プリンセス・アート・オンラインRe:Dive   作:日名森青戸

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前回のあらすじ。
前々からに食材や素材アイテムを入れた【トリンケット】を送っていた不審者、ストレア。
彼女の物言いは何やら思わせぶりな点がいくつか見られたが、彼女の提案を受けてラジラジは彼女を【ブレイブ・フォース】に迎え入れる。
その1か月後、ノゾミ、チカ、ウィスタリア、カオリ、ストレアの5人はウィスタリアのレベリングの為に48層のダンジョンに潜っていたのだが、トラップにより転移。転移先で絶体絶命の危機に陥ったのだが、そこで攻略組兼トレジャーハンターを自称する少女フィリアと出会う。
そんな彼女の口から、今いる場所が62層のダンジョンだということを知らされるのだった。


(・大・)<今年最後の投稿です。

(・大・)<プリコネもSAOも、色々ありましたね。

(・大・)<来年もストーリーを中心にどうなるか、ハラハラドキドキしながら待ってます。



※4/18:



「黒は怒り、そして紫は暗がりで躍る」

「ここは62層よ」

 

自称攻略組兼トレジャーハンター、フィリアの言葉に【ゴスペル・メルクリウス】のメンバー5人は、思わず息を呑んでしまった。

 

「62……って、今の最前線じゃない!?」

 

「やはり、あの罠が原因だったのでしょうか……」

 

「罠?」

 

「48層で罠に引っかかったのよ。多分、強制的に上の階層にワープさせる類だと思う」

 

「道理で中層プレイヤーがこんな所にいる訳だわ」

 

ストレアからの説明でフィリアも納得したように頷いた。ここから48層まで14層。レベルにすれば20も差のある場所だ。安全域の外からちらほら見えるモンスターらしきマーカーはどれも血のような赤黒い色をしている。

 

「折角だし、出口まで案内するわ」

 

「本当?」

 

フィリアが提示した提案に食い気味に反応するノゾミ。ウィスタリアやチカも脱出の目処ができて顔を明るくする。

しかし、

 

「ちょっと待って」

 

そんな空気に水を差したのは、意外にもカオリだった。

 

「私、前に攻略に参加した時、会議に出た主街区でダンジョンPKってのを聞いたんだ」

 

「ダンジョンPK?」

 

「ダンジョンの奥に案内してそのプレイヤーを置き去りにするっていう、新手のPKだよ。もしかしたらこの人……」

 

いつもの陽気な彼女からは想像できない、不安げなカオリの説明に、思わず空気が一変する。

こんな所にプレイヤーが一人でいるのも聊か怪しいものだ。流石にあの罠がフィリアの仕掛けたものと言うには話が飛躍し過ぎているのではあるのだが、同じように罠を踏んで思いついた、とも考えられる。

疑心暗鬼で膠着状態となり、どっちも動けなくなってしまった中、一人のプレイヤーが助け舟を出してきた。

 

「大丈夫よ。彼女は嘘を言ってないわ」

 

そう確信めいたように告げたのはストレアだった。

その一言にストレア以外の全員が彼女を目を丸くすると同時に彼女に顔を向ける。

 

「疑うのは結構だけどさ、私達だけで脱出も無理なんじゃない?」

 

沈黙。

誰もがただストレアの言葉を聞いていた。

そして数秒後、ウィスタリアが小さく噴き出した。

 

「確かにその通りですわ」

 

「うぃ、ウィスタリアさん?」

 

「このまま助けが来るまで座して待つより、騙されたと思って彼女に着いて行くのが吉。もしフィリアさんが私達をだましているのであれば、この6人でとっちめてしまいましょう」

 

「とっちめてって……それ、本人の前で言う?」

 

「あら、こうしたほうが下手に騙そうとしないでしょう?」

 

「まったく……こっちよ。ついてきて」

 

やれやれと首を振るフィリアを先頭に、5人は彼女に着いて行くことに。

道中のモンスターはノゾミ達には到底かなわないので、避難所代わりの細い脇道に身を潜めてやり過ごしていく。

そんな行動を繰り返していく中、チカが感心したように呟いた。

 

「このダンジョンを一人で攻略していくなんて、凄いですね」

 

「確かにパーティを組んでってのが普通よね。でも、あたしの場合はソロのほうが都合が良いっていうか……試したかったのよ。トレジャーハンターのフィリアがソロでどこまで冒険できるのかをね」

 

「トレジャーハンターのフィリアとして?」

 

