プリンセス・アート・オンラインRe:Dive   作:日名森青戸

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(・大・)「ようやく投稿」

(・大・)「最近ビーストテイマーと新米錬金術師にハマりだしてヤバい」


【番外編】「こうあってほしかったプリコネ×SAO:後編」

 

 

アスナたち後衛サイドの前に立ちはだかった骸骨モンスター。

刀と化した両腕を巧みに操り、アスナたちを中々近寄らせない。

 

「当たれぇ!」

 

カスミの魔法とシノンの弓が放たれる。しかし、骸骨はまるで滑るように回避。そして再び滑るように2人に接近し攻撃する。

 

「このモンスター、とんでもなく速いですよ!」

 

「さっきのミノタウロスとは全然違うみたい……みんな!こうなったら攻撃を避けた隙を突くしかない!シノのん、矢を!」

 

「ええ!」

 

アスナが武器を杖から細剣に変え、イオ、シリカと共に駆け出した直後にシノンが矢を放つ。当然右へと回避したが、そこにはソードスキル発動準備をした状態で跳躍したシリカとイオの正面だった。

 

「貰ったッ!!」

 

確実に直撃する。そんなシリカの確信を裏切り、骸骨モンスターが後ろに回避した。呆ける暇も無くタックルで吹っ飛ばされる。

 

「大丈夫!?」

 

「平気よ。今の、確実に当たったと思ったのに……」

 

「そっちは大丈夫カ?」

 

アルゴがバックステップで合流する。

 

「アルゴさん、キリトさん達の方はどうなってるんですか?」

 

「……正直、旗色は悪いナ」

 

 

 

 

 

その頃、キリト達前衛中衛側。オベイロンの召喚した妖精兵士の群れにキリト達は苦戦を強いられていた。

 

「クソッ!まだ湧いて出てくるのか!?」

 

「幾ら斬ってもキリがねぇぞ!?」

 

妖精兵士はいくら倒してもすさまじいスピードで新たに現れ、総体としては全く減っていない。それどころか増えているようにも感じる。

 

「こいつ等、リポップのスピードが尋常じゃないわよ!?」

 

「それって倒した傍から復活してるって事!?何それずるい!」

 

「待ってろ、今「きええぇぇぇーー!!!」うわっ!?」

 

援護に駆け付けようとしたキリトにオベイロンが奇声を上げて斬りかかった。

 

「よくも、よくも50回目の逢瀬を邪魔してくれたなああああああ!!!貴様だけは許さん、この私の手で切り刻んでくれるぅぅぅ!!」

 

「お兄ちゃんが滅茶苦茶タゲられてる!?」

 

「あらら。あいつからしたらキリトは憎き恋敵って事かな?」

 

「ええっ!?冗談はよせよ!」

 

ストレアのからかいも、オベイロンと妖精兵士の剣戟を防ぐ。

 

 

 

 

「皆さん、お話があります!」

 

突如ユイが叫ぶ。

 

「あのモンスター達を調べたのですが、とんでもない事実が判明しました!」

 

「ユイちゃん、とんでもない事実って?」

 

「まずあのモンスターについてですが、俊敏性が異常な数値です。あれでは、攻撃を当てるのは至難の業です。パパたちが戦っている妖精兵士も、リポップーー復活までのスピードが異常です。あれではどちらも攻略不可能なレベルです!」

 

ユイの口から告げられた言葉にシリカは息を呑んだ。

元々ゲームのクエストと言うのはクリアされるのを前提としたうえで作っていくものだ。どれほど難しい内容だったとしても、技術や根気があれば必ずクリアできる。

しかしこのクエストは、ユイの言葉が事実なら本当にクリアできないかもしれない。そんな絶望が身体を浸食していく。

 

「ですが、ステータスの隙を突けばどうにかなるかもしれません!」

 

しかしその絶望は全身に回る前に止められた。

 

「ステータスの隙?」

 

