短い文で綴るエピソード集   作:沙希斗

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実話です。


たらこ唇

  

 

 

 

 自慢にもならないが、私はド田舎に住んでいる。

 周りは田んぼと山しか無い。

 ポツンとではないが隣は軽く百メートルぐらいは離れているため、夜家の明かりを全部消そうものなら、外はそれこそ鼻をつままれても分からないぐらいの真の闇が広がる。

 おかげで晴れた夜の星が物凄く綺麗だ。

 星座どころか銀河がハッキリ見えるくらい。

 しし座流星群などの時期には広い場所で寝ころんでいるだけで四方八方から飛来する流れ星が観察できるし、満月の夜にはとても神秘的な月が近くに見え、月光浴を楽しむ事が出来る。

 

 が、田舎に付き物というのか、当たり前というのか、とにかく虫やら猪やらの害虫、害獣が多い。

 家庭菜園を洒落込もうとすれば、葉物はアオムシやらヨトウムシやらの蝶や蛾の幼虫で、たちまち網の目どころか芯だけ残したようになってしまう。

 その分アゲハも含む大小様々な蝶が来るのは、綺麗なので割と見るのは好きなのだが。

 虫の被害は多少大目に見れても猿や鹿は根こそぎ持って行ったり食べられたりしてしまうため、それらの被害防止に網やら囲いやらをしなければならない。

 

 

 さて、そんな場所だから家の中に虫が入って来る事は当たり前で、なのでいちいち虫嫌いが悲鳴を上げる、という心境にもならず、というか私は別に虫嫌いでもないので毒虫以外はつまんで逃がしたり毒虫だったら殺虫剤で殺すのだが、それでも流石に参った出来事があった。

 

 ある晩、夜中に何故か唇が物凄く痛くなって目が覚めた。

 寝惚けていたので何が起こってそうなったのかサッパリ分からない。

 が、とにかく痛くて、しばらく寝られなくなった。

 それでもいつの間にか寝ていたようで朝起きた時、鏡を見てギョッとした。

 上唇だけが倍ぐらいに腫れ上がっていたからである。

 

 私は何となく見当が付いた。恐らくムカデが布団に忍び込んで咬んだのだ。

 まさかムカデに直接キスされるとは思いも寄らなかった。

 相手が雌だったかどうかは姿が見えなかったので確かめようがないが、そんな事はどうでも良い。虫にモテるとか嬉しくもない。

 

 ちなみにムカデの毒を中和させるには火傷をしない程度の熱いお湯につけるのが一番で、咬まれてからつけるまでの時間が短い程、腫れないし後遺症も少なくて済む。

 しかしそういう知識はあっても唇を直接熱いお湯につけたら耐えられないに決まってる。

 幸いにというのか夜中に襲った眠れない程の痛みはすっかり引いており、見た目が酷いだけで他は大した事にはならなさそうだったので、自然治癒に任せる事にした。

 

 腫れが引くまで会う人ごとに笑われたが、運良く親戚や親しい者としか会わなかったため、お互いに爆笑するだけで済んだ。

 それどころか自分で面白がって写真を撮り、他県に住む友達にも送って笑い合った。

 

 

 

 

 





【挿絵表示】

↑これがその時の写真(唇部分だけを切り取りました)。
わざとアヒル口にしている訳ではありませんよ。
真ん中あたりにある赤い点というか染みみたいなものが、恐らく「キスマーク」なんだと思われます。

【挿絵表示】

↑ちなみにこちらが通常。
あんまり変わらんとか言わないで(^^;)
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