プリンセス・アート・オンラインRe:Dive   作:日名森青戸

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「討伐戦のその裏で:2」

 

 

同刻。43層の洞窟。

 

 

「本当にいるのかな?こんな所に……」

 

周囲を見渡すシズルが疑問を誰に問いかけるでもなく、そんな呟きを口にする。

現在シズル、ノーチラスを含めた2パーティは主街区から遠く離れたとあるダンジョンに来ていた。

【血盟騎士団】からの情報によれば、ここに奴らの傘下ギルドの一つが潜伏しているというらしい。

 

「一つ良いかか?」

 

「どうした?」

 

「これだけ広いダンジョンだ。集団で行動しては非効率だと思う。どうだろう?手分けして捜索したほうがより効率的だと思うのだが?」

 

早速探索に向かおうとした瞬間、クラディールが挙手をして提案してきた。

確かにこのダンジョンは枝分かれした細道が多く、モンスターに殺される心配は無いのだが、この場所が傘下ギルドの本拠地であるのが事実ならば、死角に潜んでいて隙を見せた瞬間――なんてことも考えられる。

このグループのリーダーを任されたコーバッツはその提案に顎に手を当て思案する。

 

「確かにそれもあるな。よし!これより2人1組で探索を開始する!」

 

「……なら、俺は彼と組んで行こう」

 

すかさずクラディールがノーチラスを指して言う。その後はユナとシズルは別々のグループに分かれることになった。

 

「ノーくん、本当に大丈夫?」

 

「……正直、不安しかないな」

 

「そこ、何を喋っている!早くしろ!」

 

げんなりする様子が見えるノーチラスの言葉をコーバッツの怒声が遮った。そして各々がペアを組んだ相手と共に、枝分かれした洞窟へと入っていくのだった――。

 

 

 

 

ノーチラスとクラディールのペアはそれから無言で探索を続けていた。

あれからと言うものの、犯罪者プレイヤーには遭遇していない。

無言の探索が続けていると、小さな部屋のようなエリアに出る。部屋の中には誰かの部屋だったらしく、、彼らから見て右側に通路がある。

 

「……一つ良いか?」

 

「なんだ?」

 

漸く言葉を発したノーチラス。振り返ってきたクラディールに目もくれず話を続ける。

 

「ギルドマスターから聞いたんだが、確かお前19層に行った時、アクセサリまで正確に言い当てたよな?」

 

「それがどうした?前に捉えた奴から押収したアイテムにそれがあったに過ぎない」

 

「押収、か。確かに可能だが【血盟騎士団】は捕らえた相手を即刻牢屋送りにするはずだ。だが一つだけ、装備を知る方法がある」

 

 まるで確信でも掴んだようにだんだんと声色を強くするノーチラスに、クラディールは黙って続きを聞く。

 

「――予めその装備品を着けてある事を知っていた。もしくは伝えられていた、だ」

 

「……何が言いたい?」

 

「つまり、装備品を的確に言い当てられる状況はただ一つ。それはお前が――」

 

「――お前が【笑う棺桶(そいつら)】との仲間なんだろ?」

 

「――……え?」

 

言い終わる前に、入って来た通路から声が響いた。

嫌な予感がして自分のいた場所を振り返る。

そこにいたのは一人のプレイヤーだった。狼の毛並みを思わせる、腰まで伸びた跳ねっ毛のロングヘアにプレートアーマーを纏うは、中学生にしては豊満とも呼べる肉付きの良い身体。手にした両手剣はサメの歯を思わせるかのような鋸歯を持っている。

ノーチラスは彼女をよく知っている。そして……願わくば、最も出てきてほしくなかった人物――。

 

「漸く見つけたぞ……!」

 

怒りの形相をその顔に満面無く浮かべているマコトだった――。

 

「なんだ。あの時の小娘か。まるで親の仇でも見つけたような言い草だな?」

 

「ふざけんな!テメェが人殺しだってのは見当がついてるんだよ!!あの時見かけたからなぁ!!」

 

怒声を上げるマコトに対して、クラディールは我関せずといった様子で小ばかにした様子で返す。

 

「良いか?俺は奴の悲鳴がしてから駆け付けたんだ。そしたら奴が落ちる所を見かけたんだ。距離からすれば10メートルくらいはあっただろうな。そんなことで人を殺人鬼呼ばわりなんて「そこじゃねぇよ」――何?」

 

「アタシが言いたいのはそこじゃねぇ!あの時女の子を3人がかりで追い詰めて、殺した奴だって言ってんだよ!!」

 

「……あの時?」

 

ノーチラスに疑問符が浮かぶ。

クラディールはそれに対して思い当たり節があるかのようにピクリを眉を潜ませた。

 

「あの時洞窟の中で、はっきりと思い出せたよ……フードの中のテメェの顔をなァ!!」

 

ぐわんと両手剣の切っ先をまっすぐクラディールに向ける。

 

「……そうか。あの時か」

 

「それはつまり、認めるって事か?マコトの言ってた事を……」

 

「ああ……そうだよッ!!」

 

