プリンセス・アート・オンラインRe:Dive 作:日名森青戸
(・大・)<2022年が終わる前に仕上げるッッッ!!
(・大・)<――ってな訳で2連続投稿です。
前回までのあらすじ。
ウィスタリアの提案したアインクラッド一大ライブ計画「ライブ・イン・アインクラッド」。3人の歌姫の新曲も揃い、いよいよライブを待つのみだった。
だが当日、マヒルが勝手に漫才を披露してしまうハプニングにより一転隠し芸大会となってしまう。
ラジラジが中断させ、チカの歌によって再びライブの空気に戻した後、レインがステージへと上がる……!
「みんな、勢いはどうかしら!?」
「「「「「レインちゃーん!!!」」」」」
ステージに登場したレインが姿を現すと同時に、観客の歓声が巻き起こる。
「さっきのチカのステージはどうだった?彼女の歌の興奮が冷めないうちに、次は私のステージで更に盛り上げていくよ!」
「「「「「うおおおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
(なんだろう……。私、今すっごい興奮してる)
深呼吸を繰り返しても、心臓のドキドキは治まらない。
けど、これは良い意味での興奮だ。
(最初はなんとなくでこのギルドに入ったのに、ノゾミ達といるうちに歌うことに自信が付いてきて……ううん、歌う事を楽しく感じることができた――このギルドに入っていなかったら、多分今の私はいなかったかも……)
思えば、《歌唱》のスキルを得たのも現実で生き別れた妹が天才学者として活躍する事へのコンプレックスからかもしれない。
人気を得たい。自分も特別でありたい。
けれど、ノゾミ達との交流をしていくうちにその気持ちは薄れていったとレインは自覚していた。
むしろ歌に対して、アイドルと言う存在に対して真髄に向き合っているチカやノゾミに感化されていったのかもしれない。
(お礼を言うのは後だ。今は……この歌で会場を沸き立たせる!!)
†
「――ずっと鳴り止まないのは 光、輝きの音
遠くの空
静けさ声が宙を舞った 空には青い彗星落ちた 導かれた月の裏側憂愁が広がる
導か境界線超える様に 現実遠のいて行く 今日を忘れ明日を忘れて身を寄せた泣き顔
混在した運命が交わったなら店となり
突き動かされるまま ゆっくり幻想を映し出す
ずっと鳴り止まないのは 光、輝きの音
どんなに強い風が僕を攫っても
シンシア時を越えて 笑顔に戻れるから
心歌え 宙を伝え 僕を待つ空に響け
ring for Cynthia」
既に高まっていた観客のボルテージも、歌が後半に突入していきどんどん上昇していく。
「今日も聞こえてくるのは
願い、きらめきの音
遠くの空
ずっと鳴り止まないのは 光、輝きの音
どんなに強い風が僕を攫っても
シンシア時を越えて 笑顔に戻れるから
心歌え 宙を伝え 僕を待つ空に響け
ring for Cynthia
シンシア――」
†
「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」
曲の終わりと同時に歓声が上がる。
先程の隠し芸の空気は既にライブ一色となり、次のアイドルの出現を今か今かと待ち望む。
「聴いてくれてありがとう!残るはあと2人!いよいよ真打ちの新曲だよ!!楽しみにしてね!!」
そう告げてステージを下りていき、続けてユナにハイタッチして交代する。
「やったじゃない。最高のライブだったよ」
「どうも。さ、ボルテージは高めたわ。ユナ、ノゾミ、あなた達の歌で突き抜けさせちゃって!」
「任せて!とびっきりの一曲でトリに繋げるから!」
†
「みんな、準備は良い!?」
「「「「「ユナちゃ~~~~~ん!!!!!」」」」」
ユナがステージに駆けあがると、先の2人と負けず劣らずの声援が木霊する。
その途端、ユナがほろりと涙を零す。
「……あ。ごめん。なんかこのステージに上がったらちょっと感動しちゃって……今日はステージを見てくれた人、そして、この素晴らしいライブを企画してくれた人たちに恩返しをする意味を込めて、新しい曲を披露します!!」
涙をぬぐい、深呼吸を数度繰り返した後、静まり返ったステージで歌いだす――。
†
「――警報が響いて 包囲網でガンジガラメ
Cheakmate寸前 Countdownが嫌らしいな
勝手な欲望で踏みつけられたって
僕のセオリーじゃ答えは“No!Are you kidding me?”
僕の刻んだ
君と創り上げてきた現実を
イレギュラーなんかに奪わせるな
BreakBeatBark! まだ見えない
未来って単純じゃないダンジョンみたいCant’see…
だけどHead up! すぐそこさ
“Never give up”パスワードはそれで十分なんだ
君と僕の
呼び出せ 願いの限り」
路上ライブでいつも歌っている物とは違う激しい曲調の歌に、観客は息を呑む。
「BreakBeatBark! 見えてきた
未来って単純じゃないダンジョンみたいlets’s see!