「まずあのモンスターですが、ママに攻撃しないように設定されています。それと、拘束系の魔法耐性がほぼ0です!そして妖精兵士は、誘惑の状態異常への耐性が皆無です!それらの魔法を使えば選挙区を覆す事は可能です!」

 

「拘束魔法に誘惑魔法って……」

 

ALOの拘束魔法はポピュラーな分類に当たる、強敵の動きを封じるのによく使われる魔法だ。しかし小型モンスターにはこのスキルの耐性を持つものが多く、今のメンバーの中には使える者はいない。

誘惑の状態異常を与える魔法はマイナーの中のマイナーに当たる魔法だ。モンスター限定で同士討ちを狙えるのだが、ボスモンスターには当然効かないし、どの種族でも覚えるにはかなりの魔法熟練度を要するので、別の魔法を取った方が早い。

要するに詰んでしまっているのだ。――たった2人を除けば、の話だが。

 

「誘惑魔法なら私、使えるわよ?」

 

「拘束系なら私が」

 

「使ってんの!?マジで!?」

 

「ですが好都合です。センセーはパパ達の援護に行ってください!」

 

「よし……アスナさん!さっきの作戦をもう一度使うよ!今度は私も参加する!」

 

「分かったわ!」

 

すかさずイオが前衛グループの援護に向かい、代わりにアルゴが後衛グループに加わる。

そして再び先程と同じフォーメーションにカスミを加えた陣形を取る。

スカルデーモンがシノンの正面に立った時、シリカとアルゴ、アスナが駆け出し、数テンポ遅れてシノンが矢を放つ。

同じようにデモンリーパーがシリカとアルゴの正面に立つように避けた次の瞬間――。

 

「――ルートオブバインド!」

 

再び反撃をしようとした矢先に、カスミの魔法が炸裂する。

魔法の帯が幾つも形成され、デモンリーパーの右肩を固定するように絡みつく。

 

「「貰ったぁ!!」」

 

振りかざした腕に気を取られた隙にアルゴとシリカのソードスキルを叩き込む。俊敏性に偏ったのが仇になったのか、上位ソードスキルを受けて全体の3分の1近くもHPバーが削られる。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

続けて急旋回したアスナがレイピアを手に跳躍する。気付いてデモンリーパーが距離を取ろうとした途端、米神にシノンの矢が直撃する。追い討ちにアスナの得意技でもある細県債上位ソードスキル《スター・スプラッシュ》が炸裂する。8連続の刺突が全てデモンリーパーの肋骨を的確にとらえ、最後の一突きが眉間に突き刺さる。

ただでさえ大ダメージを受けていたデモンリーパーは残ったHPが全て消し去られ、たちまちポリゴン片となって爆散。その中心部に先程のデモンリーパーの腕を彷彿とさせる、鍔元の部分に召喚の魔石が埋め込まれた刀が突き刺さっていた。

 

「凄い、あっという間にやっつけられました……」

 

「とにかく、キー坊達の援護に向かうゾ!」

 

 

 

 

一方、前衛、中衛側に回ったイオは目を閉じ集中する。

 

(なんとなく分かる……。彼の力を受けた時と同じ感覚が……行ける!)

 

「ハートラブサイクロンッ!!!」

 

解き放ったのは自分の尾を模した魔法の槍。意志を持ったかのように次々と妖精兵士を貫いていく。しかしダメージとしては微々たるものなのか、消滅した者はいない。だが、魔法を受けた妖精兵士の1体が突如他の妖精兵士に斬りかかっていく。

 

「ありゃあ、誘惑魔法か?」

 

「すっげぇ!一気に敵が潰れていくぜ!」

 

エギルとクラインがそう言っている間にも次々と妖精兵士が

あっと言う間に最後の2体も同士討ちで倒れ、残るはオベイロンのみとなる。

 

「こっちも片付いたみたいだな。もう後がなくなったぞ、オベイロン!」

 

「ぐぎぎ……!おのれぇ……!折角の50回目の愛の断りを阻む汚らわしい妖精風情がぁ……!」

 

