プリンセス・アート・オンラインRe:Dive   作:日名森青戸

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( ・大・)<2021年もあとほぼ1日。皆様同お過ごしだったでしょうか。

( ・大・)<自分の今年最後の投稿は前後編です。


※(・大・)<アニメを見て豪い間違いを確認したので修正しました。


「冒険家と迷子と新たな仲間」

2024年も5月へと差し掛かったある夜。

転移門広場に青白い光のエフェクトが突然発生した。その光が消え、中にいたプレイヤーは周囲を見渡す。

一瞥程度に見回したそのプレイヤーはすたすたと静まり返った始まりの街の街路を一人歩く。

時間は既に0時を回り、気候が曇天であることも加えて周囲は深い闇に包まれている。しかしプレイヤーはまるで暗視ゴーグルでもつけているかのように平然と暗闇の中を歩き、教会へと到着した。そのプレイヤーは手慣れたようにウィンドウを操作すると、抱えられるほどの大きさの【永久保存トリンケット】をオブジェクト化した。

 

「確保ーーーーッ!!」

 

凛とした声の一喝と共に、大量の下層プレイヤーが押し寄せる。彼らはそれぞれ角材やら初心者用の大盾などを手にして雪崩の如く押し寄せてくる。

 

「ちょっ!?えっ、何!?きゃああああああああーーーッ!?」

 

プレイヤーの雪崩に玄関と大盾に挟まれて潰されてしまう。一応ハラスメント防止コード対策として直接触れないように盾と角材を用いて身動きできないように押し付ける。

 

「さて、あなたが送り主ですわね?」

 

盾、角材、人、そして扉のサンドイッチにされてしまったプレイヤーに、ウィスタリアが歩み寄ってくる。

手にしたランプでそのプレイヤーを照らすと、意外そうに眼を少しだけ見開いた。

そのプレイヤーはアインクラッドでも少ない女性であり、年齢は大抵自分よりも1、2歳ほど年上。紫を基調とした軽装にクレイモアと呼ばれる両手剣を背に差していた。

 

「落ち着ける場所で、話をお聞きましょう」

 

 

 

 

教会の一室に連行したウィスタリアは、子供たちを起こさないように離れた別室に入る。机には誰もいない代わりに壁際に立っているラジラジが既に待機しており、ウィスタリアが彼女に向かいあうように女性プレイヤーを座らせる。

 

「では単刀直入に言います。あなたは何者ですか?」

 

「……」

 

キッと鋭い眼光を光らせるラジラジに対し、対して相手の女性プレイヤーは引きつった顔を浮かべたまま何も喋らない。

 

「……何者、ですか?」

 

「……言わなきゃダメ?」

 

「当然です」

 

「どうしても?」

 

「どうしてもです」

 

頑なに女性プレイヤーの意見を却下するラジラジ。

沈黙が部屋の中を包む中、

 

「……OK。白状するわ」

 

女性が折れてウィスタリアたちに事情を説明を始めた。

 

「まずアタシの名前は『ストレア(Strea)』。ソロでやってるわ」

 

「あのトリンケットはあなたが?」

 

「YES。因みに《細工》のスキルもフルコン済みで、私が作ったものなの」

 

「ではなぜ身を隠す必要があたのですか?」

 

「それは……」

 

ラジラジからの指摘にストレアは言葉を詰まらせる。

まるで次の言葉を模索するように目線を逸らしていたが、やがて見つかったのか答えを返す。

 

「やってみたかったのよ!正体不明の送り主を!」

 

「はぁ?」

 

「そう!正体を明かさずに弱い子供たちに希望を送る使者!そういうのに憧れていたのよ!現実でもあったでしょそういうの!」

 

「……昭和アニメの見過ぎだな」

 

「ならば叩けば直るのでは?」

 

「誰が昭和のテレビよッ!?」

 

テンカイとラジラジの冷ややかな目に思わずツッコミを入れるストレア。

 

「……事情は分かりました。それで、今後はどうなさいますの?」

 

「そうね。《細工》のスキルはトリンケットを作る為に手に入れてたものだし……」

 

ウィスタリアの質問にストレアは腕を組んで考える。

そして腕組を解くと、ラジラジに向けて――、

 

「あなたのギルドに入っても構わないかしら、ラジラジさん?」

 

