私はこの日、つまり七夕の夜中に産まれたのだという。
母が産みの苦しみを味わっている最中、そして産まれた時、父はその場にいなかったのだそうな。
昔の事なので「立ち合い」というものは無く、出産中に夫が分娩室に入れてもらえる、などという事は(常識的にも)有り得なかった。
なので一昔前のドラマにあるように呼ばれるまで近くの部屋かどこかで待機している、という感じだったと思うのだが、父はいつもこんな時には間が悪く、妹が生まれた時(昼前ぐらいだったらしい)も昼食に出掛けてその場にいなかったそうな。
分かりやすい日に産んでくれたおかげで誕生日を忘れられた事が無い。
だが実際に七夕の行事をするのは旧暦(八月七日)だったので、七月にササ飾を作るのは、保育所や小学校などで行ういわば遊びの類いだと思っていた。
七夕の「♪ササの葉さらさら」という歌は、その頃に教わって皆で歌っていたっけ。
作ったササ飾は行事が終わると川に流す風習があった。
だが近くに川が無かったのと、沢山流すと淀んだ所に滞って掃除が厄介なのとで幼い頃に朧気に覚えている程にしか流していなかった。
そういやササ飾で「笹」と「竹」の違いを学んだような気がする。
新暦、つまり今現在使われている歴での七夕(七月七日)では、日本では梅雨の最中。
沖縄辺りでは明けている事もあるかもしれないが、まだまだ雨が多い時期である。
なのでこの伝説で天の川を渡り、一年に一度だけ逢うとされる「
お互いに仕事をサボった罰とはいえ、可哀想な事である。
ちなみにこの日に二人のために天の川に橋を架ける「カササギ」が、天の川が増水すると架けられないので、逢瀬を断たれた悲しみで泣く涙が雨となって地上に降り注ぐのがこの日に雨が降る理由なのだとか。
天界の星として現される二人は「こと座のベガ」「わし座のアルタイル」という事になっている。
天の川(銀河。英語で言うとミルキーウェイ)自体を見る事が難しい所もあるかもしれないが、見れるなら確かに二人は天の川を挟んで並んでいる。
二人(二つの星)は共に1等星なので、夏の夜空では目立つだろう。
近くに「白鳥座のデネブ」もあるが、こちらは天の川を泳ぐかのように中にあるので見分けやすいかもしれない。
天の川を見られなくてもこの三つの星は目立つため、三つを結んで三角になる事から「夏の大三角形」と呼ばれている。
天の川というのは宇宙に散らばる何億という星々が、何らかの力(中心にブラックホールがあるとされる)で渦巻き状になった「銀河」と呼ばれる天体の一部らしい。
全体で見ると渦巻き状に見えるものが、その中にいて横から見ているからただの「川」に見えるのだという。
我々の住む「地球」という星が「太陽」という馬鹿でかい星を中心として回っている事から、その見えている天の川つまり銀河の事を「太陽系銀河」などと呼んでいるが、その銀河の中の星の数が二千億個の規模で、その規模の塊つまり銀河の数が更に千億以上というのだから、もう想像すら出来ない程の広さが宇宙にはあるという事になる。
その距離たるや、この世で一番速いとされる「光」の早さで何億年もかかるのだそうな。
(だから星の距離は「
それがたった一度の大爆発(ビッグバン)で誕生し、今尚広がり続けているというのだから、どれだけ壮大な世界か考えると気が遠くなる。
七夕伝説を知らない人に向けて、一応そのお話を。
天界に、神々の衣を織る仕事をしている「織女」がいた。
仕事熱心な彼女はとても評判が良かったが、着飾る事も化粧や髪の毛を整えるなど身だしなみにも気を使わず、自分の事を後回しにしてただ神々のために尽くす彼女を見て哀れに思った神は、神牛の世話係である「牽牛」を婿として宛がった。
二人はとても仲睦まじく暮らしていたが、仲が良過ぎるあまりにお互いの仕事をしなくなったため、怒った神々によって天の川の両端に引き離された。
嘆き悲しんだ二人。その様子を見た神々は、「今までのように真面目に働くなら一年に一度だけ逢う事を許す」と告げた。
その約束された日が七月七日なのだという。
その日は二人のために、カササギが集まって橋を掛ける事になっている。
しかし雨が降って天の川が増水すると橋が架けられない。
一年にたった一度だけ、という逢瀬が叶わないと知った二人は嘆き、その涙が地上に降る事でこの日が雨になる事があるのだという。