プリンセス・アート・オンラインRe:Dive   作:日名森青戸

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(・大・)<ノゾミのアバター体の髪色については自分のイメージです。

(・大・)<優衣や真琴ならまだわかりやすいのに……。

( ;・大・)<誰か彼女の髪の色合い教えて。


※2023年 1/9:今後の設定の為本文内容を訂正しました。


『浮遊城の恋、かつての大地』

「マコトー、一つ良いか?」

 

その日、【ゴスペル・メルクリウス】のギルドホームを訪れたテンカイは出し抜けに声を掛けた。

 

「ど、どうしたんだよ急に?」

 

呼ばれた当人たるマコトはややたじろぎながら対応する。

いつもは勝気で男勝りな彼女だが、1年前からはテンカイの前ではこうである。

 

「この前61層の商売の帰りに、良さげな店を見つけたんだよ」

 

「うん」

 

「だからさ、今度行ってみるか?一緒に」

 

「うん」

 

「そっか。じゃあ明後日、12時にな」

 

「うん」

 

用件を言うだけ言って、ポンと彼女の頭に手を置いた後、そそくさと去って行った。

そしてたっぷり30秒後。

 

「……あれ?これってデート?」

 

「遅いよ!?」

 

我に返ったマコトの呟きにユイがツッコミを入れたのだった。

 

 

 

 

その翌日。24層のとある喫茶店。

 

「――という訳です」

 

「へぇ~。デートのお誘いかぁ」

 

「マコトさんも中々隅に置けないね?」

 

にやついた笑顔を浮かべながらからかうアスナとユナ。

当のマコトは顔をこれでもかと真っ赤にさせて、更には頭から湯気を昇らせている。

 

「それで、デートの場所は?」

 

「61層だって言ってました」

 

「へぇ。中々センス良いじゃない」

 

61層は広大な湖の中にある城塞都市の小島だ。その風景は現実には滅多に無い絶景で、料金は()()()ながらも住みたい街として有名である。観光するにももってこいだ。

 

「とはいっても、色々大丈夫なのか不安になってな……服装とか」

 

「なるほど。確かに第一印象は大事よね」

 

納得しながら紅茶を一飲みするアスナ。今のマコトの服装は私服も兼ねた金属板を打ち込んだ軽装。

 

「実はさ、50層に新しいお店ができて中層域の人達を中心に人気なんだって。今度そこに行ってみない?」

 

「へぇ。そんなのができてたんだ。40層より上は行った事無いから、案外凄い腕の職人だったりして」

 

「高飛車対応だったら最悪だけどな」

 

未だにネガティブの抜けないマコトの一言に、3人は揃って噴き出した。

 

 

 

 

50層〈アルゲート〉。

 

 

その店に行くため、アルゲートの南側へと歩みを進める4人。少し主街区の通りから外れた通りへと到着すると、すぐに見つかった。

扉を開けるとカランと音が鳴り、接待用のNPC店員の機械質な受け答えに応じる。店に入ると先客がいたらしく、奇抜な姿のプレイヤーと2人の少女が店主らしきプレイヤーと会話していた。

 

「あ、いらっしゃいませ――って、あれ?皆さんどうしたんですか?」

 

「ツムギちゃん?――って、ノゾミちゃんにチカちゃんも!?」

 

「なんだよ、アスナの言ってた店ってお前ん所だったのか」

 

意外な事にカウンターから声を掛けたのはツムギだった。しかもノゾミとチカだったことがより驚きに一入(ひとしお)を加えている。

 

「あらアスナじゃない。あなたも服を仕立てに?」

 

「アシュレイさん。いえ、今日は彼女の服を買いに来たんです」

 

奇抜な姿で女性口調で喋る青年にマコトとユイは思わず一歩引いてしまうが、アスナは何事も無いように彼と会話をする。

 

「アスナさん、師匠(せんせい)と知り合いなんですか?」

 

「うん、ちょっとね。あ、マコトちゃんの事なんだけど、良いかな?」

 

「いや、ちょっと……!」

 

慌てて止めようとするマコトをユイとユナの2人がかりで羽交い絞めにしてる間にアスナが事情を説明する。

 

「なるほど。デート用の服ですか。それならお任せください!」

 

「ありがと「ただし!」え?」

 

「同じギルドメンバーだからって割引は聞きませんからね?」

 

「あ、ギルメン割りは無いのね……」

 

