プリンセス・アート・オンラインRe:Dive   作:日名森青戸

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(・大・)<間に合ったあああああああぁぁぁぁぁ!!!

(・大・)<SAOアインクラッド、本当の意味で最終回。


「幕引き」

 

 

 

デスゲームの終焉を知らせるアナウンスが終わり、キリトが2本の剣を鞘に納める。

ヒースクリフの手によって動けなくなっていたプレイヤーのHPバーからも各種状態異常のアイコンが消える。

一人、また一人と立ち上がり、数人がキリトの元へと駆け寄る。

そして――、

 

「「「「――――ざっけんなクラァァァァァァッッッ!!!!」」」」

 

「ぶへぇっ!!!?」

 

全員からドロップキックを叩き込まれた。

べシャリと倒れた所にげしげしと足蹴の追撃がしこたま襲い掛かる。

 

「何を考えとんねんワレェ!あんな遺言めいた言葉遺しといて最後の最後で不意討ちで終わりとかジブンそれでも勇者の役割になっとる自覚あるんかボケェ!!」

 

「お前、そんなんだからまだビーターって陰口叩かれるんだよ!!ちょっとは自重しやがれ謀殺するG!腹黒くろすけ!特殊詐欺クズ野郎!」

 

「テメェ俺が渡した結婚祝いがあったから良かったけどまた殺されてたらって考えてなかったのかクラァ!!!」

 

「あんなこと言い出すなんざ誰でも「刺し違えてでも殺します」って言ってるようなもんじゃねぇか!返せ!俺らの不安と心配と涙と嗚咽を耳を揃えて還しやがれ!!」

 

「なんだよ!?結果的にヒースクリフを倒せたから良いじゃねぇか!!結果オーライだろ!?」

 

キバオウ、リンド、クライン、エギルの足蹴から何とか命からがら逃げだしたキリトが反論する。

 

「「「「テメェが死ぬ前提の計画を立てるバカがどこにいるんだって話だッッッ!!!」」」」

 

直後に4人分の蹴りがキリトに炸裂した。

 

「アスナちゃん……知ってたの?」

 

「直前にね。あの時キリト君に渡されて、7秒後に使ってくれって」

 

「なるほど。じゃあ意識を戻す方法って見当ついてたのかな?」

 

「ううん。私も正直そこから先はどうするのか聞いていなかったわ」

 

その傍ら、アスナと会話していたシズルが疑問を口にする。

丁度キリトがエギルに足を掴まれてハンマー投げ宜しく放り投げられた直後の彼に声をかけてきた。

 

「キリト君、あの時どうして団長を倒せたの?」

 

「いてて……。――なんていうか……声が聞こえた、って感じかな?」

 

「声?」

 

「皆さん!!」

 

その時、会話を遮って扉が開け放たれる。

攻略組が一斉にそこへ顔を向けるとウィスタリアとチカを含めた数人のプレイヤー達がこちらに向かってきている。門の近くには鎖で拘束されたプレイヤー達が無造作に転がされている。

 

「どうしたんだ?」

 

「増援を要請しようと思っていたのですが……。どうやらその必要もなくなったようですわね」

 

「って、おい!あれラフコフの連中じゃないのか!?」

 

ウィスタリアがここに来るのとヒースクリフとキリトの決闘に決着が着いたのはほぼ同時だった。

肝心のヒースクリフの正体を知ることは無かったが、それでもゲームが終わったことを察したようだ。

 

「そんな……」

 

「終わる……理想郷が……」

 

拘束されたラフコフのプレイヤーの内数名がSAOがクリアされた旨に絶望をにじませる言葉を呟く。

 

「あれは……」

 

「【白鳥の抱擁】にいた方々かもしれませんね。恐らく、演説で深い感銘を受けて――いえ、洗脳されたといっても過言ではないでしょう」

 

推測するウィスタリア。

その時、ラフコフのプレイヤーの身体が光に包まれていく。一層強くなったと思ったら一瞬で彼らの姿が消えてしまった。

 

「強制ログアウトか……」

 

「あの人達、どうなるのでしょうか?」

 

「さあな。俺らが知る由も無いよ」

 

やがてキリト達にも同じように淡い光が包み込まれていく。

大半は困惑していたが、

 

「落ち着いてください!強制ログアウトが始まっただけです!」

 

アスナのその一声に落ち着きを取り戻した攻略組のプレイヤー達。

 

「そうですわ。事がひと段落したらパーティを開きませんこと?」

 

「パーティ?オフ会の事ですか?」

 

「あら、そう言いますの?」

 

