プリンセス・アート・オンラインRe:Dive   作:日名森青戸

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( ・大・)<THE再編!

( ・大・)<改めて宜しくお願いします。


ライブ・イン・アインクラッド
「発覚は突然死から」


 

2022年、11月6日

 

 

 

とあるゲーム店。

 

「ぷー……。いや、ほんとお客いねーわ。あと数人出て行ったら閑古鳥のコーラスでも聞こえてきそうでウケるわ」

 

「まあ仕方ないわね。みんなのお目当てはアレだもの」

 

ダウナーな雰囲気の中学生くらいの少女がカウンターで頬杖を付きながら零す愚痴に、カウンター越しの眼鏡の高校生くらいの少女が仕方ないと返す。

この日、日本はあるゲームに注目していた。

ナーヴギアによるフルダイブ型VRMMO、『SWORD ART ONLINE』、略称『SAO』の正式サービス当日だ。

ナーヴギア開発の第一人者、茅場明彦考案の元、『七冠』というあらゆる分野に精通した7人の技術者の手によって生み出されたそれは、ベータテストの1千人からも高い評価を受けて期待が高まり、いざ店頭販売となるとまるで人の津波と言っても過言ではないレベルで押し寄せる客にバイトの高校生、大神美冬(おおがみみふゆ)他店員は忙殺された。聞けばネット販売も一瞬で終わったらしい。かくいうこの2人も家族や自分用に余ったら買おうと思っていたのだが、10万台を叩き出した価格に断念せざるを得なかった。

その1週間後はご覧のあり様。この中学生少女、黒江花子(くろえはなこ)のように買いそびれた敗者達は別のゲームでこの敗北感を紛らわそうと並べられた携帯機器用のゲームを吟味している者以外は誰もいないのである。いや、流石にそれは失礼か。

 

「大神ちゃん。そろそろシフトだよ」

 

「はい。あ、店長。そういえば彼は起きましたか?」

 

「駄目だ駄目だ。あのバカ職場にナーヴギア持ってきて、休憩中に入ってやがってた」

 

そんな折、中年の男が声をかけてきた。

彼女の他にもバイトがいるのだが、彼はどうやらナーヴギアを持ってきて、勝手にログインしているらしい。

 

「はー、うらやま。バイト先での豪遊とかそいつマジ頭おかしいわ。何見せつけてんの」

 

と黒江の感想。

 

「職場で何遊んでんのよ!」

 

と美冬の反応。

 

「頭にきて無理矢理引っぺがしたってのにうんともすんとも言わねぇ。お前らちょっと帰りがてら叩き起こしてくれねぇか?」

 

「いえ、今すぐ叩き起こします」

 

美冬が憤慨した様子のままずかずかと休憩室へと向かう。丁度この時間帯は2人のバイトの時間が終了し、彼と交代するのだ。そんな時間で遊んでいるなんて美冬からすればたまったものじゃない。

休憩室へと向かった彼女は、未だ寝そべる男に怒声を放つ。

 

「ちょっとあなた!職場でゲームなんて何を考えているの!?それでも社会人なの!?」

 

「美冬姐さん年上相手に喧嘩売るとか流石っすわ。あれ?そういやあたしらまだ学生だよね?」

 

「黒江さんは黙ってて!」

 

完全にぶちギレモードである。え?なんで黒江が来てるって?話の流れだ。

いきなりこんな怒声が上がれば誰しも飛び起きるものだろう。

しかし、彼は起きるどころか指一本動かさない。

 

「……?何スか?死んだみたいに動かないけど?」

 

「馬鹿ね。ナーヴギアを引っぺがされた程度で死ぬ訳無いでしょ?前に弟が安直なパズルとかやってる時に引っぺがしたけど、平気な顔してぴんぴんしてたわよ」

 

「そっすか。でもバイトさぼらせるわけにはいかないっしょ」

 

黒江の事も最もだ。確かにSAOは注目のゲームだが、それを理由に現実の生活を疎かにして良い理由ではない。

美冬が揺さぶって起こそうと触れた瞬間、今度は美冬が時間停止でも起きたように止まった。

 

「……ちょ、どしたんすか?」

 

「……る」

 

「あ?」

 

「……死んでる」

 

顔を青くした美冬の言葉を、黒江は一瞬理解できなかった。

死んだ?ナーヴギア引っぺがされただけで?さっきの美冬さんの言葉は?

 

「あの、え?マジ?いや、さっき言ったっすよね?引っぺがした程度じゃ死なないって?ジョーク?ジョーク言ってんすか?これがほんとのバイトジョーク。つって、やかましいわ」

 

「ほ……本当に死んでるのよ……!」

 

「……いやいや。いやいやいや。さっき言ってましたよね?弟さん引っぺがされてもぴんぴんしてたって。たかがその程度で死ぬとか人生最低の最期で閻魔の鬼共に笑われるって」

 

必死にパニックを抑えてる美冬に、未だ信じられない黒江は恐る恐る彼に触れてみる。

――冷たかった。

 

「……え?ちょ……え?」

 

「……黒江さん、あなたの友達でこれを買った人はいる?」

 

「……は、はい。確かクラスメイトの何人かが……」

 

「じゃあ今すぐ連絡して!SAOを絶対にプレイしてはダメって!私店長と警察に連絡してくる!!」

 

その怒声に弾かれるように黒江が行動する。美冬も店長に事情を知らせると休憩室から飛び出した。

 

 

 

 

「一応一斉送信しといたは良いけど……」

 

あれから10分。

美冬の通報から警察が駆け付け、ゲーム店は騒然となった。

店長は警察に聴取を受けており、2人は店の外で待機している。

 

「……なんてこった。まさか、たかがゲームを中断した程度で死んじまうなんて……」

 

「でも、どうして?どうしてこんなことが……!?」

 

「んなもんこっちが聞きてぇよ!!」

 

混乱する中、黒江の携帯が鳴る。

慌てて画面を見るとチャットアプリからであり、それに参加してみる。

 

 

 

【クロエ】――そっちはだいじょぶ?

