プリンセス・アート・オンラインRe:Dive   作:日名森青戸

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(・大・)<久々の更新。

(・大・)<できてたけどなんか納得できずに色々書き直してました。

(・大・)<とりあえずユイ(SAO)編、開始です。




「《始まりの街》の異変」

 

キリトとアスナが結婚し、そして22層の小高い丘の上のログハウスに引っ越し、そして仲間たちから祝福を受けて早8日。

キリトとアスナは《始まりの街》を訪れていた。

 

「キリト君がソロの時に、この街の教会を児童保護施設にしてるんだよね?」

 

「ああ。年齢制限を無視してきた子供たちが路頭に迷ったり、園外で殺されたりしないために起ち上げたって聞いたんだ。俺も何回か顔を出してたんだよ」

 

「そうなんだ。じゃあこの子の本当の親が見つかればいいね」

 

キリトとアスナは揃って自分達の手を握っているそれへと視線を向けた。

 

「……♪」

 

黒髪のロングヘアに、薄ピンクセーターに薄紫のミニスカートの小柄な少女。年齢は10歳前後だろうか。

本来SAOの年齢制限(レーティング)は13歳だが、それを無視したひとはそれなりにいた。シリカやツムギがその筆頭である。

が、その少女は自分達が見てきたプレイヤーの中でも特筆幼い。ログイン当初は齢一桁じゃなかったのかと思うほどにだ。

 

少女――ユイを拾ったのは一昨日の事だ。

噂話に出た22層のとある森にやって来た際、倒れていたこの少女を発見。しかしよく見るとNPCやプレイヤーを示す頭上のカーソルが存在しなかったのだ。

妙だと思いつつも少女を保護した2人だったが、目を覚ました少女が自分達をパパ、ママと言って慕ってしまったのだ。

これにはアスナもその気になってしまい、しばらくの間新婚生活に子供ができて、ちょっとした家族として過ごしていたが、キリトが「やっぱり保護者を探したほうが良い」と提案。アスナも渋々承諾し、この始まりの街へと訪れたのだった。

 

「……?」

 

「パパ?」

 

「キリト君、どうしたの?」

 

「いや、最後に来た時に比べて活気が薄いなって思って……」

 

キリトが周囲を見渡す。

彼が最後にここを訪れたのは約2ヶ月前。《二刀流》を披露する3日前だ。

その時は活気に満ち溢れて、ノゾミ達のライブを目当てに訪れるプレイヤーや、新たな交流の場としてアルゲートに引けを取らないほどの賑わいを見せていた。

が、今日はまるでゴーストタウン――とまでは大げさかもしれないが、彼が知る賑わいは影を潜めていたかのようにひっそりとしているのだ。流石にNPCは普段と変わりなく露店に鎮座しているが。

不審に思いながらも教会への道を進む中、上機嫌なユイがいきなりアスナの後ろに隠れる。

 

「どうした?」

 

「あっち……なんか、変……」

 

ユイが指した方角は外周通りと呼ばれる場所だ。

 

「子供たちに手を出さないで!」

 

「?今のって……」

 

その時、聞き覚えのある叫びを耳にした。

何事かと3人が向かうと、ノゾミと彼女の後ろに隠れる子供たち、そして3人の男が対峙していた。

 

「何を喚いている?この少年達は我らのギルドの先兵となる神託を受けたのだ」

 

「神託?そんなことで攫おうって言うの!?」

 

「攫うなどと下賤な事を言うな。これは神託によって選ばれたのだ」

 

「そんなこと言ったって、人さらいに体の良い言い訳をしてるだけじゃない!!」

 

「……下らん論争はそこまでにしろ。連れていけ」

 

中央の男に命じられ左右の男がその腕をノゾミの後ろにいる子供たちに伸ばす。

 

「おい、何してるんだ?」

 

――しかし、その手が子供たちに届くことは無かった。

その前に横やりを入れる形でキリトが声を掛けてきた。

 

「――ッ、キリト君?」

 

「貴様は……」

 