そうさHead up! すぐそこさ
“Never give up”パスワードはもう必要ないんだ
君と僕の
呼び出せ 願いの限り――」
†
歌い切ったユナは目を閉じ、沸き立つ歓声を静かに聞いていた。
「まさか、こんな形で願いが叶うなんて思わなかった……」
大勢の客の前で歌を披露する。
歌を通してユナの中にそんな夢ができていた。
そして、それがこんな形で敵うことになるとは、ユナ自身予想だにしていなかった。
(……そうだ。もし私があの時死んでいたら、こんなステージは開かれることは無かったわね……)
思い返すのはかつて40層での救出作戦の時だ。
罠によるモンスターの増援と状態異常による戦線の崩壊から、最低限の犠牲で済ませる為に自身をモンスターの標的を一手に担うことでノーチラス太刀を救おうとした。
しかし、そこに割り込んできたノゾミが準ユニークスキル《連刃剣舞》でモンスターを一掃していき、犠牲になるつもりだった自分すらも助けてしまった。
(……チカちゃんのあの言葉、今になって分かった気がする。このステージにどちらかが居なくなったとしても、多分これだけの歓声にはならなかったかもしれない……)
あの時の行動は、客観的に見れば最低限の犠牲で済む作戦であると同時に、チカ達からすれば自分達を悲しませてしまう最低な選択だった。
もしあの時自分が、あるいはノゾミが死んでいたらきっとこのステージは実現できなかったのかもしれない。
「さぁ、名残惜しいけど次が最後の一人!彼女の歌でこのライブを締めくくろう!!」
歓声をバックに楽屋に戻ったユナは待っていたノゾミとレインにハイタッチを交わす。
「さっすがユナ!こっちも聞きほれちゃったよ!」
「まぁね。さぁ、最後はあなたの番よ、ノゾミ!」
「任されたわ!ここまで来たなら、3人に負けないくらいの歌で盛り上げてみせるよ!」†
「凄い……」
ライブに傾いた空気に思わずキリトが感嘆の声を漏らす。
チカの歌で不満げな空気は一掃され、
レインの歌でボルテージを高めていき、
ユナの歌でライブの興奮を最高潮にしてくれた。
残るはあと一人、ノゾミの歌を残すのみ。
観客がノゾミを待ち望むコールを上げる中、数人のプレイヤーが慌ただしく人混みを避けて裏路地に消えていくのが見えた。
「なんだ?」
普段なら気にも留めないが、その時は妙に気になったキリトは彼らの後をつけて、楽屋のすぐ傍まで来て聞き耳を欹てる。
「耐…値………い……プを…っちゃ……って、どういうことですか!?」
「……ませ…、……ッフが気付か…に……明に使……みたいで……」
《聞き耳》スキルを持っていないキリトは断続的にしか聞こえない。
(耐久値の低いロープがどうとか言ってたよな……?明……照明?)
それでも何とか聞き出せた情報を整理すると、耐久値の低いロープを証明に使ったということが辛うじて分かった。
改めてステージの上部をよく見ると、手作りの照明の一つが僅かに音を立てて揺れる。
「――あれか!」
見つけたとはいえ、今から駆けても人混みで間に合わない。
(クソッ、観客が邪魔でとても通り抜けられない!大声で伝える?いや、そんな真似したら折角のライブが全部台無しだ。気付かれずに照明のロープを替えるなんて……いや、最低でも落下して直撃を避ければ良いか?だったらソードスキルを照明に当てて……いや、それでも《疾走》込みの《ソニック・リープ》でも届かない!)
ぐるぐると思考を巡らせている間にもロープの耐久値はどんどん減っていく。
(……!)
その時、妙案が思いついた。しかし、それは一人では不可能な作戦でもあった。
それでもキリトに迷いは無かった。
「キリトさん!?どうしたんですか!?」
「悪い、手を貸してくれ!」
楽屋に乗り込み、ギョッとしているツムギ達に、キリトは手短に作戦を告げるのだった。
†
「お待たせーッ!!!」
「「「「「ノゾミ~~~ンッ!!!!!」」」」」
同じ頃、ステージを駆けあがったノゾミの登場に、観客の歓声が木霊する。
「今日はこのステージに来てくれたみんな、本当にありがとう!このライブの最後を任されたけど、前の3人にも負けないくらいのライブを魅せてあげる!!」
ライブ外でのハプニングも露知らず、ノゾミは歓声を上げる観客に応えるように会話をしていた。
しかし、件の照明はノゾミの真上でゆらゆら揺れ、今にも耐久値は減っていく。
「実を言うと、今回披露する新曲は――」
その時、ついにロープの耐久値が切れ、僅かなポリゴン片を残て消滅し、吊るされていた照明が重力に従って落下する。
「危ないッ!!」
「――え?」
観客からの声に気付いて上を向いた時、ノゾミの目の前には自分に目掛け落下する照明。
完全に虚を突かれ、凍り付いた身体が動かせない。
落下物から防ぐように腕を伸ばした。
――ガシャンッ!