観念したかのように言った次の瞬間、クラディールがマコト目掛け何かを投げる。肩に突き刺さったそれは投擲用ピックだった。

すかさず引き抜いたものの、次の瞬間マコトはぐらりと力が抜けるように倒れる。

 

「やっぱり麻痺毒仕込んでたか!」

 

「あの時の殺しまで見られてたのは予想外だった……やはり貴様も殺してしまうか」

 

「どうも信じられないな……。おい、ハッタリとかじゃないだろうな?」

 

マコトの前に出たノーチラスが疑問を口にする。

一瞬マコトもクラディールもその場違いな質問に呆けたが、クラディールが突如笑い出した。

 

「こいつは傑作だ!こんな状況でそんなこと言えるなんてなぁ!!そんなに証拠が見たいなら、見せてやるよ。この【笑う棺桶】のエンブレムを!」

 

すっと右腕の袖をまくる。二の腕の辺りに不気味な笑みを浮かべたカリカチュアライズされた棺桶と、招くような白骨の手のエンブレムが曝される。

 

「……どうやらハッタリとかじゃないみたいだな……」

 

それを見たノーチラスは剣を構える。そしてストレージを素早く操作し、空いた腕に盾を装備する。

 

「はッ!ノコノコこんな所に疑いもせずに来たお前も、相当マヌケだよ!仲良く奴と一緒の所へ逝かせてやるからなァ!」

 

ぐぉん、と両手剣を振るい、凶悪な表情を浮かべるクラディールに対し、ノーチラスはぐっと腰を据えて盾を構えるのだった――。

 

 

 

 

同刻。51層の北の森。

 

 

「何だよ……何なんだよ、これ……?」

 

目の前で繰り広げられる惨劇に、グウェンは絶句していた。

いきなり告げられた殺し合いに、一瞬頭が追い付かなかった。だが、恐怖に駆られた自分のギルドメンバーの一人が隣にいたプレイヤーを攻撃。反撃をしたそのプレイヤー諸共消滅してしまった。

そこから先は血みどろの殺し合いだ。剣で斬り合い、殺したと思ったら文字通り横槍で身体を貫かれる。

 

「……イカれてる。こんな……」

 

殺し合いが続き、15人以上いたギルドメンバーも既に半分くらいにまで減ってしまっている。

 

「どうした?君も参加したまえ」

 

「参加って……ふざけないでよ!こんな殺し合い、参加する訳無いでしょ!!」

 

「……随分と威勢のいい。最も、君の仲間がのうのうと待っていてくれると思ってはいないようだがね?」

 

「……え?」

 

やれやれと言った様子で首を振る。が、最後の一言にグウェンは呆けた声を上げる。

 

「あと……3人……」

 

「あいつらだ……あいつらを殺せば俺は……」

 

いつの間にかぞろぞろと殺し合いに参加していたプレイヤーに囲まれていた。

逃げようと踵を返したが、既に背後には【笑う棺桶】のプレイヤーが退路を阻むように立つ。

後ろからは我先に助からんとするギルドメンバー、前からは殺人者プレイヤー。完全に八方塞がりだ。

 

「……もう、終わりなんだ……」

 

じりじりと包囲網が狭まる中、ルクスが消え入りそうな声で呟いた。

 

「……私達は、ここで殺されるんだ……このままみんなに殺されて……頭を焼かれて、死ぬんだ……!」

 

力が抜けていくように座り込むルクスが、力無い声色で絶望を呟く。

その間にもじりじりと、それでいて確実に距離を詰めていく。

 

――殺される!

 

目の前の邪魔なプレイヤーを殺害してしまおうと、【歪な蝙蝠】のギルドメンバーがグウェン達に武器を振り上げた。

その時だった。

 

「探しましたわよ!」

 

「「見つけたァ!」」

 

「「「「!?」」」」

 

サムソンから見て左側の森からウィスタリアが、右側からストレアとチカが茂みから飛び出した。

 

「君、達は……!?」

 

「――って、チカさんにストレアさん!どこにいたんですの!?探しましたわ!」

 

「怒鳴りたいのは分かりますけど……ウィスタリアさん。あなたあの時一人になったら危ないって言ってたのに、自分が迷子になってどうするんですか?」

 

「あら?そちらが迷子になったのではなくて?」

 

「迷子になったのはそっちですよ!!」

 

「って、そんなこと言ってる場合じゃないみたいだよ?あれを見て!」

 

チカとウィスタリアのやりとりに横やりを入れたストレア。彼女の指した場所を見る。

目に映ったのは、囲まれた3人の少女。その内の一人はウィスタリアと出会ったルクスだ。彼女らと囲んでいた半分の人員にはそれぞれステータスバーには出血を思わせるような飛沫のマークが見て取れる。

視線を移し、ボロマントをローブのように纏うプレイヤー達を見る。リーダー格らしきプレイヤーは腰に鞭を下げ、腕に何かを隠す様に包帯を巻きつけ、他のボロマントの一行も軽装だということが伺えた

 

「……!?まさか……【笑う棺桶】!?」

 

「――……確かに、ストレアさんの言う通りのようですわ。ストレアさん。私と共にあの方々を任せられて?」

 