【チェル】――こっちは問題なしです。メール見た時はギョッとしましたけど

【チェル】――まぁ、間に合わずにインしちゃった子が一人……いるにはいるんですが

【ユニ】――買いそびれたのが功を奏したね。私も一斉メールで送ったから、今学校でインしてる人はいないよ

【クロエ】――つーかさ、これあれじゃね?功を奏したどころか一歩も前進してないんだけど

【チェル】――まーまー。こっちには天才博士ユニちゃん先輩がいるんですよ?ちゃちゃーっと解決しちゃいますよ!

【ユニ】――やめて。変なプレッシャー与えないで。というか私工学系は言っちゃ何だけど割と苦手だからね?

 

 

 

「……はぁ~。こっちは無事っぽいね」

 

「こっちでも、高校の仲間に連絡が取れたわ。――全員、とまではいかなかったけど……」

 

「そっすか……。あ、今度は電話か」

 

肩を落とす美冬に伝染するように黒江も肩を落とすが、再び鳴った着信音に我に返って通話に出る。

画面からの連絡相手は彼女の先輩でもある士条怜(しじょうれい)だ。

 

「もしもし?」

 

『黒江!?連絡に手間取ってすみまない!』

 

「士条先輩!他の連中は!?」

 

『大丈夫。生徒300人の殆どが貴女からのメールとニュースでログインするのを止めたらしい。こっちはこっちで大混乱だけどね』

 

「やっぱかぁ……」

 

『……ただ』

 

怜の声色が電話越しでも解るように沈んでいく。

 

「……ん?どしたのパイセン?」

 

『……中等部のつむぎを含めた7人から連絡が取れない。仕事や私用故に外出中、と思えば聞こえは良いのだが……』

 

「先輩、そんな天之川光輝とかいうありふれたご都合主義思考ボケナス野郎ほど馬鹿じゃないでしょ。要はあれでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メールに気付かなかったか、メールを無視してSAOにダイブしちゃってた――みたいな?」

 

 

 

 

それからしばらくの後、黒江と美冬はそれぞれ家族に自分の無事と事件の事を簡潔に説明。

それから2人は怜からの連絡で、公園へと集まった。

 

「それじゃあこれまでの経緯を纏めると、これまでの事件から死者は27人。それ以外の約9000強のプレイヤーは未だSAOの中に囚われている、ということね」

 

「そういうことよ。まさか、ゲームでこんなことになるなんて……」

 

「あのー。一つ気になってはいたんですけど、そもそもの死因って何なんですか?」

 

「私達のほうは、店長が無理矢理引っぺがしたのが原因だったわ」

 

「つまり、無理矢理引っぺがさない限りは安全って事ですよね?こっちが大人しくしてればひとまず死人が増えることはないじゃないですか」

 

派手目な金髪少女、風間(かざま)ちえるが楽観的な意見で勝手に安堵する。

しかし、他の4人は口を重く閉ざしたまま意見をすることも、同意することも無い。

 

「……あれ?どうしたんですか皆さん?」

 

「……ちえるちゃん、残念だけどそうはいかないわ」

 

「え?」

 

「その中には触れてもいないのに突然ナーヴギアからスパークが走って、収まった時には死んでいたって」

 

「じ、じゃあバッテリーが切れたらってのはどうですか?きっと電源も落ちて勝手に目を覚ましますよ!」

 

「いいえ。引っぺがされた時点で死ぬのだったら、バッテリー切れで助かるって保障はどこにもないわ。バッテリーが切れた途端そのスパークが発生して死ぬって可能性もあるし。大体、アナタどうしてこんな状況でへらへらしていられる訳?」

 

「あー、すいません。ちえるちゃん空気が重くなり過ぎないように、わざとふざけてるだけかもしれません」

 

不満げな美冬に5人の中で最も低身長の少女、真行寺由仁(しんぎょうじゆに)が謝罪する。

 

「ゲームの中に閉じ込められるなんて事件、前代未聞ですから。外部から手が出せない状況です」

 

「じゃあ私達は、この事件が解決するまで手こまねいて待つしかないって事!?」

 

「……端的に換言すると、そうなります」

 

由仁のしぼみ込むような声に美冬は思い切り机に拳を叩きつける。

一時のバイトとはいえ、自分の手でデスゲームへと導いてしまった事への責任感を感じているだろう。

 

「あら?」

 

突然、レイの携帯から着信音が鳴りだした。4人から離れて通話に出る。

 

「で、どうするの?」

 

「うん……正直、できることは無いと思う。茅場明彦って人は私も知ってるし、多分外側からの救助の対策は万全にしていると思う」

 

「と、なると……私達は事後処理担当って事ですか?」

 

「……そういうことになる、ね」

 

声のトーンを落としたちえるの推測に由仁も項垂れながら肯定した。

 

「――なんですって!?」

 

その時、玲の悲鳴染みた声が響いた。

何事かと4人が彼女のほうへ向くと、形態を耳に当てたまま凍り付いたように立ち尽くす玲の姿が。

 

「あの……どしたんスか?」

 

「……前にやっていた、ゲーム仲間からの連絡で……もう一人のゲーム仲間が、ベータに当たったからって……」

 

たどたどしく伝える玲の顔は、これ以上ないほどに真っ青だった。

そこから先の言葉は黒江達には嫌でも予想が着く。

 

「……まさか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう……SAOにログインしていた……」

 

 






次回「デスゲーム開幕」
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