「遅ぇよ!」

 

すかさず距離を詰めて斬りかかる。その直後、凄まじい勢いで剣が弾かれた。

 

「――なっ!?」

 

驚愕するのも束の間、弾かれた反動を利用して後ろに飛び、オベイロンの斬撃を回避する。

大きく後退した後にオベイロンを見ると、彼の前に紫色のメッセージエフェクトが表示される。

 

「不死属性!?」

 

驚愕する間にキリトから見て正面と左右の壁が光を放つ。光が消えると一つの壁にそれぞれ4体のモンスターらしき壁画が現れ、それぞれ縦3マス、横10マスに並んだ数字が刻まれた剣を突き刺す台座が現れる。

 

「なんだありゃ!?」

 

「このオベイロンが、貴様ら如きに膝をつくものかあああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

ヒステリックな悲鳴を上げ、エクスキャリバーを振り回してオベイロンが迫る。

同時に妖精兵士も何体か再び召喚され、剣を構えて襲い掛かる。

 

「おい、どうなってんだ!?倒すべきボスが不死属性を持っちまったら、攻略できなくなっちまうだろ!?」

 

「そんな馬鹿な話があるカ!クソッ、なんで不死属性が……!?」

 

「不死……つまり攻撃が効かないって事?」

 

合流したエギルとクラインが叫ぶも、アルゴは頭を掻くくらいしかできない。

肝心のオベイロンが不死身の存在となった今、ボス攻略は完全に積みとなってしまう。

その時、こつんとシリカの後頭部をつついたピナが呼びかける様に鳴く。

 

「ピナ?一体どうし――なに、これ?」

 

釣られて振り返ったシリカが壁画の間に刻まれた文字を見つける。

 

「どうした?」

 

「ピナが見つけたんですけど……」

 

「……?どこかの文字カ?」

 

「これは、ランドソル語?」

 

「わかるの?」

 

「……問題は無い。現代語で記されている――『三界より来たりし者を帰還させるには、春を告げし日に獣の巨剣を、冬の始まりの日に命を刈り取りし妖刀を、春と冬の境目に黄金の聖剣を突き立てよ。さすれば次元を繋ぐ門を開かん――』だそうだ」

 

「どういうことだ?」

 

「かいつまんで説明するなら、この文の説明にある日にちに3本の剣を突き刺し、その門を開かなければならないんだ。恐らくオベイロンが不死の存在となった今、その門の内へ放って次元の彼方に追放するしか方法は無い」

 

「それは分かったけど、この中から一つを選んでそこに剣を突き刺せって言うの?ざっと見ただけでも300以上は下らないわ」

 

ずらりと3面に映し出された壁画と台座の数に、思わず言葉を失う。この中から一つ一つ突き刺すのではあまりにも時間が掛かりすぎる。その間、キリトは執念深いオベイロンを名乗る不死身のNPCと戦い続けなければならない理不尽を強いられる。

 

「……50」

 

ふと、カスミが呟いた。

 

「え?」

 

「そういえばオベイロンは、何故50年にこだわっていたんだい?」

 

「50?ああ、確かさっきも逢瀬がどうとか言ってたけど……」

 

「最初に会った時も、『ちょうど50年目』と言っていました。恐らく、関係があるかと思われます」

 

キーワードは『50年』と、『3本の剣』、そして『境目』。これらを解かなければ門を開くことも、オベイロンを門の向こう側に追放することもできない。

逆を言えば、この謎さえ解けば一気に攻略への光明が差す。

 

「50年……オベイロンとティターニア……春と冬の始まり……」

 

「ねぇ、ひょっとして立夏と立冬を表してるんじゃないかな?」

 

「アーチャンには悪いケド、仮にそれが正解だとしたら、どうして無意味なことをオベイロンはしつこく繰り返しているんダ?こういうのは大抵NPCの台詞には攻略のヒントがあるからナ」

 

アスナの提案も、アルゴは厳しく返す。

 