ズビシ!と指を向けてきたツムギに苦笑しながらユイは頷いた。

改めて衣服を探しに陳列棚へ。

 

 

 

「これ、どうかな?」

 

数分後、そう言ってユイが手に取ったのは薄紫のノースリーブにグレーのミニスカートだ。

 

「え?こんなん着るの?」

 

「はいはい大人しく着てく」

 

受け取ったマコトは困惑していたが、ユナとノゾミの手によってずるずると試着室へと引きずられていった。

 

「でも驚いた。ツムギちゃんがアシュレイさんの弟子だったなんて」

 

「あの子、筋は良いのよ。多分現実でも裁縫の経験があったんじゃないかしら?」

 

アシュレイは今の彼女を見て昔を思い返すように目を細めた。

現実で培った裁縫の技術をVRMMOでどこまで行けるか、そんな興味がアシュレイをSAOにダイブする理由だ。恐らく彼自身茅場の宣言に対して好都合と言うものだったのだろうと今でも彼自身そう思っている。

宣言から5か月後、別の階層で裁縫スキルを上げている中、衣服の販売を目的として知り合い自分の腕前を見た彼女の中で何か感銘を受けたのか、自分を弟子にしてくれと申し出てきたのだ。

アシュレイも粗削りなツムギの腕を見込んでしばらくはアシスタントスタッフとして彼女を迎え入れた。

彼女の面倒を弟子と言う名目で見ているうちに、彼女の裁縫の腕は自分に迫るものを感じ、同時にこれからの才能の伸びに期待も感じた。

 

3ヶ月ほど前に無事ツムギはアシュレイの弟子から裁縫師として認められ、店を持つと同時に独り立ちした。今では防具としての性能よりも、服としてのデザインから女性プレイヤーを中心に人気を集めている。

彼女が独り立ちした今も職人仲間として、たまに彼女の店に顔を出している。

 

「自覚してないかもだけど、あの子は誰かを輝かせる才能に恵まれ、その輝きに直向きになっている。この世界で体験したことはあの子にとって悪夢じゃなくて、素晴らしい思い出としていつまでも覚えておいてほしいって思ってるわ」

 

「アシュレイさん、まるで師匠と言うより親子みたいね」

 

「あら失礼ね。これでもあの子の憧れの人よ?まだまだ弟子に後れを取る気なんてないわよ?」

 

会話が終わると同時に試着室のカーテンが開かれた。

 

「わぁ、凄く似合うよマコトちゃん」

 

「随分印象が変わったわね」

 

「そ、そうか……?」

 

手渡された衣服の裾を結び、へそを少しだけ出したスタイルにしている。

野生の狼の毛並みのようなロングヘアはポニーテールのように上にまとめてある。現実でも見慣れたユイにも新鮮な印象を与えていた。

 

「うーん……」

 

「ツムギ?」

 

「センスは良いけど、まだまだみたいね」

 

「アシュレイさん?」

 

ただ2人、アシュレイとツムギはそのマコトの姿に眉を潜ませていた。

 

「いえ、採寸が少し短かったみたいです。チカさんをモデルにしてみたのですが……そもそもモデルが違いますからね」

 

「……そうですか」

 

「帯に短したすきに長し、か……。でも、これなら丈の調整可能です。ちょっと待っててくださいね」

 

ノースリーブから元の金属軽装に戻し、服を受け取ったツムギがカウンター奥の部屋に行くとマコトはどっと疲れが出たのか、スツールにどかりと座りだした。

 

「酷い目に遭った……」

 

「でも似合ってたよ?」

 

「あ、そうだ。これ使ってみる?」

 

ユナが思い出したようにストレージからある物をいくつか取り出した。

缶ジュースのような小さい円筒に、上側にボタンのような物とそこから伸びたノズル、所謂スプレー型のアイテムだ。

側面はオレンジやエメラルド色、浅緋色にピンク。それぞれの色に染められている。

 

「これは?」

 

「染髪用アイテムだって。ノズルをプレイヤーの髪に向けてボタンを押すと、その色に紙を染められるのよ。やってみて」

 

ユナから浅緋色のスプレーを受け取ったノゾミは早速、言われたとおりに頭に向けてボタンを押す。すると側面と同じ色の煙がノズルから吹き出し、髪に接触する本来の栗色の髪が、すぅっと変わっていき、ものの数秒で栗色の髪が浅緋色へと変わっていった。

 

「おおおおおおおおッ!!!凄い凄い!印象がガラリと変わったよ!」

 