「でも、ここで戦った人たちと現実でオフ会なんていいアイデアね。私は賛成」

 

突如オフ会を開こうと提案したウィスタリアにアスナも賛成する。

 

「では、SAO事件の事が済み次第日を改めて連絡いたしますわ」

 

「おいおい、どこの誰かも知らない奴にどうやって連絡するんだよ?」

 

オフ会の計画を進めるウィスタリアにキリトが待ったをかける。

 

「あら?私の――藤堂家の情報網を舐めてもらっては困りますわよ?」

 

ウィスタリアのリアルに関する断片を耳にしたことでキリトもアスナとチカが思わず「うわぁ……」と声が漏れた。

その間にも次々とプレイヤーが光に包まれ消えていく。そしてとうとう、キリト、アスナ、ウィスタリア、チカの身体が光に包まれ始めた。

 

「――とうとう終わるのか。長かった戦いが」

 

「そうだね……辛いことも楽しい事もあって、色んな意味で感慨深いよ」

 

「別に今生の別れでは無いのでは?」

 

「すぐに会えますわよ。それでは3人とも――ごきげんよう」

 

「ああ。オフ会の事、忘れんなよ?」

 

4人だけの約束を最後に、4人はその姿を消した。

 

 

 

 

 

デスゲームの終焉を知らせるアナウンスは、75層ボス部屋前で防衛戦線を張っていた【ゴスペル・メルクリウス】連合とPoH率いる【笑う棺桶】メンバーにも当然届いていた。

 

「ゲームが……クリア……?」

 

「本当に……?」

 

そのアナウンスに誰もが信じられない様子で見上げ、短い沈黙の後……。

 

 

『『『『『――――いやっっったあああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!』』』』』

 

 

火山の噴火の如く、歓声が沸き上がった。

長かったデスゲームに終止符が打たれたことに感涙の涙を流す者。

溢れんばかりの歓喜で飛び跳ねる者。

地面に蹲り、嗚咽交じりに消えていった者へゲームクリアを知らせる者。

 

「――ククク……HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!」

 

だが一人、腹を抱えて大爆笑する者がいた。

その人物はPoH。彼は傑作を評価するかのように大袈裟に手を叩く。

 

「……何がおかしいの?」

 

水を差されたようにノゾミが彼を睨む。

攻略組を襲撃する計画を潰され、デスゲームも終わったこの結果は彼にとって【笑う棺桶】にとって面白くない結果のはず。

底知れない不気味さに思わず背筋が凍る感覚に襲われる。

 

「なに、テメェらみたいなカス共が俺らを止めるなんて思ってもみなかったんだよ。正直こんな大番狂わせ予想外だったって言ってるんだよ」

 

率直な評価をするPoH。

相手の大半は格下数十人。まともな戦力は半分程度。攻略組とのレベル差は20以上も離れているとはいえ、この防衛戦線は彼の目から見ても勝利は確実と判断したのだろう。

 

「今回は勝ちを譲るぜ【ゴスペル・メルクリウス】。今回はフレッグの計画に乗っただけだからな」

 

淡い光がPoHや【笑う棺桶】のメンバーを包み込んでいく。

 

「じゃあな。俺が主催するShowはこんなもんじゃねぇ。もっとエキサイティングで、もっと残酷なShowを楽しみにしてるんだな」

 

ぎらりと獲物を見定めたかの如き鋭い視線を交差させて、PoHは、アインクラッドを震撼させた殺人ギルド【笑う棺桶】は一人残らずその存在を消し去った。

 

「終わったんだ……本当に……」

 

最大級の脅威が一気に気が抜けてへたり込む。

呼吸を整えていると、プレイヤーの身体が淡い光に包まれていく。ログアウトの準備が整ったのだろう。

 

(キリト君……大丈夫かな……?)

 

ノゾミもまた例外ではない。キリトの身を案じながら、彼女もまた光に包まれていくのであった。

 

 

 

 

ノゾミが目を覚ました時、夕日の照らす雲海の上だった。

 

(私、どうしてたんだっけ……?)

 

ぼんやりする頭を必死に巡らせて記憶を振り返る。

ラフコフの襲撃を必死に抑えている最中の突然のゲームクリア、怒りの形相で自分に刃を向けたPoH。それを受けた自分――。

時間が経つに連れて鮮明になっていく記憶と同時に、ふと不安がよぎる。

自分はあの防衛線の時、もしかしたら死んでしまったんじゃないのか?あの攻撃を受けて死んでしまったのではないのか?