しかし、それはノゾミに当たる前に黒い何かが彼女の頭上を横切り、はるか上空へと弾き飛ばされた。
空中で耐久値が切れた照明はポリゴン片となって砕け散り、黒い影に気を留める者は誰も居なかった。
「――……今のって……?」
†
「……キリト君、大丈夫?」
「一応……」
黒い何か――キリトは勢い余ってアスナとリズベット、マコトとテンカイとユイがいる場所の壁に激突していた。
あの時の事をかいつまんで説明すると、ユリエールとシンカー、ウィスタリア、ツムギを直列させ、彼女らを足場に、助走をつけた《疾走》込みの《レイジスパイク》で突進。そのまま照明を破壊したということだ。
「折角だから見てくか?」
「ああ。そうするよ」
べしゃりと地面に落ちたキリトを見て、テンカイがそう訊ねた。
キリトも応じてそこでライブを観ることに。
†
(やっぱり、今のってキリト君だったんだ)
黒い何か、キリトが過ぎ去った方角を見て確信を得ていた。
再び視線を正面の観客に戻すと、マイクに向かって言う。
「えと、どこまで言ったんだっけ?――ああそうだ。今回披露する新曲は、あるプレイヤーに送る為だったの。その人は、このゲームが始まってから、ずっと誰かの為に戦っていた。悲しみを広げまいと独りで戦ってきた……心を砕いてまで剣を振るってきたその人の為に――その人の笑顔を見たいから、この曲を歌います!!」
†
「――Happening!突然降って来た雨が
君との距離 ぎゅっと 近づけてくれる!
My heat! 隣で笑う横顔に ときめいている
あぁ…振り向いて欲しい
どんな話をしたって
心の声にウソを吐くことは出来ない!
焦れったい!この気持ち
精一杯の想い打ち明けたいけど
恥ずかしくて 言えないから
今はこのまま 見つめてたい!
雨が上がったら景色変わるように
ねぇ まだ知らない君に出逢えるかな?
きっと……きっと……」
先のハプニングを物ともしないノゾミの歌に、観客は歓声を抑えながら聞いている。
チカ、レイン、ユナの歌で観客の誰もが思っていた。このライブに歓声で水を差すのはもったいないと――。
「君はどう思っているんだろう?
悩み事は尽きなくてイヤになるけど
こんなにも 好きだから!
精一杯の想い ちゃんと伝えたい!
こんな気持ちはじめてなの
心の中が あったかくなる!
まばたきすること 忘れるくらいに
笑った顔 仕草全部 瞳の奥に焼き付けてた
特別な卿が終わってしまっても
もう 抑えられないのよ!好きな気持ち
いつだって見ているから 笑ってる君を――」
†
歌の終わりと共に上がった歓声は、さながら火山の噴火だった。
抑えていた興奮にプレイヤー同士で肩を組んだり、抱き合ったりする者がちらほらいる。
ギルド間、プレイヤー間のぎすぎすした感情は無かった。
ここに来た全員が、【ゴスペル・メルクリウス】が主催するライブを楽しみに来た。ただそれだけでこれほどまでの興奮と歓声が生まれた。
中には、討伐戦で心に傷を負ったであろうプレイヤーも、ライブが始まった時から引き込まれ、いつの間にか他のプレイヤーと共に笑顔になっていた。
「はは……こりゃすげぇな……」
キリトはまるで敵わないと言った様子で顔に手を当て、笑いを上げる。
一度、クリスマスの翌日に訪れた時には聞き流していたものの、しっかりと聞いた時、ファン達が夢中になるのも納得した。
そんな傍ら、ユイも他のプレイヤー同様に花の様な笑顔で歓声を上げている。
「やったな、アイツら」
「そうだな。あたしができなかった事を、軽くやってのけやがった」
「できなかった事?」
首を傾げたキリトにマコトは思わずハッとなるが、数瞬目を逸らした後、観念したように囁いた。
「実を言うと、勝手に飛び出したあたしを助けるために、ラフコフの女を……それからユイの奴、時々凄く暗い顔をしてたんだ」
「そうか……」
「あたしが幾ら励ましても全然で……ノゾミ達にしかできないって勝手に期待しちまったんだ。まぁ、成果は御覧の通りだけど」
敢えてその詳細は問わない。
キリトはその事を既に察していたし、何よりこのライブの中でそんな話は野暮であることは彼でも分かることだ。
†
観客のアンコールが響く中、歌い切ったノゾミは天を仰ぎ、火照る身体を冷ます様に肩で息をしていた。