「50年と言うと……金婚式、とか?」

 

「「金婚式?」」

 

シノンのひねり出した一言に、リーファとアルゴが思わず声を上げる。

思わぬリアクションにギョッとするシノンを他所に、2人は頭を抱えて黙り込む。そしてびしっとシノンを指すと同時に叫んだ。

 

「「それだ!!」」

 

「……!そういう事か!」

 

2人に遅れてカスミも糸に気付き、すぐに指示を飛ばす。

 

「シリカさん、エギルさん!私の言う場所にそれぞれ剣を刺してほしい!場所は――だ!」

 

「おう!」「はい!」

 

「シノンさんはこっち側からアレの動きをけん制してください!あたしはキリト君たちに知らせてきます!」

 

「ええ!」

 

「オレッチはここに残る。他は全員、妖精兵士の数を減らすゾ!!」

 

アルゴの一言で全員が蜘蛛の子を散らした様に分かれる。

アスナはオベイロンから離れたイオとユウキに合流。細剣に装備を変えて次々と妖精兵士を倒していく。

 

「キリト君!合図をしたらそいつの攻撃を弾いて!できれば高く打ち上げて!リズベットさん、ムイミちゃん!あたしの合図で、何とか奥の方へパスを繋げて!」

 

「ええ!ムイミも暴走しないでよ?」

 

「チッ、まあいい。ぶった斬る機会が無くなったのは忌々しいけど手伝ってやる!」

 

ムイミも珍しく冷静にリーファの要望を受ける。

 

「クラインさん!ストレア!念のために私達はシリカちゃん側に妖精が来ないようにします!エギルさん側はお願いします!」

 

「おうよ!こうなったらとことん付き合ってやらぁ!」

 

「じゃあどんどん倒しちゃおっか!」

 

クラインとストレアも気合を入れ直し、改めて妖精兵士を倒していく。

 

「何を考えている?いや、最早そのようなことなどどうでも良い!下賤な妖精共を皆殺しにしてしまえばティターニアが私の元に戻ってくる!とっととくたばれぇぇぇぇぇ!!」

 

「くたばってたまるかよ!」

 

再び剣戟が繰り返される。しかし、オベイロンの剣技は今までよりも最も酷く、キリトからすれば素人同然だった。

 

「きぃえええぇぇぇぇぇぇぇいッ!!」

 

「――ッ!ここだッ!!!」

 

最上段からの振り下ろしを逆袈裟でぶつける。甲高い金属音が響き、黄金の聖剣がオベイロンの頭上高く宙を舞う。

 

「今よッ!!」

 

「ちゃんと暴走せずにしっかりやんなさいよ?」

 

「あったり前だ!」

 

そう言って駆け出すムイミ。その数メートル先に盾で頭を抱える様に構えるリズベットを盾越しに踏みつける。膝を曲げて衝撃を地面に逃がすと同時に脚に力を籠める。

そしてバスケットボールをゴールに放り込む要領でジャンプし、跳び上がった直後にリズベットの円形盾を足場にムイミが更に跳躍する。まっすぐにエクスキャリバーに突進し、その柄をがっちりと掴む。

 

「それをアルゴさんにッ!!」

 

「受け取れッ!!」

 

空中でやり投げの体勢を取り、ありったけパワーで黄金の聖剣をアルゴへと投げる。

投槍の如く刀身が突き刺さったそれを引き抜いたアルゴは、中央の4つの壁画が刻まれた台座の壁へと向かう。

 

「なッ!?それは貴様らが気安く触れて良い物ではない!返せッ!!」

 

「させないわッ!」

 

オベイロンが取り乱してアルゴに魔法を放とうとするが、それをシノンとリーファの攻撃によって阻まれる。

その間にアルゴは蛇の髪を生やした巨大な女性の首のモンスターの壁画の台座の前に立つ。

 

「次元の彼方に消えろ、オベイロンッ!!!」

 