「子供を誘拐なんて何考えてるんだ?碌な事考えてないとはいえ、こいつらに手を出すなら……」

 

すっとウィンドウを操作し、エリュシデータを実体化する。いつでも攻撃できるという旨を伝えんばかりに柄に手を伸ばすキリト。

緊張感と共に沈黙が包んだが、中央の男が踵を返す。次いで2人の男も去って行った。

 

「……ふぅ。ありがとう。でもどうしてここに?」

 

「教会に用があって来たんだ」

 

「でも、さっきの人達はなんだったの?」

 

追いついたアスナもノゾミに問う。

2人に対しノゾミは「そのことも教会で話すよ」と2人を教会へと案内した。

そして協会に到着して早々、ノゾミは扉をノックする。

まず2回、間をおいて1回。

 

「ノゾミさん、いらっしゃい。あ、キリトさんも」

 

「お久しぶりです。サーシャさん」

 

特殊なノックの後、扉が開かれてサーシャが迎え入れてくれた。

 

「あ!キリト兄ちゃんだ!」

 

「本当だ!」

 

「久しぶりー!」

 

「ああ、みんな久しぶりだな」

 

中に入った途端、子供たちがどたどたと音を立ててキリトを迎えてくれた。

外の状況とは裏腹に、わいわいと集まってきた子供たちと接する(キリト)を見てぽかんと口を開けているアスナとユイ。

 

「キリトさんにアスナさん。今日はどういった用件ですか?」

 

「なんだよ。2人して――ん?1人増えてる?」

 

そんな折、教会の奥からティアナとマコトが顔を出したところで我に返ったアスナが声を掛けてきた。

 

「……あの、とりあえず話をしてもいい?」

 

 

 

 

「そう。それでキリトさんたちはここに来たのね」

 

「はい。保護してる教会ならこの子の事も分かるんじゃないかって思って……所でユイは?」

 

「ユイなら今はツムギの店にかくまってもらっている。噂のせいで、ちょっとな……」

 

「?」

 

「噂?」

 

「そこは後で話すよ。ユイはそのせいでロクに外に出歩けないんだ」

 

「??」

 

「そうか。ユイの方はともかく、この子の事なんだけど……」

 

キリトがユイに目線を移して訊ねる。

サーシャは少しユイを見たが、首を振る。

 

「ごめんなさい。私もこの子は見たことはありません」

 

「そうか……ユイの事を知ってるかもって思ってたんだけど……」

 

「キリト君は気にしないで。ユイの方は私達に任せて、3人は巻き込まれる前に上に戻ったほうがいいよ」

 

「……??」

 

「……ところでさ、さっきからこの子がずっと『どうして私の事言ってるの?』って顔してるぞ?あたし、なんか変な事言った?」

 

マコトが指す通り、ユイはさっきからきょとんとした表情でこちらを見ている。

 

「ああ、ユイちゃん。今のはユイちゃんの事じゃなくて、【ゴスペル・メルクリウス】のユイちゃんで……」

 

「あーもう面倒だな。こっちのちっこいのは『ちっこユイ』にしたらどうだ?」

 

「いやそんな勝手に――」

 

「ちっこユイ?……ちっこユイ!ちっこユイ!」

 

「意外にウケてる!?」

 

マコトの命名した『ちっこユイ』が大層気に入ったのか、ぴょんぴょん飛び跳ねる。

そんなユイはさておき、キリトは改めてマコトに訊ねた。

 

「で、どうして表通りが危ないって言うんだ?」

 

「それは……」

 

言いごもるノゾミを遮り、バタンと扉が開かれた。

 

「先生、マコトねーちゃん!」

 

「コッタ、お客さんの前ですよ。そんなに慌ててどうしたの?」

 

「それどころじゃない!奴らが来たんだ!」

 

コッタと呼ばれた少年の焦燥を交えた言葉に目を丸くする3人。

キリトとアスナ、ユイは何事かと首を傾げたが、直後にマコトに手を掴まれる。

 

「お前ら、すぐに隠れろ!」

 

