがまだ47層だということが分かる。

 

「起きた?」

 

「シズルさん、気が付きました?」

 

声を掛けられてその方向を向くと、頬杖を付いているレインがベッドの傍で座っていた。

シズルが起きたのと同時に心配した様子のシリカが近づいてくる。

 

「ここは?」

 

「47層の園外村です。シズルさんオレンジになってしまったから」

 

「えっと……私……」

 

寝起きでぼんやりする頭で必死に記憶を振り返り、思い出したように訊ねた。

 

「そうだ、あいつらは!?」

 

「大丈夫ですよ。【ALS】が来て全員監獄行きです。生き残りはあの女しかいませんけどね。キリトさんはその前に逃げ出したようですけど」

 

「そう……」

 

一先ずは解決したようで、シズルは安堵した。しかし、ツムギはそれで納得したわけではなく、一言訊ねる。

 

「そういえば、あのスキルは何だったんですか?」

 

「……あのスキルの事?」

 

「ええ。あんなの見たことありませんよ」

 

ツムギの追究にシズルも言い辛そうに言葉を詰まらせる。

だが、数秒の黙考の後観念したのか、ため息交じりに白状した。

 

「あれはEXスキルよ。名前は《狂剣士(バーサーカー)》」

 

「《狂剣士(バーサーカー)》?聞いた事の無いスキルね」

 

「当然よ。だってこれは(ハイパー)EXスキル――今じゃ準ユニークとまで呼ばれるスキルよ」

 

その一言で、ノゾミは思わず「やっぱり」と半ば確信していたかのような声を漏らした。

準ユニークスキル、もとい超EXスキル――それはEXスキルの中でも会得難易度が異常すぎるスキルの総称であり、『会得方法は解っているのに条件の難易度が異常すぎて手に入れられない』ものを指す。ノゾミの《連刃剣舞》もその一つだ。

ノゾミが手に入れてからの1年間、新たに超EXスキルを手に入れたという情報は無かったのだが、おそらく彼女は手に入れて情報屋に後悔する前にスカウトされたのだろう。

 

「じゃあ、あなたもあの寺院に行ったの?」

 

「うん。あの時はひょっとしたら私の弟や妹に会えるかもって思ってて」

 

つらつらと件のオーラを纏った状態に関しての、自分が知る限りの情報を述べだす。

件の超EXスキル、《狂剣士》は発動すればSTRとVITが2.5倍になるというシンプルなものだ。あのブラックグリーンのオーラは単なる演出かと思ったが、あのオーラは発動している間、相手の系統を無視してダメージを与えられるようになっているらしい。

 

「【血盟騎士団】がスカウトしたがる訳ね。こんな便利なスキル、ボス攻略に便利じゃない」

 

率直な意見を述べるレインの言う事も最もだ。攻撃力と防御力上昇に敵対者の持つの耐性の無視。これだけの能力があるなら、【血盟騎士団】以外の攻略組も我先にと彼女をスカウトしていたはず。

ところが、シズルの返答は意外なものだった。

 

「ううん。これにもデメリットがあるのよ。発動するタイミングが『所持者の負の感情が一定に達した場合』、つまり私が怒ったりすると勝手に発動するみたいなの。熟練度が低いからかどうかわからないけど」

 

「だからあの時勝手に……」

 

「もう一つは、発動中は戦闘スキルが使えないこと。これは《投剣》とかのようなものも使えなくなるわ。最後に……発動してる間の標的は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の。あの時は誰も彼も敵にしか見えなかったから良く暴れてたし……。おかげで、まだ2軍なんだよね」

 

「なるほど。それなら下手に前線に送り込んだら味方の被害もすさまじいものになる訳ですね」

 

あの時、シズルがスカーネイルを攻撃し続けていたのは最優先で排除すべき《敵》。ロザリアを攻撃したのも彼女を《敵》と認識したが故に起きたことだ。

今の彼女はシリカの存在で割と安定しているのだが、彼女と会わないままにボス攻略に挑まされていたのなら、攻略組の面々はボスの前に暴走した彼女に命の危機を曝す事になったかもしれない。

 

「因みに条件は『自分が《敵》と認識している相手を目視し、敵対者かつ経験値が会得可能な対象のHPを20秒以内に0にした回数を4回行う』よ。寺院のクエストは……よく覚えてないけど、モンスターが沢山いたよ。多分、モンスターを全滅させることが条件じゃないかな?」

 

「うわぁ……」

 