そう切り出してきた。

 

「【ブレイブ・フォース】にですか?」

 

「意外ですね。【ゴスペル・メルクリウス】にてっきり入るものかと」

 

「あら、こう見えて解放を目指しているのよ?それに誰もが同じギルドに入らなければならない法律がある訳でもあるまいし」

 

それに、とストレアは続ける。

 

「私もソロで活動するには限界を感じてね。そろそろギルドに身を置こうと思っていたのよ。それで、上の階層に行きやすい攻略組が丁度良いかなって」

 

「でしたら【ALS】や【聖竜連合】、【血盟騎士団】に入れば良いのでは?」

 

「確かにそこに入るって選択肢もあったけど、どこも重苦しく感じてね。どうせ入るなら親しみやすい環境のほうが良いって思ったのよ」

 

志望動機を述べるストレアの意見にはラジラジも内心納得した。

確かに今挙げたギルドはどれも規律やらを重視している分堅苦しい雰囲気は否めない。

ギルドの規模が大きくなるにつれ、人員のコントロールを規律と言う形で縛らなければ、ギルド方針の舵取りに支障を起こしてそのまま瓦解に繋がる恐れもある。だからこそ【ゴスペル・メルクリウス】は今もギルドとしては10人前後の小規模と中規模の間のギルドとして活動しているのだ。

【ブレイブ・フォース】は中規模ギルドとして活動しているが、説明に挙げた3ギルドよりは規律は緩いほうだ。

 

「――良いでしょう。こちらも戦力が多くなるのは歓迎です」

 

「それはOKとして受け取っていいのかしら?」

 

「ええ。ただ、単なる攻略組ではないのを了承してくださいよ?」

 

ストレアは不敵な笑みを浮かべながらラジラジに返す。

 

「ま、ここを拠点にしてるギルドならここを調べるにしても都合が良いからね」

 

「何か言いました?」

 

「何も」

 

何か呟いたのが聞こえたが、すぐさま言葉を濁したストレアがすっと手を差し伸べた。

 

「ともあれ、今後は宜しく」

 

「そうですね」

 

差し伸べられた手をふぅ、と息を吐いてその手をがっちりと握るのだった。

 

 

 

 

ストレア加入から1か月の月日が流れた。

現在ストレア、ノゾミ、ウィスタリア、チカ、カオリは49層のダンジョンに潜っていた。

 

「まさか4連続で護衛の仕事に就くことになるとはね……」

 

「確かギルドマスターが言ったはずだよ~。私達の仕事は攻略のほかに、商人プレイヤーの護衛もあるって」

 

「道理で前線に出る機会が少ない訳だわ」

 

戦闘としては、ストレアとチカが防御で攻撃を防ぎ、ウィスタリアが切り込む形で攻撃を仕掛け、ノゾミと共にダメージを稼ぎ、カオリが止めを刺す。

トドメ役はカオリかウィスタリアを行い、ウィスタリアの経験値を稼いでいく。

 

「ウィスタリアさん、レベルは?」

 

「今の戦闘で50は行きましたわ。やはり攻略組と行えばレベリングも捗るものですわね」

 

「だからって安全マージンを無視したレベリングは無いんじゃない?47層は不意討ちメインでステータスは大したことなかったけど」

 

「《転移結晶》は人数分持ち込んでありますわ。いざとなればこれを使って脱出できてよ?」

 

ぼやくストレアを他所に、ウィスタリアは自信満々に《転移結晶》を見せる。

 

「さあ!今日中にあと2つほどレベルを上げますわよ!」

 

「ウィスタリアは相変わらず元気だね~」

 

すたすたとダンジョンの奥へと進むウィスタリアにいつもの調子のカオリが続く。ノゾミ達も後から続き、脇道に差し掛かった時だった。

 

 

――カッ!

