プリンセス・アート・オンラインRe:Dive 作:日名森青戸
(;・大・)<もう話は出来てたのに次の投稿が4月末って……
とりあえず断章、始まります。
「世界樹登頂作戦」
11月7日。
妖精と魔法の世界「ALfheim Online」。
その央都アルンの世界樹前広場。
少女は広場から天を衝かんばかりに聳え立つ世界樹を見上げていた。
夜空で染めたような紫紺の髪、成長途中の肢体に幼さを残す顔立ちに尖った耳。服も紫主体の軽装だ。
「ユウ、世界樹を見上げても攻略できないよ?」
そんな時、似た雰囲気の少し年上の少女が声を掛けてきた。
「姉ちゃん、ごめんごめん。すっごい高くって、思わず見とれちゃってたんだ」
「もう、みんな待ってるよ」
「はーい」
ユウ――基いユウキというプレイヤーは姉のランについて行き、やがて門番の如く佇む2体の妖精の像の前に集まっていたプレイヤー達と合流する。
「お待たせー!」
「遅いよユウキちゃん。提案の発案者が遅刻しちゃいけないんじゃないかな~?」
「あはは、ごめんホマレさん」
調子よさげに頭を掻くユウキに背を向け、帆稀――ホマレは集まったプレイヤーに声を掛ける。
本来このALOでプレイするにあたってプレイヤーは妖精として、そして9つの種族のうちどれか一つの種族に属する事になるのだが……ホマレの姿は他と比べて異様だ。
インプの特徴である薄紫の髪と尖った耳はまだいいとして、
――まるで“竜”みたいだ、と。
「それじゃあ主催者も集まったことだし、『世界樹登頂計画』を開始しま~す♪」
「「「おー♪」」」
主催者のホマレに合わせてユウキと、奇抜なデザインの眼鏡を掛け魔女の様な装備に身を包んだ少女と、ピンク髪にやや露出の高い服を着こなす少女がホマレに合わせる様に掛け声を上げる。
「といっても、内容は単に多段ロケット式に肩車して飛んでいくっていう、ユウキちゃんの案をそのまま実行するだけなんだけどね。順番は上からコッコロちゃん、ユウキちゃん、ノリちゃん、ナナカちゃん、テッチくんの5人で開始するよ。準備は良いね?」
「あれ?あたし達は?」
そこで猫耳を生やした黒髪の少女が声を上げた。
「下で受け止める人も必要でしょ?他のみんなは順番に落ちてくるこの子たちを受け止めてね」
「チッ、とんだ雑用じゃねぇか糸目ババアめ……」
パーカーを着た猫耳の少年が悪態を吐いた途端、彼に電撃が直撃した。
「はーい、それじゃあ早速行くよ~♪」
電撃を与えた当人ホマレに他のプレイヤーが顔を引きつらせる。だがすぐに言われたとおりの順番で肩車する。
傍から見ればシュールな光景だが、飛行時間に制限があるALOならこれが最適だ。
「じゃあコッコロちゃんこれを使って。SNSとかにも上げられる課金アイテムだよ」
「ありがとうございます」
「じゃあ……行くぞッ!!」
コッコロがアイテムを受け取るのを確認したテッチが重心を低くし、腰と脚を踏ん張って力を込めて跳び上がる。そこから背中に翅を生やし、さらに高く飛んでいく。
「うぐっ……!悪い……。げ、限界……!」
「オッケー!うちに任せて!」
テッチが離脱し、スズナが同じように翅を展開して飛翔する。
ぐんぐんと飛んでいくスズナたちだったが、やがてスズナにも限界が訪れた。
「うー……、無理かも。ごめん、後お願い!」
「任せて!」
スズナからノリへとバトンタッチし、さらにさらに飛翔を続けていく。
ユウキが気になって下を見ると、アルンがまるでミニチュアの模型の街のように小さくなっていた。
「わぁ……」
「ユウキ、あたしももう無理かも……」
「おっと、ごめんごめん。じゃ、しっかり捕まってねコッコロちゃん!」
「はい!」
思わず見とれているとノリにも限界が来たらしい。すぐさまコッコロと共に飛翔する。
先程までとは違い、ロケットのように上へ上へと飛んでいく。
しかし、眼前に聳え立つ世界樹は未だ頂上を見せる様子は無く、やっと一番下の枝に近付けたくらいだ。
と、ここで彼女にも限界が訪れる。
「ん……。コッコロちゃん、後はお願い!」
「お任せください!――たぁッ!!」
最後にユウキの背を踏み台に、跳躍して飛翔する。
一番下の枝からざっと2,3キロ弱と言った場所まで飛んだところで、ついに彼女の翅にも飛翔限界が訪れる。
「くっ……!せめて写真だけでも……!」
飛翔が切れる前に咄嗟に課金アイテム取り出して周囲に証拠になるものを探す。
そんな彼女の視界にふと、何かの光がちらついた。
反射的にコッコロはその場所に夢中でシャッターを押す。
アイテム内の撮影限界枚数に近づいた頃、急に落下する感覚に襲われる。
パラシュートも何もない自由落下。現実世界であれば10秒もあれば地面に激突し、身体がばらばらになってしまうだろう。
「うおおぉっと!」
そこに飛行していたキャルがダイビングキャッチでコッコロをキャッチする。その衝撃でがくんと思い切り下降してしまうが、踏ん張って緩やかに着地する。
「ありがとうございました。キャル様」
「別に良いわよ。でも、肝心の世界樹には全然届かなかったじゃない」
「う~ん……外からならいけると思ってたんだけどなー……」
「まあまあ。突破不可能なクエストを突破できる方法はきっと他にもございます。ホマレ様、これを」
「ありがと~♪――わぁ~、随分撮ったんだね。どれどれ~?」
その時ホマレの眼前にいきなりシステムメッセージの知らせが入る。それには緊急メンテナンスを告知する旨が書かれていた。
「いきなり緊急メンテ?なんでこんな時に?」
「今のユウキちゃんの行動が原因かな?――流石の運営も、こうなることは予想外だったかも」
運営からの突然のメッセージに困惑する中、ホマレは運営の意図に気付いたかのように呟いた。
「んじゃあメンテが終わったらまた集合って事で!解散!閉廷!終わり!」
「じゃあその間にこの写真、調べておくからね」
ナナカの鶴の一声に一斉にログアウトした。
ログアウトしたキャル――希留耶はログアウト直後特有のぼんやりする意識を覚醒させる。
まだ慣れない部屋だ。時々帰ってくるその男の事を考慮して、自分のお気に入りのぬいぐるみを数個、棚に飾っているだけの控えめのアレンジをしている以外は元の持ち主の部屋であることが一目瞭然だ。
溜息を吐いた後、天井へと手を伸ばす。
(あの時、もしあそこにアインクラッドがあったら……あの城に届いたのかな?)
しかし、幾ら手を伸ばしても現実世界にいる自分にはかの世界には届かない。
とりあえず水でも飲もうと部屋を出た矢先、バタバタと慌ただしく動く母と姉が騒いでいた。
「な、なに……?どうしたの?」
「ああ、希留耶ちゃん!それが……!」
「お兄ちゃんが……!!お兄ちゃんがぁ……!!」
「は?」
「帰ってくるんだよ!!お兄ちゃんが!!」
「……は?」
次回『再会と動き出す奴ら』