エクスキャリバーを台座に突き立てる。次の瞬間、全ての壁画と黄金の聖剣、そして既にシリカが突き立てたデモンリーパーからドロップした妖刀と、エギルが突き立てた巨大ミノタウロスからドロップした巨剣からも同じように光を放つ。

そしてそれらから液体が溝を伝っていくように、光が線をなぞる。それらが丁度オベイロンの足元で魔法陣が描かれる。魔法陣が完成した瞬間一層強い光を放ち、オベイロンを包む。

 

「こ、これは……!?ふざけるな!この私を……この妖精王を次元の彼方に追放するとでもいうのか!?ティターニア!我が愛しの妃はどこだ!?私を助けてくれ、ティターニアぁぁ!」

 

「……ティターニアティターニアっていい加減しつけぇんだよ!!」

 

喚くオベイロンにキリトがついに啖呵を切ったように叫ぶ。

 

「今ここに居るのはアスナであって、お前の求めているティターニアじゃない!!それに、アスナがティターニアだったとしても、お前に渡す気なんて――いや、お前に指一本触れさせる気なんてあるわけないだろ!!」

 

「こッ……この……ッ!!ガキがあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

キリトの言葉に逆上したオベイロンが、端正な顔立ちを醜く歪ませた。

 

「貴様だけは、貴様だけはアアアアアアァァァァァァ!!!」

 

憎悪をたっぷりと含めた悲鳴を上げて、絞殺さんと迫る。

しかしその憎悪がキリトに届くことは無かった。オベイロンの両手が結界の外に出る寸前、一つの太い円柱となった光に飲み込まれる。一瞬より一層光が強まって、消えた時にはオベイロの姿は影も形も無くなっていた。その代わりに、煙のように揺らぐ空間の裂け目だけが残っていた。

王の喪失により、妖精兵士たちは一人残らず糸の切れたマリオネットのように膝をつき、そのままポリゴン片となって爆散した。

 

「……終わったのか」

 

「ああ。今度こそ、ナ」

 

しつこく迫られていたキリトが腰が抜けたようにその場に座り込む。

 

「ところで、何がどうなって倒せたの?」

 

最後まで幾多の妖精兵士を相手に大立ち回りをしていたユウキが、大の字に床に寝そべりながら頭だけリーファの方を向いて尋ねる。

 

「ワルプルギスの夜だよ」

 

「ワルプルギスの夜って、ヨーロッパのお祭りの事?なんでそれが出てくるのよ?」

 

「奴がしつこく50年って言ってただロ?それがヒントだったんだヨ」

 

アルゴが意味ありげな説明をする。カスミ以外の一行がどういう意味か考えてる中、アスナが呟く。

 

「……ひょっとして、ファウストのこと?」

 

「アーチャン、正解ダ!」

 

「ファウストって、ゲーテの作品の?」

 

シノンの指摘にアルゴは「その通り!」と指さして言う。そしてリーファが解説する。

 

「あの話の中にはオベイロンとティターニアの金婚式の様子も描かれてるの。そして、ワルプルギスの夜のお祭りは5月1日と11月1日の2回行って。5月が春の始まりで、11月が冬の始まりを祝うんです」

 

「あっ、それが春を告げる日と冬の始まりのだったんだ。でも、その間って?」

 

「そこは文字通り、祭りが行われる2日の日付の間、185日間の中間点である93日後。つまり8月1日に突き刺す事が答えだったんだヨ。まぁ、ワルプルギスの夜は地域によって4月30日になってる所もあるケド、それだと間の日数が偶数になって答えにならないからナ。まあ子の壁画を馬鹿正直にヒントとして見たらフェイントに引っかかりそうだったケド」

 

肩越しに壁画を指すアルゴに、一行は壁画に注目する。

斧を持ったミノタウロス。振り子を持ったヤギの頭を持つ悪魔。巨大なハサミを持つ蠍――。

壁画を見るうちに、何かに気付いたアスナが呟いた。

 

「……これって、ひょっとして星座?」

 

「またまた大正解ダ、アーチャン!まずはミノタウロスの壁画12――5月1日。そして蠍の壁画09――11月1日。最後にライオンの壁画10――つまり8月1日って事だったんダヨ」

 

「なるほど。それらに対応する剣を突き立てたことでオベイロンを倒せたって事だったんだな」

 

「お前、絶対わかってないだろ?」

 

うんうんと頷くクラインにエギルがツッコミを入れた所でどっと笑いが出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ミ――ん!