思い出したように語るシズルにノゾミ達はさぁっと血の気が引いたような感覚を感じた。

当然だ。ノゾミの持つ《連刃剣舞》は最後は単独限定ではあったものの、条件達成はパーティを組んでも構わなかった。

だが《狂剣士》はソロはおろか、パーティですらとんだ無理ゲーである。最低でも自身と同等の相手を用意しなければならず、アルゴリズムに沿った動きしかできないモンスターを誘導するのは骨が折れるなんてレベルじゃない。その後に待ち受けるモンスターの群れを相手にするというのも死ぬリスクが果てしなく高い。これでは誰にもとらせないと言っているのと同然だ。

 

「なんでこんなスキルを、茅場明彦はSAOに組み込んだのかしら……?」

 

ノゾミの呟きに部屋は静寂に包まれた。彼とて専門分野は違えどゲームデザイナーの端くれだ。このような事態にならなければ、元々が公平なMMORPGであるSAOで元から取らせる気のないような難易度に設定しないはず。かなり高い難易度でもクリアできる糸口を用意するか、開発段階で没にするかのどちらかだろう。

答えの出ない沈黙の後、シズルが声を上げた。

 

「ともかくさ。私はすぐにグリーンに戻しておくからみんなは先に帰ってて」

 

「そうしておきます。それじゃあ、フレンド登録もしておきましょうか」

 

ノゾミの提案にツムギも賛成し、5人はそれぞれのフレンドリストに名前を記していく。全員がそれぞれのフレンドリストに登録を完了すると、3人はそのまま《始まりの街》へと戻っていった。

そして、残されたシリカは……。

 

「シズルさんはこれからどうしますか?」

 

「んー……。ここらのモンスターじゃ経験値得られるのは無理だし、転移で上に戻って回復クエストを受けて、そこから攻略組に戻る、かな?」

 

「そうですか。でも、攻略組なんて凄いですね。あたしじゃ何年掛かるかわからないですよ」

 

大丈夫だと振舞うが、どうにも空元気にしか見えない。表情から寂しさを察したのか、ピナが彼女の肩に乗って彼女の頬を摺り寄せる。

 

「……あたし、もう一度頑張ります。攻略組……とまではいけないかもしれないけれど、もっと上の層でも通用するように……またピナを喪わないくらいには強くなります」

 

寄り添うピナの頭を優しく撫でながら、シリカはきっと前を見つめる。

風に靡いた花弁がレンガ造りの道に花吹雪となってシリカの視界を彩る。

 

「そしたら……」

 

シリカはシズルの手を取り、顔を向けてきた彼女に満面の笑顔を咲かせて訊ねるように言った。

 

「そしたらまた、シズルさんを『お姉ちゃん』と呼ばせてもらっても良いですか?」

 

その笑顔を見たシズルは、シリカの姿と幼い頃の自分の弟妹の姿が重なって見えた。

次の瞬間、シズルが気が付いた時にはシリカに抱き着いていた。弟と妹に会えないこの仮想世界で、ようやく自分の事を『お姉ちゃん』と呼んでくれる人と出会えた。

 

「うんッ!約束するッ!!リノちゃんが……ううん、シリカちゃんが強くなっても、お姉ちゃんはもっともーっと強くなってるから!!強くなったら、また会おうね!!」

 

 

 

 

シリカとピナと別れ、一人協会に残ったシズル。

しかし、彼女の表情はこれまでの焦燥や絶望は一切感じられない、希望に満ちた柔らかな笑顔を浮かべていた。

 

「私も、弟君たちに会う為に頑張らないとね」

 

決意を新たにしたシズルは転移結晶を握る手にほんの少し力を込めて転移を宣言した。

青白い光が彼女の身体を包み込み、数秒も経たないうちに彼女は47層からその姿を消したのだった――。

 

 




次回『冒険家と迷子と新たな仲間』


(・大・)<ようやくシリカ編終了。




※《狂剣士(バーサーカー)》について。


(・大・)<デンドロで言う【狂王】のオミット版。こちらは相手の種族に関係なくダメージを与えられる代わりに被ダメージ減少が消え、発動中はスキル使用不可となっている。

(・大・)<入手方法もあちらの調整版として投入しており、方法も試練もあって実質シズル専用のユニークスキルと化している。

(・大・)<つかこんな条件、あの姉以外に取れる奴が居そうにないと思ってる。

(・大・)<因みにステータスにするとこんな感じ。


《狂剣士》

剣士の暗黒面の一つ、殺戮と狂気、恐怖に呑まれた者のみが我流で力を振るう封じられた技能。
所持者の負の感情が一定値に達すると自動発動。
発動中、攻撃力と防御力が2.5倍。戦闘系スキル使用不可。
敵対するモンスターの特性を無視。
発動中アバター操作不可。プレイヤーが敵対者と認識したモンスター及び他プレイヤーを最優先の攻撃対象にする。


(・大・)< これからはオリジナル>リズベット登場>ラフコフ討伐1ヶ月前>ラフコフ討伐>ライブ>原作沿いといった順で執筆していく予定です。


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