 

「……ノゾミ?」

 

思考を現実へと返したのは、唖然とした表情のキリトからの声だった。

 

「キリト君……?まさか――」

 

「いや。ちゃんと生きてるよ。そっちこそ死んだんじゃないのか?」

 

「わ、私だってちゃんと生きてるよ。でもどうして?まだ100層に到達していないのにクリアだなんて……」

 

「ちょっと落ち着けって。今話すから」

 

困惑するノゾミにキリトがボス部屋で起きた一部始終を伝える。

 

 

――ヒースクリフの正体を看破したこと。

 

――彼の提案により全プレイヤーのログアウトを掛けた決闘を行ったこと。

 

――そして……彼を斃し、ゲームをクリアしたこと。

 

 

「そんなことが起きてたんだ……」

 

「けど、何で俺達が……なんだ?」

 

キリトがノゾミのいる方へ寄って行く途中、雲の切れ目から何かを見つけた。

目を凝らしてよく見ると、浮遊城アインクラッドが、最下層から次々と崩壊を起こして真下の渦のような深淵に飲み込まれるように消えていく。

何度もライブを行った始まりの街は勿論、キリトとアスナの思い出深い22層のログハウスも、何もかもが崩壊して消えていく。

 

「中々に絶景だな」

 

無言で眺めていた2人は、その声で我に返る。

声のした方、丁度自分達のいる場所から見て右側に、白衣の男が立っていた。

ノゾミは見たことの無い相手だったが、キリトの表情と直感でこの男が茅場明彦だと察する。

 

「現在、アーガス本社地下五階に設置されたSAOメインフレームの全記憶装置でデータ完全消去作業を行っている。10分もすれば、この世界の何もかもが消滅する」

 

「……あそこにいた人達は?【始まりの街】にいた人や、75層の人達はどうなったんですか?」

 

「安心したまえ。生存プレイヤー6千154人のログアウトはほぼ完了している。75層の彼らは――どうやら、大多数は生き残っているようだな」

 

茅場からの報告にノゾミは安堵と後悔を入り交えた表情を浮かべる。

 

「あとの4千人は……死んでいった奴らはどうなった?」

 

「命はそんなに軽々しく扱うべきものではないよ。彼らの意識が帰ることは無い。死者が消え去るのは変えようのない事実だ」

 

冷徹な返答の後、沈黙が走る。

 

「……なんで、なんでこんなことをしたんだ?」

 

沈黙を破ったキリトの質問は、この事件を知った全ての人間が、一度は思っただろう問いかけだった。

その質問に茅場は数秒沈黙して、天を仰ぎながら、独白するように答える。

 

「何故、か……。私も長い間忘れていた。何故だろうな……?フルダイブ環境システムの開発を始めた時――いや、そのはるか以前から私はあの白を、現実世界のあらゆる枠や法則を超越した世界を創り出す事だけを欲して生きてきた。そして私は……私の世界の法則を超える者を見ることができた」

 

一瞬だけ、茅場は視線をノゾミに向ける。

 

「私はね、キリト君。まだ信じているのだよ。どこか別の世界では、本当の意味であの城が存在するのだと――」

 

「……ああ、そうだといいな」

 

「うん……」

 

アインクラッドは半分以上も崩壊し、雲海へと消えていた。

到達することが叶わなかった76層から上の階層も崩落に巻き込まれて行けていく。

一瞬、茅場がウィンドウを目にすると僅かに目を瞠ったが、ノゾミはそれを見逃していた。

 

「……言い忘れていた。ゲームクリアおめでとう。キリト君。最高のライブをありがとう。ノゾミ君」

 

告げられた言葉につられて、ノゾミは茅場を見た。

 

「さて。私はそろそろ行くよ」

 

背を向けて歩いていく茅場。

その時ふわりと一陣の風が吹き、次の瞬間には茅場の姿は、まるで煙となって風に乗ってしまったかのように消えてしまった。

 

アインクラッドも、最後まで残っていた先端もついに崩壊し、雲海の底へと消えていく。

 

「……私、ライブを観に来てくれる人たちが笑顔になるのを見て、嬉しかったんだ」

 

崩壊を見届けた後、雲海を眺めていたノゾミが呟いた。

 

「でも、ラフコフの人達の殺し合いを見てるだけしかできないことが、凄く悲しくて、悔しくて……気が付いたらどうにかしようって走ってた。けど、あの人たちを……救うことができなかった……キリト君が彼を斃してなかったら、今頃本当に……」

 

「……そうか」

 

「キリト君。私、間違っていたのかな……?」

 

「そんなことは無い」

 

キリトの口から言い放たれた言葉に、思わず目を丸くして彼の横顔を見るノゾミ。

 