「ええ」

 

「チカさん、これを」

 

ウィスタリアがストレージを操作し、チカにトレードする。チカはそれを受け取って実体化すると、ウィスタリアとストレアが駆け出す。

【笑う棺桶】のプレイヤーを相手に武器を標的とした攻撃で牽制していく。だが自分からは攻撃せず、攻撃を防ぎつつ

 

「貴女!彼らの名をご存じですの!?」

 

「へっ?」

 

「彼らの名前ですわ!知っているのなら早く!彼女に渡して!」

 

ウィスタリアの切羽詰まる呼びかけに、グウェンは一瞬呆けていたが、すぐに言われたとおりにギルドメンバーの名前を書き写してスクロール化したそれを投げ渡す。

スクロールを広げ、手にしたアイテム――【止血結晶】を掲げて叫ぶ。

 

快復(キュア)、シャルマーニ!」

 

 名を叫ぶと、結晶が砕け散り、シャルマーニと呼ばれたプレイヤーが光に包まれる。すると、シャルマーニというプレイヤーのHPバーから出血の状態異常を示すアイコンが消える。

 

「えっ?なんで……?」

 

「次は……快復(キュア)!エドガー!……くッ!次!快復(キュア)、パーシー!」

 

次々と名前を叫んでは【出血】の状態異常を治していく。が、そこで手持ちの【止血結晶】は全て使い切った。

 

「あとの方は今すぐ止血を!状態異常回復のポーションを使って!早く!」

 

残る2人に対しては止血ポーションを取り出し、蓋を外して傷口に浴びせる。

ストレアが相手をしていた【笑う棺桶】のプレイヤーの攻撃を受け止め、大剣で押し出す。すかさずウィスタリアが「スイッチ!」と叫びながら彼らの足元に向けて瓶を投げつける。

地面に打ち付けられた瓶は砕け散り、そこから1メートル周囲に薄い黄色の煙が漂う。そこに風に流れた煙を吸い込むのを嫌ったのか、【笑う棺桶】のメンバーが煙から下がっていく。

 

「チカさん、毒は!?」

 

「全員回復しました!彼女で最後です」

 

 キュッ、とプレシアの出血口に包帯代わりの布を巻きつけた所でチカがウィスタリアに報告する。

 

「……あ、アンタたち、どうして俺らを助けたんだ?」

 

「……礼は不要ですわ。私達は、単に我がギルドの理念の元助けたまで。他意はありませんわ」

 

「ギルドの……理念……?」

 

男はさも当たり前の緒様に答えたウィスタリアに開いた口がふさがらなかった。

 

「おい、何ぼさっとしてるんだよ!奴を取り囲め!」

 

その時他の【邪な蝙蝠】のメンバーの叫びでやっと我に返り、彼も仲間と共にサムソンを取り囲む。

 

「テメェ、さっきはよくもやりやがったな!」

 

「もうテメェらの話なんかに応じる必要も無くなったからなぁ!」

 

「これだけの数だ!取り巻きも殺しちまえ!」

 

散々死の淵に立たされていた反動か、息巻いて武器を取り【笑う棺桶】の面々を取り囲む。

 

「……残念だよ。救済をここまで拒んでしまうとは」

 

「うるせぇ!その瓶も中は毒じゃないのか!?」

 

「……その通りだ。この中にはジョニー君が特別な素材で調合した猛毒が含まれている」

 

すっと取り出したポーションの事実を伝えたサムソンに、【歪な蝙蝠】の面々はぞっとした。

もしあのまま乱入も無く殺し合いが続いていたら、誰かが手に取っていただろう。これで助かると思い切り嚥下した瞬間――。

 

「しかし、これでは不可能になってしまった。ならば――」

 

やれやれと言った様子を崩さないサムソン。ウィスタリア達がその余裕ともとれる態度を崩さないことに疑問符を浮かべていたが――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が直々に救済しよう」

 

そういった直後、腕に巻かれた鎖を解き、ぐわんと上半身を目一杯使って振り回す。引かれた鎖も宙を舞い――先端の鉄球も宙を舞う。

 

「なっ!?」

 

プレシアが叫んだ瞬間には取り囲んでいた【邪な蝙蝠】のギルドメンバーは総じて直撃。身体をごっそりとえぐり取られ、瞬く間にHPを削り落とし、ポリゴン片となって散ってしまった。

 

「な……、何なんですのッ!?」

 

「君達にはまだ言ってなかったね。【血盟騎士団】に所属しているシズル君。彼女が持つ《狂戦士(バーサーカー)》と同列のスキルを、私も持っているんだよ」

 

「《狂剣士》……(ハイパー)EXスキルの?」

 

「そう。その名は――《鉄球術》」

 

ぐい、と鎖を引きジャラジャラと金属音を響かせてボーリング球と同等のサイズの鉄球を掌で受け止める。威力の程は……先のメンバーの末路が物語ってくれている。

 

「さあ。第2ラウンドと行こうか」

 

 






次回「討伐戦のその裏で:3」


(・大・)<次回あたりから佳境に入れたい。
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