「は!?どうしたんだよ急に――」

 

「いいから!ほらアスナさんにちっこユイも!」

 

置いてきぼりにされるキリトとアスナ、ユイがマコトとノゾミによってクローゼットの中に放り込まれた直後、再び扉が開かれた。

 

「誰か来客でもいたのか?」

 

「……いえ。子供たちが騒いでいたのを聞き違えたのでは?」

 

息を潜めてクローゼットの隙間から様子を見てみる。

サーシャと会話しているのはどうやら男らしい。

 

「まあ良いさ、約束の日は今日だ。今日までに帰ってこなかったら……分かっているな?」

 

威圧的な態度を取る男に対してサーシャはただ沈黙を貫くだけだった。

部屋を一瞥した男はそのまま大股で去って行った。

 

「……もう良いですよ」

 

クローゼットを開けた途端、べシャリと雪崩れ込む形で解放されたキリト達。

 

「で、いったい何が起きたんだ?」

 

起き上がりながらの質問にマコトはちらりとティアナとサーシャの表情を見る。

意図に気付いたサーシャはこくりと頷き、ティアナも表情を暗くしながらもうなずいた。

2人の表情で察したマコトは険しい表情を浮かべて語りだす。

 

「あの野郎……フレッグが街に来たんだ」

 

「フレッグ?」

 

「確か……【剣聞録】のギルドマスターね」

 

アスナが記憶を手繰るように返す。

遠い記憶にある25層での特攻とも呼べる【ブレイブ・フォース】や【ALS】を巻き込んだ無謀なボス攻略で壊滅したも同然の被害を出したにもかかわらず、いまだに攻略組を名乗っているはた迷惑な――いや、最早それでは済まない行いをした悪名高いギルドだ。

キリトが【血盟騎士団】に入る原因たる【二刀流】のお披露目の遠因となった妨害者たちも、情報屋の調べで【剣文録】所属のプレイヤーだったらしい。

エギルからの話では【ALS】と【DKB】を含めた3ギルドが捜索に当たっていたが、それでも【白鳥の抱擁】及び【剣文録】の主要メンバーは逮捕に至らなかった。

 

「そいつがこの間この街にやって来たんだよ。街を明け渡せって」

 

「明け渡せですって!?」

 

アスナがとんでもない要求に素っ頓狂な声を上げる中、マコトは続ける。

 

「要求はウィスタリアさんの持つギルドマスターの指輪と、《締約のスクロール》の2つと、。それらがあればギルドを実質的に乗っ取ることができますから」

 

「でも、ウィスタリアさんからしたら受ける必要は無いんじゃない?それなのにギルドを寄越せなんて無茶苦茶だわ」

 

アスナが一旦情報を整理するように言う。

要約すれば、フレッグは「この街のプレイヤーは全て自分の傘下に入れ」と言っているようなもの。そんな要求をウィスタリアが呑むとは考えにくい。そアスナのその問いにマコトが拳を震わせながら答える。

 

「あいつ、ゲームとか言ってウィスタリアさんとユースさんをダンジョンの奥深くに放置しやがったんだよ!三日以内に救出できなければ【ゴスペル・メルクリウス】は【剣文録】に無理矢理奪い取られちまう……!」

 

「ハァ!?それこそ受ける理由にすらならないじゃないか!!」

 

「それが、街の連中を人質にして、従わなければ一人ずつ外周から突き落とすって……!」

 

「酷い……!」

 

「転移結晶はどうしたんだ?」

 

キリトの質問にノゾミは首を横に振る。どうやら所持していないらしい。

ウィスタリアはレベルとしては30層前半程度、ユースに至ってはまだレベル1。20層前後ならまだウィスタリア一人で護衛になるだろうが、それ以上のダンジョンでは生き残る可能性は著しく低い。

いや、恐らくは――

 

「ティアナさん、それって何日前のことですか?」

 

「……3日前、です」

 

「3日も!?まさか――」

 

最悪の事態を想像して顔を青ざめるアスナだったが、マコトは合いの手を入れる。

 