 

 

「え?」

 

ウィスタリアが石のタイルの一つを踏んだ途端、青白い光が一行を包み込む。

 

「こ、これって転移――!?」

 

気付いた時にはもう遅い。脱出するより早く転移の光が一行を包み込んでいった。

そして光が晴れた時には、もう5人の姿はそこには無かった……。

 

 

 

 

とある迷宮区の小さな部屋の中で転移の光が突然発生する。

それをかき分けるように、5人のプレイヤーが突如姿を現した。

 

「こっ、ここは……?」

 

転移された一人、ウィスタリアは周囲を見渡す。

広さは大体六畳間くらいだろうか。先程までの植物が生い茂ったダンジョンとは異なり、まるで日本の城などで見かける石垣で造られている。明らかに今まで行動していた48層とはまるで違う。

 

「マップにもこの部屋以外の情報は無いみたいですね。より上の層に飛ばされてしまったのでしょうか?」

 

チカもマップを見て確認するが、この小部屋以外の情報は見当たらない。

下層、中層のマップは全て攻略組がマッピングし、情報屋の手によって階層ごとに販売されている。つまりここは彼女らが潜っていた49層より上ということだ。

そして新たに問題が浮かぶ。この場所が49層より何層上にあるのかだ。自分達の手の付けられない場所に転移してしまった可能性も捨てきれない。

ぐるぐると一向に不安が募っていく中、

 

「皆様、心配することはありませんわ!このような場合の為にもこのアイテムを持ってきているのでしょう?」

 

場違いに自信たっぷりなウィスタリアが取り出したのは《転移結晶》。それを見て一行も安心したように胸を撫で下ろした。

そうだ、これさえあれば脱出は簡単だ。

早速ウィスタリアが《転移結晶》を掲げ――、

 

「転……」

 

 

――ヒュパッ!

 

 

「い?」

 

叫ぼうとした瞬間、彼女の手元を何かが通過し、転移結晶が手から消えた。

何事かと周囲を見渡すとウィスタリアの背後で何かを見つけた。

栗色の体毛に覆われた赤ん坊程度の小柄な体躯。猿のような姿のモンスターだ。そのモンスターが抱えているのは、四角柱の水色の結晶を抱えていた。

 

「こっ、こらぁ!返しなさい!」

 

慌てて追いかけるが子猿は軽快に跳んでウィスタリアを翻弄する。

 

「――待ってて」

 

見かねたストレアが右腿からピックを取り出し、構える。

淡い光がピックに宿り、タイミングを見計らって投擲。ピックは子猿が進もうとした地面に鋭く突き刺さり、子猿はそれを避けようと足を止めた拍子に結晶を落としてしまった。

 

「流石ですわ。それでは改めて……」

 

漸く追いかけっこが終わり、ストレアに短い賞賛を送り結晶を拾い上げる。

改めて転移しようとしたウィスタリアの後ろで、ギラリと何かが光った。

 

「ウィスタリアさん、逃げてッ!!」

 

「え?」

 

ノゾミが叫んだ瞬間、ウィスタリアの身体が何かすさまじい勢いにぶつかったかのように横にぶっ飛ばされた。ぐるりと一回転し、壁に激突する。HPが一気に1割未満にまで減少した。

 

「ウィスタリアさんッ!!!」

 

チカの悲痛な叫びがダンジョンに木霊する。

そして闇の中から1体のモンスターが現れた。

軽く20メートルを超す体長を持ち、深緑の鱗がびっしりと並んでおり、僅かな光を乱反射する。金に輝く瞳はノゾミ達に否応なしに命に係わる警鐘をけたたましく鳴らす。チロチロと時折見せる細い舌は、まるでこちらを獲物と見据えて舌なめずりをしているみたいだ。

 

「へ……蛇!?」

 

ノゾミが叫んだ直後、尻尾を再び振り上げる。

 

「……!」

 

ウィスタリアに標的を向けていた大蛇に気付き、カオリが真っ先に駆け付ける。

振り下ろされる直前、ウィスタリアの前に躍り出たカオリが盾で攻撃を防ぐ。重い一撃に一瞬体勢を崩しかける。

そこから大蛇は標的をカオリに変え、尻尾の殴打を繰り返す。元々壁役としてのステータスではないカオリのHPも殴打の度に僅かに削られていく。

 

「不味い……!早く助けないと!チカ、ストレアさん、行くよ!」

 

「OK!」

 

急いでノゾミとチカも救援に駆け付けようとする。

 

「……」

 

「チカ?どうしたの?」

 

「な、何でもありません!」

 

一瞬だけ硬直したように見えたチカだったが、遅れてノゾミと共に駆け出す。

 

「このっ!」

 

「せいっ!」

 

すぐさま《連刃剣舞》を伴った曲刀ソードスキル《ディパルチャー》を、チカは《コメット》を放つ。

 

 

――バキンッ!