 

 

お――ム――ろ!

 

 

「……!!」

 

「今のって……!?」

 

その時、カスミのムイミの耳から聞き覚えのある声が聴覚を刺激して思わず振り返る。

 

 

――お~!

 

――イ――ゃ――!

 

 

「――!?2人とも!」

 

「どうしたの?」

 

急に様子の変わった3人にストレアが訊ねる。

 

「……すまない。どうやらお別れのようだ」

 

名残惜しそうに言うカスミに、キリトは「……そうか」と返す。

 

「そう落ち込むなよ。またどこかで会えるって。向こうでやるべきことをやって、全部終わらせた後でな」

 

「そっか……頑張って、カスミちゃん」

 

「……もちろんだ。必ず勝って、向こうで会おう」

 

アスナがカスミの手を握って応援する。

 

「それじゃあ、次に会うときは――」

 

「ああ。向こうで会おう!」

 

キリトのその言葉を受け、カスミ達は迷わず裂け目へと入っていった。3人の後ろ姿が裂け目から完全に溶け込むと、一瞬強く輝き、光が収まると裂け目は完全に消失した。

 

「また、会えるかな……?」

 

「さあな。けど、なんでだろ……?また会えそうな気がするんだ」

 

裂け目が消え去り、完全な静寂が包むダンジョンの中で、アスナとキリトは名残惜しそうにそう呟いた。

 

 

 

 

――ガッシャーン!!

 

 

「なんの音!?」

 

「姫さんの部屋からだ!」

 

いきなりの衝突音に3人の獣人が姫さんと呼ばれた部屋に駆け付ける。

部屋を開け、ファンシーなぬいぐるみの飾られた部屋の中央で、埃が煙となって巻き上がる中、3人の獣人はそれぞれ武器を構える。

煙が晴れると、3人とも目を丸くする。

 

「あたたたた……」

 

「何とか帰ってこれたみたいだな……」

 

「ムイミはん、カスミはん!」

 

「お前ら、いったいどうしたんだ!?」

 

「ああ、マホにマコト。ちょっとな……話すと長くなるけど……」

 

 

 

 

「イオちゃん、どこ行ってたの!?」

 

教室の扉を開けた赤と紫の2色の髪をツインテールにした、同じく赤と紫のオッドアイの少女がずかずかとイオに迫る。

 

「あ、あれ?ミサキちゃん……ここは……?」

 

「ここはって、学校に決まってるじゃない!イオちゃん、頭でも打った?」

 

「……かえって、来た……ってこと?」

 

「……本当に頭打ったみたいね。おーい!イオちゃん見つかったよ~!」

 

ミサキが廊下に出て声を張り上げる。どうやら生徒一同でイオの行方を捜していたらしい。

 

「んで、その服どうしたの?」

 

「服?」

 

ミサキに指摘されて改めて見ると、服装がリズベットに貰った物をそのまま来ていたことに気付く。

 

「えーっと……と、友達からのもらい物、かな?」

 

思わず目を逸らしながらそう返すしかない。

しかし同時に、あの出来事が夢でない事の証拠でもあることに少し顔がほころぶ。

 

(……ひょっとしたら、また会えるかな?)

 

一時、異世界で冒険した剣士たちの姿を思い浮かべながら、イオは窓越しに空を眺める。

空は、曇天から差し込んだ陽光が青空を照らしていた。

 





(・大・)「番外編のストーリーはここで終了」

(・大・)「番外編はもうちょっとだけ続くんじゃ」
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