「ええ。数々の罠を潜り抜け、モンスターを潜り抜け、最奥に眠るお宝ちゃんを手に入れる――そういうのに前々から憧れていたのよ」

 

「憧れ、か……。なんとなくフィリアの気持ち、分からなくは無いかも」

 

フィリアの言葉に、ノゾミも同意するように頷いた。

 

「私も、10年位前かな?小さい頃に両親とはぐれちゃったの。泣きじゃくって迷ってるうちに、あるアイドルのパフォーマンスの練習を見かけたの。テレビとかで見るアイドルとは違って、傍から見てもパフォーマンスとか全然の素人だったけど、不思議と魅入られたんだ。へたっぴなパフォーマンスをしていたあの人たちが、不思議と輝いて見えて。人って、こんなに輝けるんだって思った」

 

懐かしむように語りながら見上げるノゾミ。

視界にはダンジョンの天井が映るばかりだが、彼女には恐らくその時の光景が浮かんでいるのだろう。

 

「それでその後、両親にライブの真似をしたりしていく内に、どんどん音楽やアイドルへの憧れが燃え上がっていくのを感じていくのを自覚したのは小6の頃なんだ。そこでユナと一緒に音楽を学んで行ったり、ダンスを録画したりしたのよ。まぁ、機械の事は全部ノーチラスに丸投げしていたけど」

 

あはは、と当時を恥ずかしそうに語る。

ノーチラス(英二)も当時は最早いい思い出とから笑いを上げていたが、その表情から相当苦労したのだろう。

 

「それが貴女がアイドルを目指す理由なのね。中々素敵じゃない」

 

「どうも。次はフィリアさん、あなたの番よ」

 

「私?そうね……」

 

バトンタッチと言わんばかりにノゾミに促されたフィリアが一瞬面食らったような表情になったが、少し考え込んで語りだした。

 

「私もきっかけは、近所に住んでる冒険家さんかな?」

 

「冒険家……そんな方がいらっしゃったのですか」

 

「うん。といっても、私も実際に会ったのは5、6回くらいよ。それでも帰って来て、いたずらっ子な娘さんと一緒に冒険の土産話を聞くのが好きだったわ。思えばそのころからかしら、トレジャーハンターっていうのに興味を持ち始めたのは」

 

「素敵な話ですわ」

 

「どうも。まぁ、あなた達からすれば面白くないかもしれないけどね……。実を言うと、こんな状況にした茅場明彦をに私はほんのちょっと感謝してるのよ」

 

「かっ、感謝ぁ!?」

 

照れくさそうに本音をぶちまけたフィリアに、ウィスタリアが5人の意思を代表するかのように素っ頓狂な声を上げた。他の4人も声を上げずとも、その表情から驚いているのが手に取るようにわかる。

意識をゲームに閉じ込められるという前代未聞の状況に陥ったと宣言された1万人のプレイヤーは帰れない絶望と死ぬかもしれない恐怖、そして茅場明彦への怒りが渦巻いていた。

中には絶望に折れて外周へと投身自殺をしたプレイヤーも今ではいないものの、当時は第1層のボスが討伐されるまでの1か月間、ノゾミ達の頑張りを嘲笑うかのように日に平均で80人近いプレイヤーが果ての無い空へと命を投げ捨てた――。

シズルですら弟妹に会えない絶望から心を擦り減らし、正気を失うか否かの瀬戸際にまで追い詰められたほどだ。シリカが居なければ、今頃廃人同然の状態になっていたかもしれない。

フィリアの当時の感情は、SAOに捕らわれた人からすればどうかしてるとか思えないだろう。

 

「確かに会えないかもしれない、死ぬかもしれないって絶望したのは事実よ。けど同時に、現実を気にせず思いっきり冒険ができるって思ったのよ」

 

「あ、頭大丈夫なの?」

 

信じられないと言った表情て返すストレアが面白く感じたのか、フィリアも思わずふふっ、と笑う。

 

「そうね。今から考えてもどうしてあんなこと思ったのかわからないわ。でも、現実に残したあの子にこの世界の冒険譚を聞かせる為にも、絶対に生きて帰る」

 

ぐっと拳を握り締めるフィリアの顔には、ある種の信念を感じられた。

そう言っているうちにダンジョンの出入り口が見えてきた。

 

「ここからすぐ近くに主街区があるから、そこから転移ゲートで帰ってね」

 

「ありがとー!あ、さっきは疑ったりしてごめんね?」

 

