短い文で綴るエピソード集   作:沙希斗

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今現在、進行形で行われている事(つまり実話)です。


虚しき猛アピール

 

 

 

 私の家は県道から少し山側に入った突き当りにあり、それ以上奥には家は無い。

 そんな道路から離れた場所であるにもかかわらず、何故か野良猫がやって来る事がある。

 しかも居心地が良いのかそのまま居つく奴もいて、そうやって猫が飼われていく。

 つまりペットショップで買ったりどこかで拾ったり、誰かから貰ったりして「猫」というものを飼った事が無い。

 うちは私が子供の頃からずっとこんな感じだった。

 なんせ私が「猫を飼い始めた」記憶として覚えているのは、小学生だったかそれより前だったかにうちに来た三毛猫を、父が「お前はミイって言うんよね~♪」などと言いながら勝手に家に上げ、そのままうちの猫になったという所からなのだ。

 三毛猫なので当然雌で、その当時は避妊や去勢などという義務は無かったために、(余所から雄猫が来て)何匹も子供が出来た。

 なので飼うつもりがないものは目の開かない内に、情が移らない内にと父や祖父が山の奥へ捨てに行ったものだった。

 

 そのミイの代が四代程続いた後死んだりいなくなったりして途絶え、また他の野良が居つくという事を繰り返して、今現在は避妊させた雌猫が一匹いる状態である。

 その間に、一番多い時では五匹の猫を飼っていた。

 もう昔のように性に関しては野放しにはせず、雌ならば避妊させ、雄ならば去勢させてそれぞれがいなくなるか死ぬかするまで飼って、今に至る。

 

 

さて、特に雌猫を飼っていると毎年この時期に起きる事なのだが、雄猫がやって来る。

 猫の繁殖期は春先と夏頃らしいのだが、何故か春にしかやって来ない。

 というか繁殖期になるとお互いに鳴く、「恋の歌」が目立つのがうちでは春だけなのだ。

 避妊していない雌でも言える事なのだが、猫の「恋の歌」は非常に大きく、やかましい。

 しかも夜中も関係無く鳴き続けたりする。

 当然近所迷惑だが、生憎うちは近所といっても百メートルは余裕で離れているので例え寝不足になったとしても被害にあうのはうちの家族ぐらいだし、うちは昔から「猫がいるなら当たり前」というスタンスなので、むしろ「今年はこんな雄が来た」などと逆に楽しんだりしている。

 うちの雌は避妊手術をして子宮が無いので発情しないはずなのに、それでも雄が来るのだ。

 

 今年来た雄は小振りな雉猫だった。

 大人になりきっていないのか、それとも栄養が足りずに小さく育ったままなのかは分からないが、顔付きもどことなく幼いような気がしないでもない。

 何故なら大人の日本猫の雄はえらが張り、真正面から見ると顔が四角く見えるのだが、「彼」にはそういう特徴が無いからである。

 最初に来たのがコイツで、次に来たのはアメリカンショートヘアみたいなシルバーと黒の縞。こちらは普通の雄のサイズなので、雉より少し大きい。

 アメショーのようにずんぐりしていないし縞も雉のように細かい所を見るに、恐らく雑種なんだろう。

 いずれも尾が長いため、雉を見慣れた頃に来たシルバータビー(通称白縞)を見て一瞬区別が付かず、母などは私が指摘し、なおかつ二匹が揃うまで雉(通称縞もしくは黒縞)だと思い込んでいたほどだった。

 この二匹、鉢合わせをすると喧嘩をするのだが、お互いに弁えているのかずれて来るようで、今の所一度しか鉢合わせを見ていない。

 縞の方は必ず「恋の歌」を歌いながら来るので自己主張が激しいが、白縞はいつも黙って来るので気が付いたら来ている、という感じ。

 どちらも来るとうちの雌のためにいつも入れっ放しになっている、ドライフードを食べて帰る。

 繁殖期に限らずいつも忘れた頃にふらりとやって来ては餌だけ食べ、居つきはしないがしばらく家の中で寛いでから帰って行く黒猫(こいつも多分雄。一番デカい)もいて、なので今うちは餌の減りが激しい。

 

 今の所、縞(雉)の出入りが一番多く、毎日のように「恋の歌」を歌いながらやって来るのでやかましくて仕方が無い。

 しかもうちの雌がいると、猛アピールして来る。

 誰かがいると逃げ腰で餌を食べて即帰って行く癖に、「彼女」がいるのを見付けるや「恋の歌」もヒートアップし、すぐ傍まで近付こうとするのだ。

 

 が、前記しているがうちの雌は避妊しているので、発情しない。

 

 発情しない雌は当然交尾をする気が無い。

 なので迷惑そうな顔で睨んだり、「しつこい!」とばかりに猫パンチを繰り出したり、自分から逃げたりする。

 だがそんな事ではめげないようで、毎日のようにそういう光景が繰り広げられる。

 向こうは必死なんだろうが、もし万が一間違いにでも交尾を成功させられたとしても妊娠しないため、無駄な努力である。

 

 

 あぁ、今日もまた「彼」の「恋の歌」が聞こえて来た。

 この虚しいだけの猛アピールは、恐らく「彼」の気が済むまで続くに違いない。

 

 

 

 

 




それではお聞きください、「縞」による「恋の歌」です。どうぞ!

『ンギャァオゥ、グルルルァアァオゥ(大声)』

うるせぇ(-"-)
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