「人間なんて完全な存在じゃない。誰しもどこかで間違ったり、過ちを犯したりすることもある……」

 

茜色の空を眺めるキリトの横顔に、ノゾミはついさっき姿を消した茅場を無意識に重ねてしまう。

 

「俺も、助けられたはずの仲間を助けられなかったり、殺さずにできたはずの敵をこの手で斬ってしまった……それに、お前らは俺達攻略組が見捨てた最下層の人達を、殺し合うプレイヤーを最後まで見捨てずに彼らと向き合っていたんだろ。それでも十分凄い事だと思うよ。あの時のライブなんて、大盛り上がりだったもんな」

 

「キリト君……」

 

「だからこそ、お前のその判断は間違ってはいないと思う。――まあ、あの場に居なかった俺が言うのもアレだけどさ」

 

「……そっか」

 

キリトの言葉に、ノゾミは僅かに穏やかな表情を浮かべる。

その時だった。ノゾミの身体が淡く発光し始め、肉体が透けていく。

 

「……時間みたい。本当にありがとう、キリト君」

 

「ああ。またな」

 

「またなって、もっと他に言う事無いの?」

 

あっさりと別れを告げるキリトに思わず頬を膨れて不満げに返すノゾミ。

 

「この期に及んでどうしろっていうんだよ……」

 

「名前だよ名前!アバターの名前じゃなくて、本当の名前。もしかしたら必要になるんじゃないかってね」

 

「もしかしたら、か……」

 

ノゾミの提案に納得したキリトは立ち上がり、ノゾミと向き直る。

 

「俺は……桐ヶ谷。桐ヶ谷和人。多分、先月で16歳」

 

「桐ヶ谷和人……桐ヶ谷和人、か……」

 

何度もキリト――和人の名をかみしめて思い出に刻むように繰り返し呟く。

ノゾミも「私はね」と言うと、数歩キリトから離れ、その場でバッと右手を挙げた。

 

「思い馳せるはアイドルの頂き!今はまだまだ石くれだけど、必ず届くと手を伸ばし、輝きを目指して邁進中!今年で御年15になりました!【ゴスペル・メルクリウス】所属の新人アイドル、ノゾミこと櫻井望ですッ!!」

 

ピシッとアイドルらしいポーズを決めて自己紹介したその姿は、あの浮遊城で、捕らわれたプレイヤーに希望を与えていたアイドルの姿だった。

満面の笑顔を浮かべた直後、発した光がノゾミの輪郭さえも分からなくなるほどに強くなる。

光が収まるとそこにノゾミの姿は無くなっていた。

ノゾミのログアウトを見届けたキリトは静かに一息つくと、黄昏の空へ向けて呟いた。

 

「またな、ノゾミ……」

 

これでSAOに残るはキリトのみとなった。

彼はノゾミを包んだ光が消えるまで見届けると、振り返って誰にでも無く声をかけた。

 

「――消えといて覗き見は無いんじゃないのか?茅場」

 

「すまない。空気を読んで声を掛けないつもりだったが逆効果だったようだ」

 

答えたのは今しがた消えたはずの茅場明彦だった。

呆れたような物言いでキリトがやれやれと首を振る彼に続きを促す。

 

「それで?わざわざ俺を最後まで残して、あのやり取りを覗き見して何か理由でもあるのか?」

 

「そうだったね。では改めて本題に入ろう。内容はとても簡単だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が捕らえたプレイヤーを、君に救ってもらいたい」

 

 

 

 

こうして、前代未聞のVR拉致事件。後に『SAO事件』と呼ばれるデスゲームは終息した。

実際の所、警察庁が立案したSAO被害者のナーヴギア強制解除計画が進められていたが、幸いにもその前に生き残った全員が突如意識を取り戻したということで計画は実行されなかったことをキリト達――後にSAO生還者(サバイバー)は知る由も無い。

そして同時に、この事件の終息は表面上だけのものだということなど、誰も知ることは無かった。

ほんのわずかな、一部の関係者を除いて。

 

 

 

NEXT:ALO beginning

 




(・大・)<と言う訳でSAO編無事完結。

(・大・)<とはいえ、正直今になって見返してみるとなんかストーリーがおざなりっていうか雑かなと感じる部分があるし……なんかイマイチって感じがしてならない。頭に描いてたシーンを書いて後は適当に埋め合わせたって所かな?

(・大・)<ALO、GGOでも書きたいシーンがあるし、とりあえずそれらはおざなりにならないようにしっかりと書いて行こうと思う。

(・大・)<防振りデンドロは来年になりそう……プリコネワンピの小説も思いついちゃったし、来年大丈夫かな……。
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