「みんなー!今日のライブはどうだったー?」
そんな時、ライブに上がったレインが声を上げる。
「私は本当に最高だった!こんなステージを用意してくれて、【ゴスペル・メルクリウス】には感謝してもしきれないくらいに!」
ユナも駆け上がり、マイクスタンドからマイクを取って実直な感想を述べる。
「私も!こんなステージで歌うなんて最初は不安だったけど、みんなのおかげでこんなにも最高のライブにできたよ!」
マイクを受け取ったレインが続け様に同じように感想を言う。
そして再びノゾミがマイクを受け取る。
「――私は……このライブを観に来てくれた攻略組の皆さんに言いたい事があります」
ノゾミのその一言で会場がどよめく。
一呼吸置いた後、ノゾミは胸の内を晒すように言う。
「攻略組の皆さんは、きっと先の討伐戦で傷ついた人もいるかもしれません。ううん。それより前に大切な人を亡くして、それからずっと心に傷を負った人もいるかもしれない……。だけど、そんな状況でも皆さんはこのゲームクリアを目指して戦い続けていた。中層プレイヤーの人達もあなた達に追いつこうと戦い続けている。あなた達からすれば、ここで暮らす下層域の人達は街から出ずに呑気に過ごしているのかもしれない。だからこそ、この言葉を言わせてください――」
再び一呼吸置いて、「だけど」と続ける。
「本当にありがとう」
頭を下げたその一言は、感謝の言葉だった。
「あなた達の活躍や悲劇は、私達からすれば人伝手から伝わったことで、それ以上深く知ることは簡単じゃない。今から私達が今から攻略に挑もうにも、私達のレベルじゃ何年先になるか分からない。だけど、あなた達の心を、こうして癒す手伝いをすることはできた。これが私たちなりの戦い方です。今日を、そして明日生きるために戦っている。アイテムを作ったり、商売をしたり……絶望や悲しい気持ちに潰れないように、今を戦っています。だから皆さんも、悲しい気持ちや、絶望に負けないでください……!」
先程の興奮が完全に冷め切ったように、水面を打ったように静まり返る。
(……流石に、調子に乗りすぎた、かな……?)
ノゾミの表情が沈みかけた時、観客の一人が拳を突き上げる。
拍手の代わりだろうか。次々と観客が拳を突き上げる。
ノゾミの言葉が伝わった。そういう事だ。
その光景にノゾミの表情が明るくなる中、ユナがマイクを掠め取る。
「ところでみんな、まさか4曲でライブが終わりなんて思ってないよね?」
「えっ?」
「私達はまだまだ歌える!こんな所でライブを終わりにして良い訳が無いよね!!?」
焚きつける様なユナの言葉に、観客も「その通りだ!」と言わんばかりに歓声で答える。
思わぬサプライズにレインとノゾミがユナを見ると、彼女はウィンクする。
その合図に2人も察したのか、ユナからマイクを渡されると、レインが続く。
「ここからは私達の我儘に付き合ってもらうわ!アンコールにも答えないとね?」
「あはは……でも、今日は悲しい事や時間は一旦忘れてライブを楽しむよ!!」
「「「「「うおおおおぉぉぉぉーーーッ!!!」」」」」
9月某日。
その日、【笑う棺桶】の討伐戦によって負の感情に支配されたアインクラッドの住人は、3人の歌姫のライブで活気を取り戻す。
この日――『ライブ・イン・アインクラッド』はSAO内部での伝説の一つとして語られることとなるのは、まだ先の話――。
次回「二刀流」
(・大・)<やっとタイトル回収したーーーーー!!!
(・大・)<何度も空想を続け、描いていたノゾミのライブ。それをユナやレインと共に書き上げて、ある種アインクラッドの一つの山場を乗り切った感を感じます。
(・大・)<思えば書き直しを行い、ここまで長かったなぁ……
(・大・)<という訳で、来年2023年もよろしくお願いします。
(・大・)<今書いたらフライングか?
【使用楽曲】
「ソードアート・オンライン ロストソング」から「シンシアの光」
「劇場版ソードアート・オンライン オーディナル・スケール」から「BreakBeatBark」
「プリンセスコネクト!Re:Dive」から「君の笑顔が見たいから」
使用楽曲コード712-1362-7 225-9995-9 723-1736-1