「気にしてないわ。これに懲りて二度と最前線に行こうとは思わないでよね」

 

カオリを先頭にストレア、ノゾミ、チカ、そしてフレンド登録を終えたウィスタリアがフィリアに礼を言いながら外に出る。

 

「――うわっ!?」

 

外に出ようとした時、同時にダンジョンに入ろうとした黒づくめのプレイヤー、キリトと鉢合わせた。

キリトもカオリならまだしも、ウィスタリアやノゾミ達がいることに驚いているようだ。

 

「あれ、キリト?久しぶりさー!」

 

「お前らなんでこんな所にいるんだよ?ってか、見ない奴もいるな?」

 

「どーも。【ブレイブ・フォース】所属になったストレアでーす」

 

抱き着こうとしたカオリを避けて、キリトが訊ねる。

その傍ら、フィリアは悟られないようにダガーの持ち手に手を握る。

 

(確か、あいつは第1層のボス攻略の時……)

 

フィリアも《ビーター》という名は聞いた事がある。

第1層のボス攻略の際、当時の攻略プレイヤーの一人が叫んだことが由来だ。そこから先は攻略組は彼を邪見に扱い誰も彼をパーティやギルドに入れようとしなかった。

その後はしばらく大きな噂を聞かなかったものの、6月にその噂を聞くことになる。それが『【月夜の黒猫団】潰滅事件』。

主に20層前半で活動していた【月夜の黒猫団】が、ある日突然壊滅した。その原因はモンスターによるものではない。

PK行為――。プレイヤーの手に掛かって殺されたのだ。その犯人こそが……今自分の目の前にいる少年、キリトである。

 

気付かれないように静かに警戒するフィリアを他所に、ノゾミが簡潔に説明する。

 

「ちょっとしたトラブルに巻き込まれたのよ。ここから19層下のダンジョンからね」

 

「……49層からか?」

 

「はい。罠に引っかかったらしくて」

 

その時、僅かにキリトの眉がピクリと動いたが、ウィスタリア達は気付かずに続ける。

 

「早速49層に向かってダンジョンの情報を更新しなければなりませんわ。ですが、次に向かう時はあのような手には――」

 

「……ふざけんなッッッッ!!!!!」

 

ウィスタリアを遮り突然キリトが叫んだ。

直後、彼女の胸ぐらを掴み、ぐいと引き寄せる。

 

「ちょっ、何を……ッ!?」

 

「お前、自分が何をしたのか分かってんのかッ!?お前の勝手な行動で危うく死に掛けたんだぞッ!!!いやお前だけじゃない、お前がレベリングの為に連れてったこいつらまでッ!本当に死ぬ所だったんだぞッ!!!」

 

「で、ですが今回は……」

 

「今回は無事に済んだから次も大丈夫ってか?随分調子に乗ってるんだな!次に引っ掛かった罠はなんだ?閉じ込めた後ある人数になるまで無限にモンスターが湧き続けて嬲り殺しにする奴か?それとも解除の装置を起動するまで天井が迫って皆殺しにする奴か?それで殺されたら、付いて来た奴らはとんだ犬死にだよ!」

 

「犬死にってそんな……」

 

「今回はたまたまそいつがいたから良かったものの……、後悔してからじゃ何もかも遅いんだよ!!」

 

怒声と共に突き飛ばし、キリトは踵を返して足早に帰っていった。

小さくなっていく黒い影を誰も呼び止めることはできなかった。ウィスタリアもこの時は言葉が出てることは無かった。

無理もない、キリトの言っていたことは的を得ている。実際に彼女らは安全地帯から抜け出た直後にモンスターに襲われ、危うく死に掛けたのだから。しかも49層でも彼女のレベルである53――安全マージンを無視したプレイングをしていて49層でも不意討ちを食らえば死ぬ可能性があったかもしれないからだ。

そして先程の戦闘。ウィスタリアは壁に激突した衝撃で虫の息かつ沈黙の状態異常、カオリは防戦一方、チカはまるで相手にされず、ノゾミは剣を折られて締め上げられ――まともだったのはストレアだけだった。

もしフィリアがあの場に居なかったら、全員あの場で死んでいたということは十分にあり得た結果になっていたかもしれない。

 

「……あぁ……まぁ、あれよ。あんまりくよくよしないでね?」

 

「え、ええ……」

 

沈黙で静まり返った一行にフィリアが申し訳程度に声を掛けるが、ストレアを除く4人は心ここにあらずといった様子だった。それから始まりの街まで帰る間、一行は沈黙したままだった。