 

 

「「――なっ?!」」

 

大蛇の背中目掛けての2つのソードスキルは、呆気無く弾かれただけでなくファルシオンが根元から音を立てて砕け、槍も穂先が粉々に砕けてしまった。

同時に大蛇が2人に気付いたのか、尻尾を薙いでチカを払いのけるとぐるりとノゾミの周囲を這いずり、あっという間に長大なその身体で拘束してしまった。

 

「うぐぁッ!!」

 

「あぐっ!?」

 

「あのバカ!」

 

めきめきとノゾミの身体から嫌な音が鳴りだすほどに締め付けがきつくなっていく。

チカが悲痛な悲鳴を上げる横で、すかさずストレアが駆け出して大蛇に剣を突き刺す。

 

「このッ!このッ!いい加減離せ!」

 

そこにカオリとチカも加わって大蛇を攻撃するが、相手はまるで気にも留める様子も無くノゾミを締め上げる。

 

「ぁ……あ゛ぁ……!」

 

「ヤバいヤバいヤバい!どんどんHPが無くなっていくよ!」

 

締め付けによって、どんどんノゾミのHPが減っていく。

焦りからカオリの攻撃が単調なものへとなっていく。それでも大蛇は締め付けを止めることはない。

最早、ノゾミの死を全員が予感した――その時だった。

 

 

――ドスッ!

 

 

「キシャアアアアアアアアアアッ!?」

 

「な……何事ですか?」

 

どこからか飛んできたナイフが大蛇の喉に突き刺さり、苦悶の悲鳴と共にノゾミが解放される。

 

「今すぐ左の部屋に行きなさい!早く!」

 

続けて聞こえてきた声に、カオリはウィスタリアを、ストレアはノゾミを連れて左へ行く。通路を曲がった先には部屋の入口に直行。すぐさま部屋の中に避難する。

 

「このッ!」

 

悶絶する大蛇に追い討ちをかけるように、声の主が投げたらしい小さな布袋が大蛇の顔面に命中した。

布袋の中からは朱い粒子がばら撒かれる。

 

「!?!?!?」

 

顔面から粒子を浴びた大蛇の様子が明らかに変わった。

先程以上に、まるで陸に打ち上げられた魚宜しく激しく巨体をのたうつ。ダンジョンの壁に尻尾や頭、胴体をぶつけながらやがてどこかへと去って行ってしまった。

 

「……はぁ」

 

危険が去って行って腰の抜けたチカが、まるで肺の中の空気を全部吐き出しそうな勢いで安堵の息を漏らす。

 

「た……助かった……」

 

「あなた達、どうしてこんな所に来たのよ?」

 

肩で息をするカオリを覗き込むように疑問を投げかけたのは、鉄製の軽装と黒のショートパンツの上に丈が肘辺りまでの青いマントを纏った少女だった。

 

「ど……どこのどなたか存じませんが、助か――ふごぉ!?」

 

「んごっ!?」

 

「ハイハイ、2人はポーションで回復しましょうね?」

 

礼を言うタイミングでストレアがウィスタリアとノゾミにハイポーションをぶち込んだ。

ポーションの回復は昨今のゲームによくある、瞬時に回復するという訳ではない。自動回復システムのように時間を掛けてゆっくりと回復するのである。

 

「改めてさっきはありがとう。おかげで仲間を死なせずにすんだわ」

 

「それは良いけど、あなた達攻略組じゃないわね?」

 

「は、はい……私はチカ。【ゴスペル・メルクリウス】に所属しています」

 

「【ゴスペル・メルクリウス】……下層プレイヤーの保護ギルドね。私はフィリア。攻略組兼トレジャーハンターよ」

 

お互い自己紹介――ウィスタリアとノゾミの分はストレアが紹介した――を終えたのち、HPが全回復したのを確認するとフィリアを先頭にダンジョンの脱出を試みた。

 

「ここ62層よ。どうやら安全域が結晶無効化エリアになってるみたいね」

 

 

後編に続く――。

 




次回「黒は怒り、そして紫は暗がりで躍る」

(・大・)<次回は12月31日。できれば朝方に投稿したい。
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