「次のライブを楽しみにしてる人にとってはサプライズかもしれませんね。ユナさんは試されたんですか?」

 

「それが、あんまりこれだって色が見つからなくてね……クエとかで集めたは良いけど、NPCショップに売って処分しようかって思ってたんだ」

 

「そうなんだ。――って、ひゃああ!?」

 

「お返しだこのヤロ!ついでにコイツも!」

 

談笑していた所に油断してマコトがユイの後ろからピンクのスプレーを吹きかけた。途端にユイの髪がピンクに染まる。直後にカチューシャを頭に填められる。

 

「もう、やめてよ~」

 

マコトの悪戯に笑いながらふと鏡を見た瞬間、ユイが固まった。

 

「どうしたの?」

 

アスナが彼女の顔を覗き込んだ瞬間、ギョッと言葉を詰まらせた。

ユイが泣いていた。固まった表情そのままに、ぽたぽたと双眸から涙を流していた。

思わぬリアクションに一同が文字通り後ずさる。

 

「ちょっ、ちょっとユイちゃん大丈夫!?」

 

「マコトさんいったい何したの!?」

 

「いや知らねぇよ!?カチューシャ着けてピンクに髪染めただけで……あっ、まさか髪染めたことで現実でイジメを受けていたとか……!?」

 

「違うよ。服は違うけどこの髪色を見て、昔のゲーム仲間の事がどうしてるのかって……」

 

「昔の?」

 

「ゲーム仲間?」

 

慌てるマコトたちに対してユイの訂正と同時に出た言葉に、アスナとチカが素っ頓狂な声を上げた。

 

「ああ。確かSAOの前にもゲームをやってたっけな。えーっとなんだっけ?めじぇ、じゃない……。れ、れじぇ……?」

 

「『レジェンドオブアストルム』」

 

ユイが述べたその名前にマコトが「それだ!」と声を上げた。直後にアシュレイも思い出したように呟く。

 

「聞いた事があるわ。レビューでは『VR以前のゲーム史に残る最後の神ゲー』って呼ばれてたのよね。あなた、それをやってたの?」

 

「あ、それなら私も聞いた事あります。小学校のクラスメイトだった子もやってたって」

 

「その時に会った友達と、一緒に……」

 

少し表情に影を落としながらユイは頷き、思いをはせるように天井を見ながら呟いた。

 

「みんな、今頃どうしてるのかなって……」

 

「へぇ。人は見かけによらないんだね」

 

感慨深く頷いたノゾミが頷いた時だった。「そういえば」とユイが思い出したように呟いた。

 

「どうしたの?」

 

「アストルムは彼もプレイしてたのを思い出したの」

 

「彼?」

 

「キリト君だよ。攻略組の」

 

「キリト君が?」

 

意外そうに声を上げたのはアスナだった。そんな彼女にユイは頷き続ける。

 

「私のギルド仲間が、ちょくちょく彼と決闘してたの。最初は手合わせ程度だったけど、回数を重ねるうちにどんどんヒートアップしていって、私達でも止められなくて……」

 

「はいはい。私闘も決闘も思い出話も後ですよ」

 

そう言って仕立て直した服を手にマコトがカウンターの奥から出てきた。

 

「はい。今は明後日のデートが大事じゃないんですか?」

 

「お、おう。そうだな……ありがと」

 

「頑張ってくださいよ?」

 

代金を払い、ツムギからの茶化しを交えた声援を後にマコトたちは店を後にした。

 

「後はマコトちゃんの頑張り次第だよ?」

 

「あ、ああ……なあユイ」

 

その帰り道、未だ煮え切らない様子のマコトに声を掛けるユイ。

暫く歩いた後、くるりとマコトはユイの方を振り向き、

 

「うん?」

 

「あのさ……明後日のデート、代わりに出てくんね?」

 

真顔でそんなことを言われて、思わずずっこけそうになるユイ。

 

「そっ……それは……ッ、自分でやらなきゃダメでしょッッッッ!!!!!」

 

体勢を立て直すと同時に出てきたユイの叫び声は、アルゲートの空にどこまでも響くのだった。

 




次回『初めてのデート』



(・大・)<アストルムの詳細はALO編に入ってからにしようと思います。

(・大・)<一応プリコネの舞台ではVRとして綴られていますが、拙作では据え置き機ゲーム、つまりVR以前のゲームという扱いにしております。

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