ギルドハウスに到着後、ウィスタリアに呼ばれたノゾミ、チカ、カオリ、ストレアの4人。

 

「本当に申し訳ございません」

 

執務室に呼ばれて早々、ウィスタリアが4人に頭を下げた。

藪から棒に頭を下げた彼女に4人とも面食らったが、理由はすぐにわかった。

 

「昼の事?」

 

ストレアの指摘にウィスタリアは力なく頷いた。

 

「……皆さんを守ると(のたま)いながら、レベリングに夢中になって皆さまの事を蔑ろにしてしまい、挙句罠に嵌ってしまって……結果的に皆さんの命を危険に曝してしまいました。もしフィリアさんが来ていなければ……」

 

そこから先は言えなかったが、安易に予想できてしまう。

沈黙が部屋の中を包み込んだ。

 

「……キリトさんの言う通りですわね。高を括っていた。それで皆さんを……」

 

「本当に反省してるのね」

 

ウィスタリアの自責の言葉を遮り、ストレアが言う。

 

「で、どうするの?責任取ってギルドをたたむ?」

 

「なっ!何を仰っているんですの!?それとこれとは話は別ですわ!私達がいなくなったら、誰がこの街の方々を纏めるんですの!?」

 

反射的に反論するウィスタリアにストレアがクスリと微笑を浮かべる。

 

「当初の目的であるプレイヤーの保護と商業は続けていきますわ!確かに今回の事は反省すべきことですが、それとこれとは話は別ではなくて!?大体、自分で決めておいたくせに勝手に辞めてしまったら、今後は誰が始まりの街を見守るんですの!?」

 

反論を述べるウィスタリアは、喧嘩を焚きつけられたように述べる。

 

「とにかく!私が皆さんに伝えたかったのは、今回危険に巻き込んでしまったことの謝罪!そして、そのことを心に刻み再び邁進していくこと!よろしいですわね!?」

 

反論のせいで半ば自棄気味ではあるが、すっかり調子は戻っていたようだ。

だが、それでもノゾミ達からすればしょぼくれているより今の状態のほうがウィスタリアらしい。この1年間彼女を見てきたからこそ、そう思えるのだ。

 

「ありがとうございます。ウィスタリアさん」

 

ノゾミの口から自然とそんな言葉が出た。それを聞いたウィスタリアは少し顔を赤らめて、その日は解散となった。

 

 

 

 

誰もが寝静まった街中。あるプレイヤーがあまり人通りの無い西区でウィンドウを開いた。

 

(現状、最前線はあらかた探しつくした。あと探していないのはこの《始まりの街》だけ……。人通りの多い南区や道具屋などがある東区の可能性は低い。残ってるのは西区と北区の《生命の碑》のある部屋……)

 

「何か探しものですか?」

 

思考に耽っていた所を背後から声を掛けられて我に返る。

振り返るとそこに立っていたのは、【ブレイブ・フォース】のギルドリーダーラジラジだった。

 

「いつからそこにいたのよ?」

 

「いえ、こちらもここらに用があったので」

 

「まるであなたも何か探しているみたいね」

 

獣が呻いて威嚇するように、不敵な笑みを浮かべたまま挑発的に返す。

 

「……私のギルドに入った理由は、案外私の本来の目的と同じなのでは?」

 

「さぁ、どうかしら?」

 

静かな街路で、仲間であるはずの2人の間に張り詰めた空気で満たされていく。

しかし、その空気は一瞬で消え去った。

 

「――なら、敵対する必要も無いでしょう」

 

「あら以外」

 

「もともと私とあなたの目的は合致しています。敵対する理由がどこにあるのですか?」

 

「それもそうね」

 

くるりと踵を返したラジラジが思い出したように振り返りながらストレアに伝えた。

 

「そうそう、この区画は私がすでに調べてあります」

 

「……教えてくれてどうも」

 

そのまま西区を後にするラジラジの姿が消えるまで見届けると、ストレアは残る箇所……《黒鉄宮》のある方角へと振り返った。

 

 




次回「閑話:待つ者達」




(・大・)<今回は直葉一人称メイン。

(・大・)<ALO編で登場する予定のキャラとかが登場します。


(;・大・)<にしても、朝方とか言いながら投稿が昼って……。

(´・大・)<今回もほぼ6千字じゃん……。3千字にまで抑えておきたい……。

(・大・)<次回投稿は1月3日になります。
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