「いいや。1日3回は通って確かめてるけど、今ン所まだ無事みたいだ。多分安全地帯に逃げ込めたんだと思う」

 

「けれど、その間にあの人の身に何か起きたらと思うと……!」

 

肩を震わせて絞り出した声には夫とウィスタリアの無事を願い、自分の無力感を痛感する悲痛なものだった。

ティアナのその姿を見たキリトは、勢いよく椅子から立ち、決意の籠った目でマコトに訊ねた。

 

「そのダンジョンはどこだ?」

 

「キリト君、行くつもりなの!?」

 

「ああ。ここのギルドには世話になったからな。アスナはここでユイと――」

 

「こんなのを聞かされて黙ってる訳無いよ!」

 

「ユイもいく!」

 

アスナとユイも同行すると立ち上がる。

 

「ユイちゃん、お父さんたちが行くのは危ない所なのよ?私と一緒にお留守番していようね」

 

「いや!」

 

サーシャの呼びかけにもユイは応じず、逆にキリトの腕にしがみつく。

 

「おぉ……これが反抗期……」

 

「何言ってんのよ、もう……。ユイちゃん、ママたちはお姉さんたちを助けるために、危ない場所に行くの。だから――」

 

「いや!」

 

アスナが言い聞かせるも、逆にユイはさらにがっしりとキリトにしがみつくのだった。

それを見たマコトは軽く笑う。

 

「ははは、こりゃ梃子でも動かねぇな。キリト、今ラジラジとストレアがウィスタリアの救出に向かっている。もしダンジョンで会ったんなら事情を説明して協力してやってくれ」

 

「シンカーさん達とチカは情報屋のコネを使って【剣文録】を捕まえるための準備をしてるの。私達はサーシャさんと一緒に子供たちを見ておくから、そっちはお願い」

 

「ああ。任せろ。で、肝心のダンジョンはどこにあるの?」

 

キリトの問いに、ノゾミとマコトは揃って下を指す。その先は――自分達が使っていた教会のテーブル。そして床。

 

「……ふざけてるのか?」

 

「ンだよ鈍いな。ほら、70層が解放された時に出てきたダンジョンがあるだろ?」

 

「ひょっとして地下ダンジョンの事?」

 

アスナの言葉にキリトも思い出したように「ああ!」声を上げた。

 

地下ダンジョン――監獄『黒鉄宮』内の地下にあるそれは、当時シンカーが発見したベータテスターも知らない未確認ダンジョンだった。

当初は【ブレイブ・フォース】がその調査に当たろうとしたが、人数や狩場の独占を考慮したユースやラジラジの提案で攻略組に依頼を打診。マップの無償公開を条件に、地下ダンジョンの調査を最前線の掲示板にでかでかと依頼した。

60層クラスのモンスターが群がるダンジョンに当時の攻略組には丁度良いレベルで、レベルアップやレアアイテムの発掘で人知れず攻略に貢献したとかしなかったとか。

無論、《始まりの街》の住人からすれば危険地帯なので、誤って迷い込まないように立ち入り禁止の立て札が用意されている。

 

「確かにあそこなら、戦闘を避けながら進めば2人の手が出せないレベルのモンスター密集地に置き去りにすることもできるな」

 

「行こう、キリト君!」

 

立ち上がると同時に放ったアスナの言葉にキリトも頷いた。

 

「キリト君」

 

その時、ノゾミが呼び止める。

 

「私も正直、2人に着いて行きたい。けど、私のレベルじゃ到底……」

 

「わかってる。お前らにはお前らの戦いがあるんだ。ウィスタリアとユースさんは俺とアスナに任せて、お前達は街の住民を守ってやってくれ」

 

「……うん。分かった。絶対に死なないでね」

 

「そっちもな」

 

互いに拳を軽くぶつけた後、キリトは足早にダンジョンへと向かっていくのだった。

 

 





次回「ユイの叫び、ストレアの魂」


(・大・)<今回は割と短め。
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